編集デスク ゲーム攻略ライターの桐谷シンジです。今回も多く寄せられている質問にお答えしていきます。
この記事を読んでいる方は、SNSやレビューサイトで話題沸騰中の「ドラゴンクエスト7 リイマジンド(以下、DQ7リイマジンド)」の評価が、なぜこれほどまでに高いのか気になっていると思います。
かつて「人を選ぶ名作」「鬱ゲー」「プレイ時間が長すぎる」と言われたあのDQ7が、令和の技術でどのように生まれ変わったのか。
この記事を読み終える頃には、なぜ本作が「神リメイク」と呼ばれているのか、その理由と導入されている革新的なシステムの全貌、そして懸念点まで含めた全ての疑問が解決しているはずです。
- 賛否両論だったキーファの離脱劇が納得の感動シナリオへ昇華
- クリア時間を100時間から35時間に凝縮した驚異のタイパ設計
- 人形劇調のグラフィックとフルボイスが織りなす没入感
- 古参ファンこそ知っておくべき「あえて削られた」要素の真実
それでは解説していきます。
伝説の「鬱ゲー」が令和に「神ゲー」として蘇った理由
1996年の発表から延期を繰り返し、2000年にPlayStationで発売されたオリジナル版『ドラゴンクエストVII エデンの戦士たち』。石版を集めて世界を修復するという壮大なシナリオは高く評価されたものの、その膨大なプレイ時間、難解な謎解き、そしてあまりにも救いのない「鬱展開」の連続に、プレイヤーの心は何度も折られかけました。
しかし、今回発売された「リイマジンド」版は、Steamでの高評価率90%を記録。HD-2D版ドラクエ3リメイク(53%)や、ドラクエ1&2リメイク(83%)を凌駕するスコアを叩き出しています。
なぜ、最も賛否が分かれるはずの「7」が、これほどまでに受け入れられたのか。その核心は「現代のプレイヤーへの徹底した歩み寄り」と「原作への深いリスペクト」の融合にあります。
ドール調グラフィックが描く「儚くも美しい」世界観
本作を起動して最初に目を奪われるのは、その独創的なグラフィック表現です。
原作のPS版は、2Dのドット絵キャラクターと3Dマップを融合させた独特のスタイルでした。対して本作は、キャラクターやオブジェクトを「人形(ドール)」のような質感で描くアプローチを採用しています。
| 特徴 | PS版(オリジナル) | リイマジンド版 | 演出効果 |
|---|---|---|---|
| キャラ表現 | 2Dドット絵 | ドール調3Dモデル | 寓話的で少し不気味な雰囲気を強調 |
| 背景美術 | 初期の3Dポリゴン | ジオラマ風CG | 箱庭を覗き込むような没入感 |
| イベント | テキストのみ | フルボイス+演技 | 感情の機微がダイレクトに伝わる |
この「ドール調」という選択は、ドラクエ7が持つ「過去と現在を行き来する」「石版の中の世界を冒険する」という設定と極めて親和性が高いのです。まるで、プレイヤー自身が神の視点で、箱庭の中で繰り広げられる悲劇と再生の物語を観測しているかのような感覚。
ジオラマのような背景美術は、ボカシを効かせたライティングにより、どこか懐かしく、そして切ない「エデンの戦士たち」の世界観を完璧に表現しています。
宮野真守氏の熱演が光る!「キーファ」という存在の再定義
ドラクエ7を語る上で避けて通れないのが、主人公の親友であり、グランエスタード王子の「キーファ」の存在です。
原作をプレイした方ならご存知でしょう。「種泥棒」という不名誉なあだ名をつけられ、物語の序盤でパーティーを永久離脱してしまう彼の行動は、長年ファンの間で議論の的となってきました。
- 原作の課題: 離脱の理由が唐突に感じられ、残された主人公やマリベルへの配慮が欠けているように見えた。
- リイマジンドの解答: 心理描写の徹底的な深掘りと、新エピソードの追加。
本作では、キーファのCV(キャラクターボイス)に宮野真守氏を起用。このキャスティングが絶妙です。若さゆえの情熱、王族としての重圧、そして自分の居場所を探し求める葛藤。宮野氏の演技が、キーファという青年の「揺れ動く心」に説得力を持たせています。
ユバール族との邂逅、そして決断までのプロセス
特に評価が高いのが、彼が過去の世界に残ることを決意する「ユバール族」のシナリオにおける演出強化です。
原作では描写不足だった「なぜライラ(ユバールの踊り手)に惹かれたのか」「なぜ王子の地位を捨ててまで過去に残る必要があったのか」という点が、追加されたイベントシーンと丁寧なセリフ回しによって補完されています。
彼の行動が「身勝手な家出」から「一人の人間としての自立と決断」へと昇華されたことで、プレイヤーは納得感を持って彼を送り出すことができるようになりました。私自身、かつては彼に憤りを感じた一人でしたが、今作のラストシーンでは目頭が熱くなるのを止められませんでした。
ツンデレの元祖「マリベル」の可愛さが限界突破
もう一人の幼馴染、マリベルの評価も爆上がりしています。
原作から「口の悪いお嬢様」として知られていましたが、フルボイス化と表情豊かなモーションがついたことで、その「ツン」と「デレ」の破壊力が倍増しました。
- 戦闘中の掛け合い: 状況に応じたセリフが大幅に追加。
- イベントシーン: 主人公を心配する際の細かな表情の変化。
単なるワガママではなく、根底にある主人公への信頼や愛情が伝わりやすくなっており、彼女をパーティーから外したくないと思わせる魅力に溢れています。
現代人のライフスタイルに最適化した「超・時短設計」
「ドラクエ7はクリアまで100時間かかる」。これは当時のRPGとしては誉め言葉でもありましたが、忙しい現代人にとってはプレイを躊躇させる最大の壁でもあります。
本作の開発チームは、この「時間の壁」を破壊するために、驚くべき決断を下しました。
「迷う時間、歩く時間、稼ぐ時間を徹底的にカットする」
その結果、クリアまでのプレイタイムは35時間〜40時間程度にまで短縮されています。これは単なるボリューム不足ではありません。「YouTubeの編集動画」のように、無駄な「間」をカットし、美味しいところだけを凝縮した結果なのです。
「すごすぎる聖水」に見る、お使いイベントの大胆な改変
具体的な改善例として挙げられるのが、序盤の重要アイテムにまつわる変更です。
原作では、2つ目の島へ行くために必要なアイテムを入手するため、一度現代に戻り、再び過去へ行くという「お使い」が発生しました。これは世界観を理解させるための手順でしたが、テンポを著しく阻害していました。
リイマジンド版では、試練の報酬として「すごい聖水」というキーアイテムがその場で手に入り、現代に戻ることなく物語が進行します。
「行ったり来たり」を極限まで減らし、物語の進行を一本化する。こうした細かな調整がゲーム全体に施されており、プレイヤーは「次に何をすればいいか分からない」というストレスから解放されています。
移動のストレスをゼロにする「ルーラ」の革命
移動システムの改善も劇的です。
- 室内ルーラ解禁: 天井のある場所でも頭をぶつけません。
- 過去ルーラ解禁: 原作では使えなかった過去世界でも使用可能。
- 消費MP0: MPを気にせず、いつでもどこでもワープ可能。
- ダッシュ機能: フィールド移動が爆速に。
これに加え、詳細な「目的地マーカー」が常に表示されるため、広大なマップで迷子になることがありません。これらは「冒険感」を薄めるという批判もあるかもしれませんが、ストーリーをテンポよく楽しみたい層にとっては、これ以上ない恩恵と言えるでしょう。
戦闘システムの進化:序盤から「ドラクエ」ができる喜び
DQ7のシステム面での大きな特徴といえば「転職システム」ですが、原作ではダーマ神殿に到達して転職が可能になるまで(プレイ時間にして20時間近く)、ひたすら「たたかう」と少数の呪文だけで戦う必要がありました。
この「下積みの長さ」が、多くのプレイヤーを脱落させた要因の一つです。
初期職の導入と「キノコ狩り」以前の戦略性
今作では、ゲーム開始直後から「職業ランク」のような概念が導入され、レベルアップとは別に特技を習得していきます。
例えばキーファの場合:
- ランク3:「気合いため」習得
- ランク5:「いなずま斬り」習得
これにより、序盤から「ためて攻撃」「属性弱点を突く」といった戦略的なバトルが可能になりました。ただ殴るだけだった戦闘が、最初から「RPG」として機能しているのです。
爽快感を加速させる「バースト技」
さらに新要素として「バースト技」が追加されました。戦闘中にゲージを溜めることで発動できる必殺技で、戦況を一気に覆す威力を持っています。
- 演出: 派手で短時間のカットイン
- 効果: 大ダメージ、全体回復、バフ・デバフなどキャラごとに異なる
このシステムにより、ザコ敵の掃討がスムーズになり、ボス戦では逆転の一手として機能します。テンポ感を損なわず、バトルの爽快感を底上げすることに成功しています。
育成の自由度を高める「職の掛け持ち」と熟練度
リイマジンド版では、職業の熟練度システムも見直されています。
特筆すべきは「職業の掛け持ち」的な運用が可能になった点です。これにより、上級職への転職条件を満たすための育成ルートが緩和され、より自由に、より自分好みのパーティー編成を楽しむことができるようになりました。
石版探しはもう怖くない?ストレス要因の徹底排除
「石版が見つからない」。これはDQ7プレイヤー共通のトラウマです。
世界中に散らばった石版の破片を一つでも取り逃すと、物語が先に進まない。しかも、どこにあるかのヒントは皆無に近い。この仕様が、かつて多くの勇者を挫折させました。
「導きの声」とレーダー機能
今作では、石版に関するストレスが完全に解消されています。
- ミニマップ表示: 近くにある石版がマップ上にアイコン表示される。
- 目的地マーカー: 次の石版がある場所をピンポイントで指し示す。
- 石版リスト: 取り逃した石版が「どの時代の」「どのエリアにあるか」が一覧で分かる。
- 案内人のヒント: 具体的に次に何をすべきか教えてくれる。
「探す楽しみがなくなった」という意見もあるでしょう。しかし、広大な3Dマップの隅々まで視点変更して床を調べ回る作業が「楽しさ」に繋がっていたかというと、疑問符がつきます。現代のゲームデザインとして、この親切設計は正解だと断言できます。
全滅のリスクを管理する「自動復活」
驚くべき仕様変更の一つが、「戦闘終了後の自動復活」です。
戦闘中にHPが0になり死亡したキャラクターも、戦闘が終わればHP1で復活します。 原作では、死んだ仲間を生き返らせるには教会へ行き、高いゴールドを払うか、貴重なアイテムを使う必要がありました。ダンジョンの奥深くで僧侶役が倒れた時の絶望感は、ドラクエの醍醐味でもありましたが、今作では「リトライのしやすさ」が優先されています。
これにより、ダンジョン探索中に街へ戻る必要がなくなり、物語への没入感が途切れることがなくなりました。
「ヌルゲー」化を回避する究極のコンフィグ機能
ここまで読んで、「便利になりすぎて、歯ごたえがないのでは?」と不安になった古参ゲーマーの方もいるでしょう。
安心してください。今作には、その不安を払拭する「細かすぎる難易度設定」が搭載されています。
3段階のプリセットと詳細なカスタム設定
基本となる難易度は以下の3つです。
- 楽ちんプレイ: ストーリーを楽しみたい人向け。ほぼ負けません。
- バッチリ冒険: 標準的なバランス。
- 茨の道: 原作以上の緊張感を求める人向け。
さらに、カスタム設定では以下の項目を個別に調整可能です。
| 設定項目 | 調整内容 | プレイへの影響 |
|---|---|---|
| 与えるダメージ | 0.5倍〜2.0倍 | 敵の硬さを調整 |
| 獲得経験値 | 少ない・普通・多い | レベル上げの速度を管理 |
| 獲得ゴールド | 少ない・普通・多い | 装備購入の難易度変化 |
| 敵の強さ | 弱い・普通・強い | AIの賢さやステータス変化 |
| 戦闘後回復 | あり・なし | リソース管理の厳しさを変更 |
デフォルトでは難易度が低めに設定されており、オートバトルでもサクサク進めます。しかし、「敵の強さ:強い」「獲得経験値:少ない」に設定すれば、一転して「死と隣り合わせ」のハードコアRPGに変貌します。
この「自分で遊び方を決められる」懐の深さこそが、ライト層からコア層まで幅広く受け入れられている要因です。
光があれば闇もある:リメイク版の抱える課題と注意点
ここまで絶賛してきましたが、公平なレビューのために、本作の「合わないかもしれない点」や「失われた要素」についても触れておかなければなりません。
失われた「カジノ」と「移民の町」
効率化の代償として、いくつかの寄り道要素が削除されています。
- カジノ: スロットやポーカーでコインを稼ぎ、強力な装備を早期入手する楽しみはなくなりました。
- 移民の町: 各地から人を集めて町を発展させるシムシティ的な要素もカットされています。
- モンスターパーク: モンスターを懐かせて集める収集要素も削除。
これらはストーリー本筋には影響しませんが、ドラクエ特有の「脇道に逸れる楽しさ」を愛していたファンにとっては、大きなマイナスポイントとなり得ます。
UIの変革:ドラクエらしさの喪失
メニュー画面やコマンド選択のUI(ユーザーインターフェース)が、従来のドラクエ式から大きく変更されています。
黒いウィンドウに白文字が並ぶあの伝統的なスタイルではなく、FFやテイルズオブシリーズに近い、グラフィカルで現代的なデザインになっています。 機能的で見やすい反面、「これはドラクエではない」と感じるオールドファンも少なくないでしょう。特に、一目で全ての情報を把握しづらくなったという意見も見受けられます。
「冒険の重み」の希薄化
移動が快適になり、全滅のリスクが減ったことで、ダンジョン攻略における「緊張感」や「達成感」は確実に薄れています。
「MPが尽きかけ、薬草もない状態で、命からがらボスを倒して地上に戻った時の安堵感」。そういった泥臭い体験は、本作では味わいにくいかもしれません。マップ滞在時間が短くなったことで、各エリアへの愛着が湧く前に次のエリアへ進んでしまう、という弊害も生まれています。
それでも残るストーリーの「暗さ」
システムは快適になりましたが、シナリオの根本にある「鬱展開」は健在です(一部マイルドにはなっていますが)。
- 救われない村人たち
- 人間の醜い部分を描いたエピソード
- 終わりのない石版集めという構造
これらはドラクエ7のアイデンティティですが、人によっては「暗すぎて気が滅入る」という感想を持つかもしれません。特に高画質になったことで、悲劇の描写がより生々しくなっている点は、覚悟しておく必要があります。
まとめ:DQ7リイマジンドはドラクエの未来を示すマイルストーン
リメイク版「ドラゴンクエスト7 リイマジンド」は、過去の遺産をただ綺麗にするだけでなく、現代のゲーム文脈に合わせて再構築(リイマジン)した意欲作です。
本作をおすすめできる人:
- かつてDQ7を途中で投げ出してしまった人
- 忙しくてRPGに100時間もかけられない社会人
- 重厚なストーリーとキャラクターのドラマを楽しみたい人
- 宮野真守氏をはじめとする声優陣の演技を堪能したい人
本作をおすすめできない人:
- カジノや移民の町などの寄り道要素を重視する人
- 昔ながらの不便さも含めて「ドラクエ」だと考える原理主義的なファン
- 高難易度のリソース管理を楽しみたい人(ただし設定である程度カバー可能)
私、桐谷シンジとしては、このリメイクは**「大成功」**だと評価します。
シリーズ屈指の「問題児」だったDQ7を、ここまで遊びやすく、かつエモーショナルな作品に仕上げた手腕は称賛に値します。特に、物語の核心部分における演出強化は、オリジナル版をプレイ済みの人こそ体験すべきものです。
この「リイマジンド」の手法が確立されたことで、今後期待される「天空シリーズ(4・5・6)」のリメイクにも、明るい光が差し込んだと言えるでしょう。ドラクエの歴史が、また一つ大きく動き出しました。
筆者情報
桐谷シンジ(きりたに・しんじ)
フリーランスのゲーム攻略ライター。慶應義塾大学卒業後、大手出版社でのゲーム誌編集を経て独立。主にRPG、FPS、サンドボックス系のゲームを得意とし、攻略記事からコラムまで幅広く執筆。 徹底したデータ検証と、いちゲーマーとしての熱量あるレビューに定評がある。 最近の悩みは、取材と称してゲームをする時間が増えすぎ、趣味として純粋に遊ぶ「積みゲー」が100作品を超えて崩壊寸前であること。好きなドラクエ呪文は「パルプンテ」。




















