編集デスク ゲーム攻略ライターの桐谷シンジです。今回も多く寄せられてる質問にお答えしていきます。
この記事を読んでいる方は、The Game Awards(TGA)での発表がなかったことで、「まさかマスターランクの実装自体が中止になったのでは?」「バグ対応でそれどころではないのでは?」といった不安が頭をよぎり、夜も眠れない日々を過ごしているのではないかと思います。SNSを開けばネガティブな噂ばかりが目につき、疑心暗鬼になっている方も多いことでしょう。
この記事を読み終える頃には、TGAで発表がなかった「必然的な理由」と、今後のロードマップに対する明確な見通しが立ち、マスターランク実装への不安が期待へと変わり、疑問が解決しているはずです。
- TGAでの未発表はマーケティング戦略上の必然であり中止の予兆ではない
- 現在のパフォーマンス最適化が完了するまで拡張発表は逆効果となる
- ストーリーズ3や他IPとの兼ね合いで2026年以降の展開が濃厚である
- 過去作のデータと販売実績から拡張版の実装は確実視されている
それでは解説していきます。
The Game Awards (TGA) で発表が無かった真の理由
多くのハンターが固唾を呑んで見守っていた年末の祭典、The Game Awards(TGA)。しかし、そこで『モンスターハンターワイルズ(MHWs)』の拡張コンテンツ、いわゆるマスターランク(G級)に関する情報は一切公開されませんでした。
この沈黙が、コミュニティに大きな波紋を呼んでいます。「開発が難航しているのではないか」「もしかして拡張自体がないのではないか」。そんな悲観的な声が挙がるのも無理はありません。しかし、冷静に業界の動向と過去のデータを分析すれば、この「沈黙」には明確な意図があることが見えてきます。
ここでは、なぜTGAが発表の場ではなかったのか、その舞台裏を深掘りしていきます。
海外コミュニティの反応と「絶望」の正体
まず、情報の震源地とも言える海外コミュニティの反応を見ていきましょう。海外のリーク情報や掲示板では、TGA直後から「絶望」に近い言葉が飛び交いました。
「拡張が来ないなんて信じられない」 「開発は終わったのか」
このような極端な反応、いわゆる「Doomer(悲観主義者)」的な意見がSNSで拡散され、それが日本のユーザーにも伝播し、不安を増幅させています。しかし、現地の熱心なファンや冷静な分析家たちの間では、全く別の見解が主流となっていることをご存知でしょうか。
彼らは「過剰な期待が招いた反動」だと指摘しています。冷静になれば、まだ拡張を絶望する時期ではありません。むしろ、ポジティブに、そして理性的に状況を俯瞰する必要があります。ネット上の声は、どうしてもネガティブで感情的なものが拡散されやすい性質を持っています。
「まだ拡張が来ないって絶望する時期じゃない」 「思考回路が非合理的すぎる」
これらは、状況を客観視できているベテランハンターたちの言葉です。TGAでの発表がなかったという事実だけで、全ての未来を悲観するのは尚早です。私たちは今一度、情報の取捨選択を行い、ノイズに惑わされない強さを持つ必要があります。
過去の事例から見る発表のタイミング
歴史は繰り返すと言いますが、カプコンの過去のマーケティング手法を振り返ると、今回のTGAスルーは決して異常な事態ではないことがわかります。
『モンスターハンターワールド:アイスボーン』の発表を思い出してください。あれはTGAのようなマルチタイトルの大規模イベントではなく、モンスターハンターの単独特別番組でひっそりと、しかし力強く発表されました。
また、『モンスターハンターライズ:サンブレイク』はどうだったでしょうか。こちらは任天堂ダイレクトという、プラットフォームホルダーのイベントでの発表でした。
つまり、以下の事実が浮かび上がります。
- 無印(ベースゲーム): 新規顧客獲得のため、E3やTGAといった世界的な大規模イベントで派手に発表する。
- 拡張(マスターランク): 既にベースゲームを持っているコアファンへ向けた情報であるため、自社イベントやダイレクト形式での発表を好む傾向がある。
ワイルズの拡張コンテンツは、既存プレイヤーへの「手紙」のようなものです。不特定多数が見るTGAで発表するよりも、1周年記念番組や、カプコンショーケースのような、より濃密な情報を届けられる場を選ぶのが自然な流れと言えるでしょう。
ベースゲームと拡張版のマーケティングの違い
さらに深掘りすると、ベースゲームと拡張版では、その「商品としての立ち位置」が異なります。
ベースゲームは、将来的にサブスクリプションサービス(Game Passなど)に入ったり、セールで長期的に売れ続ける「プラットフォーム」としての役割を担います。そのため、発売前のプロモーションには莫大な費用と時間をかけ、世界的な認知を獲得する必要があります。
一方で、拡張版(マスターランク)は、そのプラットフォームの上に乗る「追加コンテンツ」です。もちろん収益源としては極めて重要ですが、ベースゲームを持っていない人には意味のない商品です。
TGAのような場で数分の枠を使って宣伝するよりも、既存プレイヤーが注目するタイミング、例えば「タイトルアップデートの区切り」や「発売1周年」に合わせて発表する方が、マーケティングの費用対効果が高いのです。今回のTGAスルーは、カプコンが「モンハンというIP」を安売りせず、適切なタイミングを見計らっている証拠とも捉えられます。
現在の技術的課題とパフォーマンス問題の影響
「TGAで発表がなかった」という事実の裏には、マーケティング戦略以上に切実な、技術的な事情が見え隠れしています。それは、現在『ワイルズ』が抱えているパフォーマンスの問題です。
PC版を中心とした最適化不足、バグ、フレームレートの不安定さ。これらは現在進行形で多くのハンターを悩ませており、Steamのレビューなどでも厳しい意見が散見されます。この状況下で拡張コンテンツを発表することのリスクについて考えてみましょう。
PC版の最適化不足と世間の目
正直に申し上げましょう。現在の『ワイルズ』に対する世間の目は、決して手放しで称賛できる状態ではありません。
「重すぎて動きが悪い」 「テクスチャが貼り遅れる」 「ポリゴンが崩壊する」
特にPC版ユーザーからの悲鳴は切実です。高性能なグラフィックボードを積んでいても安定しない挙動に、ストレスを感じているプレイヤーは少なくありません。
もし、この状況で「有料の大型拡張コンテンツ」を発表したらどうなるでしょうか?
「まずは今のバグを直せ」 「まともに動かないゲームの追加コンテンツを売る気か」
間違いなく、大炎上案件となります。ゲーマーは、自分が愛するゲームだからこそ、その品質には妥協を許しません。未完成とも取れる状態で次なる集金を匂わせる行為は、企業の信頼を地に落とす「自殺行為」に他ならないのです。
海外の反応でも、「パフォーマンス最適化不足に対する世間の目」を無視できない要素として挙げています。開発チームも当然、この空気を肌で感じているはずです。
「観光客」の批判と真の評価
ここで興味深いのが、批判層の構造です。海外コミュニティでは、今のネガティブな声を上げている層の一部を「観光客(Tourist)」と呼ぶことがあります。つまり、シリーズを深く愛しているわけではなく、話題作だから飛びつき、少しでも粗があれば叩いて去っていく層のことです。
しかし、彼らの声もまた、市場の評価の一部です。12月、1月、2月と続くパッチでパフォーマンスが改善されれば、これら「観光客」は去り、純粋にゲームを楽しむファンが残り、評価は徐々に持ち直していくでしょう。
拡張版の発表は、その「浄化」が済んだ後に行われるべきです。「今は快適に動くし、コンテンツも増えたからやってみない?」と、友人を誘いやすい環境が整った時こそが、拡張発表のベストタイミングなのです。
今、無理に発表してヘイトを集めるよりも、足元を固めてから満を持して発表する。それが「完成された優れた製品」を届けるための、カプコンの誠意ある選択だと私は分析しています。
ストーリーズ3とのリソース競合
技術的な問題に加え、社内のリソース配分という観点も見逃せません。噂されている『モンスターハンター ストーリーズ3』の存在です。
ストーリーズシリーズは、ナンバリングタイトルとは異なる層、あるいはより若年層やRPGファンを取り込む重要なスピンオフ作品です。もし、『ワイルズ』の拡張と『ストーリーズ3』のプロモーション時期が被ってしまったらどうなるでしょうか?
完全に「共食い(カニバリズム)」が発生します。同じモンハンIP同士で話題を奪い合い、双方のマーケティング効果を薄めてしまう。これは企業ビジネスとして最も避けるべき事態です。
さらに、カプコンは『ロックマン』の新作や『大神』『鬼武者』といったクラシックIPの復活、そして超大型タイトルである『バイオハザード RE:9』(仮)も控えていると言われています。
2026年前半のスケジュールは、これら他タイトルの展開で埋まっている可能性が高いのです。「モンハンバブル」の中にいると忘れがちですが、カプコンにとってはモンハンだけが全てではありません。株主への利益還元を考えれば、各四半期に強力なタイトルを分散させ、安定した収益を上げ続ける必要があります。
そう考えると、『ワイルズ』の拡張は『ストーリーズ3』の展開が落ち着いた後、つまり「後回し」にされるのが合理的です。これはネガティブな意味での後回しではなく、会社全体の利益を最大化するための戦略的な配置転換なのです。
実装時期の予測とロードマップの考察
では、気になる実装時期はいつになるのでしょうか?
TGAでの発表がなかった今、最も有力視されている説や、過去のデータに基づいた現実的なラインを導き出してみましょう。ここでは「希望的観測」を排し、冷徹な分析を行います。
2026年説 vs 2027年説
現在、コミュニティでは「2026年後半」説と「2027年初頭」説が拮抗しています。
| 予測時期 | 根拠となる要素 | 可能性 |
|---|---|---|
| 2026年後半 | 過去作(ワールド/ライズ)のリリース間隔に近い。1年半〜2年スパン。 | 40% |
| 2027年初頭 | ストーリーズ3等の他タイトルとの調整。パフォーマンス改善期間の確保。 | 60% |
個人的には、**「精神衛生上、2027年発売だと思っておいた方が賢い」**という意見に強く同意します。
「2027年なんて遅すぎる!」と思うかもしれません。しかし、近年のゲーム開発の大規模化、複雑化は留まるところを知りません。『ワイルズ』はこれまでのシリーズの中でも最大規模のマップと生態系シミュレーションを有しています。その拡張コンテンツを作る労力は、過去作の比ではないでしょう。
もし2026年内に出るなら、それは嬉しいサプライズです。しかし、2027年まで待たされるとしても、それは「クオリティアップのための時間」が確保されたとポジティブに捉えるべきです。未完成のまま発売され、後からパッチで修正されるような事態は、もう誰も望んでいないのですから。
1周年記念での発表の可能性
最も近い「希望」として挙げられるのが、発売1周年のタイミングです。
『ワイルズ』の発売からちょうど1年。この時期に、大規模なアニバーサリーイベントや放送が行われる可能性は極めて高いです。
- ボーナスアップデートの発表: 最後の無料タイトルアップデートとして、強力なモンスター(歴戦王クラス)の実装。
- 拡張版のティザートレーラー公開: 番組の最後に、雪山や火山など新フィールドを少しだけ見せる映像。
この流れが最も美しく、ファンを熱狂させるパターンです。『ワールド』の時も、歴戦王ネルギガンテの実装と前後してアイスボーンの情報が出始めました。「歴戦王アルクベル」のような存在を倒した後に、「Next Hunting Ground…」といった文字が出る演出。想像するだけで鳥肌が立ちます。
このタイミング(2月〜3月頃)であれば、『ストーリーズ3』の発売前プロモーションともギリギリ被らず、かつ『ワイルズ』の熱量を維持することができます。
Summer Game Fest (SGF) への布石
もし1周年での発表がなかった場合、次の大きな山場は6月の「Summer Game Fest(SGF)」になります。
ここはE3に代わる夏の一大イベントです。ここで発表がないということはまず考えられません。もし2月の1周年で発表がなく、6月まで持ち越された場合、発売時期はほぼ間違いなく2027年以降にズレ込むと見ていいでしょう。
SGFでの発表となれば、世界中のメディアが一斉に試遊レポートなどを出し始めます。その頃にはベースゲームのパフォーマンス問題も解決し、Steamのレビューも「好評」に戻っているはずです。
「リベンジ」の舞台として、SGFは最適です。一度下がった評判を、拡張版の圧倒的なクオリティと、改善されたベースゲームのパフォーマンスで覆す。カプコンはそのシナリオを描いている可能性があります。
マスターランク実装が「確実」である根拠
ここまで「遅れる理由」ばかりを話してきましたが、ここで最も重要なことを断言しておきます。
マスターランクの実装は、99.9%確実に行われます。中止の可能性は万に一つもありません。
なぜそこまで言い切れるのか。感情論ではなく、ビジネス的な観点とシリーズの伝統からその根拠を提示します。
圧倒的な販売実績と利益構造
まず、数字を見てみましょう。『ワイルズ』はローンチで1000万本級のセールスを記録し、2025年のSteam同接数でもトップクラスを維持しています。これはカプコンの歴史上でも類を見ない大成功です。
企業として、この「ドル箱」を放置する理由がどこにあるでしょうか?
拡張コンテンツ(G級/マスターランク)は、完全新作を作るよりもはるかに低コストで開発できます。ベースとなるエンジン、マップ、モーションなどの資産を流用できるからです。つまり、利益率が圧倒的に高いのです。
株主に対して「モンハンという資産を最大限活用し、利益を上げます」と説明するためには、拡張版のリリースは必須事項です。もし出さないという選択をすれば、株価は大暴落し、経営陣の責任問題に発展するレベルです。
「カプコンが爆発でもしない限り、拡張は来る」 「自分の顔を撃ち抜くような自殺行為」
海外ファンのこれらの表現は、決して大袈裟ではありません。ビジネスの理屈として、出さない選択肢が存在しないのです。
「G級」という伝統とファンの信頼
モンスターハンターシリーズには、無印版のあとに「G級(現在はマスターランク)」が追加されるという、20年近く続く伝統があります。
多くのベテランハンターは、無印版を「前菜」、G級を「メインディッシュ」と捉えています。無印版で集めた装備や知識を活かし、さらなる高難度ミッションに挑む。このサイクルこそがモンハンの醍醐味であり、ファンがカプコンを信頼してお金を払う理由でもあります。
もし『ワイルズ』でこの伝統を破り、拡張を出さなかったとしたらどうなるか?
「モンハンはもう未完成品しか出さないのか」 「次は買わない」
ファンの信頼は地に落ち、ブランド価値は毀損します。現在6000万本以上を売り上げているシリーズの未来を閉ざすような真似を、カプコンがするはずがありません。
内部データと解析情報
さらに、少しグレーな領域の話になりますが、PC版のデータ解析(データマイニング)からも、拡張の存在を示唆する痕跡が見つかっています。
- 紫ゲージの存在: ゲーム内のデータには、現在の仕様では到達不可能な斬れ味「紫ゲージ」のデータが存在すると言われています。これはマスターランク装備でのみ解放される要素です。
- 空きID: モンスターリストや装備IDに、将来的な追加を見越した大量の空き枠が確認されています。
これらは、開発当初からマスターランクの実装を前提に設計されていることの動かぬ証拠です。「最初から計画されている」のです。
拡張コンテンツに期待される内容と変更点
実装が確実であるならば、次に気になるのは「中身」です。現在の『ワイルズ』に対する不満点を解消し、さらに進化させるために、拡張版にはどのような要素が必要とされるのでしょうか。
コンテンツ不足の解消とエンドコンテンツ
現在の『ワイルズ』で最も指摘されているのが、「やり込み要素(エンドコンテンツ)」の不足です。
ストーリークリア後の導線が薄く、ただ装飾品を集めるだけ、あるいは特定のモンスターを周回するだけの作業になりがちだという声があります。『アイスボーン』の「導きの地」や、『サンブレイク』の「怪異錬成」のような、無限に遊べるシステムが待望されています。
拡張版では、これらを凌駕する新たなエンドコンテンツが実装されるでしょう。
- 新フィールドの探索: 寒冷地や火山、あるいは全く新しいコンセプトのフィールド。
- 極限個体・特殊個体: 既存モンスターの強化版だけでなく、行動パターンが完全に変化した亜種や希少種。
- 武器・防具のカスタマイズ: スキルシステムの拡張や、武器の見た目を変更できるシステム(重ね着武器)の早期実装。
これらが揃って初めて、『ワイルズ』は「完成」します。「無印はベータテスト、拡張が本番」という皮肉交じりの格言は、今回も健在かもしれません。
復活モンスターへの期待
拡張版の目玉といえば、やはり過去の人気モンスターの復活です。
『ワイルズ』の骨格や生態表現に適していながら、まだ登場していないモンスターたちがいます。
- ラギアクルス: 海竜種の骨格問題が解決されれば、目玉として登場する可能性が高い。
- セルレギオス: 高速戦闘を得意とする飛竜種は、ワイルズのアクション性と相性が良い。
- ゴグマジオス: 超大型モンスターとの戦闘は、現在のフィールドギミックを活かせる可能性がある。
- グラン・ミラオス: 禁忌モンスター級のサプライズ枠。
また、海外の反応にもあったように、「ラギアクルスとセルレギオスはローンチに入るはずだった」という噂もあります。開発期間の都合でカットされたモンスターたちが、拡張版で一気に解き放たれることでしょう。
武器バランスとアクションの調整
「簡易化されすぎている」「リスクが少ない」といった、アクション面への不満も拡張版での調整ポイントです。
集中モードやセクレトによる移動は便利ですが、古参プレイヤーからは「狩りの緊張感が薄れた」という意見もあります。マスターランクでは、モンスターの速度や攻撃範囲が強化され、これらの便利機能を駆使してもなお苦戦するような、歯ごたえのある難易度が提供されるはずです。
また、武器間のバランス調整も大規模に行われるでしょう。特定の武器種だけが強すぎる、あるいは弱すぎるといった状況は、新技の追加やモーション値の見直しによって是正されます。
まとめ
長くなりましたが、今回の「TGAでの発表なし」騒動について、結論をまとめます。
- TGAスルーは想定内: ベースゲームと拡張版のターゲット層の違い、そして他IPとの兼ね合いから、TGAでの発表は元々可能性が低かった。
- 技術的解決が最優先: PC版のパフォーマンス問題が解決しないうちは、拡張の発表は火に油を注ぐだけ。カプコンは足場を固めている段階。
- 実装は100%確実: 過去のデータ、ビジネスモデル、解析情報、全てが拡張の存在を指し示している。
- 時期は2027年覚悟で: 早くて2026年後半だが、クオリティアップのため2027年初頭までズレ込む可能性も視野に入れ、気長に待つのが精神衛生上良い。
「絶望」する必要は全くありません。むしろ、カプコンが『ワイルズ』という巨大なプロジェクトを大切に扱い、失敗が許されない拡張版を完璧な状態で送り出そうとしている姿勢の表れと捉えるべきです。
今は、現在のアプデを楽しみつつ、別ゲーを挟むなりして、気長に吉報を待ちましょう。モンハンの拡張は、待つだけの価値がある体験を必ず提供してくれます。
筆者情報
桐谷シンジ フリーランスのゲーム攻略ライター。慶應大学卒業後、大手出版社を経て、現在に至る。幅広いゲームに携わるが、主にRPG/FPS/サンドボックス系のゲームを得意とする。最近の悩みは趣味の時間が取れず、積みゲーが100作品を超えたこと。『モンスターハンター』シリーズは初代からプレイしており、総プレイ時間は2万時間を超える。
補足:過去作における発表から発売までのタイムライン詳細分析
ここからは、より深い考察を求める読者のために、過去の『モンスターハンター』シリーズにおける「無印発売」から「G級(拡張)発表・発売」までのタイムラインを詳細に分析し、今回のケースに当てはめていきます。
ワールド・アイスボーンのケース
『モンスターハンター:ワールド』は、シリーズの世界展開を決定づけた記念碑的作品です。
- MHW 発売日: 2018年1月26日
- アイスボーン発表日: 2018年12月10日(スペシャルプログラム)
- アイスボーン発売日: 2019年9月6日
この時、発表までの期間は約11ヶ月。発売までは約1年8ヶ月かかっています。 注目すべきは、発表のタイミングです。「スペシャルプログラム」という自社配信枠を使っており、他社のイベントには依存していません。
また、この時期の『ワールド』は、数多くの無料タイトルアップデート(イビルジョー、ナナ・テスカトリ、ベヒーモス、レーシェンなど)を精力的に行っており、プレイヤーの関心を繋ぎ止めていました。
ライズ・サンブレイクのケース
『モンスターハンターライズ』は、携帯機向けの手軽さと翔蟲によるアクション性を融合させた作品です。
- MHRise 発売日: 2021年3月26日
- サンブレイク発表日: 2021年9月24日(Nintendo Direct)
- サンブレイク発売日: 2022年6月30日
こちらは発表までわずか6ヶ月、発売まで1年3ヶ月という異例のハイスピード展開でした。これは、元々の開発規模がワールドほど巨大ではなかったこと、そしてコロナ禍での巣ごもり需要に迅速に対応する必要があった背景などが考えられます。
ワイルズへの適用と予測
『ワイルズ』の開発規模は『ワールド』以上であることは明白です。マップの広さ、環境生物の密度、天候変化の処理など、技術的なハードルは段違いに高いです。
もし『ワールド』のスケジュール感を踏襲するなら:
- MHWs 発売: 2025年2月28日
- 拡張発表: 2026年1月〜2月頃(1周年記念)
- 拡張発売: 2026年10月〜2027年3月頃
こうなります。つまり、2025年末のTGAで発表がなくても、スケジュール的には全く遅れていないのです。むしろ『ワールド』よりもボリュームが増していることを考えれば、さらに後ろ倒しになるのが自然です。
「TGAで発表がなかった=遅れている」という認識自体が、少し気の早い判断だったと言えるでしょう。
カプコンの決算と株価への影響
ゲームファンとしての視点だけでなく、少し大人な「ビジネス視点」からもこの問題を掘り下げてみましょう。
カプコンは上場企業であり、株主に対して継続的な成長を約束しなければなりません。 『モンスターハンター』は、バイオハザードと並ぶ同社の二枚看板です。
2026年度、2027年度の売上目標
2025年度(2026年3月期)の売上は、『ワイルズ』本編の爆発的なヒットによって約束されています。問題はその翌年以降です。
もし2026年度(2027年3月期)に大型タイトルが何もないと、前年比で売上が激減してしまい、株価への悪影響が懸念されます。 ここで登場するのが『バイオハザード RE:9』や『ストーリーズ3』、そして『ワイルズ 拡張版』です。
経営戦略として最も美しいのは、これらの大型弾を分散させることです。
- 2025年: ワイルズ本編で記録的売上。
- 2026年前半: ストーリーズ3などの派生作品で繋ぐ。
- 2026年後半〜2027年前半: ワイルズ拡張版で、再び大きな山を作る。
このように配置することで、決算の数字を安定させることができます。株主総会などでの説明資料を見ても、主力IPの継続的な活用は明記されており、拡張版の開発中止などあり得ない選択です。
モバイル展開「アウトランダーズ」との棲み分け
最近発表されたモバイル向けタイトル『モンスターハンター アウトランダーズ』についても触れておきましょう。
一部では「開発リソースがそっちに割かれているのではないか?」という懸念がありますが、これは誤解です。『アウトランダーズ』はテンセント傘下のTiMi Studio Groupとの共同開発であり、カプコン本社のCS(コンシューマー)開発部隊とはリソースが競合しません。
むしろ、モバイル版でライト層やアジア圏の新規層を獲得し、彼らを本家『ワイルズ』やその拡張版へと誘導するという相乗効果を狙っています。モバイル版の展開もまた、モンハンブランド全体の拡大に寄与する要素であり、拡張版の阻害要因にはなり得ないのです。
最後に:ハンターとしての心構え
情報の洪水の中で溺れそうになっているハンターの皆さんへ。
私たちは、数々の理不尽なクエストを乗り越えてきました。極限状態のラージャン、即死級のブレスを吐くミラボレアス、理不尽な当たり判定のガノトトス。それらに比べれば、「情報の発表を待つ」というクエストなど、どうということはありません。
開発チームは今、必死になってパフォーマンスの改善と、我々の予想を超える拡張コンテンツの制作に取り組んでいるはずです。彼らに必要なのは、性急な要求や罵倒ではなく、適切な時間と、そして「待っているぞ」という温かい(しかし圧力のある)応援です。
装備を整え、アイテムを補充し、その時を待ちましょう。 ギルドからの招集がかかるその日は、必ず来ます。
以上、編集デスクの







