編集デスク ゲーム攻略ライターの桐谷シンジです。今回も多く寄せられている質問にお答えしていきます。
この記事を読んでいる方は、あの賛否両論で知られる名作がついにリメイクされたこと、そして海外で予想外の高評価を得ている背景が気になっていると思います。特に「ドラクエ7」といえば、そのボリュームと陰鬱なストーリー、石板集めの難易度から、国内でも評価が分かれる作品です。それが現代の技術で「リイマジンド」として蘇り、なぜメタスコア83点という高得点を叩き出したのか。
この記事を読み終える頃には、海外メディアが絶賛したポイントと、逆に指摘された課題点、そして本作が今後のスクウェア・エニックス作品に与える影響についての疑問が解決しているはずです。
- 海外メディアが称賛する「現代的メカニクス」と「視覚的進化」の融合
- 賛否が分かれる「難易度の緩和」と「発見の喜び」のトレードオフ
- JRPGの金字塔として再評価されるシナリオと杉山音楽の普遍性
- 今後のFF6やクロノトリガーのリメイクへの期待と「テンプレート」としての価値
それでは解説していきます。
メタスコア83点が示す「ドラクエ7リイマジンド」の立ち位置
海外におけるドラゴンクエストシリーズの評価の変遷
今回、Dragon Quest VII Reimagined(ドラクエ7 リイマジンド)がメタスコア83点を記録したことは、単なる数値以上の意味を持っています。まず、前提として知っておくべきは、海外市場におけるドラゴンクエスト(以下DQ)の立ち位置です。
日本では「国民的RPG」として不動の地位を築いているDQシリーズですが、北米を中心とした海外市場では、長らくファイナルファンタジー(FF)の後塵を拝してきました。ターン制コマンドバトルや、古典的な勇者の物語は「古臭い」と捉えられることが多かったのです。しかし、『ドラゴンクエストXI 過ぎ去りし時を求めて』がメタスコア91点という驚異的なスコアを記録したことで、潮目が変わりました。
直近の『ドラゴンクエストIII HD-2D』も84点前後と安定しており、今回の『ドラクエ7』の83点は、それに次ぐ高評価です。特に「7」は、オリジナル版(PS版)の発売当時、その膨大なテキスト量とスローペースな展開から、海外ではコアなファン以外には敬遠されがちなタイトルでした。それが80点台半ばに迫るスコアを獲得したことは、本作のリメイク手法が現代のグローバルスタンダードに適合したことを証明しています。
国内外のレビューに見る共通点と相違点
驚くべきことに、今回の海外レビューの内容を精査すると、日本の我々が抱く感想と非常に近い感覚を持っていることがわかります。
海外のレビュアーたちは、かつてのように「JRPGは古い」と一蹴するのではなく、その古典的な良さを理解した上で批評しています。トータル83点の内訳を見ると、100点満点をつけるメディアもあれば、80点台、90点台をつけるメディアも多数存在します。一方で、70点台や60点台をつける辛口メディアも存在し、その評価軸は明確に分かれています。
この「評価の割れ方」こそが、ドラクエ7という作品が持つ特異性を浮き彫りにしています。次項からは、具体的に何が評価され、何が批判されたのかを深掘りしていきましょう。
海外メディアが絶賛した「現代的進化」と「視覚体験」
スクウェア・エニックス史上「最も大胆なリメイク」との評価
ある海外レビューメディアは、本作を「スクウェア・エニックスが手掛けた最も大胆なリメイクの一つ」と評しました。この言葉の重みは計り知れません。
『FF7リメイク』のようなアクションRPGへの完全転換ではなく、あくまで古典的なコマンドRPGの文法を守りつつ、現代的なゲームデザインを取り入れたバランス感覚が評価されています。具体的には以下の点が挙げられます。
- 古典の尊重: ターン制バトルや転職システムといった根幹を崩していない。
- 現代的デザインの導入: 快適なUI、倍速機能、オートセーブ、ナビゲーションの強化。
これらが融合することで、「懐かしいけれど新しい」という理想的なリメイク体験を提供しています。特に「視覚的に圧倒的で感情に響く」という評価は、陰鬱で重厚なストーリーを持つドラクエ7の世界観と、最新のグラフィック技術が化学反応を起こした結果と言えるでしょう。
「ドールルック」と3Dグラフィックの親和性
本作のグラフィック表現について、海外レビュアーからは肯定的な意見が多く寄せられています。キャラクターの等身や質感、いわゆる「ドールルック(人形のような見た目)」と、3D化されたフィールドの親和性が高いと評価されています。
ドラクエ8以降のリアル等身路線とは異なり、少しデフォルメされたキャラクターたちが、緻密に描かれた3D背景の中を動く様は、箱庭的な魅力を増幅させています。一部のユーザーからは「ドラクエ8ならこのスタイルは合わなかっただろう」という意見もありますが、ドラクエ7という、ある種寓話的で、しかし残酷な世界観を持つ作品においては、このビジュアルスタイルが物語の悲劇性を中和しつつ、没入感を高める役割を果たしています。
杉山こういち氏による音楽の普遍的な魅力
「サウンドトラックは相変わらず崇高である」。多くの海外レビューで共通して語られているのが、音楽への賛辞です。
すぎやまこういち氏が手掛けたドラクエ7の楽曲は、シリーズの中でも特に哀愁漂う旋律が多いことで知られています。石板の世界の重苦しい雰囲気、絶望から希望へと向かう際のファンファーレ、そして戦闘曲の勇ましさ。これらは言語の壁を超えて、海外プレイヤーの感情を揺さぶっています。
「クラシックでありながらモダンでもある音楽」という表現は、オリジナルの楽曲が持つ普遍的なメロディラインが、現代の高品質な音源で再録音(あるいはリマスター)されたことによる感動を表しています。日本の我々だけでなく、海外のゲーマーもまた、この旋律に「魂」を感じているのです。
ゲームプレイの評価|「アクセシビリティ」と「歯ごたえ」の対立
新規プレイヤーを取り込むための「平坦化」
高評価の一方で、明確に批判、あるいは懸念点として挙げられているのが「難易度の低下」と「過剰な親切設計」です。
IGNなどの大手メディアは、「新規プレイヤー向けに体験を平坦にしている」と指摘しました。具体的には以下の要素が挙げられます。
- 行き過ぎたナビゲーション: 次に行くべき場所が常に示され、迷うことがない。
- デスペナルティの緩和: 戦闘不能になっても、戦闘終了後にHP1で自動復活する仕様(設定で変更可能な場合もあるが、デフォルトが易しい)。
- 石板探しの簡略化: かつてプレイヤーを苦しめた石板探しが、レーダーやヒント機能により「作業」化している。
これらは、現代の忙しいゲーマーや、初めてドラクエに触れる層にとっては「神機能」であり、挫折せずにエンディングまで到達させるための配慮です。しかし、これが古参ファンや、JRPGに「探索の苦しみと、それを乗り越えた時の達成感」を求める層には、「魂が抜けた」と感じさせる要因になっています。
「発見の喜び」の喪失という代償
「シリーズに期待される挑戦や発見を犠牲にしている」。この指摘は非常に鋭いものです。
オリジナルのドラクエ7は、ノーヒントに近い状態で世界を探索し、断片的な情報を繋ぎ合わせて石板を見つけ、未知の世界への扉を開くことにカタルシスがありました。「どこに行けばいいのかわからない」という迷いすらも、冒険の一部だったのです。
リイマジンド版では、プレイヤーが望もうと望まざるとに関わらず、手取り足取り導いてしまう傾向があります。これにより、「自分で謎を解いた」という感覚が薄れ、「マーカーに従って移動しているだけ」という感覚(やらされている感)を生んでしまう可能性があります。
レビューの中で「アクセシビリティ機能を過剰に追求した結果、冒険が時に簡単すぎる」と述べられているのは、この「迷う楽しさ」を現代のユーザビリティが奪ってしまったことへの警鐘でしょう。
職業システムが生み出す新たな戦術と課題
戦闘面においては、ドラクエ7の大きな魅力である「職業システム(ジョブシステム)」が高く評価されています。
「私にとって最高のジョブシステムを備えた壮大なRPG」と評するレビュアーがいるように、多数の職業を極め、特技を組み合わせる育成の楽しさは健在です。今作では、2つの職業を組み合わせることで「意外性のある戦術」が可能になるとされており、単なるステータスの足し算ではない、戦略的な深みが増しているようです。
しかし、ここでも「難易度の低さ」が影を落とします。「強力でありながら意外性のある戦術」が可能だとしても、肝心の敵が弱すぎたり、こちらの回復機能が充実しすぎていれば、その戦術を駆使する必要がなくなってしまいます。「ごり押し」で勝ててしまうバランスであれば、せっかくの洗練されたジョブシステムも宝の持ち腐れになりかねません。
「発売後のバランス調整が依然として必要」という意見が出るのも、このシステムと難易度のミスマッチが原因と考えられます。
シナリオ構造への賛否|断片的な物語の是非
エピソード形式の「ショートストーリー」の連続
ドラクエ7のシナリオは、シリーズの中でも特殊です。大きな魔王を倒すという大目標はあるものの、ゲームプレイの大半は、石板で飛んだ先々の小さな村や島で起こる悲劇や事件を解決していく「オムニバス形式(エピソード形式)」で進行します。
この構造について、肯定的なレビューは「島々を巡り、世界の脅威を一つずつ解き明かす過程で、住民たちの本質や対比が浮き彫りになる」と評価しています。各地で出会う人々のドラマ、過去を変えることで現在が変わるタイムパラドックスの妙味。これらは、長大な旅を飽きさせないための工夫として機能しています。
「ペース配分」と「成長の実感」の欠如という批判
一方で、最も低い点数(60点)をつけたメディアなどは、この構造を「深刻なペース配分と構造上の問題」と断じています。
「数十時間にわたりこの手法(タイムトラベルと問題解決)が繰り返されるだけで、メインストーリーの実質的な進展はほとんどない」という指摘です。確かに、ドラクエ7はプレイ時間が100時間を超えることも珍しくなく、その間、延々と「新しい島に行く→問題を解決する」を繰り返すため、物語全体としてのダイナミズムや、主人公たちの精神的な成長、敵対者(オルゴ・デミーラ等)との因縁の深まりが希薄に感じられる瞬間があります。
これは「好みの問題」と言ってしまえばそれまでですが、近年のRPGがシネマティックで濃密なメインストーリー主導型(FFシリーズなど)にシフトしている中で、この「作業の繰り返し」とも取れる構成は、一部の海外ゲーマーには「忍耐を要する古いスタイル」と映ったようです。
しかし、筆者としては、この「断片的な記憶」を積み重ねていくことこそが、最後に世界が一つになった時の感動を生む装置であると考えています。村人のセリフが時間経過とともに変化する細やかさなどは、この形式だからこそ味わえる「生きた世界の描写」なのです。
将来への展望|リメイクの新たな「基盤」として
FF6やクロノトリガーへのリメイク待望論
今回のドラクエ7リイマジンドの成功(メタスコア83点)を受けて、多くのレビューやユーザーの声で挙がっているのが、「この手法で他の名作もリメイクしてほしい」という要望です。
具体的には『ファイナルファンタジーVI(FF6)』や『クロノ・トリガー』の名前が挙がっています。これらの作品は、ドット絵時代の最高傑作と謳われていますが、現代のフォトリアルな3Dグラフィック(FF7リメイクのような)でリメイクされることを望まないファンも一定数います。
今回のドラクエ7で見せた、「オリジナルの雰囲気を残しつつ、3Dと2Dの良さを融合させたビジュアル」「現代的な快適さ」のバランスは、まさにそれらの作品を蘇らせるための「テンプレート(基盤)」になり得ると評価されています。「今後登場するあらゆる新作の基盤となるべき」という言葉は、スクウェア・エニックスに対する強い期待の表れです。
ドラクエ12への影響と方向性
また、本作の評価は、開発中のナンバリング最新作『ドラゴンクエストXII 選ばれし運命の炎』への試金石ともなります。
ドラクエ12は「ダークな大人向けドラクエ」になると予告されていますが、ドラクエ7もまた、本質的には非常にダークな物語です。そのダークな7が、海外でこれほど受け入れられたことは、12の方向性が海外市場でも通用する可能性を示唆しています。
ただし、難易度に関しては課題が残ります。12が「アクション要素」を含むのか、「コマンドバトル」を進化させるのかは不明ですが、今回のように「簡単すぎる」という評価を受けないよう、歯ごたえのある「挑戦」をどのように組み込むかが、今後のドラクエブランドの評価を左右するでしょう。
まとめ
今回の【DQ7リメイク】リイマジンドがメタスコア83点を獲得した背景には、以下の4つの主要因がありました。
- 見事な現代化: 古典的なJRPGの良さを残しつつ、UIやグラフィックを現代水準に引き上げたこと。
- 独自のビジュアルと音楽: ドールルックな3Dと杉山音楽が、海外プレイヤーの感性にも響いたこと。
- ジョブシステムの深み: 戦略的な育成要素が評価されたこと。
- アクセシビリティの功罪: 新規層には歓迎されたが、コア層には「簡単すぎる」「発見がない」という不満も残したこと。
総じて、本作は「オリジナル版の熱狂的なファン」や「JRPGの歴史を愛するプレイヤー」にとっては、プレイする価値のある「決定版」と言えます。一方で、高難易度な挑戦や、リニアで劇的なストーリー展開を求めるプレイヤーには、やや退屈に映るかもしれません。
しかし、かつて「人を選ぶ」と言われたドラクエ7が、20年以上の時を経て、海外でこれほど肯定的に受け止められたという事実は、日本のゲーム史においても重要なマイルストーンとなるでしょう。
筆者情報
桐谷シンジ フリーランスのゲーム攻略ライター。慶應大学卒業後、大手出版社を経て、現在に至る。幅広いゲームに携わるが、主にRPG/FPS/サンドボックス系のゲームを得意とする。最近の悩みは趣味の時間が取れず、積みゲーが100作品を超えたこと。
























