編集デスク ポケモンカードゲーム攻略ライターの橋本ユアです。 今回も多く寄せられてる質問にお答えしていきます。
この記事を読んでいる方は、「なぜ発売日にポケカが買えないのか」「転売ヤーはどうやって大量確保しているのか」といった疑問をお持ちではないでしょうか。
新弾が出るたびにSNSで上がる「瞬殺」の悲鳴。その裏側には「自動購入BOT」の存在が大きく関わっていると言われています。BOTという言葉は知っていても、具体的な手口や対策の実態を知る人は少ないはず。
今回は、業界で囁かれるトップ転売ヤーの仕入れ実態や、運営とのいたちごっこの現状について徹底解説します。敵を知ることで、市場を冷静に見るきっかけになればと思います。
この記事を読み終える頃には、BOTの正体と転売の実情についての疑問がすっきり解決しているはずです。
- 自動購入BOTの基礎知識と仕組みの理解
- ポケモンセンターオンラインでの大量購入の手口
- クレカ縛りやアクセス制限を突破する技術的背景
- ツール導入にかかるコストとリスクの実態
それでは解説していきます。
自動購入BOTとは何か?基礎から知るプログラムの正体
まず最初に、「BOT(ボット)」という言葉の意味をしっかりと理解しておきましょう。 なんとなく「自動で動くロボットみたいなもの?」というイメージを持っている方も多いですよね。 そのイメージ、あながち間違いではありません。
「BOT」という言葉の意味と語源
BOTとは、「Robot(ロボット)」の短縮形から生まれた言葉です。 インターネット上において、特定のタスクを自動化して繰り返し行うプログラムのことを指します。
人間が手動で行うと時間がかかったり、面倒だったりする作業を、コンピュータが高速かつ正確に代行してくれるツール、と考えると分かりやすいでしょうか。
例えば、私たちの身近なところにもBOTは存在しています。
- 検索エンジンのクローラー:Googleなどの検索順位を決めるためにサイトを巡回するロボット
- チャットボット:カスタマーサポートなどで、質問に対して自動で返答を返すシステム
- SNSの自動投稿:決まった時間に決まった文章を投稿するツール
これらは全て「BOT」の一種です。 しかし、ポケカの文脈で語られるBOTは、これらとは少し毛色が異なります。
X(旧Twitter)のインプレゾンビも同じ仕組み
最近、X(旧Twitter)を見ていると、バズっているポストのリプライ欄に、意味の分からない外国語や、AIが生成したような不自然な日本語の返信が大量についているのを見たことはありませんか?
あれは通称「インプレゾンビ」と呼ばれていますが、あれもまさにBOTの一種なんです。
彼らの目的は、インプレッション(表示回数)を稼いで、X社からの広告収益分配を得ること。 そのために、以下のような動きを自動化しています。
- アカウントの大量作成
- トレンド入りしている投稿の検知
- 自動でのリプライ投稿(AI文章生成など)
これを人間が手動でやるには限界がありますよね。 でも、プログラム(BOT)なら、24時間365日、文句も言わずに何千、何万という回数をこなし続けることができます。
ポケカの自動購入BOTも、根本的な仕組みはこれと同じ。 「目的」が「インプレッション稼ぎ」から「ポケモンカードの購入」に変わっただけなのです。
なぜ転売ヤーはBOTを使うのか?
答えは単純明快で、「人間の手では絶対に勝てないスピードと量」を実現するためです。
人気商品の発売時、オンラインサイトには数万、数十万というアクセスが殺到します。 私たち一般の購入者は、以下のような手順を踏みますよね。
- サイトにアクセスする(ここで繋がらないことも多い)
- 商品をカートに入れる
- 住所や支払い情報を入力する
- 購入ボタンを押す
慣れている人でも、この工程には数十秒から数分かかります。 しかし、BOTを使えば、これらの工程をコンマ数秒で完了させることが可能です。
また、人間は一度に一つの画面しか操作できませんが、BOTなら同時に100個、1000個というブラウザを立ち上げて、並行して購入処理を行うことができます。
これが、トップ転売ヤーが「爆益」を出すためのカラクリの第一歩なのです。
トップ転売ヤーの仕入れ実態|数万個の在庫を抱える手口
では、実際にトップクラスの転売ヤーたちは、どのようにしてBOTを駆使し、商品を「刈り取って」いるのでしょうか。 ここでは、特に利用者が多い「ポケモンセンターオンライン」を例に、その手口の噂と実態に迫ります。
1人で1万BOX?噂される驚愕の購入数
信じがたい話ですが、業界の噂では「1人で1万BOX以上を購入した」という事例も耳にします。 1BOXが5,400円だとしても、単純計算で5,400万円以上の仕入れ額になります。
一般の感覚からすると、「そんなに買ってどうするの?」「在庫リスクはないの?」と恐怖すら感じますが、彼らにとってはそれもビジネスの一環。 確実に利益が出ると分かっている商品であれば、資金を湯水のように投入します。
最近の例で言えば、新弾セットなどが発売された際、X(旧Twitter)などで、部屋一面に段ボールが積み上げられた写真をアップしているアカウントを見かけることがありますよね。 あれこそが、BOTによる大量購入の証拠と言えるでしょう。
無限アカウント生成の恐怖
ポケモンセンターオンラインなどのECサイトでは、通常「お一人様1点限り」といった購入制限が設けられています。 普通に考えれば、どんなに頑張っても1個しか買えません。
しかし、BOT使いにとって、この制限はあってないようなものです。 なぜなら、彼らは「アカウントを無限に生成するBOT」も併用しているからです。
- メールアドレスの量産:使い捨てメールアドレスや、ドメインを取得して無限にエイリアスを作成。
- 住所の表記ゆれ:例えば「1丁目1番地1号」を「1-1-1」「1の1の1」「一丁目一番地一号」のように書き換えて、システム上は「別の住所」として認識させる。
- 電話番号の調達:格安SIMやSMS認証代行サービスを利用。
これらを組み合わせて、数百、数千という「架空の別人(あるいは家族や親戚を装ったアカウント)」を作り出します。 1アカウントで1個しか買えなくても、1万アカウントあれば1万個買える。 これが彼らの論理です。
「待機室」をすり抜ける技術
人気商品の発売時、サイトにアクセスすると「ただいま大変混雑しております。このままお待ちください」という待機画面(ウェイティングルーム)が表示されることがありますよね。
これは、サーバーダウンを防ぐために、一度にサイトに入れる人数を制限する仕組みです。 私たち一般ユーザーは、この画面が表示されたら、ひたすら画面を見つめて待つしかありません。
しかし、高度なBOTの中には、この待機列の仕組みを解析し、正規の手順をスキップして直接購入画面(のエンドポイント)にアクセスを試みたり、複数のセッションを同時に走らせて、一番早く繋がりそうな回線を優先させたりするものも存在すると言われています。
もちろん、サイト側も対策を強化していますが、BOT開発者側も常にアップデートを繰り返し、新たな抜け道を探し続けているのが現状です。
コンビニ払いは悪なのか?支払い方法を巡る攻防
BOTによる大量購入が話題になるたびに、SNSで議論になるのが「コンビニ払いを廃止しろ」という意見です。 これについて、なぜ議論になるのか、そして本当に効果があるのかを深掘りします。
大量の領収書画像の正体
X(旧Twitter)などで、長いレシートや大量の領収書の束を見せびらかす投稿を見たことはありませんか? あれは、「コンビニ払い」で決済した証拠としてアップされていることが多いです。
なぜBOT使いがコンビニ払いを好むのか。 理由は大きく分けて2つあります。
- アカウント作成のハードルが低い クレジットカード情報は、不正利用防止の観点からチェックが厳しく、同じカードを複数のアカウントで使い回すとすぐにBAN(利用停止)されるリスクがあります。一方、コンビニ払いはその時点での審査が緩い傾向にあります。
- 支払いの猶予がある 注文が確定してから支払いまでに数日の猶予があるため、その間に相場を確認し、利益が出なさそうなら「支払わずにキャンセル(未払いキャンセル)」するという、倫理的にアウトな手法が使えてしまいます。
こうした背景から、「コンビニ払いを廃止すれば、BOTは死滅する」という声が多く上がるのです。
クレカ縛りでも止まらない理由
では、ポケモンセンターオンラインが全商品を「クレジットカード決済のみ」にしたら、BOTはいなくなるのでしょうか? 残念ながら、答えは「NO」です。
トップレベルのBOT使いは、クレジットカード縛りになっても対応策を持っています。 その代表的な手法が「バーチャルカード」や「デビットカード」の大量発行です。
バーチャルカードとは?
物理的なプラスチックカードを発行せず、アプリやWEB上でカード番号のみを発行するサービスです。 最近では、1つのサービス内で複数のカード番号を持てるものや、使い捨ての番号を発行できるサービスも増えています。
デビットカードの活用
クレジットカードは審査が必要ですが、銀行口座に紐づくデビットカードは審査が比較的緩く、未成年でも作れるものが多いです。 これらを大量に用意することで、 「1アカウントにつき1枚の異なるカード番号」 を用意し、システム側の「同一カード検知」を回避します。
つまり、コンビニ払いを廃止したとしても、「カード番号を1万個用意すればいいだけ」と考えるのが、彼らトップ層の思考回路なのです。
メーカーが抱えるジレンマ
「じゃあ、もっと厳しく審査すればいいじゃない!」と思いますよね。 しかし、メーカー(ポケモン社)側にも、あまりに厳しくできない事情があります。
ポケモンカードはあくまで「子供向けのおもちゃ」です。 メインのターゲットである小学生や中学生は、クレジットカードを持っていません。 また、クレジットカードを持っていない家庭や、諸事情で作れない人もいます。
「全ての人にポケモンカードを届けたい」 というメーカーの理念において、支払い方法を過度に限定することは、本来届けたい層を切り捨てることにも繋がりかねません。
転売ヤーを排除したいが、純粋なファンや子供たちが買えなくなるのは本末転倒。 このジレンマの中で、メーカーはギリギリの調整を強いられているのです。
いたちごっこの最前線|対策と対応の終わりなき戦い
メーカー側も手をこまねいているわけではありません。 日々、BOT対策システムを導入し、不正なアクセスを弾こうとしています。 しかし、BOT側も即座に対応してきます。まさに「いたちごっこ」です。
IPアドレス制限とVPNの壁
Webサイトにアクセスすると、「IPアドレス」というインターネット上の住所のような情報が相手に伝わります。 同じIPアドレスから短時間に大量のアクセスがあれば、サーバーは「これは攻撃だ」あるいは「BOTだ」と判断し、そのIPを遮断(BAN)します。
これに対するBOT側の対抗策が「VPN」や「プロキシ」です。
- VPN(Virtual Private Network):通信を暗号化し、別の場所を経由してアクセスすることで、本来のIPアドレスを隠す技術。
- プロキシ(Proxy):代理サーバーを経由してアクセスする仕組み。
BOT使いは、世界中に存在する数万、数億というプロキシサーバーと契約しています。 1回目のアクセスは日本の東京から、2回目は大阪から、3回目はアメリカから…といったように、アクセスごとに経由地を変えることで、 「1人の人間が大量にアクセスしている」のではなく、「世界中の別々の場所から、たくさんの人がアクセスしている」ように偽装するのです。
これにより、IPアドレスによる単純なブロックはほとんど意味をなさなくなっています。
CAPTCHA(画像認証)の突破方法
「私はロボットではありません」というチェックボックスや、信号機や横断歩道の写真を選ばせるパズル。 あれを「CAPTCHA(キャプチャ)」と呼びます。 BOT対策の代名詞とも言える存在ですね。
以前はこれで多くのBOTを防げましたが、現在はこれも突破されています。
自動突破AIの進化
AI(人工知能)の画像認識能力が向上し、簡単なパズルならAIが自動で解いてしまうツールが登場しています。
物理的な突破(人力解除サービス)
これが一番驚きなのですが、AIでも解けないような難しいパズルが出た場合、どうすると思いますか? なんと、裏で人間が解いているのです。
世界には「CAPTCHA解除代行サービス」というものが存在します。 BOTがパズルに直面すると、その画像データを瞬時にAPIを通じて海外(人件費の安い国など)のオペレーターに送信します。 そこで待機している数百人のスタッフが、送られてきたパズルを手動で解き、その正解データをBOTに送り返すのです。
この間、わずか数秒。 「自動購入」と言いつつ、実はその裏で「大量の人海戦術」が使われている。 これが、どんなに難しい認証を導入しても突破されてしまうカラクリの一つです。
ブラウザ指紋(フィンガープリント)対策
最近の高度な対策として、IPアドレスだけでなく、アクセスしているパソコンの画面解像度、OSのバージョン、フォントの種類、バッテリー残量などの情報を組み合わせて個体を識別する「ブラウザフィンガープリント」という技術があります。
しかし、これに対しても「アンチディテクトブラウザ」というツールが使われます。 これは、ボタン一つで「Macを使っている20代男性風のブラウザ情報」「Windowsを使っている主婦風のブラウザ情報」といったように、デジタルの指紋を偽造できる専用ブラウザです。
ここまで来ると、もはやサイバーセキュリティ戦争の領域です。
BOT導入のリアル|コストとリスクの裏側
ここまで読むと、「BOTを使えば誰でも簡単に大儲けできるのでは?」と思うかもしれません。 しかし、現実はそう甘くありません。 トップ転売ヤーが口を揃えて言うのは、「コストと手間が半端ではない」ということです。
バカにならない維持費
BOTを稼働させるには、実は莫大な経費がかかります。
| 項目 | 概算コスト(月額) | 備考 |
|---|---|---|
| BOTツール本体 | 数万円〜数十万円 | 買い切りではなく月額課金制(サブスク)が主流。人気ツールはプレ値で取引されることも。 |
| サーバー代 | 数千円〜数万円 | 24時間安定して稼働させるための高性能なクラウドサーバーが必要。 |
| プロキシ代 | 数万円〜数十万円 | 速度が速く、BANされていない高品質なプロキシは非常に高価。使った通信量に応じて課金される従量制が多い。 |
| アカウント作成費 | 変動あり | SMS認証用の電話番号維持費や、ドメイン代など。 |
| 決済手数料 | 変動あり | バーチャルカードの発行手数料など。 |
例えば、5,400円のBOXを1つ確保するために、これらの経費を割り振ると、実質的な仕入れ値は7,000円を超えてしまうことすらあります。 定価で買えても、経費を引くと利益が出ない、あるいは赤字になるリスクと常に隣り合わせなのです。
技術的な知識と労力
「ツールを買ってきてスイッチオン!」で稼げるほど簡単ではありません。 各サイトの仕様変更に合わせて、設定を細かく調整する必要があります。
- 「今回はこのプロキシが弾かれたから、別の業者に変えよう」
- 「待機室のURLパターンが変わったから、コードを書き換えよう」
- 「決済エラーが出るから、カードの種類を変えよう」
こうしたトライ&エラーを、発売日の数分前、あるいは最中にリアルタイムで行う必要があります。 プログラミングやネットワークの知識がない素人が手を出しても、設定がうまくいかずに1つも買えず、ツール代だけが無駄になる「ボウズ(収穫ゼロ)」のパターンが非常に多いのです。
在庫を抱える恐怖
そして最大のリスクは、**「ポケカバブルの崩壊」や「再販による相場下落」**です。
BOTで1000個注文できたとしましょう。 しかし、その商品の相場が定価割れしたら? 1個あたり500円の赤字だとしても、1000個で50万円の損失です。 さらに、大量の在庫を保管する倉庫代、発送する手間もかかります。
最近のポケカ市場は、メーカーの増産体制により、以前ほどの「何でもプレ値」状態ではなくなってきています。 BOTを使って大量に確保したものの、売り捌けずに爆死する転売ヤーも増えているのが現状です。
まとめ
今回は、ポケモンカードを取り巻く「自動購入BOT」と「トップ転売ヤー」の仕入れの実態について、技術的な背景やコスト面も含めて徹底的に解説しました。
改めて、今回の記事のポイントを整理します。
- BOTの正体は、購入プロセスを高速・大量に自動化するプログラムであり、その仕組みはインプレゾンビなどと同じである。
- トップ層は、IP偽装、CAPTCHA突破、クレカ大量発行など、あらゆる手段でメーカーの対策をすり抜けている。
- メーカー側も対策を講じているが、子供や一般ユーザーへの配慮もあり、完全な排除は難しいジレンマを抱えている。
- BOT運用には多額のコストと高度な知識が必要であり、決して「楽して稼げる魔法のツール」ではない。
「転売ヤー憎し」という感情は、私を含め多くのプレイヤーが持っているものです。 しかし、彼らが使っている手口や、それに対するメーカーの苦労を知ることで、また違った視点が見えてきたのではないでしょうか。
メーカーは不正アクセス者に対して、法的な措置(業務妨害など)を含めて厳しく対応する姿勢を見せ始めています。 私たち一般ユーザーにできることは、怪しい転売品には手を出さず、正規のルートで購入する努力を続けること、そしてメーカーの対策を信じて待つことかもしれません。
この記事が、今のポケカ市場の現状を理解する一助になれば幸いです。
筆者情報
橋本ユア フリーランスのトレカ攻略ライター。慶應大学卒業後、大手出版社を経て、現在に至る。幅広いトレカに携わるが、主にポケカ、遊戯王、ワンピ、デュエマを得意とする。特にポケカが好きで、総課金額は1,000万円以上。自称リーリエの旦那。






















