ゲーム評論家の桐谷シンジです。今回も多く寄せられてる質問にお答えしていきます。
この記事を読んでいる方は、遂にランクマッチで解禁された伝説のポケモン、ミュウツーのメガシンカ形態について気になっていると思います。特に、攻撃種族値が全ポケモン中トップクラスに跳ね上がる「メガミュウツーX」を使って、物理アタッカーとして無双したいと考えているのではないでしょうか。
しかし、実際に使用してみると「思ったより勝てない」「技が当たらない」という現実に直面し、その理由を探している最中かもしれません。
この記事を読み終える頃には、なぜ数値上のスペックが最強であるはずのメガミュウツーXがランクマッチで苦戦を強いられるのか、その構造的な欠陥と環境的な要因を含めた疑問が解決しているはずです。
- 攻撃種族値190を活かせない物理技ラインナップの貧弱さ
- 主力となる高威力必中格闘技インファイトの不採用
- アクションバトルにおけるサイコカッター等の判定の弱さ
- 環境トップのフェアリータイプに対する明確な不利属性
それでは解説していきます。
メガミュウツーXがランクマッチで抱える構造的な欠陥
『Pokémon LEGENDS Z-A』のランクマッチにおいて、多くのトレーナーがメガミュウツーXに期待を寄せました。それもそのはず、メガシンカすることによって得られる攻撃種族値は「190」という驚異的な数値です。これは本作に登場するポケモンの中でも群を抜いており、数値だけを見れば物理アタッカーの頂点に君臨しています。
しかし、実際にランクマッチの戦場で彼を使ってみると、その圧倒的なパワーを相手に叩き込むことがいかに難しいかを痛感することになります。最大の理由は、その恵まれたステータスを活かすための「技」が決定的に不足している点にあります。
攻撃種族値190の無駄遣いとなってしまう技構成
ポケモンバトルにおいて、種族値はエンジンの排気量のようなものです。しかし、どれだけエンジンが巨大でも、そのパワーをタイヤに伝えるトランスミッション(技)が貧弱であれば、車は速く走りません。メガミュウツーXはまさにこの状態に陥っています。
本来、攻撃種族値190という数値は、等倍相性の相手であっても一撃で葬り去るほどのポテンシャルを秘めています。しかし、物理技のラインナップを見渡した時、その威力を担保できる技があまりにも少ないのが現状です。多くのプレイヤーが採用を検討する「サイコカッター」や「ドレインパンチ」「れいとうパンチ」といった技は、威力や範囲、あるいは命中精度の面で何らかの欠抱えています。
必須級の格闘技「インファイト」を覚えない致命傷
メガミュウツーXが弱いとされる最大の要因、それは「インファイト」を覚えないという一点に集約されると言っても過言ではありません。
メガシンカによってタイプに「かくとう」が追加されるメガミュウツーXにとって、タイプ一致の高威力格闘技は生命線です。物理アタッカーの多くが採用する「インファイト」は、威力120かつ命中100という破格の性能を持ち、デメリットとして耐久が下がるものの、高速アタッカーにとっては「やられる前にやる」ための最高の武器となります。
しかし、メガミュウツーXに与えられた格闘技の選択肢は極めて限定的です。
物理格闘技の威力比較
| 技名 | 威力 | 命中 | 備考 |
|---|---|---|---|
| インファイト | 120 | 100 | 習得不可 |
| ばかぢから | 120 | 100 | 習得不可 |
| かわらわり | 75 | 100 | 威力不足 |
| ドレインパンチ | 75 | 100 | 回復効果はあるが決定力不足 |
| けたぐり | 不定 | 100 | 相手の重さ依存で不安定 |
表を見ていただければ分かる通り、実用的な高威力技を一切覚えません。「かわらわり」では威力75しかなく、種族値190の恩恵を受けても、耐久に振ったポケモンを突破するには火力が足りないのです。結果として、格闘タイプが付与されたメリット(タイプ一致技の威力補正)を活かしきれず、中途半端な火力で反撃を受けるケースが多発します。
アクション要素が浮き彫りにした物理技の判定問題
本作『Pokémon LEGENDS Z-A』のバトルシステムには、従来のような完全なターン制コマンドバトルとは異なり、位置取りや技の当たり判定といったアクション要素、あるいはそれに準ずるシビアな命中判定が存在しています。このシステムが、近接物理アタッカーであるメガミュウツーXにとって向かい風となっています。
サイコカッターが当たらないという悲劇
エスパータイプの主力物理技である「サイコカッター」。急所に当たりやすいという特徴を持つこの技ですが、本作の環境下では「空振り」のリスクが非常に高いことが確認されています。
実際に使用した際の挙動として、その場で剣を振るようなモーションが発生しますが、リーチが短く、相手のわずかな移動や回避行動によって簡単にスカされてしまいます。特殊技の「サイコキネシス」や「サイコブレイク」が相手をロックオンして高い精度でダメージを与えるのに対し、サイコカッターはプレイヤーの操作スキルや相手の動きに依存する部分が大きく、安定したダメージソースになり得ません。
「攻撃種族値が高いから物理型にする」というセオリーが、この「技が当たらない」という物理的な仕様によって崩壊しているのです。
しねんのずつきの命中不安とモーションの隙
もう一つのエスパー物理技候補である「しねんのずつき」についても同様の問題があります。威力は80とまずますですが、命中率が90と設定されており、ここぞという場面で外すリスクがつきまといます。
さらに本作の仕様上、「アイアンヘッド」のような頭突き系モーションは、相手に接近する必要があるため、攻撃を外した際や攻撃後の硬直に反撃を受けやすいというデメリットも抱えています。サイコカッターよりもさらに接近戦を強要されるため、リスクとリターンが見合っていません。
毒づきの採用価値と限界
対フェアリータイプ、特に環境に多いゼルネアスへの対策として「どくづき」の採用も検討されます。しかし、これもあくまで「ピンポイント対策」の域を出ません。
ゼルネアス対策としては有効ですが、他の多くのポケモンに対しては等倍以下になることが多く、技スロットを一つ消費するほどの汎用性があるかと言われると疑問が残ります。本来であれば、圧倒的なパワーで等倍相手もねじ伏せるのがメガミュウツーXの役割であるはずですが、サブウェポンに頼らざるを得ない現状が、その弱さを物語っています。
メガミュウツーXを使いこなすための苦肉の策
ここまでネガティブな要素を挙げてきましたが、それでも「どうしてもメガミュウツーXを使いたい」というトレーナーのために、現状考えられる最適解に近い運用方法を分析します。これらは「強いから使う」のではなく、「弱点を補うために仕方なく採用する」戦術であることを理解しておく必要があります。
ギガインパクトとじしんへの依存
物理技の判定の弱さと、インファイト不在の穴を埋めるために辿り着く結論が、「ギガインパクト」と「じしん」の採用です。
- ギガインパクト(ノーマル/物理) 威力150の高火力に加え、突進して相手にヒットするという性質上、判定が強く当たりやすい傾向にあります。反動で動けなくなるデメリットはありますが、「技が当たらなければ意味がない」という本作の物理環境において、確実にダメージを与えるための苦肉の策として採用されます。
- じしん(じめん/物理) 範囲攻撃であり、相手が多少動いても巻き込んでダメージを与えられる点が優秀です。威力100、命中100の安定感は、他の物理技の不安定さを補ってくれます。
本来、タイプ不一致であるこれらの技をメインウェポンに据えなければならない時点で、メガミュウツーXの構成がいかに歪であるかが分かります。ガブリアスやギャラドスに対して4倍弱点を突くために採用せざるを得ないなど、本来の「格闘・エスパー」というタイプを活かした戦い方からは程遠い運用を強いられます。
ビルドアップの有効性と限界
攻撃と防御を同時に一段階上げる「ビルドアップ」は、接近戦を余儀なくされるメガミュウツーXにとって相性の良い積み技です。耐久を上げつつ、不足しがちな火力を底上げできるため、理論上は強力です。
しかし、ランクマッチのスピード感において、悠長に積んでいる暇があるかという問題があります。効果時間が限定的である場合や、相手が特殊アタッカー(例:メガミュウツーY、ゼルネアス)であった場合、特防は上がらないため、積み技を使っているターンに致命傷を負うリスクがあります。
環境におけるタイプ相性の不遇さ
メガシンカによって追加される「かくとう」タイプ。これがランクマッチの環境において、メリットよりもデメリットとして大きくのしかかっています。
フェアリー環境における格闘タイプの脆弱性
現在のランクマッチ環境には、強力なフェアリータイプが蔓延しています。特に伝説のポケモンであるゼルネアスや、一般枠でも強力なフェアリー技を持つポケモンが多く存在します。
エスパー単タイプであれば等倍で受けられた「ムーンフォース」や「マジカルシャイン」が、格闘タイプが付いたことによって「効果抜群」となってしまいます。耐久力もそこそこあるメガミュウツーXですが、伝説戦の高火力フェアリー技を耐えきることは難しく、攻撃する前に落とされてしまうケースが後を絶ちません。
悪タイプへの打点不足という矛盾
本来、格闘タイプは悪タイプに対して有利を取れるはずです。イベルタルやバンギラスといった環境に多い悪タイプに対して、メガミュウツーXはタイプ相性上は有利です。
しかし、前述した通り「インファイト」のような強力な格闘技がないため、有利なはずの悪タイプに対しても決定打に欠けます。「かわらわり」で弱点を突いても倒しきれず、返しの「イカサマ」や飛行技で返り討ちに合うという、本末転倒な事態が発生します。「悪タイプに強いはずなのに、悪タイプを倒しきれない」という矛盾が、メガミュウツーXの評価を地に落としています。
メガミュウツーYおよび通常ミュウツーとの比較
結局のところ、メガミュウツーXの評価が低い最大の理由は、対抗馬である「メガミュウツーY」や「命の珠持ち通常ミュウツー」があまりにも優秀すぎる点にあります。
特殊アタッカーとしての安定感
メガミュウツーYは特攻種族値が非常に高く、特殊技をメインに戦います。特殊技には以下のメリットがあります。
- 命中と射程の安定性 「サイコブレイク」や「れいとうビーム」「10万ボルト」などの特殊技は、遠距離から確実に相手を捉えることができます。メガミュウツーXのように「空振り」のリスクに怯える必要がありません。
- 豊富な技範囲 「シャドーボール」「かえんほうしゃ」「きあいだま」など、サブウェポンの選択肢が広く、多くの相手に弱点を突くことができます。
- 被弾リスクの低さ 接近する必要がないため、相手の物理攻撃や「さめはだ」などの接触ダメージを受けるリスクを最小限に抑えられます。
命の珠による柔軟性
メガシンカ枠を使わない「命の珠ミュウツー」も非常に強力です。メガシンカ枠を他のポケモン(例:メガガルーラ、メガゲンガー等)に割けるという構築上のメリットに加え、命の珠による火力補正は凄まじく、技の打ち分けも可能です。
「物理技を使いたいからXにする」という動機以外でXを選ぶ理由が見当たらず、その物理技自体が不遇である以上、合理的なプレイヤーはYか通常ミュウツーを選択することになります。
形態別比較表
| 特徴 | メガミュウツーX | メガミュウツーY | 命の珠ミュウツー |
|---|---|---|---|
| 主体 | 物理 | 特殊 | 特殊 |
| 火力指数 | 非常に高い(数値上) | 極めて高い | 高い |
| 技の命中 | 不安(空振りあり) | 安定(ロックオン) | 安定 |
| 主要技 | 地震、ギガインパクト | サイコブレイク、波動弾 | サイコブレイク、冷ビ |
| 対フェアリー | 苦手(抜群を取られる) | 等倍 | 等倍 |
| 総合評価 | 扱いにくい | 最強クラス | 非常に強い |
まとめ
メガミュウツーXがランクマッチで弱いと言われる理由は、単にステータスが低いからではありません。むしろステータスは最強クラスです。しかし、その強大な力を活かすための環境が整っていないのです。
- 技の不在: 190の攻撃力を活かす「インファイト」などの高威力一致技がない。
- システムとの不調和: アクション性の高いバトルにおいて、物理技(サイコカッター等)の命中判定が弱すぎる。
- タイプ相性の逆風: 格闘タイプ追加により、環境トップのフェアリー技が弱点となり、生存率が低下している。
- 競合の強さ: 安定して高火力を出せるメガミュウツーYや通常ミュウツーの方が、バトルの仕様に合致している。
もしあなたが「どうしてもメガミュウツーXで勝ちたい」と思うなら、ギガインパクトや地震といった、タイプ不一致でも判定の強い技を駆使し、一撃離脱を心がけるいばらの道を歩むことになるでしょう。しかし、勝利を最優先するのであれば、今の環境ではおとなしく特殊型のミュウツーを使用することを強く推奨します。
物理最強の矛を持たされながら、その振り方を教えてもらえなかった悲しき戦士、それが現在のメガミュウツーXの姿なのです。




















