ゲーム評論家の桐谷シンジです。 今回も多く寄せられてる質問にお答えしていきます。
この記事を読んでいる方は、先日発表され世界中のゲームファンを驚かせた「ドラゴンクエスト7 リイマジンド」について、特にその戦闘バランス、とりわけ「魔法使いは今回優遇されているのか?」という点が気になっていると思います。

予告トレーラーで映し出されたマリベルの呪文が、旧作の最強特技を遥かに超えるダメージを叩き出していたシーンは、SNSでも大きな話題となりました。
この記事を読み終える頃には、「ドラゴンクエスト7 リイマジンド」における呪文の立ち位置と、魔法職が優遇される可能性についての疑問が解決しているはずです。
- 衝撃を与えたマリベルの超火力メドローア
- 呪文強化を裏付ける新ステータスと新呪文の存在
- 物理職とのバランスを左右する新システム「バースト」
- 過去作の不満点を解消し生まれ変わる戦闘システム
それでは解説していきます。

ドラクエ7 リイマジンドの基本情報と注目の変更点
まずは、今回発表された「ドラゴンクエスト7 リイマジンド(以下、リイマジンド)」がどのような作品なのか、基本情報と大きな変更点についておさらいしておきましょう。 長年のファンはもちろん、本作で初めてドラクエ7に触れる方にとっても、その進化の度合いに驚くこと間違いなしです。

発売日と対応プラットフォーム
「リイマジンド」の発売日は2026年2月5日と発表されました。 対応プラットフォームはPlayStation 5、Nintendo Switch、Xbox Series X|S、そしてPC(Steam/Microsoft Store)と、非常に幅広い展開が予定されています。
現行の主要な家庭用ゲーム機とPCで遊べるため、多くのプレイヤーがこの壮大な物語を体験できるのは嬉しい限りです。 特に、まだ正式発表されていない「Nintendo Switch 2」での発売も予定されている点は、ゲーム業界全体にとっても大きなニュースと言えるでしょう。
グラフィックの革新「ドールルック」
「リイマジンド」の最も大きな特徴の一つが、そのグラフィック表現です。 「HD-2D」ともフル3Dとも異なる、「ドールルック」と呼ばれる全く新しい手法が採用されました。 これは、実際に精巧な人形を制作し、それをスキャンして3Dモデルを起こすという、非常に独創的で手間のかかるアプローチです。

この手法により、キャラクターには手作りの人形が持つ独特の温かみや質感が生まれ、まるで美しい人形劇を見ているかのような感覚で物語に没入できます。 街やダンジョンもジオラマ風に作り込まれており、箱庭のような世界を冒険する楽しさは、これまでのRPGでは味わえなかった新しい体験となるでしょう。 オリジナル版の持つ、どこか物悲しくも美しい世界観を、見事に現代の技術で再構築していると言えます。
オリジナル版・3DS版との違い
ドラクエ7は、2000年にプレイステーション(PS)でオリジナル版が発売され、2013年にはニンテンドー3DSでリメイク版が発売されました。
項目 | オリジナル版(PS) | 3DSリメイク版 | リイマジンド |
---|---|---|---|
発売年 | 2000年 | 2013年 | 2026年 |
グラフィック | 3D(ポリゴン) | 3D(キャラクター等身向上) | ドールルック |
エンカウント | ランダムエンカウント | シンボルエンカウント | シンボルエンカウント |
戦闘システム | ターン制(全員入力) | ターン制(全員入力) | ターン制(個別行動の可能性) |
ボイス | なし | なし | フルボイス |
職業システム | 人間職+モンスター職 | 人間職+モンスター職 | 人間職(2色掛け持ち) |
石板探し | ノーヒント | 石板レーダー | 石板レーダー(改良) |
シナリオ | オリジナル | 一部追加・変更 | 大幅な再編・新規追加 |
「リイマジンド」は、単なるリメイクではなく、シナリオの取捨選択や再編、さらにはシステムの根幹から作り直した「再構築」作品です。 オリジナル版でプレイヤーを悩ませた要素を改善しつつ、全く新しい魅力を加えた、まさに決定版と呼ぶにふさわしい内容を目指していることが伺えます。
ストーリーの再編と新規エピソード
オリジナル版のドラクエ7は、クリアまでに100時間以上かかると言われたほどの壮大なボリュームを誇りました。 しかしその一方で、「お使いイベントが多い」「シナリオが冗長」といった批判も存在しました。
「リイマジンド」では、原作者である堀井雄二氏監修のもと、シナリオの取捨選択と再編が行われています。 これにより、物語のテンポが改善され、プレイヤーが飽きずに物語の核心に引き込まれるような構成に変更されているとのことです。 さらに、オリジナルにはなかった完全新規エピソードも追加されます。 そのボリュームは、オリジナル版の約20%に相当すると発表されており、往年のファンも新鮮な気持ちで物語を楽しめるでしょう。
検証:リイマジンドは魔法使いが優遇されるのか?
さて、ここからが本題です。 多くのプレイヤーが気になっている「魔法職は優遇されているのか?」という点について、公開された情報を元に深く掘り下げていきましょう。 結論から言えば、その可能性は非常に高いと私は考えています。
衝撃!マリベルのメドローアがアルテマソードを超える
全ての始まりは、公開された予告トレーラーの一場面でした。 マリベルが放った呪文「メドローア」が、敵に対して「700以上」のダメージを叩き出していたのです。

ドラクエ7をプレイしたことがある方なら、この数字がいかに異常であるかが分かるはずです。 オリジナル版において、最強の単体攻撃特技といえば、主人公がゴッドハンドをマスターすることで習得する「アルテマソード」でした。 このアルテマソードのダメージ計算は「レベル×5 + 250」前後(作品により変動あり)で、レベル99でもダメージは750程度が限界です。 しかし、これはあくまで最終盤、最高レベルに達した上でのダメージです。
トレーラーのシーンは、パーティメンバーや敵の構成から見て、物語の中盤から後半にかけての場面と推測されます。 その段階で、マリベルという魔法使いキャラクターが、最強物理特技のカンストダメージに匹敵する火力を出しているのです。 これは、従来のドラクエシリーズのバランスを覆す、大きな変革と言えるでしょう。
呪文強化を裏付ける2つの新要素
なぜ、これほどの呪文火力が実現可能になったのでしょうか。 その答えは、公開された情報の中に隠されていました。
新ステータス「こうげき魔力」と「かいふく魔力」
トレーラーのステータス画面をよく見ると、従来の「ちから」「すばやさ」などに加えて、「こうげき魔力」と「かいふく魔力」という新しいステータスが確認できます。 これはドラクエシリーズの近年の作品で採用されているシステムで、「こうげき魔力」が高ければ高いほど攻撃呪文の威力が上がり、「かいふく魔力」が高ければ高いほど回復呪文の効果が上がります。
オリジナル版のドラクエ7では、呪文の威力はキャラクターのレベルや「かしこさ」に依存していましたが、その上昇率は緩やかでした。 「こうげき魔力」の導入により、装備品や職業補正でこのステータスを専門的に高めることで、呪文の威力を飛躍的に向上させられるようになったと考えられます。 マリベルの超火力メドローアは、この「こうげき魔力」を極限まで高めた結果なのかもしれません。
新呪文「メラガイアー」の登場
さらに、公式サイトではマリベルが「メラガイアー」という呪文を放つシーンも公開されています。 メラガイアーは、メラ系の最上位呪文として他のシリーズ作品に登場しますが、オリジナル版のドラクエ7には存在しませんでした。 最上位が「メラゾーマ」だった世界に、さらに強力な呪文が追加されるのです。 これは、メドローアのような特定の呪文だけでなく、呪文全体の火力が底上げされていることを示す強力な証拠と言えます。
トレーラーの画像から、メラガイアーは炎の精霊をめぐるエピソードのあたりで習得可能になると推測されます。 オリジナル版では「魔法戦士」をマスターすることでメラゾーマを習得しましたが、この枠がメラガイアーに置き換わる可能性も考えられます。 これまで不遇と言われがちだった魔法戦士の地位向上にも繋がる、興味深い変更点です。
職業システム刷新と「やまびこのさとり」
「リイマジンド」では職業システムが大幅に刷新され、その中でも魔法職に大きな影響を与えそうなのが、賢者のバースト「やまびこのさとり」です。 バーストについては後述しますが、これは戦闘中に発動できる必殺技のようなものです。 「やまびこのさとり」は、一定時間、一度唱えた呪文が二回発動するようになる効果です。
オリジナル版にも、同様の効果を持つ「やまびこのぼうし」という装備品が存在しました。 もし、この「やまびこのさとり」の効果と「やまびこのぼうし」の効果が重複するのであれば、「メドローア」を一度唱えるだけで、なんと4連発というとんでもない事態も起こり得ます。 700ダメージの4連発となれば、合計ダメージは2800。 これはもはや、どんなボスでも一瞬で葬り去ることができるレベルの火力です。 もちろん、バランス調整のために重複しない可能性もありますが、魔法職が夢のある火力を手に入れる可能性を示唆しています。
物理攻撃はどうなる?アルテマソードの行方
では、呪文が強化される一方で、物理攻撃は相対的に弱体化してしまうのでしょうか。 その鍵を握るのが、ゴッドハンドのバーストです。 公式サイトのメルビンの紹介画像で、彼がアルテマソードを使っているシーンが確認できます。 このことから、ゴッドハンドのバースト効果が「アルテマソード」であると推測されます。
必殺技として放つアルテマソードは、通常の特技として使用するものよりも高い威力が設定されている可能性があります。 また、バトルマスターのバースト「はいすいの構え」は、物理攻撃の威力を大幅に上げると説明されており、これらを組み合わせることで物理職も呪文に負けない火力を出せるように調整されていると考えられます。
攻撃手段 | オリジナル版(推定最大値) | リイマジンド(トレーラーからの推測) | 備考 |
---|---|---|---|
アルテマソード | 約750 | 1000以上? | バースト効果として威力向上の可能性 |
メドローア | 約450 | 700以上 | こうげき魔力により大幅強化 |
メラガイアー | (存在しない) | 500以上? | 新規追加の最上位呪文 |
ギガスラッシュ | 約400 | 600以上? | 他の特技もバランス調整される可能性 |
現時点での情報から判断すると、「リイマジンド」は単純な魔法優遇ではなく、**「物理も呪文も、それぞれの役割に応じた超火力を出せるようになる」**という方向性でバランスが調整されているのではないでしょうか。 オリジナル版では、終盤は「アルテマソード」一強の時代でしたが、「リイマジンド」では、敵の耐性や状況に応じて、物理と呪文を使い分ける戦略的なバトルが楽しめそうです。
呪文だけじゃない!生まれ変わる戦闘システム
「リイマジンド」の進化は、呪文の火力だけに留まりません。 戦闘システムそのものが、より戦略的で奥深いものへと再構築されています。

根本からの刷新「2色掛け持ちシステム」
今回の最大の変更点と言っても過言ではないのが、「2色掛け持ちシステム」の導入です。 キャラクター一人が、同時に2つの職業に就くことができるようになりました。 これにより、両方の職業の呪文、特技、そしてステータス補正の恩恵を受けることができます。
例えば、
- バトルマスター + 賢者
- 高い物理攻撃力と最上位の攻撃呪文を兼ね備えた、究極の魔法戦士。
- パラディン + 僧侶
- 鉄壁の守備力と高い回復能力で、パーティの生命線となる守護神。
- 海賊 + 盗賊
- 敵からアイテムを盗みつつ、トリッキーな特技で戦闘をかき乱す。
このように、プレイヤーの発想次第で無限の組み合わせが生まれ、自分だけのオリジナルパーティを作り上げる楽しみが飛躍的に向上します。 1回の戦闘で2つの職業の熟練度が入るため、育成のテンポが良くなる点も、忙しい現代のプレイヤーにとっては非常にありがたい改善です。
モンスター職の廃止とその意味
「2色掛け持ちシステム」導入の代わりとして、オリジナル版の大きな特徴であった「モンスター職」は完全に廃止されることが発表されました。 スライムやゴーレムといったモンスターになりきれるユニークなシステムでしたが、その種類の多さ(60種類以上)からシステムが複雑化し、「どのモンスターの心を集めれば良いか分からない」と、多くの初心者プレイヤーを悩ませる原因にもなっていました。
今回の廃止は、システムをより分かりやすくシンプルにすることで、新規プレイヤーが参入しやすくするための決断でしょう。 モンスター職がなくなることを寂しく思うファンもいるかもしれませんが、その分、人間職の組み合わせを考えるという新しい戦略性が生まれています。 これは、ドラクエ7が持つ「転職の楽しさ」という本質的な魅力を、より洗練された形で提供するためのポジティブな変更だと私は捉えています。
戦局を覆す新要素「バースト」
「2色掛け持ちシステム」と並ぶもう一つの目玉が、新要素「バースト」です。 これは、戦闘中に特定の条件を満たすことで溜まるゲージを消費して発動する、各職業固有の必殺技です。 公開されているバーストの一部を見てみましょう。
- 魔法使い「魔力暴走」
- 2ターンの間、唱える呪文が必ず暴走(クリティカルヒット)する。
- 僧侶「女神の福音」
- 仲間全体を確実に復活させ、悪い効果も消し去る。
- バトルマスター「はいすいの構え」
- 守りを捨てて、物理攻撃の威力を大幅に上げる。
- 賢者「やまびこのさとり」
- 一定時間、呪文が2回発動するようになる。
- 盗賊「悪事でい」
- 敵に状態異常を与えると、再行動できる。
これらの効果はどれも強力で、絶体絶命のピンチを一気に覆せるほどのポテンシャルを秘めています。 2色掛け持ちの場合、両方の職業のバーストが同時に発動することもあるかもしれず、そうなれば戦術の幅はさらに広がります。 どのタイミングでどのキャラクターのバーストを発動させるか、その判断がボス戦の勝敗を大きく左右することになるでしょう。
過去作の賛否両論点はどう改善されたか
オリジナル版のドラクエ7は、その壮大な物語と革新的なシステムで高い評価を得る一方で、いくつかの要素が賛否両論を呼び、多くのプレイヤーを悩ませました。 「リイマジンド」では、これらの問題点がどのように改善されているのでしょうか。

全プレイヤーの悪夢「石板集め」
オリジナル版を語る上で避けて通れないのが、「石板集め」の大変さです。 物語を進めるために必須のアイテム「ふしぎな石板」が、ノーヒントで世界の至る所に隠されており、「石板が見つからなくて先に進めない」と挫折したプレイヤーは数知れません。
3DS版で「石板レーダー」が導入され、ある程度の改善は見られましたが、「リイマジンド」ではこの機能がさらに強化されています。 石板の大まかな位置がより分かりやすく表示され、無駄な探索に時間を費やすことがなくなります。 これにより、プレイヤーはストレスなく物語の核心に集中できるようになり、ゲーム全体のテンポも大幅に向上しているはずです。
「種どろぼう」キーファの物語は変わるか?
ドラクエ7で最も物議を醸したキャラクターといえば、王子キーファでしょう。 序盤で頼れる仲間として活躍するものの、物語の途中でパーティから永久に離脱してしまいます。 彼に貴重な「ちからのたね」などのアイテムをつぎ込んでいたプレイヤーからは、「種を返せ」という悲痛な叫びが上がり、「種どろぼう」という不名誉なあだ名で呼ばれ続けてきました。
「リイマジンド」では、シナリオが大幅に再編されることが明言されています。 公開された映像には、オリジナル版にはなかった、キーファと思われる人物の謎めいたシーンも含まれており、彼の物語に何らかの追加や変更が加えられる可能性が非常に高いです。 もしかしたら、彼がパーティを離脱する理由がより深く描かれたり、あるいは全く違う形で物語に関わってくるのかもしれません。 25年越しの「種どろぼう」汚名返上なるか、ファンとしては見逃せないポイントです。
マリベルの離脱と復帰のタイミング
キーファだけでなく、ヒロインのマリベルも物語の中盤で一時的にパーティを離脱します。 彼女が抜ける時期は、全体攻撃呪文が特に役立つタイミングであり、戦力的に大きな痛手となりました。 また、復帰が物語のかなり後半になるため、育成が他のキャラクターに比べて遅れてしまうという問題もありました。
「リイマジンド」では、パーティ編成の自由度が高まっていることや、育成のテンポが改善されていることから、この問題も解消される可能性があります。 アイラの早期加入が示唆されているように、キャラクターの加入・離脱のタイミングそのものが見直されているかもしれません。 全ての仲間キャラクターを、最後まで活躍させられるようなバランス調整に期待したいところです。
まとめ
「ドラゴンクエスト7 リイマジンド」は、単なる過去作の焼き直しではありません。 「ドールルック」という美しいグラフィック、「2色掛け持ち」や「バースト」といった革新的な戦闘システム、そして大幅に再編されたシナリオによって、全く新しい作品として生まれ変わろうとしています。
そして、多くのプレイヤーが気になっている**「魔法使いは優遇されるのか?」という疑問に対しては、「イエス」と答えて良い**でしょう。 新ステータス「こうげき魔力」の導入や、新呪文「メラガイアー」の追加により、呪文の火力はオリジナル版とは比較にならないほど向上しています。 予告トレーラーで見せたマリベルのメドローアは、その象徴です。
しかし、それは単純な「魔法ゲー」になることを意味するわけではありません。 物理職にも「バースト」という強力な切り札が与えられ、物理と魔法、それぞれが最大限に輝ける場面が用意されているはずです。 オリジナル版の「アルテマソード一強」時代は終わりを告げ、敵の特性を見極め、職業の組み合わせを考え、バーストの発動タイミングを計る、そんな奥深い戦略的なバトルが、私たちを待っています。
25年の時を経て、伝説のRPGはどのように「再構築」されたのか。 その答えを、ぜひ自身の目で確かめてみてください。 2026年2月5日の発売が、今から待ちきれません。