編集デスク ゲーム攻略ライターの桐谷シンジです。今回も多く寄せられてる質問にお答えしていきます。
この記事を読んでいる方は、待望のナンバリング最新作『仁王3』を購入すべきか、あるいはクリア後の評価がどうなっているのか気になっていると思います。
死にゲーとしての完成度、前作からの進化点、そして一部で囁かれる「使い回し」の真相。これらは決して安くないパッケージ価格を考えると、購入前に必ず押さえておきたいポイントでしょう。特に、本作はオープンフィールド化という大きな挑戦をしているため、その出来栄えは気になるところです。
この記事を読み終える頃には、仁王3があなたにとって「買い」な作品なのか、それとも「様子見」すべき作品なのか、その疑問が解決しているはずです。
- 新要素「侍・忍者切り替え」によるアクションの進化
- オープンフィールド化に伴う没入感と弊害
- 前作『仁王2』と比較したストーリーの希薄さ
- ビルド構築必須の高難易度バランスとボスの挙動
それでは解説していきます。
仁王3 クリア後の総評:正統進化か、大型DLCか
結論から申し上げます。『仁王3』は、間違いなく「面白い」作品です。 私自身、クリアまで時間を忘れて没頭しましたし、エンドコンテンツの収集要素に現在進行形で酔いしれています。コーエーテクモゲームスが誇る「戦国死にゲー」の金字塔として、そのクオリティは担保されています。
しかし、手放しで絶賛できるかといえば、いくつかの懸念点が存在するのも事実です。 本作を端的に表現するならば、「超大型の有料アップデート」あるいは「仁王2.5」という表現がしっくりくるかもしれません。
前作プレイヤーへの親和性と新規層への壁
『仁王2』を遊び尽くしたプレイヤーであれば、本作は間違いなく楽しめます。 基本的な操作感、UI、育成システム、そして敵のモーションに至るまで、多くの要素が前作を踏襲しているからです。
一方で、これが完全な新規タイトルとして見た場合、あるいは『仁王』シリーズ未経験者が最初に触れる作品としては、少々ハードルが高い可能性があります。 その理由は、システムがより複雑化し、かつ序盤から「仁王のセオリー」を知っている前提の調整がなされている部分が見受けられるためです。
アクションシステムの刷新と評価
本作最大の特徴であり、評価の分かれ目となるのがアクションシステムの変更です。
「侍」と「忍者」のスタイル切り替え
従来の「構え(上・中・下)」に加え、本作では「侍スタイル」と「忍者スタイル」の切り替えが導入されました。これは『Wo Long: Fallen Dynasty』などの他作品での実験的な試みを、仁王流に昇華させたものと考えられます。
侍スタイル
- 特徴: 正面からの殴り合いに特化。
- 防御手段: 「ジャストガード」が主体。敵の攻撃を弾き、体勢を崩して高火力を叩き込む。
- メリット: 火力が高く、重厚な鎧を着込んでのゴリ押しも可能。
- デメリット: 機動力に欠け、緊急回避が難しい。
忍者スタイル
- 特徴: 機動力と搦手(からめて)を駆使した戦法。
- 防御手段: 「ジャスト回避」が主体。敵の攻撃をギリギリでかわし、隙を突く。
- メリット: 動きが軽快で、飛び道具や忍術などのギミックを扱いやすい。
- デメリット: 一撃の軽さ、打たれ弱さ。
この2つのスタイルは、戦闘中に「転身」アクションでシームレスに切り替え可能です。 敵の動きに合わせて「ここは侍で受ける」「ここは忍者で避ける」といった判断が求められるため、操作の忙しさは増しましたが、それに見合う爽快感と戦略性が生まれています。特に忍者スタイルでの回避行動は、従来作よりもスタイリッシュな立ち回りを可能にしており、アクションゲームとしての進化を感じさせる部分です。
複雑化する操作と学習コスト
新システムの導入により、プレイヤーが覚えるべき操作は増加しました。 コンボルート、ジャストタイミングの判定、スタイルの切り替え管理、そして従来通りの残心や気力管理。これらを無意識レベルで遂行できるようになるまでは、かなりの修練が必要です。
特にボス戦では、敵の挙動を覚える「死に覚え」に加え、こちらの最適な行動パターンを構築する「ビルド構築」の思考も必要となります。 『SEKIRO』のような「弾き」の快感を求めると侍スタイルに、『Bloodborne』のような「回避」のステップワークを求めると忍者スタイルに寄ることになりますが、本作はその両方を使いこなすことが攻略の鍵となります。
オープンフィールド化された戦国・幕末世界
シリーズ初の試みである「オープンフィールド」については、賛否両論のポイントです。
時代の空気を吸う「探索」の楽しさ
従来のミッション選択型から、地続きのフィールドを探索する形式に変わったことで、没入感は向上しました。 有名な史跡や城郭がシームレスに繋がっている様子は、歴史好きにはたまらない要素です。戦国時代から幕末にかけての日本の風景が、美麗なグラフィックで描かれています。
馬を呼び出して荒野を駆け抜けたり、隠された祠を見つけたりする探索要素は、一本道になりがちだった従来のマップ構成に対する良いアクセントになっています。
「浄化」システムの視覚的変化の乏しさ
一方で、フィールドの環境変化については不満が残ります。 本作には「穢れた土地を浄化する」という要素がありますが、浄化前と浄化後で景観があまり代わり映えしません。
- 浄化前: 毒々しい色合い、クリスタル(霊石)のような障害物。
- 浄化後: 空は晴れるが、フィールド上のクリスタルなどの「異物」は残ったまま。
「地獄を浄化したのだから、もっと美しい景色が見たい」というプレイヤーの欲求に対し、ゲーム的な都合(移動制限や壁としての役割)が優先されてしまっている印象です。 クリア後も代わり映えのしない景色の中を探索することになるため、オープンワールドゲーム特有の「世界を救った後の平和な世界を歩く」というカタルシスは薄めです。
良い点:深化するハクスラとビルド構築
『仁王』シリーズの真骨頂であるハクスラ(ハック・アンド・スラッシュ)要素は、本作でも健在どころか、より深化しています。
多様性を許容するビルドの深み
「仁王2つほどのぶっ壊れビルド」は(現時点では)発見されていませんが、それでもビルドの自由度は極めて高いです。
- 特化型: 特定のステータスや武器種に極振りする構成。
- 万能型: 侍と忍者の両方を活かすバランス構成。
- 属性特化: 陰陽術や属性武器を駆使する構成。
単にステータスを上げるだけでなく、装備品の特殊効果(OP)、セット効果、守護霊の組み合わせによって、プレイスタイルが劇的に変化します。 「敵が強すぎる」と感じた時、アクションの腕を磨く以外に「装備と構成を見直す」というRPG的な解決策が用意されているのは、本作の大きな魅力です。
ただし、これは裏を返せば「知識がないと詰む」ということでもあります。 適当な装備で挑むと、ボスのスーパーアーマーと超火力に圧倒され、理不尽さを感じることになるでしょう。外部の攻略情報やコミュニティの情報を参照し、シナジーを理解することが、クリアへの近道となります。
魅力的なキャラクターと妖怪デザイン
コーエーテクモのお家芸であるキャラクター造形は、今回も素晴らしい出来栄えです。
- 主人公: 渋い「おっさん」キャラとしての魅力。顔の皺や表情の作り込みが深く、歴戦の猛者感が漂います。
- 妖怪: 不気味さと美しさが同居するデザイン。特に女性型の妖怪(火車のようなポジション)は、妖艶さと可愛らしさを兼ね備えており、プレイヤーの印象に強く残ります。
悪い点:ストーリーの没入感とアセットの使い回し
ゲームプレイの面白さとは裏腹に、物語や新鮮味という点では厳しい評価をせざるを得ません。
「オムニバス形式」による物語の希薄化
『仁王2』では、藤吉郎(豊臣秀吉)という一人の人物の生涯を追い、主人公との関係性が変化していく様がドラマチックに描かれていました。 しかし、『仁王3』は時代背景が広く設定されているせいか、物語が断片的になりがちです。
- 展開: 有名な武将や偉人に会う → 挨拶もそこそこにボス戦 → 次の時代・場所へ。
- 印象: まるで特撮ヒーロー映画の「歴代キャラ集合回」のような、顔見世興行的な展開。
各時代のキャラクターとの絡みが薄いため、感情移入する前に別れが来てしまいます。 「歴史上の偉人が妖怪と戦っている」というシチュエーション自体は燃えますが、一本の芯の通った大河ドラマのような重厚感は、前作に劣ると言わざるを得ません。
既視感の強いボスとモーション
シリーズファンが最も気にするのが「使い回し」の問題です。 残念ながら、本作の敵キャラクターやモーションの多くは、前作『仁王2』からの流用、あるいはマイナーチェンジです。
- 雑魚敵: 餓鬼や妖鬼など、見慣れた顔ぶれが続投。
- ボス: 一部のボスは、外見や攻撃パターンが前作のボスと酷似している。
- モーション: プレイヤー側の武器モーションも、多くが前作ベース。
もちろん、完成されたモーションを変える必要がないという意見もありますが、ナンバリング最新作としてフルプライスで購入したユーザーとしては、「新鮮な驚き」が不足していると感じるのも無理はありません。 特に「人型から妖怪に変身するボス」のパターンは頻出であり、攻略法も似通ってくるため、中盤以降は作業感が出てしまう可能性があります。
難易度と視認性の問題
「死にゲー」としての難易度調整において、いくつか理不尽に感じる点が存在します。
エフェクト過多による視認性悪化
PS5世代のグラフィックになり、エフェクトがより派手になりました。 しかし、これが狭い場所での戦闘と相まって、致命的な視認性の悪さを引き起こしています。
- 問題点: 派手なパーティクルや爆発エフェクトで、敵の予備動作が見えない。
- 結果: 視界が遮られている間に、即死級の「掴み攻撃」や「高速突進」を食らう。
特にボスの掴み攻撃は、予備動作が短いうえに追尾性能が高く、さらにエフェクトで見えにくいという三重苦です。カメラワークが壁に引っかかって自身のキャラが見えなくなる現象も散見され、理不尽な死に繋がることがあります。
超高速化するボス挙動
本作のボスは、プレイヤーの機動力向上に合わせてか、異常なほどの高速移動(ほぼワープ)や連撃を行ってきます。 『仁王2』では「見てから回避・ガード」が間に合うバランスでしたが、『仁王3』の一部ボスは「予備動作を見てからでは遅い」というレベルの反射神経、あるいは完全なパターン構築を要求してきます。
瞬間的な気力削り能力も高く、一瞬のミスで気力切れ(喘ぎ状態)になり、そこから復帰する間もなく落命するパターンが多いです。
前作『仁王2』との比較まとめ
ここで、前作『仁王2』と本作『仁王3』の要素を比較してみましょう。
| 比較項目 | 仁王2 | 仁王3 |
|---|---|---|
| ストーリー | 秀逸。一人の傑物との友情と決別を描く大河ドラマ。 | やや希薄。オムニバス形式で各時代の繋がりが薄い。 |
| アクション | 妖怪技と特技カウンターが強力。完成度が高い。 | 侍/忍者切り替えによる深み。操作は複雑化。 |
| マップ | ミッション選択型。入り組んだ構造。 | オープンフィールド+ダンジョン。探索要素あり。 |
| 難易度 | 高いが、救済措置(すけびと等)が豊富。 | 更に高い。敵の速度上昇、ビルド依存度アップ。 |
| 新鮮味 | 前作からの正統進化として驚きがあった。 | 前作ベースの安定感。既視感は強い。 |
| ボリューム | 本編+DLCで膨大。 | 本編だけでもかなりの長さ。周回前提。 |
それでも『仁王3』をプレイすべき理由
ここまで厳しい意見も述べましたが、それでも私が本作をプレイし続ける理由は明確です。 それは、「自分だけの最強の侍(忍者)を作り上げる過程」が、他の追随を許さないほど面白いからです。
坂本龍馬とのサブミッションに見る「光」
批判したストーリー面ですが、部分的には光るものがあります。 特に幕末の英雄、坂本龍馬に関連するサブミッションは出色の出来でした。 メインストーリーのような派手なムービーはありませんが、激動の時代を生きた男の「ふとした日常」や「苦悩」が垣間見える演出は、歴史ファンならずとも心に響くものがあります。 こういった、テキストや短い会話劇で魅せる「行間を読む」楽しさは、本作の隠れた魅力と言えるでしょう。
エンドコンテンツの沼
クリア後の世界こそが、仁王の本番です。 より良い装備を求めて高難易度ミッションを周回し、ステータスの数値を1上げるために悩み、理想の特殊効果が付いた小物をドロップした瞬間の脳汁が出る感覚。 この「ハクスラ×死にゲー」の中毒性は、シリーズを通して一貫しており、本作でもその吸引力は衰えていません。
まとめ:人を選ぶが、ハマれば一生遊べる作品
『仁王3』は、前作の完成されたシステムをベースに、オープンフィールドや新アクションという要素を盛り込んだ意欲作です。 しかし、その土台があまりに『仁王2』に似すぎているため、新鮮さを求めるプレイヤーには「使い回し」と映る諸刃の剣でもあります。
- おすすめできる人: 『仁王2』が大好きで、もっとあの世界で戦いたい人。ハクスラでのビルド構築が大好物な人。高難易度アクションに飢えている人。
- おすすめできない人: ストーリー重視の人。アクションゲームが苦手で、救済措置に頼りたい人(今作は救済があってもキツイ)。前作と全く違う体験を求めている人。
総じて、本作は「傑作のガワを被った、更なる高難易度への挑戦状」です。 理不尽な死を乗り越え、試行錯誤の末に強敵を打ち倒した時の快感は、何物にも代えがたいものがあります。 もしあなたが、幾多の落命を乗り越える覚悟を持っているのなら、この戦国・幕末の魔境へ足を踏み入れる価値は十分にあります。
筆者情報
桐谷シンジ フリーランスのゲーム攻略ライター。慶應大学卒業後、大手出版社を経て、現在に至る。幅広いゲームに携わるが、主にRPG/FPS/サンドボックス系のゲームを得意とする。最近の悩みは趣味の時間が取れず、積みゲーが100作品を超えたこと。




















