ゲーム評論家の桐谷シンジです。 今回も多く寄せられてる質問にお答えしていきます。
この記事を読んでいる方は、2025年10月2日に発売された期待の新作「Ghost of Yōtei(ゴースト・オブ・ヨウテイ)」について、「ストーリーが一本道で自由度が低い」「ゲームが簡単すぎてつまらない」といったネガティブな評判が気になっているのではないでしょうか。

素晴らしいグラフィックと前作の高い評価から期待していたのに、いざ購入しようとすると不安になるような声が聞こえてきて、実際のところどうなのか、具体的な内容を知りたいと思っているはずです。
この記事を読み終える頃には、「Ghost of Yōtei」が本当にあなたにとって「買い」のゲームなのか、その疑問が解決しているはずです。
- 一本道と批判される物語構造の意図
- 簡単すぎると言われるゲームバランスの実態
- 高く評価されている戦闘システムと映像美
- オープンワールドとしての課題と独自の魅力
それでは解説していきます。

「Ghost of Yōtei」に寄せられる批判的な声の真相
待望の続編としてリリースされた「Ghost of Yōtei」ですが、一部のプレイヤーからは手厳しい意見が挙がっているのも事実です。 特に、ゲームの根幹に関わるシステムや難易度について、前作ファンやオープンワールドゲームに慣れ親しんだユーザーから疑問の声が上がっています。 ここでは、具体的にどのような点が批判の対象となっているのか、その真相を一つひとつ深掘りしていきましょう。
なぜ「一本道ゲーム」と批判されるのか?
本作に寄せられる最も大きな批判の一つが、「オープンワールドでありながら実質的には一本道ゲームだ」という点です。 広大な北海道の蝦夷地を舞台にしているにもかかわらず、メインストーリーを進める上での自由度が低いと感じるプレイヤーが少なくありません。

決められた道筋を辿るゲーム進行
「Ghost of Yōtei」のメインクエストは、基本的に決められた順序で攻略していくことになります。 「次にどこへ向かい、誰と会い、何をすべきか」が明確に示されるため、プレイヤーが自ら物語の展開を選択したり、寄り道をして別の大きな物語に関わったりする余地はほとんどありません。 この構造が、プレイヤーによっては「開発者の用意したレールの上を走らされているだけ」という感覚を抱かせる原因となっています。 広大なマップはあれど、物語の体験としては直線的(リニア)な構成になっているのです。
探索しているようで「させられている」感覚
もちろん、広大なフィールドを自由に探索することは可能です。 しかし、その探索でさえも、風の導きや動物たちが次に行くべき場所を親切に教えてくれるため、「自分で発見した」という喜びよりも「導かれた」という感覚が強くなりがちです。 この親切すぎる設計が、能動的な探索を楽しみたいプレイヤーにとっては、逆に自由度を奪われていると感じさせてしまう要因となっています。 結果として、オープンワールドの醍醐味である「未知の世界を手探りで冒険する楽しさ」が薄れている、という批判に繋がっているのです。
難易度が「簡単すぎる」と言われる具体的な理由
次に多く聞かれるのが、「戦闘や謎解きが簡単すぎて歯ごたえがない」という意見です。 前作『Ghost of Tsushima』は、侍としての緊張感あふれる戦いが魅力の一つでしたが、今作ではそのバランスに変化が見られます。

過剰なまでの親切設計
本作では、プレイヤーが少しでも迷ったり立ち止まったりすると、すぐにヒントが表示される傾向があります。 例えば、崖を登るシーンで少し止まると「Lボタンを押してください」といったガイドが表示されたり、簡単なパズルでも正解のルートが光って示されたりします。 こうした過剰なアシスト機能は、ゲーム初心者にとってはありがたい配慮かもしれませんが、ある程度ゲームに慣れたプレイヤーにとっては「挑戦する楽しみ」を奪い、達成感を削ぐ要因となっています。 「自分の力で乗り越えた」という感覚が得にくいため、単調な作業に感じられてしまうのです。
緊張感に欠ける戦闘バランス
戦闘においても、敵のAI(人工知能)の挙動が比較的単純で、パターンを掴みやすいという指摘があります。 特に、新しい武器やスキルを手に入れると、敵を圧倒するのが容易になり、中盤以降は緊張感が薄れてしまうことがあります。 パリィ(受け流し)や回避のタイミングも前作に比べて判定が甘くなっていると感じるプレイヤーも多く、高難易度でプレイしない限りは、苦戦する場面が少ないかもしれません。 この「誰でもクリアできる」バランス調整が、逆説的に「簡単すぎて面白くない」という評価を生んでいる側面があります。
単調と評されるサブクエストの実態
オープンワールドゲームの評価を大きく左右するのが、サブクエストの質と多様性です。 「Ghost of Yōtei」では、前作以上に豊富なサブクエストが用意されていますが、その内容が単調であるという批判も少なくありません。
多くのサブクエストが「村人の頼み事を聞く」「特定の場所へ行き、十数人の敵を倒す」「敵の拠点を制圧する」といった、いわゆる「おつかいクエスト」の範疇に収まっています。 一つひとつのクエストに重厚な物語や意外な展開が用意されているわけではなく、作業感の強いものが目立ちます。 美しい景色の中で同じような内容のクエストを繰り返すことになるため、序盤は楽しめても、次第に飽きを感じてしまうプレイヤーがいるのも無理はありません。 マップに点在するアイコンを一つずつ潰していく作業は、探索の楽しさよりも義務感を強く感じさせてしまう可能性があります。
探索の自由度を損なう過剰なアシスト機能
前述の通り、本作はプレイヤーを迷わせないためのアシスト機能が非常に充実しています。 その代表例が「黄金の木を見つける」といったミッションです。

このミッションでは、森の中から特定の木を探すことになるのですが、対象の木が文字通り金色に輝いており、遠くからでも一目でわかります。 これでは「探す」という行為そのものが意味をなさず、ただ目的地に向かうだけの移動になってしまいます。 また、マップ情報を売ってくれる商人が至る所にいるため、未開の地を自分の足で踏破し、少しずつ地図を完成させていくという冒険の醍醐味も薄れています。 これらのアシスト機能は、テンポの良さを生む一方で、探索のプロセスを楽しむというオープンワールドならではの魅力を削いでいると指摘されています。
前作『Ghost of Tsushima』との比較から見える変化
前作『Ghost of Tsushima』と今作『Ghost of Yōtei』を比較すると、ゲームデザインの方向性に明確な変化が見られます。
項目 | Ghost of Tsushima (前作) | Ghost of Yōtei (今作) | 変化のポイント |
---|---|---|---|
物語の雰囲気 | 侍の誉れと冥府の道との間で葛藤する重厚で堅苦しい雰囲気 | よりエンターテイメント性を重視した王道的な復讐譚 | プレイヤーの間口を広げ、分かりやすさを重視した方向へシフト |
マップ構成 | 対馬(東西2エリア) | 蝦夷地(5エリア) | マップの広さは増したが、密度や探索の質は課題も |
ゲームバランス | 緊張感のある高めの難易度 | 多くのプレイヤーが楽しめるよう調整された比較的易しい難易度 | ストレスなく爽快感を味わえるように調整 |
クエスト | 物語性の高いクエストも存在 | パターン化されたクエストが多め | ボリュームを重視する一方、内容の多様性は今後の課題 |
このように比較すると、「Ghost of Yōtei」は前作が持っていたストイックな部分を意図的に薄め、より多くの人が楽しめる「超大作アクションゲーム」としての側面を強化したと言えます。 この変化が、前作のファンにとっては「物足りない」と感じる部分であり、新規プレイヤーにとっては「とっつきやすい」と感じる部分なのかもしれません。
ストーリーは王道的で深みがないのか?
ストーリーに関しても、「両親を殺された主人公が復讐を誓う」という王道的な筋書きであり、前作のような深い葛藤や哲学的な問いかけは少ないという意見があります。 主人公・アツの復讐劇は非常に分かりやすく、勧善懲悪の物語として安心して楽しめます。 しかし、その一方で、登場人物の描写が浅かったり、物語に意外性がなかったりするため、「深みがない」「ありきたりだ」と感じるプレイヤーもいるようです。 特に、前作の主人公・境井仁が抱えていた「誉れ」というテーマの重さに心を揺さぶられたプレイヤーほど、今作のストレートな物語に物足りなさを感じる傾向があります。
海外レビュー(Eurogamerなど)の評価の真相
海外の有力なゲームメディアである「Eurogamer」からも、「簡単すぎて面白くない、ただの一本道ゲーム」といった趣旨の厳しいレビューが出ています。 このレビューでは、本作を「オープンワールドの皮を被ったリニアなゲーム」と評し、雑なサブクエストや古臭いオープンワールドの設計を指摘しています。 一方で、戦闘システムについては高く評価しており、「バットマン アーカムシリーズとSEKIROを融合させたようだ」と称賛しています。 つまり、海外の評価を見ても、「戦闘は素晴らしいが、ゲーム全体の構造や自由度には大きな課題がある」という、国内の批判とおおむね一致した見方がされていることがわかります。 決して不当な批判ではなく、多くのプレイヤーが共通して感じている問題点であると言えるでしょう。
批判だけではない「Ghost of Yōtei」の魅力と評価点
ここまで批判的な意見を中心に解説してきましたが、もちろん「Ghost of Yōtei」はそれだけで語り尽くせるゲームではありません。 むしろ、多くのプレイヤーを魅了し、高い評価を得ている点も数多く存在します。 ここでは、批判の裏側にある本作ならではの魅力と、手放しで称賛できるポイントを徹底的にレビューしていきます。

進化した戦闘システムの爽快感と奥深さ
本作が最も高く評価されているのは、間違いなく戦闘システムです。 前作の「型」をベースにしつつ、新たな武器やアクションが加わったことで、戦闘はよりダイナミックで爽快なものへと進化しています。

新武器による戦略性の広がり
今作では、刀に加えて「鎖鎌」や「槍」といった新たな武器種が登場します。
- 鎖鎌: 広範囲を攻撃でき、複数の敵を巻き込みながら戦える。トリッキーな動きで敵を翻弄する楽しさがある。
- 槍: リーチが長く、敵との距離を保ちながら戦える。突進してくる敵に対してカウンターを狙いやすい。
これらの武器には敵との相性が設定されており、「槍兵には鎖鎌が有効」といったように、状況に応じて武器を切り替えながら戦う戦略性が求められます。 ただボタンを連打するだけでは勝てず、敵の動きを見極め、最適な武器と技を選択する奥深さは、本作最大の魅力と言えるでしょう。
回避とカウンターが織りなす死闘
戦闘の基本は、敵の攻撃をギリギリで見切って回避し、その隙にカウンターを叩き込むという流れになります。 この攻防一体のアクションは非常にテンポが良く、成功した時の爽快感は格別です。 スキルを解放していくことで、煙玉を使って敵の目から逃れたり、複数の敵を同時に仕留める技を覚えたりと、やれることがどんどん増えていきます。 まるで自分が熟練の侍になったかのような感覚で、華麗な剣戟アクションを繰り広げられるのです。
圧倒的なグラフィックと世界観への没入感
サカーパンチ・プロダクションズの技術力の高さは、本作のグラフィックにも遺憾なく発揮されています。 舞台となる蝦夷地(現在の北海道)の雄大で美しい自然描写は、息をのむほどのクオリティです。
風景すべてがアート作品
黄金色に輝くススキ野原、静寂に包まれた雪山、霧が立ち込める湿地帯など、どこを切り取っても絵になる風景が広がっています。
光や風、天候の表現も非常にリアルで、ただフィールドを馬で駆けているだけでも、その世界に没入していくことができます。 特に、PS5の性能を最大限に活かしたグラフィックは、現行機最高峰と言っても過言ではないでしょう。 ゲームプレイの手を止め、思わずスクリーンショットを撮りたくなるような絶景がプレイヤーを待っています。
細部まで作り込まれた日本の描写
本作は、海外スタジオが開発したゲームでありながら、日本の文化や建築様式、人々の暮らしに対する深いリスペクトと理解が感じられます。 着物の柄や武具のデザイン、建物の細部に至るまで、徹底的な時代考証に基づいて作り込まれており、そのこだわりが世界観に圧倒的な説得力を与えています。 前作同様、日本語の音声と字幕でプレイすれば、まるで質の高い時代劇を観ているかのような体験ができます。
映画的な演出がもたらすストーリー体験
「一本道」という批判がある一方で、その直線的な物語構造は、映画のような没入感の高いストーリー体験を生み出しているという側面もあります。 プレイヤーの選択によって物語が分岐しない分、開発者は演出やカメラワークに全力を注ぐことができます。
緊迫したシーンでのカットシーンの挿入タイミングや、感情を揺さぶるBGMの使い方、キャラクターの表情の豊かさなど、その演出は非常に巧みです。 プレイヤーは主人公・アツの復讐の旅路を、まるで一本の長編映画を鑑賞するかのように追体験することになります。 「自由な冒険」よりも「作り込まれた物語を楽しみたい」というプレイヤーにとっては、この一本道の構造はむしろ大きなメリットとなり得るのです。
「一本道」だからこそ得られるテンポの良さ
オープンワールドゲームにありがちなのが、「次に何をすればいいか分からなくなる」「広すぎて移動が面倒になる」といった、いわゆる「中だるみ」です。 「Ghost of Yōtei」は、次々と明確な目標が提示されるため、物語が停滞することなくサクサク進みます。 寄り道を強制されることもなく、メインストーリーだけを追いかければ、比較的短い時間でエンディングまでたどり着くことが可能です。 忙しい現代人にとって、このストレスフリーでテンポの良いゲームデザインは、非常に大きな魅力と言えるでしょう。 「簡単すぎる」という難易度も、物語の進行を妨げないための意図的な調整と捉えることができます。
豊富なスキルツリーとカスタマイズ要素
ゲームを進めることで得られるスキルポイントを使い、様々な技を習得・強化していくスキルツリーも本作の魅力です。 戦闘スタイルに合わせて「どのスキルから取得していくか」を考える楽しみがあります。
- 攻撃特化型: 新しいコンボ技や威力の高い技を優先的に習得。
- ステルス特化型: 隠密行動を強化し、敵に気づかれずに拠点を制圧する技を習得。
- 防御・サポート型: 回復アイテムの効果を高めたり、受け流しの能力を強化したりする。
このように、自分のプレイスタイルに合わせて主人公を成長させていくことができます。 また、装備品(鎧や面頬)も豊富に用意されており、見た目をカスタマイズする楽しみもあります。 最強の装備を求めてサブクエストに挑んだり、素材を集めたりといったやり込み要素も用意されています。
プレイヤーを飽きさせない敵の種類と攻略法
ゲームを進めていくと、様々なタイプの敵が登場し、プレイヤーを飽きさせません。 単に剣で攻撃してくるだけの敵だけでなく、盾を持った屈強な兵士、遠距離から弓を放ってくる射手、素早い動きで翻弄してくる忍者など、それぞれに異なる攻略法が求められます。 敵の編成や配置も巧妙で、常に緊張感を持った戦いを楽しむことができます。 特に、各エリアの最後で待ち受けるボスとの一騎打ちは、本作の見せ場の一つです。 ボスの強力な攻撃を見切り、一瞬の隙を突いてダメージを与えていく死闘は、手に汗握る体験となるでしょう。
やりこみ要素とクリア後のコンテンツ
メインストーリーをクリアした後も、「Ghost of Yōtei」の世界を長く楽しむためのやりこみ要素が用意されています。 全てのサブクエストのクリア、マップ上の「?」マークの探索、収集アイテムのコンプリートなど、広大な世界を隅々まで遊び尽くすことができます。 また、前作同様であれば、クリア後のデータを引き継いでさらに高難易度でプレイできる「ニューゲーム+」や、オンライン協力プレイモードの実装も期待されます。 一度クリアして終わりではなく、長く付き合えるゲームであることも、本作の評価点の一つです。
まとめ
さて、今回は「Ghost of Yōtei」に寄せられる「一本道でつまらない」「簡単すぎる」といった批判的な声について、その真相と、一方で高く評価されている魅力について徹底的に解説してきました。
結論として、本作が「一本道」で「比較的簡単」であるというのは、ある程度事実です。 しかし、それはゲームの欠点というよりも、**「映画のような濃密な物語体験と、誰もが楽しめる爽快なアクション」**を最優先に考えた、意図的なゲームデザインの結果であると言えます。
- 『The Last of Us』や『アンチャーテッド』のような、作り込まれたリニアな物語が好き
- 難しいアクションは苦手だが、侍になってバッサバッサと敵を斬る爽快感を味わいたい
- とにかく最高峰のグラフィックで描かれる美しい世界に没入したい
もしあなたがこのようなプレイヤーであれば、「Ghost of Yōtei」は間違いなく最高のゲーム体験を提供してくれるはずです。
逆に、
- 『ゼルダの伝説 ティアーズ オブ ザ キングダム』や『エルデンリング』のように、自分の意志で世界を隅々まで探索し、物語を紡いでいきたい
- 何度も挑戦してようやく強敵を倒せるような、歯ごたえのある高難易度アクションを求めている
というプレイヤーにとっては、少し物足りなさを感じるかもしれません。
「Ghost of Yōtei」は、万人に手放しで勧められる完璧なゲームではないかもしれませんが、その方向性が明確であるからこそ、特定のプレイヤーには深く突き刺さる魅力を持った作品です。 このレビューが、あなたの購入の判断材料となれば幸いです。