編集デスク ゲーム攻略ライターの桐谷シンジです。今回も多く寄せられてる質問にお答えしていきます。
この記事を読んでいる方は、「最新作のモンハンワイルズをプレイする前に、過去作で語り草となっている伝説的な強モンスターたちの系譜を知っておきたい」「古参ハンターたちがトラウマだと語る、あのモンスターの全盛期はどれほど恐ろしかったのか」といった、シリーズの歴史における「強さの変遷」が気になっていると思います。
モンハンシリーズは長い歴史の中で、パッケージモンスターやラスボスではないにも関わらず、理不尽なまでの戦闘力でハンターをキャンプ送りにし続けてきた「一般モンスター」が存在します。それらは時に裏ボスと呼ばれ、畏怖されてきました。
この記事を読み終える頃には、歴代作品を彩った「真の強敵たち」の理屈を超えた強さの秘密と、それらが現在の作品にどう影響を与えているかの疑問が解決しているはずです。
- ポータブル2時代のティガレックスが持つ「異次元の当たり判定」の恐怖
- トライGや4Gなどの「G級作品」で猛威を振るった強化個体の理不尽な仕様
- ソロ討伐を拒絶するかのような体力設定や即死コンボの歴史的変遷
- 最新作ワイルズへ繋がるモンスターの進化と調整の歴史的背景
それでは解説していきます。
歴代最強の呼び声高い「絶対強者」ティガレックス(MHP2・MHP2G)
シリーズ屈指の人気モンスターであり、現在では「良モンス(戦っていて楽しいモンスター)」として定着しているティガレックス。しかし、彼が初登場した『モンスターハンターポータブル 2nd(MHP2)』および『2nd G(MHP2G)』の時代において、その評価は「理不尽な暴力の化身」でした。
多くのハンターが「ティガレックスが一番強かったのはこの時代だ」と口を揃えます。なぜ、当時のティガレックスはそこまで恐れられたのでしょうか。現代のハンターには信じられないような仕様の数々を解説します。
予備動作なしの恐怖と「亜空間判定」
当時のティガレックスを最強たらしめていた最大の要因は、現在の作品とは比較にならない「隙のなさ」と「当たり判定の厳しさ」にあります。
まず、攻撃の予備動作が極端に短いことが挙げられます。現代のモンハン、例えば『モンスターハンターライズ:サンブレイク』などでは、モンスターが大技を繰り出す前には明確な予備動作があり、ハンターはそれを見てカウンターを合わせたり、位置取りを調整したりすることが可能です。しかし、MHP2時代のティガレックスにはそれが通用しませんでした。
特に脅威だったのが「突進」と「回転攻撃」です。当時の突進は、始動のモーションが見えた瞬間にはもう攻撃判定が発生しているレベルの速さでした。さらに恐ろしいのが、ハンターの間で「亜空間判定」や「四角い判定」と揶揄された当たり判定の広さです。
ティガレックスの見た目上の体が通り過ぎていても、なぜか空中に判定が残っており、回避したはずのハンターが吹き飛ばされるという現象が頻発しました。全身が凶器と化しており、前足や尻尾だけでなく、体の側面や上空にまで判定が及んでいたのです。当時のゲームエンジンやハードウェアの制約もあったとはいえ、この理不尽な判定は近接武器、特にガードのできない武器種にとって悪夢そのものでした。
| 特徴 | MHP2/2G時代 | 現代(Rise/Sunbreak等) |
|---|---|---|
| 突進の追尾 | 直角に近い角度で正確に曲がる | 緩やかにカーブする程度 |
| 攻撃判定 | 全身&周囲空間に判定あり(亜空間) | 見た目通りに精密化 |
| 怒り状態 | 速度上昇が著しく、手がつけられない | 速度は上がるが隙も生まれる |
| ハンターの機動力 | もっさり挙動、回避後の硬直大 | 翔蟲や迅速な回避が可能 |
トラウマを植え付ける演出と「雪山エリア8」の悲劇
ゲームデザインの面でも、ティガレックスはプレイヤーに絶望を与えるよう設計されていました。その象徴が、集会所星1クエスト「忍び寄る気配」です。
本来、ポポのタンを納品するだけの平和なクエストとして受注されるこの任務ですが、開始直後のエリアで突如としてティガレックスが乱入してきます。当時の初心者ハンターは、初期装備のまま絶対強者と対峙することになり、一撃で体力の半分以上を奪われる恐怖を味わいました。この「顔見せクエスト」の手法は後のシリーズでも踏襲されますが、そのインパクトの大きさにおいてMHP2を超えるものはないと言われています。
そして、村クエスト星5の緊急クエスト「絶対強者」では、多くのハンターが「雪山エリア8」の洗礼を受けました。 このエリアは洞窟状になっており、非常に狭いのが特徴です。さらに、このクエストではエリア7への通路が岩で封鎖されているため、逃げ場が極端に制限されています。
狭いエリアで繰り広げられるティガレックスの突進は、回避スペースが物理的に存在しないため、実質的な「ハメ技」となります。壁際に追い詰められ、起き上がりに突進を重ねられてキャンプ送りになる。この「エリア8のハメ殺し」は、多くのPSPを投げさせた要因となりました。
地獄の2頭同時狩猟「異常震域」
上位への昇格試験やG級クエストとして登場した「異常震域」もまた、裏ボス級の難易度を誇りました。これはティガレックス2頭を雪山で狩猟するクエストですが、問題はその合流率の高さです。
当時のモンスターAIは、ハンターを発見すると執拗に追いかける傾向があり、こやし玉の効果も現在ほど即効性がありませんでした(発見状態では効果が薄い仕様)。そのため、狭い雪山のエリア6・7・8付近で2頭が合流すると、画面中がティガレックスの突進と岩飛ばしで埋め尽くされ、まさに阿鼻叫喚の地獄絵図となります。
当時の攻略法として、「モドリ玉」を調合分まで持ち込み、合流された瞬間にベースキャンプへ退避して分断を待つという、消極的かつ精神力を削られる戦法が推奨されていたことからも、その異常な強さがうかがえます。
ソロ討伐不可能の壁「峯山龍ジエン・モーラン」(MH3)
『モンスターハンター3(トライ)』で初登場した古龍種、ジエン・モーラン。広大な砂海を泳ぐ巨大なクジラのような姿をしたこのモンスターは、通常の狩猟とは全く異なる「撃龍船」を用いた特殊な戦闘形式で知られています。
後の作品では調整が入り、ソロでも十分に討伐可能なモンスターとなりましたが、初出であるWii版『MH3』における上位ジエン・モーランは、文字通り「桁違い」の強さを持っていました。
絶望的な体力設定「HP37,000」の壁
『MH3』における上位ジエン・モーランの最大の特徴は、その異常なまでの体力設定です。その数値はなんと約37,000。 比較対象として、同ランク帯の大型モンスターの体力が概ね4,000〜6,000程度、ラスボスのアルバトリオンですら体力は10,000前後です。ジエン・モーランだけが、他のモンスターの4倍から6倍近い体力を持っていたことになります。
この数値は、当時の上位装備の火力水準(攻撃力倍率や切れ味補正)を考慮すると、ソロで30分の制限時間内に削り切ることは数学的にほぼ不可能なレベルでした。 実際、発売から約2ヶ月間、ネット上でのソロ討伐報告は皆無でした。
オンライン専用都市「ロックラック」の象徴として
なぜこれほど無茶な調整がなされたのか。それは『MH3』特有のオンラインシステムと世界観設定に理由があります。
『MH3』では、上位クエストはオンライン専用の街「ロックラック」でしか受注できませんでした。ジエン・モーランは、このロックラックの街に砂嵐と共に現れ、街全体で迎撃するという「一大イベント(フェスティバル)」として位置づけられていました。 つまり、ゲームデザインの根幹として「4人のハンターが協力して挑むレイドボス」として設計されていたのです。
- バリスタ、大砲の役割分担
- 背中に乗って対巨龍爆弾を設置する係
- 銅鑼や拘束用バリスタで攻撃を中断させる係
これらを完璧にこなしてようやく撃退・討伐が見えてくるバランスでした。 ソロ討伐を達成した最初の事例は、「火事場力+2」(体力が極端に少ない状態で攻撃力が上がるスキル)を発動させ、最強のランス「煌黒槍アルトラス」を担ぎ、一手のミスも許されない極限の立ち回りを30分間続けてようやく成し遂げられたものでした。これはもはや「狩り」ではなく「苦行」や「曲芸」の域に達しています。
期間限定の「お祭り」モンスター
さらに、この上位ジエン・モーランは常時戦えるわけではありませんでした。ロックラックの街に砂嵐が吹く数日間だけクエストが発生する「期間限定イベント」だったのです。
この仕様もまた、プレイヤーの焦燥感を煽りました。「この期間中に素材を集めなければ、最強クラスの武器や防具が作れない」というプレッシャーの中、野良パーティでは連携が取れずにクエスト失敗(船の耐久値がゼロになる)を繰り返す光景が日常茶飯事でした。
当時のジエン・モーランは、単なるモンスターではなく、オンラインコミュニティ全体で挑む「巨大な壁」であり、その圧倒的な耐久力はまさに裏ボスと呼ぶにふさわしい存在感を示していました。
殺意の塊と化した「獄狼龍ジンオウガ亜種」(MH3G)
『モンスターハンター3G(MH3G)』で初登場したジンオウガ亜種。原種が雷を操るのに対し、こちらは龍属性エネルギーを操り、漆黒の体色に赤い雷光を纏うその姿は「獄狼龍」の名に恥じないカッコよさを誇ります。
しかし、その中身は原種とは比較にならないほど凶悪な殺意に満ちていました。特にMH3Gにおけるジンオウガ亜種は、シリーズを通しても「最強の亜種」の筆頭候補に挙げられます。
自動追尾する「蝕龍蟲弾」の悪夢
ジンオウガ亜種を最強足らしめていたギミック、それが「蝕龍蟲弾(しょくりゅうちゅうだん)」のホーミング性能です。
原種の雷光虫弾は、ある程度予測可能な軌道で飛んでくるため回避は容易でした。しかし、亜種が放つ蝕龍蟲弾は以下のプロセスでハンターを追い詰めます。
- 設置: ジンオウガ亜種が咆哮や攻撃とともに、空中に龍属性のエネルギー弾を複数設置する。
- 滞留: 弾はその場に数秒間留まる。この間、ハンターは本体の攻撃に対処しなければならない。
- 捕捉&発射: 一定時間後、**「動き出す瞬間のハンターの位置」**を正確にサーチして飛んでくる。
この「時間差攻撃」が極めて厄介でした。 弾が設置された瞬間ではなく、発射される瞬間に位置を捕捉するため、あらかじめ移動していても意味がありません。弾が動き出すタイミングに合わせて回避行動を取る必要があるのですが、そのタイミングで本体が突進や尻尾叩きつけを行ってくるため、ハンターは「本体の攻撃」と「ホーミング弾」の二重の波状攻撃(クロスファイア)に晒されることになります。
さらに、この弾に当たると龍属性やられになり、武器の属性値が無効化されてしまうため、こちらの火力も大幅に削がれてしまいます。
壁役として機能する本体
このホーミング弾を回避する数少ない手段の一つに、「ジンオウガ亜種本体を盾にする」というテクニックがありました。弾と自分の間にモンスターを挟むことで、弾をモンスターに誤射させるのです。 しかし、暴れまわるジンオウガ亜種の位置を調整しつつ、背後に回り込むのは至難の業。失敗すれば本体の攻撃を食らい、起き上がりに弾が直撃してキャンプ送りとなる「確定コンボ」が成立してしまいます。
最凶イベントクエスト「JUMP・獄界の門番」
MH3Gのジンオウガ亜種を語る上で外せないのが、配信イベントクエスト「JUMP・獄界の門番」です。 このクエストに登場する個体は、通常のG級個体を遥かに凌駕する強化が施されています。
- 攻撃力倍率の大幅強化: 防御力を極限まで高めた剣士装備でも、一撃で即死、あるいは瀕死に追い込まれる火力。
- 常時龍光まとい状態: 戦闘開始直後からフルパワー状態であり、さらにチャージ行動を阻止するための怯み値が異常に高く設定されているため、解除がほぼ不可能。
- 確定最大金冠: サイズが巨大であるため、攻撃範囲が広く、安置だと思われた場所にも攻撃が届く。さらに弱点の頭部位置が高すぎて、近接武器では攻撃が届かない。
- 行動パターンの変化本来: 疲労時しか行わないはずの捕食攻撃を、龍光まとい状態でも繰り出してくる。
このクエストは「無理ゲー」と称されるほどの難易度を誇り、ソロクリアを達成することは一流ハンターの証とされました。ホーミング弾の仕様と超火力が合わさったこの個体は、間違いなくシリーズ最強クラスの「一般モンスター」でした。
規格外の加速「狂竜化イャンガルルガ」(MH4)
『モンスターハンター4(MH4)』で復活を果たしたイャンガルルガ。かつてはMHP2Gなどで猛威を振るったモンスターですが、MH4で実装された新システム「狂竜化」によって、物理法則を無視したとんでもない怪物へと変貌しました。
「速度倍率1.4倍」の衝撃
MH4のストーリー中盤から登場する「狂竜ウイルス」。これに感染し発症したモンスターは「狂竜化」し、目が赤く光り、行動速度が変化するという特徴を持ちます。 通常、狂竜化したモンスターの行動速度は「0.8倍(低速)」から「1.2倍(高速)」の間でランダムに変動します。これにより、回避のタイミングがずらされ、ハンターを翻弄するのが狂竜化の強みでした。
しかし、イャンガルルガだけは設定ミスを疑われるほどの特別仕様が施されていました。 その速度変動幅は、なんと**「1.0倍〜1.4倍」。 つまり、遅くなることは一切なく、「常に通常以上の速さで動き、確率でさらに超高速化する」**という鬼畜仕様だったのです。
反応不可能な「ノーモーション突進」
1.4倍速になったイャンガルルガの恐ろしさは、筆舌に尽くしがたいものがあります。 特に「ノーモーション突進(予備動作なしのついばみ突進)」は、人間の反応速度を超えた速さで繰り出されます。 ハンターが目の前に立った瞬間、次のフレームではもう吹き飛ばされている。あまりの速さにアニメーションが追いつかず、あたかも「瞬間移動」したかのように見えることさえありました。これを当時のプレイヤーは「ワープ突進」と呼び、恐怖しました。
怒り状態+狂竜化の絶望
イャンガルルガは元々、頻繁に怒り状態に移行するモンスターです。怒り状態になると攻撃力と速度が上昇しますが、ここに狂竜化の補正が乗算されます。 「怒り補正 × 狂竜化1.4倍速」が発動した瞬間、画面の中を黒紫色の残像が駆け巡り、ハンターは回復薬を飲む隙はおろか、納刀して逃げる隙さえ与えられません。
さらに、高難易度コンテンツ「ギルドクエスト」の高レベル帯(Lv100など)に登場するイャンガルルガは、圧倒的な攻撃力を持ちます。硬い肉質、風圧、咆哮、そして毒攻撃。これらを高速で連発されるため、ガード性能の高いランスやガンランスでさえ削り殺され、回避主体の武器は一瞬の判断ミスで即死します。
唯一の救いは、スタン(気絶)耐性が低めに設定されていたことでした。そのため、ハンマーや狩猟笛、あるいは徹甲榴弾を使用するボウガンで「動きを止めてハメる」ことが攻略の最適解とされましたが、それは裏を返せば「まともに戦っては勝てない」という証明でもありました。
爆破と時間差の暴力「狂竜化ブラキディオス」(MH4)
イャンガルルガと並び、MH4のギルドクエストにおいて「右ラー(ラージャン)の相方」として恐れられたのが、狂竜化したブラキディオスです。 MH3Gの看板モンスターとして登場した彼は、「爆破属性」という強力無比な武器を引っ提げ、MH4でもその暴君ぶりを発揮しました。
爆破タイミングの攪乱
狂竜化ブラキディオスの厄介さは、スピードの変化が「爆破のタイミング」に直結している点にあります。 ブラキディオスは粘菌を地面に設置し、一定時間後に爆発させる攻撃を行いますが、狂竜化による速度変化(0.8倍〜1.2倍)がこの爆破までの時間にも影響を与えます。
- 高速化時: 設置から爆発までが異常に早く、回避行動をとった直後の硬直に爆風が重なる。
- 低速化時: いつも通りのタイミングで回避すると、まだ爆発しておらず、無敵時間が終わった瞬間に爆発する。
この「リズム崩し」が、回避性能スキルを積んだ熟練ハンターほど刺さりました。体で覚えた回避タイミングが通用せず、被弾が増えるのです。さらに、爆破やられ状態になると、次の一撃で大ダメージを受けるプレッシャーも重なります。
「田植え」と揶揄された超誘導
MH4のブラキディオスには、通称「田植え」と呼ばれる新モーションが追加されていました。頭を地面に突き刺しながら前進し、周囲に粘菌を植え付ける攻撃です。 狂竜化個体は、この攻撃のホーミング性能(軸合わせ)が異常に強化されています。ハンターが左右に大きく回避しても、まるで磁石のように吸い付きながら方向転換し、正確に粘菌を植え付けてきます。
さらに、ギルドクエストの高レベル個体となると、その攻撃力は即死級。設置された粘菌を踏まないように立ち回る必要がありますが、狂竜化による速度変化でカメラ操作が追いつかず、足元の粘菌に気づかずに爆死するという事故が多発しました。
イャンガルルガとブラキディオスの2頭が登場するギルドクエストは、当時のハンターにとって「地獄への招待状」であり、クリアできるパーティは選ばれし精鋭のみでした。
すべてを弾く究極の拒絶「極限化ジンオウガ」(MH4G)
『モンスターハンター4G(MH4G)』で実装された「極限状態(極限化)」。これはモンハン史上、最も賛否両論を巻き起こし、多くのプレイヤーを引退に追い込んだシステムとして有名です。 その中でも、極限化ジンオウガは「最強にして最悪」の呼び声高いモンスターです。
全ハンターを絶望させた「強制弾かれ」
極限状態の共通仕様として、「特定の部位以外への攻撃が強制的に弾かれる(心眼スキル無効)」というものがあります。さらに、属性攻撃や状態異常(毒、麻痺、睡眠)、罠、閃光玉なども一切無効化されます。
これを解除するには、専用アイテム「抗竜石・心撃」を使用して攻撃を加え続け、極限状態を鎮静化させるしかありません。しかし、抗竜石には効果時間があり、再使用までのクールタイムも存在します。 極限化ジンオウガの恐ろしい点は、**「弾かれない部位が極端に少ない」こと、そして「弾かれる部位が、本来狙うべき弱点部位である」**ことです。
- 通常時: 頭や後ろ足が弱点。
- 極限時: 頭と後ろ足が強制弾かれ部位になり、狙えるのは前足や背中などに限定される。
最も攻撃しやすく、ダメージが通るはずの後ろ足を攻撃すると「ガキン!」という音と共に弾かれ、その硬直にカウンター攻撃を叩き込まれる。このストレスは筆舌に尽くし難いものでした。
強化された「蝕龍蟲弾」の追尾と麻痺
3Gの亜種で猛威を振るったホーミング弾は、4Gの極限化個体(原種ベース)でも新たな脅威として立ちはだかりました。 極限化ジンオウガが放つ雷光虫弾は、亜種同様に「設置→待機→超追尾」という挙動を見せます。しかも、これに当たると大ダメージと共に確定で「麻痺状態」になります。
麻痺したハンターに対し、極限化で強化されたお手(叩きつけ)コンボが炸裂し、確実に乙る。 「抗竜石の効果時間が切れたら逃げ回るしかない」という消極的なプレイを強要されるシステムと、ジンオウガの苛烈な攻撃性能が最悪の形で噛み合ってしまった例と言えるでしょう。
ギルドクエストLv140の報酬トラウマ
これほど強いにも関わらず、極限化ジンオウガは多くのハンターに狩られ続けました。 その理由は、ギルドクエストLv140で入手できる最高性能の「発掘武器」の見た目にあります。 ジンオウガのギルドクエストからは、人気の高い双剣「ギルドナイトセーバー」などの見た目の武器が入手できました。
「最強の武器が欲しい。でも入手するには、戦いたくもない最強最悪のモンスターを連戦しなければならない」。 このジレンマの中で、効率を求めて「極限強化ラージャン」などのハメ狩猟へ流れるハンターもいましたが、あくまでジンオウガにこだわり、散っていったハンターたちの屍は数知れません。
終わらないターンの暴力「獰猛化リオレイア希少種」(MHX)
『モンスターハンタークロス(MHX)』で登場した「獰猛化(どうもうか)」。モンスターの特定部位が黒い霧に覆われ、攻撃力と体力が大幅に強化されるシステムです。 このシステムによって、元々強力だった「金火竜 リオレイア希少種」は、手がつけられない化物へと進化しました。
異常な体力と「即死サマーソルト」
獰猛化モンスターの最大の特徴は、タフネスです。 通常のリオレイア希少種でも肉質が硬く時間がかかるのに、獰猛化個体は体力が1.5倍〜2倍近くに跳ね上がっています。ソロで挑むと、どれだけ攻め続けても足を引きずらない絶望感を味わえます。
そして、黒い霧を纏った部位からの攻撃は威力が激増します。 リオレイア希少種の代名詞である「サマーソルト(尻尾回転攻撃)」に霧が纏われると、剣士の防御力であろうと一撃でキャンプ送りにされる火力を叩き出します。 さらに、獰猛化特有の仕様として「攻撃のタイミングが変化する(溜め動作が入る)」ため、従来のタイミングで回避しようとすると、タイミングをずらされて被弾するという初見殺しも搭載されていました。
止まらない「ブレス&突進」ループ
獰猛化個体は疲労状態にならない(なりにくい)という特性があります。 リオレイア希少種は、空中に滞空しながら拡散ブレスやサマーソルトを連発し、地上に降りれば高速で突進を繰り返すモンスターです。通常個体であれば、疲労時に動きが止まり、そこが攻撃のチャンスとなりました。
しかし、獰猛化個体は無限のスタミナで暴れ続けます。「ずっと俺のターン」状態で、ハンターが反撃する隙が一切ないのです。 閃光玉で撃ち落とそうにも、暴れる首や翼が邪魔をしてタイミングがシビア。撃ち落としてもすぐに復帰し、また空へ舞い上がる。この遅延行為と高火力のコンボは、多くのハンターに「二度と戦いたくない」と言わせしめました。
唯一の救済として、獰猛化素材は他のクエスト(例えばイビルジョーやゴア・マガラなど)でも入手可能であったため、賢いハンターはこのリオレイア希少種を避けて通る道を選びました。
青い炎の理不尽「炎妃龍ナナ・テスカトリ」(MHW)
『モンスターハンター:ワールド(MHW)』および拡張版『アイスボーン』にて、約10年ぶりの復活を果たしたナナ・テスカトリ。テオ・テスカトルのつがいである彼女は、夫とは全く異なる、陰湿かつ凶悪なベクトルで強化されていました。
「熱ダメージ」によるスリップ死
ナナ・テスカトリの強さの本質は、「設置型スリップダメージ」にあります。 彼女がばら撒く青い炎は、近づくだけで体力が高速で減っていく「熱ダメージ」を発生させます。これは「火属性やられ」とは別枠であり、通常の火耐性スキルや「熱ダメージ無効」スキルだけでは完全に対策しきれません。
さらに、風圧を伴う攻撃でハンターの自由を奪い、その動けない間にスリップダメージで削り殺すという戦法を得意とします。 「根性」スキル(即死攻撃をHP1で耐える)を発動させても、その直後にスリップダメージで1ダメージを受けて乙るという、システムをあざ笑うような倒され方をしたハンターは数知れません。
最凶の大技「ヘルフレア」
ナナ・テスカトリを象徴するのが、必殺技「ヘルフレア」です。 テオ・テスカトルの「スーパーノバ」が一撃必殺の大爆発であるのに対し、ヘルフレアは広範囲に青い炎を拡散させ、**「強烈な風圧」+「超高速スリップダメージ」+「断続的な爆発」**を数秒間にわたって発生させます。
- 発動: ナナが溜め動作に入り、周囲に風圧(大)が発生。動けなくなる。
- 展開: 青い炎が広がり、体力がものすごい勢いで減り始める。
- 爆発: 設置された炎が次々と爆発し、逃げ惑うハンターを吹き飛ばす。
この技の恐ろしいところは、閃光玉で撃墜しようとすると、**「カウンターで即座にヘルフレアを発動してくる」**という仕様です。安易な閃光玉はパーティ全滅のスイッチとなり、野良マルチプレイでは阿鼻叫喚の事態を引き起こしました。
対策としては「風圧無効」スキルを発動させるか、「アステラジャーキー」で赤ゲージを即座に回復する、あるいは「転身の装衣」を着るなどが挙げられましたが、これらを知らない初見プレイヤーにとっては理不尽そのものの攻撃でした。
まとめ
ここまで、歴代モンスターハンターにおける「裏ボス級」の一般モンスターたちを8体紹介してきました。
| モンスター | 登場作品 | 強さの要因 |
|---|---|---|
| ティガレックス | MHP2/2G | 亜空間判定、ハメ確定のエリア構成 |
| ジエン・モーラン | MH3 | ソロ討伐不可のHP設定、期間限定 |
| ジンオウガ亜種 | MH3G | 殺意高すぎのホーミング弾、超強化イベクエ |
| イャンガルルガ | MH4 | 常に1.4倍速、反応不能のノーモーション攻撃 |
| ブラキディオス | MH4 | 爆破タイミングの攪乱、即死級の田植え |
| ジンオウガ(極限) | MH4G | 弱点部位での強制弾かれ、麻痺コンボ |
| リオレイア希少種 | MHX | 獰猛化による無限スタミナ、即死火力 |
| ナナ・テスカトリ | MHW | 防御不能のスリップダメージ、閃光カウンター |
これらのモンスターは、当時のゲームバランスや実験的なシステム(水中戦、極限化、オンライン仕様など)の産物として、異常な強さを誇りました。 しかし、彼らの存在があったからこそ、プレイヤーはスキル構成を極め、立ち回りを研究し、仲間と協力するという「モンハンの本質的な楽しさ」を深めることができたとも言えます。
最新作『モンスターハンターワイルズ』では、どのような「強敵」が待ち受けているのでしょうか。過去のトラウマを乗り越えた歴戦のハンターたちにとって、新たな絶望と、それを乗り越える歓喜が訪れることを願ってやみません。
もし、この記事を読んで「あのモンスターも強かった!」「自分はこうやって対策した」という思い出があれば、ぜひSNSなどで語り合ってみてください。 それでは、良きハンターライフを!
筆者情報
筆者:桐谷シンジ フリーランスのゲーム攻略ライター。慶應大学卒業後、大手出版社を経て、現在に至る。幅広いゲームに携わるが、主にRPG/FPS/サンドボックス系のゲームを得意とする。モンハンシリーズは初代から全作プレイ済みで、特にMHP2Gのプレイ時間は3000時間を超える。最近の悩みは趣味の時間が取れず、積みゲーが100作品を超えたこと。







