編集デスク ゲーム攻略ライターの桐谷シンジです。 今回も多く寄せられてる質問にお答えしていきます。
この記事を読んでいる方はバイオハザードレクイエムの体験版がいつ配信されるのか、なぜ未だにこないのかが気になっていると思います。
発売日が目前に迫る中、沈黙を続けるカプコンの意図は何なのか、ファンの間でも多くの憶測が飛び交っています。
本レビューでは、現状の分析から開発側の戦略、業界全体の動向まで、私のこれまでの取材やプレイ経験をもとに徹底的に考察していきます。
この記事を読み終える頃には体験版が配信されない理由と今後の展望についての疑問が解決しているはずです。
- 発売直前でも体験版が配信されない特異な現状
- フレームレートなど最適化問題への慎重な対応
- 次世代機Switch2との同時発売が与える影響
- 発売直前でのサプライズ配信の濃厚な可能性
それでは解説していきます。
バイオハザード レクイエム体験版の現状とファンの声
発売直前での異例の事態
沈黙を貫く公式プロモーションの謎
本作の発売日は2月28日とアナウンスされており、すでにカウントダウンの段階に入っています。
ゲームファン、とりわけバイオハザードシリーズを長年追いかけてきたプレイヤーにとって、2月というのは非常にそわそわする時期です。
確定申告の準備など、現実世界でのタスクも迫り来る中で、我々は「いつ体験版が来るのか」と毎日ストアをチェックしては肩を落とす日々を送っています。
通常であれば、発売の1ヶ月前、遅くとも2週間前には何らかのプレイアブルなデモが配信されるのが業界の通例です。
しかし、現時点において公式からのアナウンスは一切なく、不気味なほどの沈黙が保たれています。
この沈黙が、ファンの間で様々な憶測を呼ぶ最大の要因となっているのです。
待ちわびるプレイヤーたちの焦燥感
SNSやゲームコミュニティを覗いてみると、体験版に対する渇望の声が日々大きくなっていることがわかります。
「また今日も配信されなかった」「プレイ予定を立てたいのに困る」といった切実な声から、「もしかして開発が難航しているのでは」といった不安の声まで様々です。
長年のファンにとって、事前のデモプレイは単なるお試しではなく、新作の操作感や空気感、システムの変更点を事前に身体に馴染ませるための重要な儀式でもあります。
特に今作は、従来のシステムからさらに進化した要素が含まれると予想されているため、事前の慣れが必要不可欠だと考えるプレイヤーが多いのです。
この焦燥感は、作品への期待の裏返しでもありますが、あまりに情報が小出しにされない現状は、一抹の不安を抱かせるには十分すぎる状況と言えるでしょう。
過去作における体験版配信の歴史
バイオハザード7がもたらした戦略的衝撃
過去を振り返ってみると、カプコンは体験版の配信に関して非常に戦略的なアプローチを取ってきました。
その最たる例が、2017年に発売された『バイオハザード7 レジデント イービル』です。
この作品では、E3での発表と同時に「ビギニングアワー」と呼ばれる体験版が配信されました。
これは本編とは異なる独立したショートストーリーであり、プレイヤーに新たな一人称視点(アイソレートビュー)の恐怖を植え付けることに大成功しました。
しかも、当初はPlayStation 4ユーザー向けに独占先行配信されるという、プラットフォーマーを巻き込んだ大掛かりなプロモーションが展開されたのです。
当時絶好調だったPS4のシェアをさらに盤石にするため、ソニー側から多額の資金援助や協力があったことは業界内でも有名な話です。
RE:2の「1-Shot Demo」という挑戦
続く『バイオハザード RE:2』では、「1-Shot Demo」という非常にユニークな形式が採用されました。
これは、プレイ時間が「30分間」に限定されており、一度クリアするか制限時間が来ると、二度とプレイできなくなるという厳しい条件付きのデモでした。
この仕様は賛否両論を巻き起こしましたが、結果的に「限られた時間でどこまで進めるか」という緊張感を生み出し、実況動画やタイムアタックの流行を後押ししました。
ユーザーの飢餓感をあおり、本編への購買意欲を極限まで高めるという点において、カプコンのマーケティング手法は非常に計算高く、そして見事でした。
近年タイトルの安定した配信スケジュール
その後の『バイオハザード RE:3』、『バイオハザード ヴィレッジ』、『バイオハザード RE:4』においても、形は違えど必ず事前の体験版が配信されてきました。
ヴィレッジの際には、週末限定で時間帯を区切ってアクセスさせるという、サーバー負荷テストを兼ねたような変則的な配信も行われました。
このように、毎年のように何らかの形で事前のプレイアブル環境を提供してきたカプコンが、なぜ今回に限ってここまで出し渋っているのか。
過去の歴史を知るファンだからこそ、今回の「レクイエム」における対応の遅れが余計に際立って見えてしまうのです。
| タイトル | 体験版の形式 | 配信タイミングの目安 | 主な特徴 |
|---|---|---|---|
| バイオハザード7 | 独立型ティザー | 発売の約7ヶ月前 | 本編と異なる主人公、PS4先行独占 |
| バイオハザード RE:2 | 1-Shot Demo | 発売の約2週間前 | 30分の時間制限、一発勝負の緊張感 |
| バイオハザード RE:3 | 通常デモ | 発売の約2週間前 | 何度でもプレイ可能、回避システムの練習 |
| バイオハザード ヴィレッジ | 分割/期間限定デモ | 発売の約2週間前 | 週末限定配信、村と城の2パート構成 |
| バイオハザード RE:4 | Chainsaw Demo | 発売の約2週間前 | 回数制限なし、隠し難易度(Mad Chainsaw)あり |
| バイオハザード レクイエム | 未定 | 未定(発売間近) | 現在配信に関する情報なし |
SNSやコミュニティでの期待と不安
情報不足が生むネガティブな推測
現代のゲームプロモーションにおいて、SNSでの話題性のコントロールは最も重要な課題の一つです。
体験版が配信されないことで、X(旧Twitter)やRedditなどの大型掲示板では、連日「なぜ出ないのか」という議論が白熱しています。
中には「開発が難航していて、バグだらけだから出せないのではないか」といったネガティブな推測も飛び交い始めています。
一度このようなネガティブな空気が形成されると、ゲームの発売日直前の盛り上がりに冷や水を浴びせることになりかねません。
カプコン側も当然エゴサーチなどで市場の反応はモニタリングしているはずですが、あえて沈黙を保っているのには、それを上回るほどの「出せない明確な理由」が存在すると考えるのが自然です。
ハード間のスペック比較論争への懸念
また、コミュニティで常に火種となるのが、プラットフォーム間のパフォーマンス比較です。
特に今作は、PlayStation 5、Xbox Series X|S、PCに加え、任天堂の次世代機(仮称:Switch 2)での同時展開が予定されていると噂されています。
もし仮に今のタイミングで体験版を出した場合、各ハードウェアでの解像度、フレームレート、ロード時間などが詳細に検証されることになります。
「PS5版は快適だが、Switch 2版はカクカクしている」といった情報が拡散されれば、特定のプラットフォームでの売上に致命的なダメージを与えかねません。
プレイヤーとしては純粋にゲームを楽しみたいだけなのですが、ハードウェアの性能競争というノイズに巻き込まれることを、開発側は極端に恐れているのかもしれません。
プレイヤーが体験版に求める要素
操作感と新システムへの順応
プレイヤーが体験版をプレイする最大の目的は、本作特有の操作感や新システムに触れ、身体を慣らすことです。
バイオハザードシリーズは、作品ごとに回避アクションの仕様や、銃器の構え方、アイテムのインベントリ管理などに細かな変更が加えられます。
例えば、前作RE:4でのパリィシステムは非常に爽快でしたが、タイミングを掴むまでは練習が必要でした。
今作「レクイエム」においても、どのような独自のアクションが用意されているのか、プレイヤーは実際にコントローラーを握って確かめたいと強く願っています。
本編が始まってから操作に戸惑い、無駄にゲームオーバーを繰り返すのは、多くのプレイヤーにとってストレスとなるからです。
恐怖演出とグラフィックの確認
サバイバルホラーというジャンルにおいて、恐怖演出の質とグラフィックの美麗さはゲーム体験の中核を成します。
最新のRE ENGINEを用いて描かれる、圧倒的なまでの空気感、暗闇の表現、そしてクリーチャーのグロテスクな造形。
これらが自分の所有しているモニターやプレイ環境でどのように出力されるのかを確認することも、体験版の重要な役割です。
特にPCプレイヤーにとっては、自分のPCスペックで最高設定に耐えうるのか、あるいは設定を落とさざるを得ないのかを事前に判断するための「ベンチマークソフト」としての側面も持ち合わせています。
この確認作業ができないままフルプライスのソフトを購入するのは、消費者にとって一定のリスクを伴う行為となります。
情報解禁のタイミングとスケジュール
過去のショーケースから読み解く傾向
カプコンはこれまで、「Capcom Showcase」や「バイオハザード・ショーケース」といった独自のオンラインイベントを通じて、最新情報を公開してきました。
これらのイベントの最後に「そして、この放送終了後から体験版が配信開始です!」というサプライズ発表を行うのが、彼らの得意とする演出手法です。
しかし、現時点では発売前最後となるであろう大規模なショーケースの告知すら行われていません。
スケジュールがタイトになりすぎているのか、あるいは意図的に情報の露出を極限まで絞り込んでいるのか。
プロモーション戦略の担当者が、過去の成功体験とは異なる、全く新しいアプローチを試みている可能性も否定できません。
競合他社の動きとの連動性
ゲーム業界全体を見渡すと、2月から3月にかけては大型タイトルの発売が集中する超激戦区となることが多々あります。
他社の超大作RPGやアクションゲームの体験版配信や情報解禁のタイミングと被らないよう、水面下で高度なスケジュール調整が行われているケースです。
ユーザーの可処分時間(ゲームをプレイできる時間)には限りがあるため、他社の話題に埋もれてしまうのを避けるのは当然の防衛策です。
しかし、バイオハザードという世界的な知名度を誇るIPであれば、他社の動向を気にせず堂々と自社のペースでプロモーションを展開できるはずです。
それにもかかわらず動きがないのは、やはり外部要因ではなく、カプコン内部の開発事情に起因していると考えるのが妥当でしょう。
他の大型タイトルとのプロモーション比較
贅沢な体験版を提供する他社との対比
近年のゲーム業界では、本編の序盤を数時間にわたって丸ごと遊べ、しかもセーブデータを本編に引き継げるという非常に豪華な体験版を配信するメーカーが増えています。
スクウェア・エニックスのFFシリーズや、セガの龍が如くシリーズなどがその代表例です。
これらは、ゲームのボリュームや完成度に絶対の自信があるからこそできる手法であり、ユーザーの購買へのハードルを大きく下げる効果があります。
こうした「至れり尽くせり」なプロモーションに慣れてしまった現代のゲーマーからすると、発売直前になっても一切触れられない状況は、相対的に「不親切」に映ってしまう側面があります。
カプコンもモンハンシリーズなどではしっかりとした体験版を提供しているだけに、バイオハザードだけが特殊な扱いを受けているように見えてしまいます。
期待値のインフレを防ぐための措置
一方で、あえて情報を伏せることで、ユーザーの期待値を過度にインフレさせないという高度な心理戦が行われている可能性もあります。
体験版を出してしまうと、「ここは良かったが、あそこは期待外れだった」といった具体的な評価が下され、発売前の段階でゲームに対する「答え合わせ」が始まってしまいます。
ホラーゲームの醍醐味は、次に何が起こるかわからない未知への恐怖と驚きにあります。
事前に操作や雰囲気に慣れさせてしまうことは、本編を初めてプレイした際の新鮮な衝撃を薄れさせてしまうリスクも孕んでいるのです。
あえて暗闇の中にプレイヤーを突き落とすために、事前の体験を一切封じるというストロングスタイルのプロモーションを選択したのかもしれません。
開発陣の沈黙が意味するもの
ギリギリまで続くブラッシュアップ作業
ゲーム開発の現場は、発売直前まで過酷な修羅場が続くことが常態化しています。
いわゆる「マスターアップ(製品版の完成)」を迎えた後も、「Day1パッチ(発売日当日に配信される修正データ)」の制作に追われるのが現代のゲーム開発のリアルです。
体験版を制作するということは、本編の開発ラインからリソースを割き、体験版専用のデバッグ(バグ取り)やCERO(レーティング機構)の審査を通過させる必要があります。
もし本編のブラッシュアップ作業がギリギリまで長引いているのだとすれば、体験版を作る余裕など物理的に存在しないというのが実情でしょう。
プレイヤーとしては残念ですが、未完成な体験版を出して悪評が広まるくらいなら、本編の完成度を高めることに全力を注いでもらった方が、最終的な満足度は高くなるはずです。
インタビューでの自信に満ちた発言の裏側
一部の海外メディアなどのインタビューにおいて、カプコンの開発陣は本作の完成度や新ハードでの最適化について非常に自信に満ちた発言をしていました。
「我々の予想以上にスムーズに動いている」「プレイヤーを驚かせる準備はできている」といった強気なコメントが散見されます。
しかし、この自信あふれる発言と、体験版が一向に配信されないという事実の間には、強烈な矛盾を感じざるを得ません。
本当に自信があるのなら、早く触らせてその凄さを証明すればいいからです。
この矛盾を解き明かす鍵は、近年のゲーム業界を悩ませている「あの問題」にあると私は睨んでいます。
カプコンの販売戦略と体験版未配信の理由考察
最適化問題とフレームレート論争の回避
デジタルファウンドリー時代の恐怖
現在、ゲームのパフォーマンスを評価する上で最も影響力を持っているのが、「デジタルファウンドリー」に代表される技術検証系のメディアやインフルエンサーたちです。
彼らは最新の機材を用いて、ゲームの解像度、フレームレートの安定性、テクスチャの品質などをピクセル単位で緻密に分析し、その結果を全世界に向けて発信します。
ひと昔前であれば「普通に遊べるから問題ない」で済まされていたような微小なカクつきや解像度の低下も、彼らの手にかかれば「最適化不足の証拠」として徹底的に糾弾されてしまいます。
この技術的な重箱の隅をつつくようなレビューは、コアゲーマー層の購買意欲にダイレクトに直結するため、メーカーにとっては非常に恐ろしい存在となっています。
過去の自社タイトルからの痛烈な教訓
カプコンが最適化問題に対して過敏になっているのには、明確な理由があります。
直近で発売された大作『ドラゴンズドグマ 2』において、PC版やコンソール版でのフレームレートの不安定さが大きな議論を呼びました。
また、『モンスターハンターワイルズ』のベータテストにおいても、特定の環境下で動作が重くなるといった報告が多数寄せられました。
これらのタイトルはゲーム体験自体は非常に優れていたものの、技術的な側面でのネガティブな評判が先行してしまい、初動の評価に水を差す結果となりました。
カプコンの経営陣やプロモーション部門は、この痛烈な教訓を忘れてはいないはずです。
バイオハザードという看板タイトルで同じ過ちを繰り返さないため、少しでも最適化に不安がある状態でのプレイアブル版の公開を徹底的に避けているのだと考えられます。
| タイトル | 発売時の主な技術的議論 | メーカーの対応 |
|---|---|---|
| ドラゴンズドグマ 2 | 街中での極端なフレームレート低下 | 発売後のアップデートで段階的に改善 |
| モンハンワイルズ(ベータ) | PC版での最適化不足、カクつき報告 | 製品版に向けた最適化の継続をアナウンス |
| バイオレクイエム(予想) | 複数ハード展開によるパフォーマンス格差 | 事前の検証材料(体験版)を与えない方針? |
次世代機「Switch 2」版との兼ね合い
縦マルチ展開という巨大な壁
本作のプロモーションを複雑にしている最大の要因が、任天堂の次世代機(通称:Switch 2)との同時発売、あるいは近いタイミングでのリリースが予定されているという点です。
最新のPS5やハイエンドPCを基準に作られたリッチなグラフィックや物理演算を、携帯機としての側面を持つSwitchのアーキテクチャに落とし込むのは、至難の業です。
カプコンはこれまでも「クラウドバージョン」という形でSwitchにバイオシリーズを提供してきましたが、今回はネイティブ動作(本体での直接処理)を目指しているという情報もあります。
もし、他ハードとSwitch 2版の体験版を同時に配信してしまった場合、どう足掻いてもグラフィックやフレームレートの明確な「差」が浮き彫りになってしまいます。
パフォーマンス格差がもたらす風評被害
「Switch 2版は劣化移植だ」「カクカクして遊べない」といったレッテルを貼られることは、ライト層が多く集まる任天堂プラットフォームでの売上において致命傷となります。
逆に、Switch 2版の最適化が奇跡的にうまくいっていたとしても、一部の先鋭化した他ハードのファンから「Switchに引っ張られてゲーム全体のポテンシャルが落ちた」と批判されるリスクすらあります。
どのハードで出しても何かしらの文句を言われる、いわゆる「ゲハ(ゲームハード)論争」の格好の標的になることを避けるため、事前の比較材料を一切与えないという判断を下した可能性は非常に高いと言えます。
開発者インタビューでの「Switch 2版は順調」という発言は、裏を返せば「順調だからこそ、余計なノイズを入れたくない」という防衛心理の表れなのかもしれません。
体験版の配信コストと開発リソースの配分
体験版専用ビルド作成の途方もない労力
一般のプレイヤーは「本編が完成しているなら、最初の1時間だけ切り取って配信すればいいだけでは?」と考えがちです。
しかし、実際のゲーム開発において、体験版(デモビルド)を作成するということは、決して簡単な作業ではありません。
本編から特定のステージだけを抽出し、そこから先のエリアに行けないように見えない壁を配置し、体験版専用のタイトル画面やクリア後のPVを組み込み、セーブデータの扱いを調整する必要があります。
さらに、その切り取った部分だけで進行不能バグが起きないか、本編とは別軸で膨大な時間をかけてデバッグを行わなければなりません。
これは、ただでさえ多忙を極める開発終盤において、血を吐くような追加作業を強いることになります。
経営的視点から見た費用対効果の疑問視
近年、体験版の配信が実際の売上増加にどれだけ貢献しているかについて、業界内で懐疑的な見方も広がりつつあります。
「体験版を遊んで満足してしまい、本編を買わない」という層や、「体験版で少しでも気に入らない部分があると、購入を見送る」という層が一定数存在するからです。
数千万円単位の開発コストをかけてデモビルドを作成しても、かえって売上を下げる要因になるのであれば、企業としては本末転倒です。
バイオハザードというすでに強固なブランド力を持つIPであれば、わざわざコストをかけて体験版を作らなくても、PVやインフルエンサーによる先行プレイ動画の配信だけで十分に事前予約を集められるという経営的な判断が下されたとしても不思議ではありません。
過去の「1-Shot Demo」からの戦略転換
ワンショットデモが抱えていた副作用
RE:2で大成功を収めた「1-Shot Demo(1回限定、時間制限あり)」ですが、この手法も万能ではありません。
時間制限があることで、プレイヤーはマップをじっくり探索したり、グラフィックの細部を鑑賞したりする余裕を奪われます。
とにかく先へ進むことだけを強要されるため、ホラーゲーム特有の「じわじわと迫り来る恐怖」を味わうには不適切な環境とも言えます。
また、時間内にクリアできなかったプレイヤーにフラストレーションだけを残し、ゲームに対するネガティブな印象を与えてしまうリスクもありました。
現代のプレイスタイルとのミスマッチ
さらに、現代のプレイヤーはゲームに対して「自由なプレイスタイル」を強く求める傾向にあります。
時間を気にせず、自分のペースで何度もやり直し、システムの隅々まで理解してから製品版に臨みたいというニーズが高まっています。
そうした時代背景の中で、再び1-Shot Demoのような制限の厳しい体験版を提供すれば、「出し惜しみしている」と反感を買う可能性すらあります。
過去の成功体験に縛られず、常に新しいプロモーションの形を模索するカプコンだからこそ、今回はあえて「何も出さない」という究極の選択肢にたどり着いたのかもしれません。
ストーリーのネタバレ防止と期待値のコントロール
データマイニングという現代の脅威
体験版を配信する上で、メーカー側が最も恐れているのが「データマイニング」と呼ばれる行為です。
PC版の体験版が配信されると、一部のハッカーや熱狂的なファンがプログラムの内部データを解析し始めます。
そこには、体験版では本来使われないはずの後半ステージのテクスチャや、ラスボスの名前、隠しキャラクターの存在、さらにはエンディングのテキストデータなどが残ってしまっていることが多々あるのです。
過去のバイオハザードシリーズでも、体験版の解析から本編の重大なネタバレが発売前にネット上に拡散してしまうという悲劇が幾度となく繰り返されてきました。
純粋な恐怖と驚きを守るための防壁
「レクイエム」というタイトルが示す通り、本作のストーリーは非常にドラマチックであり、過去作のキャラクターの生死に関わる重要な展開が用意されていると推測されています。
レオンやグレースといった人気キャラクターたちがどのような結末を迎えるのか。
その極秘情報を、発売前のデータ解析によって全世界にバラされてしまうことは、カプコンにとって絶対にあってはならない事態です。
体験版のプログラムから完全に不要なデータを削除する「クリーンアップ作業」には膨大な手間がかかるため、情報漏洩のリスクをゼロにする最も確実な方法は「体験版のデータをユーザーの端末にダウンロードさせないこと」に他なりません。
これは、ファンに最高の状態で物語を体験してほしいという、開発陣からの不器用なメッセージであるとも受け取れます。
独自のエンジン「RE ENGINE」の現在地
汎用エンジンとしての成熟と複雑化
カプコンの躍進を支えている中核技術が、自社開発の「RE ENGINE(アールイーエンジン)」です。
バイオハザード7から本格的に導入されたこのエンジンは、当初は閉鎖的で暗い空間をリアルに描画する「ホラー特化型」のエンジンとしてスタートしました。
しかし現在では、デビルメイクライのようなハイスピードアクションから、ストリートファイターのような対戦格闘、さらにはモンハンのような広大なオープンワールドまで、あらゆるジャンルをカバーする汎用性の高いエンジンへと進化を遂げました。
表現力向上に伴う調整の難航
エンジンの汎用性が高まる一方で、内部のプログラムはより複雑化し、作品ごとのチューニング(調整)の難易度も跳ね上がっています。
「レクイエム」において、広大な探索エリアや、これまでにない数の敵が同時に出現するようなシチュエーションが用意されている場合、RE ENGINEの限界に挑むような極限の調整が行われているはずです。
特定の場所で処理落ちが発生したり、テクスチャの読み込みが遅れたりする不具合を、発売日までに一つ残らず潰していく作業は、我々の想像を絶する苦労を伴います。
このエンジン挙動の最終的な安定化に全リソースを注ぎ込んでいるため、体験版という「寄り道」をしている余裕がないというのが、技術的な側面から見た最も有力な未配信の理由です。
発売直前サプライズ配信の可能性
仁王シリーズなどにみる直前配信のトレンド
ここまで「体験版が出ない理由」を論じてきましたが、完全に望みが絶たれたわけではありません。
近年では、コーエーテクモゲームスの『仁王』シリーズなどのように、発売のわずか1週間前、あるいは数日前にサプライズ的に体験版を配信するケースも増えています。
これは、プロモーション期間を極限まで圧縮することで、ユーザーの熱狂を一気にピークに持っていき、そのまま発売日の購入へと直結させるという手法です。
カプコンもこのトレンドを分析し、「最も効果的にバズを生み出せるタイミング」を虎視眈々と狙っている可能性は十分に考えられます。
レオン編か、グレース編か。予測されるプレイ内容
もし仮に、発売の数日前に体験版が配信された場合、プレイヤーはどのような体験を味わうことになるのでしょうか。
本作は、歴戦の勇士であるレオンと、新たなヒロインであるグレースの異なる視点で物語が進むと予想されています。
ホラーゲームとしての純粋な「恐怖」や「無力感」を体験版でアピールしたいのであれば、戦闘能力が未知数で、逃げ隠れすることが中心となるであろう「グレース編」の序盤を遊ばせるのが定石です。
暗闇の中をビクビクしながら進み、未知の脅威から逃げ延びる体験は、プレイヤーの心臓を掴むには十分です。
一方で、進化したアクション性や爽快な銃撃戦をアピールしたいのであれば、体術や多彩な武器を使いこなす「レオン編」をプレイさせるでしょう。
個人的には、過去のRE:4の体験版が大好評だったことを踏まえると、アクション全開で超楽しいレオンの戦闘シーンの一部を切り取って提供する可能性が高いと予測しています。
いずれにせよ、配信されれば世界中のサーバーがパンクするほどのアクセスが殺到することは間違いありません。
まとめ
本レビューでは、『バイオハザード レクイエム』の体験版がなぜ未だに配信されないのか、その背景にあるカプコンの戦略や業界の動向について深く考察してきました。
結論として、以下の複合的な要因が絡み合っていると推測されます。
- 最適化への恐怖: 過去作での教訓から、フレームレート等の問題でSNSや技術検証メディアから批判されるリスクを極限まで排除したいという慎重な姿勢。
- Switch2との調整: スペックの異なる次世代機との同時展開において、パフォーマンスの比較によるネガティブキャンペーンを防ぐための情報統制。
- 開発リソースの集中: 体験版作成にかかる莫大なコストと時間を削減し、本編のブラッシュアップとRE ENGINEのチューニングに全力を注ぐため。
- ネタバレの防止: データマイニングによるストーリーや重要システムの漏洩を防ぎ、プレイヤーの純粋な驚きを保護するため。
待ちわびるファンとしては非常に歯痒い状況ですが、これも全ては製品版を最高の状態で届けるための「産みの苦しみ」であると捉えるべきでしょう。
カプコンの開発力を信じるならば、この沈黙の先には、我々の想像を凌駕する極上のサバイバルホラー体験が待っているはずです。
発売の1週間前に突突如として体験版がドロップされるサプライズに一縷の望みを託しつつ、今はただ、静かにその時を待ちたいと思います。
筆者情報
筆者:桐谷シンジ フリーランスのゲーム攻略ライター。慶應大学卒業後、大手出版社を経て、現在に至る。 幅広いゲームに携わるが、主にRPG/FPS/サンドブロック系のゲームを得意とする。 独自の視点でのシステム考察や、ハードウェアの技術的な分析を交えたレビューに定評がある。 最近の悩みは趣味の時間が取れず、積みゲーが100作品を超えたこと。 本作『レクイエム』に向けて、過去シリーズをすべて最高難易度で再プレイし準備を整えている。























