ゲーム評論家の桐谷シンジです。 今回も多く寄せられてる質問にお答えしていきます。
この記事を読んでいる方は、2025年9月17日に突如発表されたスクウェア・エニックスの新作スマートフォン向けゲーム『ドラゴンクエスト スマッシュグロー』が、なぜ発表と同時に多くの批判を集め、炎上状態となっているのか、その具体的な理由が気になっていることでしょう。

国民的RPGであるドラクエの新作にもかかわらず、祝福の声よりも厳しい意見が目立つ現状には、多くのゲーマーが複雑な思いを抱いているはずです。
この記事を読み終える頃には、『ドラゴンクエスト スマッシュグロー』に寄せられる批判の具体的な内容と、その背景にある根深い問題点についての疑問が、明確に解決しているはずです。
- 大ヒットした特定ゲームとのシステム酷似
- スクエニのスマホ事業に対する根強い不信感
- ドラクエブランドの進むべき方向性への懸念
- 過去の失敗作から予測される未来への不安
それでは解説していきます。

ドラクエスマッシュグローが炎上した8つの深刻な理由
鳴り物入りで発表されたはずの『ドラゴンクエスト スマッシュグロー』。 しかし、そのティザーPVが公開されるや否や、SNSやYouTubeのコメント欄はファンからの厳しい意見で溢れかえりました。 なぜ、これほどまでに批判が殺到してしまったのでしょうか。 ここでは、その主な理由を8つのポイントに分けて、深く掘り下げていきます。

炎上理由①:『Vampire Survivors』とのあまりにもな酷似
今回の炎上における最大の火種、それは大ヒットしたインディーズゲーム『Vampire Survivors(ヴァンパイアサバイバーズ)』とのシステム的な酷似です。 PVを見た多くのゲーマーが、瞬時に「これはヴァンサバ系だ」と看破しました。
ヴァンパイアサバイバーズとは?
『Vampire Survivors』は、プレイヤーが操作するキャラクターが自動で攻撃を行い、プレイヤーは移動操作に専念するという、非常にシンプルな操作性が特徴のローグライトアクションゲームです。 敵を倒して経験値を集め、レベルアップ時に出現する3つのスキルから1つを選択してキャラクターを強化していく、というサイクルを繰り返します。 この「どのスキルを選ぶか」という戦略性と、ランダムに提示されるスキルによって毎回プレイ感が変わる中毒性の高さ、そして圧倒的な物量で襲いかかってくる敵を、インフレした攻撃力でなぎ倒していく爽快感が世界中で受け、一大ムーブメントを巻き起こしました。
スマッシュグローのどこが似ているのか
『ドラゴンクエスト スマッシュグロー』のPVでは、以下の点が『Vampire Survivors』と酷似していると指摘されています。
- 自動で行われる通常攻撃とプレイヤーの移動専念
- レベルアップ(エンジェルスライムの像に触れる)
- 3つのスキル候補から1つを選択してキャラクターを強化するシステム
- 画面を埋め尽くすほどの敵キャラクターの群れ
もはや「影響を受けた」というレベルではなく、ゲームの根幹システムをそのまま流用していると見られても仕方がないほどです。 この点が、多くのゲーマー、特にオリジナルの『Vampire Survivors』を愛するプレイヤーからの強い反発を招く最大の原因となりました。 「ドラクエという巨大IPが、インディーズゲームのヒット作を安易に模倣するのか」という失望感が、批判の根底にあります。
炎上理由②:『アーチャー伝説』や『モンスト』の要素も垣間見える
批判の矛先は『Vampire Survivors』の模倣だけに留まりません。 他の大ヒットスマホゲームの要素も見て取れるという指摘が相次いでいます。
代表的なのが、同じくローグライトアクションとして人気の『アーチャー伝説』です。 キャラクターの動きや、弾幕を張るようなスキルの数々は、確かに『アーチャー伝説』を彷彿とさせます。 『Vampire Survivors』がPC/コンソールで人気を博したのに対し、『アーチャー伝説』はスマートフォン市場で同様のジャンルを確立した先駆者です。 そのため、スマホゲームユーザーからは「アーチャー伝説のドラクエ版」という印象を持つ声も少なくありません。
さらに、タイトルにもある「スマッシュ」要素。 PVでは、攻撃によって吹き飛んだモンスターが他のモンスターにぶつかり、連鎖的にダメージを与えているように見えます。 この「敵を弾いてぶつける」というゲーム性は、大ヒットゲーム『モンスターストライク』の核心的な面白さです。 これもまた、「ヒット作の面白い部分を継ぎはぎしただけではないか」という疑念を強める一因となっています。
炎上理由③:独自性がなく「ドラクエである必要性」が不明
これらの類似点の指摘が集約されるのが、「このゲームは、本当にドラクエでやる必要があったのか?」という根源的な問いです。 『Vampire Survivors』や『アーチャー伝説』がやりたいのであれば、すでに完成度が高く、世界中で評価されている本家をプレイすれば良いだけの話です。
多くのファンがドラクエの新作に期待するのは、ドラクエならではの独自の世界観や、新しいゲーム体験です。 しかし、『スマッシュグロー』の第一印象は「既存のヒットゲームのシステムに、ドラクエのキャラクターと音楽という“皮”を被せただけ」というものでした。 これでは、熱心なドラクエファンほど「自分たちの愛するブランドが安売りされている」と感じ、新規のゲームファンからは「二番煎じの模倣作」と見られてしまいます。 スクウェア・エニックスが誇る開発力をもって、なぜオリジナルのゲームシステムで勝負しないのか。 その姿勢そのものが、大きな失望を呼んでいるのです。
炎上理由④:スクエニの「パクリ企画しか通らない」体質への不信感
この「模倣」問題は、単なる偶然や一過性のものとして片付けられていません。 多くのユーザーが、近年のスクウェア・エニックスの企業体質そのものに疑念の目を向けています。 その引き金となったのが、『星のドラゴンクエスト』などのプロデューサーを務めた市村龍太郎氏が、退社後のインタビューで語ったとされる「スクエニはパクリ企画しか通らない」という趣旨の発言です。
この発言は後に本人が謝罪・修正していますが、多くのゲーマーの記憶に深く刻まれています。 そして、今回の『スマッシュグロー』の発表は、その発言が決して的外れではなかったことを裏付けるかのような内容でした。 さらに、前作にあたる『ドラゴンクエスト チャンピオンズ』も、人気バトルロイヤルゲームのシステムを模倣していると指摘されていました。 このように、立て続けに「どこかで見たような」ゲームが登場することで、「今のスクエニには、新しいものを生み出す力がないのではないか」「ヒット作の模倣で手堅く稼ぐことしか考えていないのではないか」という、企業そのものへの深刻な不信感が醸成されてしまっているのです。
炎上理由⑤:露骨な課金圧を予感させるゲーム設計
ゲームシステムだけでなく、マネタイズ(収益化)の方法についても、ユーザーは厳しい視線を送っています。 PVでは、3人のキャラクターでパーティを組んで戦う様子が確認できました。 一見、戦略性のある要素に見えますが、経験豊富なソシャゲユーザーは、このシステムに「集金装置」としての側面を即座に見抜きました。
本家『Vampire Survivors』は、キャラクターは基本的に1人で戦います。 しかし、『スマッシュグロー』が3人パーティ制を採用しているのは、「3人分の武器や防具をガチャで揃えさせるためではないか」という憶測を呼んでいます。 キャラクターが1人であれば、リセマラ(リセットマラソン)で強力な装備を1つ手に入れれば、ある程度快適にプレイできるかもしれません。 しかし、3人分の最強装備を揃えるとなると、無課金・微課金では到底追いつかず、重課金が必須になる可能性が高まります。
また、『Vampire Survivors』の面白さの核は、際限なく強くなっていく「インフレの爽快感」にあります。 しかし、ソシャゲの運営モデルでは、このインフレに「課金の壁」という上限が設けられることが予想されます。 「強力な装備がないと先に進めない」「課金しないと気持ちよくなれない」といった状況が生まれれば、元になったゲームの魅力は完全に失われてしまいます。 こうした「ソシャゲならではの闇」をユーザーが事前に察知し、強い警戒感を示しているのです。
炎上理由⑥:過去のスマホゲームの失敗と早期サービス終了
近年のスクウェア・エニックスのスマートフォン向けゲーム事業が、決して順風満帆ではないことも、今回の批判に拍車をかけています。 ユーザーの脳裏には、鳴り物入りで登場しながらも、短期間でサービスを終了していった数々のタイトルの記憶が焼き付いています。
タイトル | サービス開始 | サービス終了 | 運営期間 |
---|---|---|---|
ドラゴンクエストライバルズ エース | 2017年11月 | 2021年7月 | 約3年8ヶ月 |
ドラゴンクエストモンスターズ スーパーライト | 2014年1月 | 2024年1月 | 約10年 |
星のドラゴンクエスト | 2015年10月 | 2024年1月 | 約8年3ヶ月 |
ドラゴンクエストけしケシ! | 2021年12月 | 2024年5月 | 約2年5ヶ月 |
ドラゴンクエスト チャンピオンズ | 2023年6月 | 継続中(売上低迷) | – |
ドラゴンクエスト スマッシュグロー | 2026年予定 | – | – |
特に、直近の『ドラゴンクエスト チャンピオンズ』は、リリース当初こそ話題になったものの、ゲーム性の薄さなどからユーザーが急速に離れ、売上ランキングでも苦戦を強いられています。 長期運営されていた『星のドラゴンクエスト』や『スーパーライト』も立て続けにサービスを終了しており、ユーザーには「どうせまたすぐ終わるのではないか」という諦めに似た感情が渦巻いています。 時間とお金を投資したゲームがある日突然遊べなくなる、という経験を繰り返してきたユーザーにとって、新作に期待するよりも、まずは疑いの目を向けてしまうのは、ある意味で当然の防衛本能と言えるでしょう。
炎上理由⑦:ドラクエファン層との深刻なミスマッチ
『ドラゴンクエスト』というシリーズが長年愛されてきた理由の一つに、じっくりと考えて戦う「コマンドバトル」の面白さがあります。 特に、初期からのファンや、コンソールでシリーズを追いかけてきた層は、この戦略的なバトルシステムに強い愛着を持っています。
一方で、『スマッシュグロー』のようなリアルタイムのアクションゲームは、瞬間的な判断力や操作スキルが求められ、従来のファン層が好むゲーム性とは大きく異なります。 もちろん、ドラクエシリーズには『ドラゴンクエストヒーローズ』のような成功したアクションRPGも存在しますが、スマートフォンというプラットフォームで、この手のジャンルが従来のファンにどこまで受け入れられるかは未知数です。
かといって、純粋なアクションゲーム好きの若年層を新たに取り込めるかというと、それもまた疑問が残ります。 彼らは、もっとキャラクターデザインが尖っていたり、eスポーツとして競技性が高かったりするような、他の人気アクションゲームに流れてしまう可能性が高いでしょう。 結果として、「従来のドラクエファンはついていけず、新規のアクションゲームファンには響かない」という、どっちつかずの中途半端な立ち位置に陥ってしまうのではないか。 このターゲット層の不明確さが、将来への不安を掻き立てています。
炎上理由⑧:手抜き感も否めないグラフィックの使い回し
細かな点ですが、PVで確認できるモンスターの3Dモデルが、過去のシリーズ作からの流用ではないかという指摘も挙がっています。 具体的には、『ドラゴンクエストX オンライン』や『ドラゴンクエストウォーク』、『ドラゴンクエストタクト』、そして『ドラゴンクエスト チャンピオンズ』などで使用されたモデルと酷似している、という意見です。
もちろん、開発リソースを効率化するためにモデルを流用すること自体は、ゲーム業界では珍しいことではありません。 しかし、ここまで他の批判要素が積み重なっている状況では、その流用さえも「開発費をケチった手抜き」「新しいものを作る気がない証拠」と、ネガティブに捉えられてしまいます。 新作としての新鮮味や、このゲームのために作り込まれたという特別感が感じられないことも、ユーザーの期待感を削いでいる一因と言えるでしょう。
ドラクエスマッシュグローの現状分析と今後の展望
ここまで批判的な意見を中心に解説してきましたが、一方で『スマッシュグロー』に全く期待が寄せられていないわけではありません。 ここでは、ゲームシステムを改めて整理し、批判の中に埋もれた期待の声や、今後の展望について考察します。

スマッシュグローのゲームシステムを改めて解説
発表されている情報を基に、本作のシステムを整理してみましょう。
- ジャンル: ローグライトRPG
- 基本操作: プレイヤーは移動のみ。攻撃は自動。
- 成長システム(グロー): ステージ内でレベルアップし、ランダムに出現する3つのスキルから1つを選んでキャラクターを強化。これにより、プレイごとに異なるビルド(キャラクター構成)を楽しめる。
- 攻撃システム(スマッシュ): 敵を吹き飛ばし、他の敵にぶつけてダメージを与える。連鎖を狙う戦略性があると思われる。
- パーティシステム: 3人1組で冒険する。詳細は不明だが、キャラクターごとの役割や装備収集が重要になると予想される。
ジャンル名にある「ローグライト」とは、プレイするたびにマップの構造や出現するアイテムが変化し、死んでしまうと一部の要素を除いてリセットされる、という特徴を持つゲームジャンルのことです。 『スマッシュグロー』は、この「プレイごとの変化」をスキル選択のランダム性で表現していると考えられます。
批判の中に見えるかすかな期待の声とは?
圧倒的な批判に晒されている本作ですが、肯定的な意見や期待の声もゼロではありません。

- 「元ネタが面白いから期待」: 批判の根源である『Vampire Survivors』ですが、そのゲーム性が極めて中毒性が高く面白いことは誰もが認めるところです。その面白いシステムを、慣れ親しんだドラクエの世界観で、スライムやゴーレムをなぎ倒しながら遊べるのであれば、それはそれで楽しいのではないか、という意見です。
- 「手軽な爽快感を求める層」: スマートフォンでゲームをプレイするユーザーの中には、複雑な操作や長時間のプレイを好まず、通勤・通学の合間などに手軽に爽快感を得たいという層も多く存在します。シンプルな操作で敵をなぎ倒す『スマッシュグロー』は、そうしたライトユーザーのニーズに応える可能性があります。
- 「ドラクエIPの魅力」: 何だかんだ言っても、『ドラゴンクエスト』というブランドが持つ力は絶大です。すぎやまこういち氏が手掛けた珠玉の音楽、鳥山明氏が生み出した魅力的なモンスターたちは、それだけで多くの人を惹きつけます。この強力なIPと、実績のあるゲームシステムがうまく融合すれば、化ける可能性も否定はできません。
オリジナル要素「スマッシュ」は評価の分水嶺となるか
現状、本作が「ただの模倣作」で終わるか否かは、唯一のオリジナル要素と目される「スマッシュ」システムの出来にかかっていると言っても過言ではないでしょう。 単に敵が吹き飛ぶだけでなく、
- 特定のモンスターをぶつけると特殊な効果が発動する
- 壁の反射を利用したコンボが重要になる
- スマッシュを強化する専用スキルが存在する
など、このシステムにどれだけの奥深さを持たせられるか。 もし「スマッシュ」が戦術の核となり、『Vampire Survivors』とは全く異なるゲーム体験を生み出すことに成功すれば、現在の批判を覆すことも可能かもしれません。 逆に、この要素が単なるおまけ程度の存在であれば、「やはりただのパクリだった」という烙印を押されることになるでしょう。
スクエニが信頼を回復するために必要なこと
今回の炎上は、単に一つのゲームに対する批判ではなく、近年のスクウェア・エニックスの姿勢に対するユーザーの不満が噴出した結果です。 失われた信頼を回復するためには、付け焼き刃の対応では不十分です。
- ユーザーの声に耳を傾ける姿勢: まずは、クローズドベータテストで寄せられるであろう厳しいフィードバックから目を背けず、真摯に受け止めることが不可欠です。なぜユーザーが怒り、失望しているのかを正確に理解し、改善に繋げる姿勢を示す必要があります。
- 良心的な課金モデルの構築: 「課金しないと楽しめない」のではなく、「課金しなくても十分に楽しめるが、課金すればもっと快適になる・時短になる」という、ユーザーが納得できるバランスの課金モデルを提示できるか。特に、インフレの爽快感を損なうような課金圧は絶対に避けるべきです。
- 長期的な運営への覚悟: 「すぐにサービス終了するのでは」という不安を払拭するためには、リリース後のアップデート計画などを具体的に示し、長くユーザーに寄り添っていくという覚悟を見せることが重要です。
類似ゲームとの比較
ここで、本作が比較されている主要なゲームとの違いを整理しておきましょう。
項目 | ドラゴンクエスト スマッシュグロー | Vampire Survivors | アーチャー伝説 |
---|---|---|---|
プラットフォーム | スマートフォン | PC, コンソール, スマートフォン | スマートフォン |
料金体系 | 基本無料(アイテム課金) | 買い切り(DLCあり) | 基本無料(アイテム課金) |
世界観 | ドラゴンクエスト | ゴシックホラー | ファンタジー |
グラフィック | 3D | 2D(ドット絵) | 3D(デフォルメ) |
独自システム | スマッシュ(敵の吹き飛ばし) | 武器の進化合成 | スキルと装備の組み合わせ |
操作 | 移動のみ | 移動のみ | 移動と停止(停止で攻撃) |
この表からもわかる通り、『スマッシュグロー』はゲームの収益モデルやプラットフォームにおいては『アーチャー伝説』に近く、根幹のゲームシステムにおいては『Vampire Survivors』に近い、ハイブリッドな存在と言えます。 買い切りで純粋にゲームの面白さを追求した『Vampire Survivors』と、ソシャゲとして長期的な運営と収益化を目指す『アーチャー伝説』。 この二つのモデルの「良いとこ取り」を目指すのか、あるいは「悪いとこ取り」になってしまうのかが、成功の鍵を握っています。
クローズドベータテストの役割と今後の流れ
『ドラゴンクエスト スマッシュグロー』は、2025年10月14日からクローズドベータテスト(CBT)の実施を予定しています。 このCBTは、正式リリースを前に、限られた人数のプレイヤーにゲームを先行プレイしてもらい、サーバーの負荷テストやゲームバランスの調整、不具合の発見などを行うためのものです。

しかし、今回の状況においてCBTは、それ以上に重要な意味を持ちます。 それは、**「開発陣がユーザーの声を聞く最後のチャンス」**であるということです。 CBTでプレイヤーがどのような感想を持ち、どのような改善点を指摘するか。 そのフィードバックを受けて、開発チームがどれだけゲームを良い方向に修正できるか。
もし、CBTの意見を無視して現在の路線のままリリースすれば、さらなる批判を浴びることは必至です。 逆に、CBTで指摘された問題点、特に課金圧に関する懸念などを大幅に改善した状態で正式リリースを迎えることができれば、一度は失望したユーザーの心を取り戻せる可能性も残されています。 このCBTの結果と、それに対する運営の対応こそが、『スマッシュグロー』の未来を占う試金石となるでしょう。
なぜスクエニは類似ゲームを連発するのか?(評論家としての考察)
最後に、ゲーム評論家としての視点から、なぜスクウェア・エニックスのような大手企業が、これほどまでに類似性の高いゲームをリリースするのか、その背景を少しだけ考察してみたいと思います。 考えられる理由は、主に3つあります。
- 開発リスクの低減: 完全オリジナルの新規タイトルを開発するのは、莫大なコストと時間がかかる上に、ヒットするかどうかわからないという大きなリスクを伴います。 一方で、すでに市場で成功が証明されているゲームシステムを参考にすれば、少なくとも「全くウケない」という最悪の事態は避けやすい、という経営判断が働きがちです。
- 開発スピードの重視: スマートフォンゲーム市場は流行の移り変わりが非常に激しく、開発に何年もかけていると、リリースする頃には時代遅れになっている可能性があります。 既存のシステムをベースにすることで開発期間を短縮し、市場のトレンドに素早く乗ろうという意図があると考えられます。
- 強力なIP(知的財産)への過信: これが最も根深い問題かもしれませんが、「ドラゴンクエスト」という、日本で知らない人はいないほどの強力なIPがあれば、ゲームシステムが多少模倣的であっても、ファンはプレイしてくれるだろう、という一種の“甘え”や“過信”が存在する可能性は否定できません。 しかし、今回の炎上は、その「IPの力」だけでは、もはやユーザーは納得しないという明確なメッセージになったのではないでしょうか。
まとめ
今回は、新作『ドラゴンクエスト スマッシュグロー』がなぜ発表直後から厳しい批判に晒されているのか、その理由を多角的に分析・解説しました。
- 『Vampire Survivors』を筆頭とした既存ヒット作とのシステム的な酷似
- 過去の失敗や企業体質からくる、スクエニのスマホゲーム事業への根強い不信感
- 露骨な集金を予感させるゲームデザインへの強い警戒心
- ドラクエブランドの方向性に対するファンの不安と失望
これらの要素が複合的に絡み合い、今回の炎上騒動へと発展しました。 現状は極めて厳しい船出と言わざるを得ませんが、全てが絶望的というわけではありません。
元になったゲームシステムが持つ中毒性の高さ、ドラクエというIPの魅力、そして唯一のオリジナル要素である「スマッシュ」システムの出来次第では、評価を覆す可能性も秘めています。 そのためには、まず10月に予定されているクローズドベータテストでユーザーの声を真摯に受け止め、課金圧やゲームバランスに対する懸念を払拭できるかが最大の鍵となります。
果たして『ドラゴンクエスト スマッシュグロー』は、単なる模倣作という汚名を返上し、ファンに愛される一本となることができるのか。 それとも、また一つ、スクエニのスマホゲーム史に悲しい1ページを刻むことになってしまうのか。 我々ゲーマーは、今はただ、その動向を注意深く見守るしかなさそうです。