ゲームジャーナリストの桐谷シンジです。 今回も多く寄せられてる質問にお答えしていきます。
この記事を読んでいる方は、大きな盛り上がりを見せている『鬼滅の刃 ヒノカミ血風譚2』について、高い評価の裏で囁かれる「惜しい点」や「不満点」がどのようなものか気になっていると思います。 購入を検討しているけれど、本当に満足できる作品なのか、手放しで褒められない部分も知っておきたい、そう考えているのではないでしょうか。

この記事を読み終える頃には、『鬼滅の刃 ヒノカミ血風譚2』がなぜ「惜しい」と言われるのか、その具体的な理由と、購入すべきかどうかの判断基準についての疑問が解決しているはずです。
- 前作からボリューム不足が指摘されるソロモード
- 単調なゲームプレイが目立つ追加コンテンツ
- 一部の理不尽な難易度調整と歪なクリア条件
- プラットフォームによって懸念されるパフォーマンス問題
それでは解説していきます。

『鬼滅の刃 ヒノカミ血風譚2』の概要と前作からの進化点
まずは本作がどのようなゲームなのか、基本的な情報と前作からの進化点についておさらいしておきましょう。 『鬼滅の刃 ヒノカミ血風譚2』は、2021年に発売され、その圧倒的な原作再現度でファンを驚かせた『鬼滅の刃 ヒノカミ血風譚』の正統な続編です。

開発は前作に引き続き、キャラクターゲーム制作に定評のあるサイバーコネクトツーが担当。 原作の持つ魅力を最大限に引き出す美麗なグラフィックと、派手で爽快感のあるアクションはさらに磨きがかかっています。
前作では原作漫画の8巻「無限列車編」までの物語が描かれましたが、本作ではその続きとなる「遊郭編」「刀鍛冶の里編」、そして最終決戦を前にした「柱稽古編」までが収録されており、ファン待望のストーリーを追体験できます。
項目 | 前作『ヒノカミ血風譚』 | 今作『ヒノカミ血風譚2』 | 備考 |
---|---|---|---|
収録ストーリー | 立志編~無限列車編 | 遊郭編~柱稽古編 | テレビアニメ版の範囲をほぼ網羅 |
プレイアブルキャラ数 | 24体(衣装違い含む) | 40体以上 | 柱が全員参戦、鬼も多数追加 |
主な新要素 | – | 合体奥義、装具システム | 特定ペアでの必殺技や戦闘補助機能 |
このように、基本的な要素は正当進化を遂げており、特にキャラクター数の大幅な増加は、ファンにとって最も嬉しいポイントと言えるでしょう。
原作・アニメを忠実に再現した美麗なグラフィック
本作を語る上で欠かせないのが、サイバーコネクトツーの技術力が光るグラフィックです。 まるでアニメをそのまま動かしているかのようなキャラクターモデル、激しい戦闘を彩るエフェクトの数々は、前作以上にパワーアップしています。

特にストーリーモードである「日の神血風譚」では、カットシーンとアクションパートがシームレスに繋がり、プレイヤーを『鬼滅の刃』の世界へと深く引き込みます。 シリアスなシーンからコミカルなやり取りまで、キャラクターの表情や仕草が非常に細かく作り込まれており、その再現度の高さは「アニメかCGか見分けがつかない」と言っても過言ではありません。
刀鍛冶の里編のクライマックスにおける、炭治郎と禰豆子の絆を描いたシーンなどは、アニメと同じ挿入歌が流れるといったこだわりの演出も相まって、原作ファンならずとも心を揺さぶられること間違いなしの完成度です。
待望の「柱」全員参戦と大幅に増加したプレイアブルキャラクター
前作で最も多くのファンが不満点として挙げていたのが、プレイアブルキャラクターの少なさでした。 無料アップデートで追加されたキャラクターを含めても24体、そのうち6体は主人公たちの衣装違いバージョンであり、対戦ツールとしてのバリエーション不足は否めませんでした。

しかし、本作では収録ストーリーが拡大したことにより、ついに鬼殺隊最強の剣士たち「柱」が全員プレイアブルキャラクターとして参戦します。 伊黒小芭内や不死川実弥といった、前作では登場しなかった柱たちを自由に操作できるようになったのは、ファンにとって最大の魅力と言えるでしょう。
さらに、上弦の鬼である堕姫・妓夫太郎や玉壺、半天狗(憎珀天)なども使用可能。 果ては刀鍛冶の里編で炭治郎の稽古相手となった「縁壱零式」まで参戦しており、総勢40体以上のキャラクターでバトルを楽しめます。 これにより、対戦モードのキャラクター選択の幅が大きく広がり、自分だけのドリームチームを編成して戦う楽しみが格段にアップしました。
新要素「合体奥義」で対戦はさらに派手に
本作のバトルシステムは、基本的に前作のものを踏襲しています。 簡単なボタン操作で爽快なコンボが繰り出せるため、アクションゲームが苦手な方でも直感的に楽しむことができます。
その上で、新たな駆け引きを生む要素として「合体奥義」が追加されました。 これは、特定のキャラクターの組み合わせ(例:炭治郎と禰豆子、善逸と伊之助など)でチームを組んだ時のみ発動できる、超必殺技です。
発動すると、キャラクターごとに用意された専用の美麗なカットシーンが挿入され、戦いを大いに盛り上げます。 合体奥義を狙える組み合わせは限られていますが、その威力は絶大で、一発逆転も可能な切り札となります。 どのキャラクターの組み合わせに合体奥義が用意されているのかを探すのも、本作の楽しみ方の一つです。 この新要素により、チーム編成の戦略性が増し、バトルはよりダイナミックで見応えのあるものへと進化しました。
『鬼滅の刃 ヒノカミ血風譚2』が惜しいと言われる7つの理由
さて、ここまで本作の素晴らしい点を紹介してきましたが、ここからは購入を検討している方が最も知りたいであろう「惜しい点」や「不満点」について、深く掘り下げていきます。 多くのプレイヤーから指摘されているのは、主にコンテンツのボリュームや、一部のゲームデザインに関する部分です。

①ソロプレイモードのボリューム不足感
本作のメインコンテンツであるストーリー追体験モード「日の神血風譚」。 収録されているエピソードは「遊郭編」から「柱稽古編」までと、ボリュームアップしているかのように思えます。 しかし、実際にクリアまでにかかる時間はおおよそ8時間程度。 これは、前作のソロモードとほぼ同等のプレイ時間です。
濃厚だが短いストーリー体験
一つ一つのエピソードの演出やボスの作り込みは非常に濃厚で、満足度は高いです。 特に、原作の展開とアドベンチャーパートの相性が良かった「柱稽古編」は、キャラクターとの交流や修行をゲームならではの形で体験でき、素晴らしい完成度でした。
しかし、ストーリー全体を通して見ると、どうしてもコンパクトにまとまっているという印象は拭えません。 カットシーンの比重が大きく、プレイヤーが実際に操作するパートは限定的です。 そのため、ストーリーモードだけを目当てにフルプライスで購入する場合、価格に見合ったボリュームがあるとは言い難いかもしれません。 「もっと長くこの世界に浸っていたかった」と感じるプレイヤーは少なくないでしょう。
②追加ソロモードの単調さと既視感
ストーリーモード以外にも、本作には一人で遊べるモードとして「鬼殺の軌跡」と「修練の道」が収録されています。 これらはコンテンツの幅を広げる試みではあるものの、その内容は残念ながら単調さが否めません。
「鬼殺の軌跡」はバーサスモードの延長線上
「鬼殺の軌跡」は、前作で描かれた「立志編」から「無限列車編」までの印象的なボス戦を追体験できるモードです。 しかし、収録されているバトルはわずか6種類と非常に少なく、物足りなさを感じます。
さらに問題なのは、バトルシステムがソロプレイモードのものではなく、対戦用のバーサスモードをベースにしている点です。 ソロモードのボス戦は、敵の多彩な攻撃パターンを回避し、隙を突くというアクションゲームらしい歯ごたえが魅力でした。 しかし、このモードではその魅力が失われ、単なる「演出付きのCPU対戦」といった印象が強くなっています。 前作の感動的な戦いをもう一度、と期待すると肩透かしを食らうかもしれません。
作業感が否めない「修練の道」
もう一つの「修練の道」は、マス目状のマップを進みながら、各マスで課されるお題をクリアして柱との対決を目指すというモードです。 コンセプト自体は興味深いのですが、結局のところ、ここで行われるのもバーサスモードを基本とした戦闘の繰り返しです。 このモードならではの戦略性や、特別なゲーム体験といった独自性はほとんど感じられず、単調な作業プレイになりがちです。
結果として、これらの追加モードはどちらもコンテンツの「水増し」という印象が強く、メインストーリーを補完するほどの深みや遊びごたえを提供できていません。 作品全体の完成度が高いだけに、この部分の作り込みの甘さが目立ってしまっているのは、非常にもったいない点です。
③一部モードにおける理不尽な難易度調整
本作の難易度は、全体的にやや高めに設定されており、アクションゲームファンにとっては程よい手応えを感じられるバランスになっています。 特にストーリーモードのボス戦は、原作さながらの死闘を体感させてくれます。
しかし、一部のモードでは、この難易度調整が「歯ごたえ」ではなく「理不尽さ」として感じられる場面が見受けられます。 特に「鬼殺の軌跡」の最高難易度や、連戦形式のサバイバルモードなどがそれに当たります。
これらのモードでは、単純に敵の体力や攻撃力が引き上げられているだけで、プレイヤーに新たな攻略法を考えさせるような工夫が見られません。 敵の攻撃を一度受けただけで体力がごっそり奪われたり、こちらの攻撃がほとんど通じなかったりと、プレイヤーの腕前というよりは、運やキャラクター性能に左右される場面が多くあります。 クリアするためには何度も挑戦する根気が必要となり、達成感よりも疲労感が勝ってしまうこともあるでしょう。 全てのモードで最高ランクを目指すような、やり込み型のプレイヤーにとっては、ストレスを感じる部分かもしれません。
④Sランククリア条件の仕様による不自然なプレイ
本作では、各バトルで「Sランク」という最高評価を獲得することが、やり込み要素の一つとなっています。 しかし、このSランクの獲得条件が「体力残量のみ」で判定されるという仕様が、一部で問題視されています。
回復のためにわざと攻撃を受ける本末転倒
本作から追加された「装具」システムは、戦闘中に様々なバフ効果(体力回復、ゲージ上昇率アップなど)を得られる便利な機能です。 この中に「ダメージを受けた際に体力が回復する」という効果を持つ装具が存在します。
Sランクを目指すには体力を満タンに近い状態でクリアする必要があるため、戦闘終盤でわずかに体力が減っている場合、「装具の効果を発動させるために、わざと敵の弱い攻撃を受けてから回復する」という、極めて不自然なプレイが最適解となってしまうのです。
本来、アクションゲームの評価システムは、華麗なコンボを決めたり、ノーダメージでクリアしたりといった、プレイヤーの高度な技術を評価するものであるべきです。 しかし、この仕様のせいで、ゲームプレイの目的が歪められてしまっています。 これはゲームデザインとして練り込み不足と言わざるを得ず、今後のアップデートでの改善が望まれる点です。
⑤不安定なパフォーマンスと頻発するクラッシュ
ゲーム体験の根幹を揺るがす問題として、パフォーマンスの不安定さが挙げられます。 私がプレイしたPlayStation 5版では、通常のプレイ中は概ね安定していました。 しかし、「鬼殺の軌跡」でSランク獲得のために何度もリトライを繰り返していた際、アプリケーションが強制終了するクラッシュが3回ほど発生しました。
高難易度モードで集中力を高めている最中にエラーで中断させられるのは、モチベーションを著しく低下させます。 特に、あと一歩でクリアできそうだった場面でクラッシュが発生した際の徒労感は計り知れません。
特にSwitch版は要注意
さらに深刻なのは、Nintendo Switch版に関する報告です。 SNSなどでは「頻繁にクラッシュが発生してまともに遊べない」「ロード時間が長い」といった声が数多く見受けられます。 携帯モードでも遊べる手軽さはSwitch版の大きな魅力ですが、快適なプレイ環境が保証されていない可能性があることは、購入前に留意しておくべきです。
プラットフォームによっては、ゲームの面白さを体験する以前の問題に直面する可能性があるため、特にSwitch版の購入を検討している方は、公式サイトなどでアップデートによる改善状況を確認することをお勧めします。
⑥オンライン対戦環境の課題
大幅にキャラクターが増え、魅力が増したバーサスモードですが、オンライン対戦環境にはいくつかの課題が残されています。 キャラクターゲームの対戦モードとしては非常に良くできていますが、本格的な対戦格闘ゲームとして見ると、改善の余地があるのが実情です。
キャラクターバランスの問題
40体以上のキャラクターが登場するため、どうしてもキャラクター間の性能差、いわゆる「キャラランク」が生まれてしまいます。 オンライン対戦では、強力な技を持つ一部のキャラクターに人気が集中しがちで、対戦カードがマンネリ化してしまうことがあります。 自分の好きなキャラクターで勝ちたいと思っても、性能差の壁に阻まれてしまうこともあるでしょう。 定期的なバランス調整アップデートがなければ、対戦環境が固定化してしまう懸念があります。
初心者が参入しにくいランクマッチ
本作のオンライン対戦には、実力に応じてマッチングが行われる「ランクマッチ」が用意されています。 しかし、発売から時間が経つにつれて、プレイヤー全体のレベルは向上していきます。 これからオンライン対戦を始めようとする初心者プレイヤーが、すでにゲームに習熟したプレイヤーとマッチングされてしまい、一方的に負け続けてしまうという状況も起こり得ます。 操作自体は簡単ですが、対人戦で勝つためには独自のテクニックや駆け引きが必要となるため、初心者が楽しみを見出す前に心が折れてしまう可能性も否定できません。
⑦ストーリー追体験におけるゲーム性の希薄さ
これは前作から指摘されていた課題ですが、本作でも完全には解消されていません。 ストーリーモードは、あくまでも「原作・アニメの追体験」に重きを置いており、「ゲームとしての遊びごたえ」という点では物足りなさが残ります。
アドベンチャーパートでは、吉原の遊郭や刀鍛冶の里といったフィールドを探索できますが、基本的には一本道のマップを進むだけで、自由度はほとんどありません。 ミニゲームなども用意されていますが、あくまでストーリーの箸休め的な要素に留まっています。
結果として、プレイヤーは豪華なムービーシーンを鑑賞し、合間に挟まれる戦闘をこなす、という受け身のプレイになりがちです。 インタラクティブなアニメ、と言えば聞こえは良いですが、ゲームならではの能動的な体験を期待していると、ゲーム性の希薄さに退屈してしまうかもしれません。
それでも『鬼滅の刃 ヒノカミ血風譚2』は買うべきか?
ここまで多くの惜しい点を挙げてきましたが、では本作は「買うべきではない駄作」なのでしょうか。 結論から言うと、決してそんなことはありません。 キャラクターゲームとしては、間違いなくトップクラスのクオリティを誇る作品です。 重要なのは、このゲームが「誰にとって最高の作品なのか」を理解することです。

こんな人におすすめ!
- 原作・アニメの熱狂的なファン 何よりもまず、『鬼滅の刃』という作品が大好きで、お気に入りのキャラクターを自分の手で動かしたい、という方には最高のゲームです。特に、柱全員を操作できるという点は、何物にも代えがたい魅力でしょう。
- ストーリーを美麗なグラフィックで追体験したい人 アニメの続きを、ゲームならではの迫力で体験したい方にもおすすめです。カットシーンのクオリティは折り紙付きで、物語への没入感は非常に高いです。
- 友達と気軽にワイワイ対戦したい人 難しい操作を覚える必要がなく、誰でも簡単に派手なバトルが楽しめるため、パーティーゲーム感覚で友人や家族と盛り上がりたい方には最適です。
こんな人には向かないかも…
- 長時間のソロプレイや重厚な物語を期待する人 前述の通り、ソロモードのボリュームは控えめです。数十時間遊べるようなRPGや、作り込まれたオープンワールドを求めている方には向きません。
- 奥深いシステムを求める本格的な対戦格闘ゲーマー 対戦ツールとして面白いことは間違いありませんが、競技性の高い対戦格闘ゲームと比較すると、システムの奥行きや戦略性は見劣りします。eスポーツのような高みを目指したい方には、物足りないかもしれません。
- ゲームとしての独創性を求める人 本作の核は、あくまでも原作再現です。ゲームシステム自体に斬新な驚きや、新しい遊びの提案といった要素は少ないです。
まとめ
『鬼滅の刃 ヒノカミ血風譚2』は、**「最高のファンアイテムではあるが、完璧なゲームではない」**という評価が最も的確でしょう。
キャラクターの再現度、グラフィック、アクションの爽快感といったキャラクターゲームに求められる要素は、前作から着実に進化し、極めて高いレベルでまとまっています。 ファンであれば、手に取って後悔することはないはずです。
一方で、コンテンツのボリューム不足や、一部の練り込みが甘いゲームデザイン、パフォーマンスの問題など、一つのゲーム作品として見た場合には、多くの「惜しい」点が存在するのも事実です。
これらの長所と短所を理解した上で、あなたがこのゲームに何を求めるのかを明確にすることが、購入後の満足度に繋がります。 このレビューが、あなたの判断の一助となれば幸いです。 そして、この作品の成功が、今後期待されるであろう「無限城編」のゲーム化へと繋がることを、一人のゲームファンとして心から願っています。