編集デスク ゲーム攻略ライターの桐谷シンジです。今回も多く寄せられてる質問にお答えしていきます。
この記事を読んでいる方は、『仁王3』を購入しようか迷っている、あるいはプレイ中で「これって自分だけが感じている不満なのかな?」という違和感の正体が気になっていると思います。前作からのファンだからこそ感じる変化への戸惑いや、死にゲー特有の理不尽さに心が折れかけている方もいるでしょう。
この記事を読み終える頃には、本作の抱える「構造的な欠点」と「惜しいポイント」を深く理解し、それを受け入れて遊び続けるべきか、あるいはここでコントローラーを置くべきかの疑問が解決しているはずです。
- オープンフィールド化による移動と探索のストレス
- 膨大すぎるシステムとハクスラ要素の管理疲れ
- 初見殺しが加速したボス戦と理不尽な難易度曲線
- 時代を行き来するシナリオの複雑さと没入感の阻害
それでは解説していきます。
仁王3のオープンフィールド化がもたらした弊害と「広すぎる」虚無感
『仁王3』の最大の目玉として宣伝されていた「オープンフィールド」。平安、戦国、江戸、幕末と時空を超えた広大な日本を探索できるという触れ込みでしたが、実際に90時間プレイして感じたのは、従来のステージクリア型形式の良さが失われてしまったという「惜しさ」でした。
密度が薄いマップと移動時間の徒労感
従来の『仁王』シリーズは、練り込まれた閉鎖空間だからこそ、「角を曲がったら敵がいるかもしれない」という濃密な緊張感が維持されていました。しかし、本作ではオープンフィールドになったことで、どうしても「移動」の時間が増大しています。
特に序盤の戦国エリアや、中盤の平安京エリアなど、景色は美しいものの、次の目的地までの「何もない空間」を走る時間が長く感じられます。「早駆け」のスキルや、馬といった移動手段はあるものの、広大なマップに対してファストトラベルポイント(社)の間隔が妙に広い箇所があり、一度死んでしまうとリトライまでのマラソンが苦痛になる場面が散見されました。
| 要素 | 仁王2(前作) | 仁王3(今作) | デメリット |
|---|---|---|---|
| マップ構造 | 箱庭・ステージクリア型 | オープンフィールド | 緊張感の希薄化・移動の退屈さ |
| リトライ | 社からボスまでが近い | 場合により長距離移動 | 死亡時のストレス増大 |
| 探索密度 | 隅々まで配置あり | スカスカな場所も存在 | 探索意欲の減退 |
このように比較すると、死にゲーとしてのテンポ感が、広大さによって阻害されていると言わざるを得ません。
高低差による即死と落下ダメージの理不尽さ
本作のオープンフィールドは立体的で、城郭や山岳地帯など高低差が激しいマップが多いのが特徴です。しかし、これまでのシリーズ同様、落下ダメージの判定がシビアすぎます。「これくらいなら飛び降りても大丈夫だろう」と思った高さで即死、あるいは瀕死になり、そこを敵に狙撃されて落命するというパターンが頻発しました。
特に浜松城周辺や、幕末の京都の屋根伝いの移動など、足場が悪い場所での戦闘を強いられるシーンでは、敵の攻撃そのものよりも「落下死」への恐怖が勝ります。オープンワールドゲームのスタンダードになりつつある「落下ダメージ無効」や「パルクール的な挙動」が十分に実装されていないため、探索の自由度を謳いながら、実際は慎重な足運びを強要される「不自由さ」を感じてしまうのです。
ミニマップへの依存とコンパス機能の不在
広大なフィールドを探索する上で、ナビゲーションシステムの不親切さも目立ちます。画面右上にミニマップは表示されていますが、高低差や複雑な地形までは把握しきれません。また、多くのオープンワールドゲームで採用されている「コンパスバー(方位と目的地アイコンのみを表示するバー)」の実装がなく、頻繁に全体マップを開いて現在地を確認する作業が発生します。
特に、サブクエストの目的地が入り組んだ地下や、特定の手順を踏まないと入れないエリアにある場合、どこからアプローチすればいいのかが直感的に分かりづらい。情報ソースとして参照した体験談でも、「道に迷う」「コンパスが欲しかった」という声が挙がっていましたが、実際にプレイするとそのストレスは想像以上です。没入感を削いでまでマップ画面と睨めっこする時間は、アクションゲームとしての興奮を冷めさせてしまいます。
複雑化しすぎた戦闘システムと「覚えゲー」の限界
『仁王』シリーズの魅力は奥深い戦闘システムですが、今作『仁王3』では新要素が詰め込まれすぎており、プレイヤーのキャパシティを超えつつあります。
初見プレイヤーを突き放す操作の煩雑さ
本作には以下の要素が戦闘中に求められます。
- 構えの変更(上段・中段・下段)
- 残心(気力回復)
- 武器の切り替え(近接2種・遠距離2種)
- 妖怪技(守護霊・魂代)
- 妖怪化(ツクモ)
- 忍術・陰陽術の使用
- 新要素:スタイル変更(侍・忍者などのジョブチェンジ的要素)
- 新要素:ジャストガードとパリィ
これらを瞬時に判断し、指を動かす必要があります。特に新規に追加された「スタイル変更」と「ジャストガード」の比重が大きく、従来の「回避主体」の立ち回りだけでは対応しきれないボスが増えました。
キーボード・マウス操作への最適化が進んだとはいえ、パッド操作であってもボタンの同時押しや複雑なコマンド入力が頻発します。「操作が難しい」を通り越して、「指が足りない」と感じる場面すらあります。これが爽快感に繋がるのは数百時間を超えた熟練者のみであり、一般的なゲーマーにとっては「何をすればいいか分からないままタコ殴りにされる」という理不尽な体験になりがちです。
「常闇」エリアの疲労感と視認性の悪さ
ボス戦や特定エリアで発生する「常闇(とこやみ)」システムも、前作以上にストレス要因となっています。常闇内では気力回復速度が極端に低下し、敵が強化されます。これ自体は攻略のメリハリですが、今作ではエフェクトが派手になりすぎている傾向があります。
モノクロ調の画面に、派手な妖怪のエフェクト、味方の守護霊のエフェクトが重なり、敵の攻撃モーション(予備動作)が非常に見えにくいのです。特に巨大ボスである「ダイダラボッチ」や、エフェクトの激しい「武田信玄」の第二形態などでは、何が起きているのか視認できないままダメージを受けることが多々ありました。死にゲーにおいて「見えない攻撃」ほど理不尽なものはありません。
敵の「超反応」とスーパーアーマーの多用
難易度を上げるための調整として、敵のAIが「プレイヤーの入力に反応する」超反応を見せることが多くなりました。こちらが回復薬(仙薬)を使おうとした瞬間に突進攻撃を合わせてきたり、攻撃モーションに入った瞬間にバックステップで回避されたりといった挙動です。
また、ボスだけでなく中型の雑魚敵(騎兵や大型の妖怪)までもが強固なスーパーアーマー(攻撃を受けても怯まない特性)を持っており、こちらのコンボを無理やり中断させて反撃してきます。これにより、「ターン制バトル」のような慎重さを強いられ、ハクスラ特有の「俺TUEEE」という爽快感を感じられるまでのハードルが極端に高くなっています。
膨大なハクスラ要素が生む「インベントリ整理」という虚無
『仁王』シリーズの醍醐味であるハクスラ(ハック・アンド・スラッシュ)ですが、今作ではドロップ量が常軌を逸しており、それが逆にプレイの足枷になっています。
ドロップ品が多すぎて選別が追いつかない
一回のミッション、あるいはオープンフィールドを一通り探索して拠点に戻ると、数百個単位の装備品がインベントリに溢れかえります。レアリティ(白・黄・青・紫・緑)の選別だけでなく、付与されているランダムオプション(特殊効果)まで確認しようとすると、装備の整理だけで30分〜1時間近くを費やすことになります。
便利な「一括奉納」や「自動分解」の機能は設定できますが、それでも「もしかしたら神装備が混ざっているかも」という心理が働き、結局は目視で確認せざるを得ません。ゲームプレイ時間の3割近くをメニュー画面での整理整頓に費やしている事実に気づいた時、強い徒労感に襲われます。
ビルド構築のハードルと再調整の手間
今作では「侍」「忍者」といったスタイルごとに装備適正やスキルツリーが異なります。新しい強力な武器種や、面白そうな「秘伝書(ボスのレアドロップスキル)」を手に入れても、それに合わせてステータスを振り直し、装備を一新し、防具のオプションを焼き直すという膨大な手間が発生します。
「六道輪廻の書」などでステータスの振り直しは可能ですが、それに伴う装備セットの更新が面倒すぎて、結局、最初に決めたビルド(例えば槍特化や鎖鎌特化)で最後までゴリ押ししてしまうプレイヤーも多いはずです。多様な遊び方を提供しているはずが、管理の煩雑さが自由な試行錯誤を阻害しているという本末転倒な状況が起きています。
ストーリーの没入感を削ぐ「時空移動」とご都合主義
物語の設定や展開においても、ゲームプレイへの没入を妨げる要素がいくつか見受けられました。
時代設定の飛び火と感情移入の難しさ
本作は、主人公が江戸時代初期の「徳川家光(竹千代)」となり、過去の戦国時代や平安時代、未来の幕末へとタイムスリップする構成です。しかし、この「時代ジャンプ」が頻繁すぎて、各時代の情勢やキャラクターとの関係性が希薄になりがちです。
例えば、戦国時代で武田信玄と死闘を繰り広げた直後に、平安時代で源義経と共闘し、次は幕末で新選組と戦うといった展開は、歴史ファンにとっては「夢のオールスター」かもしれませんが、ストーリーラインとしては断片的です。「なぜ今、この時代に行かなければならないのか」という動機付けが弱く、「ただ有名な武将を出したいから」という制作側の都合が透けて見えてしまいます。
「歴史の修正」という曖昧なゴール
主人公の目的は「歪められた歴史を正す」ことですが、そもそもファンタジー要素(妖怪やアムリタ)が強すぎて、何が「正史」なのかがプレイヤーに伝わりにくい点もマイナスです。史実を知っている前提で「これはおかしい」と楽しむ作りになっていますが、海外のプレイヤーや日本史に詳しくない層にとっては、「よく分からないけど、とりあえず目の前の有名人を倒す」という作業的な進行になりがちです。
また、主人公自身が「自分を徳川慶喜だと思い込んでいる竹千代」という、ややこしい設定(ギャグ要素も含んでいるようですが)も、シリアスな場面でのノイズになります。感動的なシーンでも「でもこいつ、勘違いしてるんだよな…」という思考がよぎり、純粋に物語に入り込めない瞬間がありました。
PC版における最適化不足と環境依存の不具合
私はハイエンドなPC環境でプレイしましたが、それでもいくつかの技術的な問題に直面しました。PC版に力を入れているとはいえ、完璧とは言い難い状況です。
負荷の偏りとフレームレートの乱高下
DLSSやフレーム生成技術に対応しているものの、特定のエリア(特にエフェクトが重なる常闇や、オブジェクトの多い城下町)では、急激にフレームレートが低下する現象が発生します。アクションゲームにおいて、一瞬のカクつきは命取りです。
特に「ボリューメトリッククラウド(雲の描画)」や「グローバルイルミネーション」の設定が高負荷の原因となっており、これらを下げないと安定しないケースが多いです。最適化されているとは言え、環境によっては頻繁なクラッシュや、テクスチャの貼り遅れなども報告されており、コンソール版のような安定感をPC版で得るには、ユーザー側での細かな設定調整が必須となります。
キーボード・マウス操作の限界
キーコンフィグの自由度は高く、同時押し設定なども可能ですが、やはり根本的なUIデザインがパッド(コントローラー)向けに作られています。メニュー画面の操作や、ショートカットの切り替えなどは、マウス操作では直感的に行えない部分が残っています。
ロックオン機能の挙動も、マウス操作だと視点が敏感に動きすぎてしまい、乱戦時に予期せぬ敵をターゲットしてしまったり、逆にターゲットが外れてしまったりする事故が多発しました。PCゲーマーを取り込もうとする姿勢は評価できますが、「やはりパッドで遊ぶべきゲーム」という結論に至らざるを得ません。
マルチプレイ環境における過疎とマッチングの不均衡
最大3人でのマルチプレイ(常世同行)が可能ですが、ここにもシステム的な課題があります。
レベル差・進行度差によるマッチングの難しさ
オープンフィールドかつ、時代が分かれているシステム上、特定のミッションでマッチングしようとしても、プレイヤーが分散しており、なかなかマッチングしないことがあります。特に、不人気なサブクエストや、高難易度の周回ミッションでは、長時間待たされることも珍しくありません。
救済措置「義人塚」AIの限界
マルチプレイが苦手な人のための「義人塚(他プレイヤーのコピーAIを召喚する機能)」ですが、このAIの挙動が賢くありません。ボスの強力な範囲攻撃を避けずに突っ込んで即死したり、崖から落下したりと、頼りにならない場面が目立ちます。 「肉壁」としては機能しますが、高難易度コンテンツにおいては、AIを連れて行くことでボスの体力がマルチ補正で増えてしまい、かえって難易度が上がってしまうというジレンマも発生しています。
まとめ
『仁王3』は、圧倒的なボリュームとやり込み要素を持つ、国産アクションRPGの意欲作であることは間違いありません。しかし、90時間プレイして見えてきたのは、**「詰め込みすぎたがゆえの歪み」**でした。
オープンフィールドの広大さは移動の退屈さを生み、深すぎる戦闘システムは初心者を拒絶し、膨大なハクスラ要素は管理のストレスとなります。これらは「長時間遊べる」というメリットの裏返しでもありますが、手軽に爽快感を味わいたい層にとっては、高い壁となるでしょう。
- 移動がダルい:広すぎるマップと不親切なナビゲーション。
- 管理が面倒:無限に出るゴミ装備の整理に追われる。
- 理不尽な死:視認性の悪いエフェクトと即死攻撃の多用。
- 物語の散漫さ:時代ジャンプによる感情移入のしにくさ。
これらの「ダメなポイント」を許容できる、あるいは「その苦行こそが死にゲーの醍醐味だ」と捉えられるドMな精神を持つプレイヤーにとってのみ、本作は神ゲーとなり得るでしょう。もしあなたが、ライトに爽快なアクションを楽しみたいのであれば、このゲームはあなたにとって「時間の浪費」になる可能性が高いです。購入を検討する際は、この「重さ」と向き合う覚悟があるかを自問自答してみてください。
筆者情報
桐谷シンジ フリーランスのゲーム攻略ライター。慶應大学卒業後、大手出版社を経て、現在に至る。幅広いゲームに携わるが、主にRPG/FPS/サンドボックス系のゲームを得意とする。最近の悩みは趣味の時間が取れず、積みゲーが100作品を超えたこと。『仁王3』では徳川慶喜(偽)になりきり、ふんどし一丁で戦国時代を駆け抜けた。




















