編集デスク ゲーム攻略ライターの桐谷シンジです。今回も多く寄せられてる質問にお答えしていきます。
この記事を読んでいる方は、オクトパストラベラー0(以下、オクトラ0)の購入を検討している、あるいは序盤をプレイ中で評価が気になっていると思います。「スマホ版の移植ではないのか?」「ストーリーは面白いの?」といった疑問を持っている方も多いでしょう。
この記事を読み終える頃には、オクトラ0の購入判断に必要な情報や、本作の魅力と欠点の全てが解決しているはずです。
- スマホ版ベースだが完全なコンシューマーRPGとして再構築されている
- 8人パーティ制バトルがシリーズ最高の戦略性とテンポを生んでいる
- 拠点の復興要素が物語への没入感を高め「止め時」を失う面白さ
- クリアまで100時間級の特大ボリュームでコスパは最強クラス
それでは解説していきます。
オクトパストラベラー0とは:シリーズの原点にして最新作
『オクトパストラベラー0』は、HD-2Dというグラフィック表現を世に知らしめたRPGシリーズの最新作でありながら、時系列としては第1作目の前日譚を描くタイトルです。
本作の最大の特徴であり、多くのファンが懸念していたポイントは「ソーシャルゲームである『オクトパストラベラー 大陸の覇者』がベースになっている」という点でしょう。しかし、実際に20時間プレイして断言できるのは、本作は単なる移植や手抜き作品では決してないということです。
スマホ版で展開された膨大なシナリオのうち「サイド・オルステラ」と呼ばれる篇を完全収録し、コンシューマー向けにシステムを最適化。さらに、キャラクターメイクやタウンビルドといった新要素を加えることで、一本の重厚なシングルプレイRPGとして完成されています。
開発者が語る「クリアまで100時間」の圧倒的ボリューム
事前のインタビューなどで開発者が「まっすぐ進めてもクリアに100時間はかかる」と発言していましたが、これは誇張ではありません。
実際にプレイを開始して10時間ほどで「キリの良いところ」を探そうとしましたが、物語の密度とやれることの多さに圧倒され、気づけば20時間が経過していました。スマホ版では長期運営で追加されてきたシナリオ(「富・権力・名声」の各ルートに加え、その後の「授けし者」編など)が含まれているため、従来のパッケージソフト1本分を遥かに超えるテキスト量と探索要素が詰め込まれています。
もしあなたが「長く遊べるRPG」を探しているのであれば、本作は間違いなく最有力候補となるでしょう。
ストーリー評価:復讐と復興を描く重厚な物語
ウィッシュベールの悲劇から始まるプレイヤー自身の物語
本作の導入は非常にショッキングです。主人公の故郷である「ウィッシュベール」という小さな村が何者かによって襲撃され、壊滅状態になるところから物語は始まります。
従来のシリーズでは、あらかじめ設定された8人の主人公から1人を選んでスタートしていましたが、本作では「プレイヤー自身」が主人公となります。キャラクターメイクシステムが導入され、見た目や髪型、さらには「好きな食べ物」といった細かい設定まで自分で決めることができます。
これにより、物語への没入感が格段に向上しました。「復讐」という暗い情念を原動力にしつつも、散り散りになった村人を探し出し、故郷を再建していく「復興」のプロセスが、プレイヤー自身のモチベーションと完全にリンクします。
「大陸の覇者」シナリオの巧みな再構築
ベースとなっているのはスマホ版『大陸の覇者』のシナリオですが、これをシングルプレイ用に非常に綺麗に落とし込んでいます。
スマホ版ではガチャでキャラクターを増やし、断片的に物語を追う形式でしたが、本作ではシームレスに物語が展開します。「富・権力・名声」という3つの大きな軸となる物語があり、プレイヤーはそれぞれの巨悪に立ち向かっていくことになります。
特に序盤のボスたちの「悪役ぶり」は素晴らしく、プレイヤーに「絶対に倒してやる」と思わせる強烈なキャラクター性を持っています。ソシャゲ特有の「引き伸ばし感」は感じられず、むしろ濃密な群像劇として楽しむことができます。
オルステラ大陸の違和感とゲーム的な割り切り
一方で、少し気になった点についても触れておきます。これはシリーズ通しての課題でもありますが、隣接している町や地域なのに、文化や抱えている問題があまりにも分断されている点です。
「すぐ隣の町が極悪人に支配されているのに、こちらの町は平和そのもの」といった状況が散見され、世界観の連続性という点では少々ご都合主義を感じる場面があります。とはいえ、これは「エリアごとに全く異なる体験を提供する」というゲーム的な面白さを優先した結果とも言え、プレイの快適さを損なうほどではありません。
ゲームシステム:洗練された探索と育成
ストレスフリーに進化したフィールドコマンド
オクトパストラベラーシリーズの代名詞とも言える「フィールドコマンド(試合、買取、聞き出す、誘惑など)」ですが、本作ではこれが劇的に遊びやすく進化しています。
これまでは「このコマンドを使うには、あのキャラクターをパーティに入れないといけない」という入れ替えの手間が発生していましたが、本作は主人公1人で全ての役割を担うことができます。
- 情報の聞き出し
- アイテムの入手
- NPCの勧誘
- NPCとの戦闘
これらを主人公のアクションとして集約したことで、町に着いてからの探索テンポが格段に向上しました。特に「町の人をスカウトして拠点に連れて帰る」という本作独自のシステムと、フィールドコマンドが有機的に繋がっており、「ただのコマンド総当たり」ではなく「復興のための人材探し」という意味を持たせている点は見事です。
『幻想水滸伝』を彷彿とさせるタウンビルド要素
本作の隠れた主役とも言えるのが、故郷「ウィッシュベール」を再建するタウンビルド(街づくり)要素です。
物語を進め、各地で出会った人々を勧誘し、資源を集めて施設を建築していく。このプロセスは、名作RPG『幻想水滸伝』の拠点システムに近い中毒性があります。最初は廃墟だった村が、武器屋ができ、宿屋ができ、人が増えて賑やかになっていく様子は、プレイヤーに強烈な達成感を与えてくれます。
このシステムが優れているのは、単なるミニゲームではなく、主人公のステータス強化や強力な装備の入手といった「実利」に直結している点です。「強くなるために街を育てる」という動機づけがしっかりしているため、メインストーリーを放置して素材集めに没頭してしまうこともしばしばです。
また、喋らない主人公(プレイヤー)の「感情」や「人柄」を、この街づくりを通して表現している点も興味深いです。どのような街にしていくか、誰を住まわせるかという選択が、間接的にロールプレイとしての深みを生み出しています。
バトルシステム:8人パーティがもたらす戦略革命
前衛・後衛の入れ替えが鍵を握る総力戦
戦闘システムはシリーズお馴染みの「ターン制コマンドバトル」+「ブレイク&ブースト」を採用していますが、最大の変化は**「常時8人パーティ」**であることです。
前衛4人・後衛4人の計8人が戦闘に参加し、ターン内であれば自由に前後を入れ替えることができます。これが単に「数で押す」大味なバトルになったかというと全く逆で、非常に戦略的かつスピーディな展開を生んでいます。
- 前衛で戦っている間に、後衛はBP(ブーストポイント)が溜まる
- 前衛がピンチになったら、即座にフレッシュな後衛と交代
- ブレイク寸前で高火力の後衛キャラを出して畳み掛ける
従来の4人パーティでは「控えメンバーが育たない」「特定のキャラしか使わない」という問題がありましたが、本作では全員が戦力として機能します。敵の攻撃も8人で戦うことを前提に調整されているため、激しい攻防が楽しめます。
新要素「必殺技」と「セレクトアビリティ」
戦闘のアクセントとして「必殺技」が導入されました。ゲージを溜めて放つ強力なスキルで、戦況を一気に覆す力を持っています。
従来の「奥義」などは習得や発動に手間がかかりましたが、必殺技はよりカジュアルに使え、爽快感重視の調整になっています。これにより、雑魚戦の処理速度が上がり、ボス戦ではここぞという時の切り札として機能します。
また、「セレクトアビリティ」というシステムも秀逸です。冒険中に手に入る「極意」というアイテムを使うことで、キャラクターのジョブに関係なく特定のスキルを付け替えることができます。 「回復役が足りないから、戦士キャラに回復スキルを持たせる」「ボスが火属性弱点だから、全員に火炎魔法をセットする」といった柔軟なカスタマイズが可能で、RPG好きにはたまらない「構築の楽しさ」があります。
良い点・悪い点まとめ
ここで、プレイ20時間時点で感じた本作のメリット・デメリットを整理します。
良い点(メリット)
1. 圧倒的なコストパフォーマンスとボリューム
前述の通り、普通に遊んでも100時間遊べるボリュームは圧巻。ソシャゲ版の数年分のシナリオが凝縮されており、RPGとしての密度は近年稀に見るレベルです。
2. 8人バトルの戦略性とテンポの良さ
人数が増えたことで戦闘が長引くかと思いきや、前後衛の交代システムにより、むしろテンポは向上しています。全キャラクターに役割を持たせやすく、死にキャラが出にくい設計は素晴らしいの一言。
3. 「自分だけの物語」を感じさせるロールプレイ性
アバター作成とタウンビルドの組み合わせにより、「与えられた物語」ではなく「自分が切り拓く物語」という感覚が強いです。オクトラシリーズが目指していた「旅の自由度」が、主人公をプレイヤー自身にすることで完成形に近づいた印象を受けます。
4. システムの断捨離と最適化
『オクトパストラベラー2』では要素を盛り込みすぎて複雑化していた部分(昼夜切り替えの手間など)が整理され、遊びやすさに特化しています。複雑すぎず、かつ浅すぎない絶妙なバランスです。
悪い点(デメリット)
1. エリアごとの物語の分断感
大陸としての統一感よりも、各エリアの独立したエピソードを繋ぎ合わせた感が強く、世界観に深く浸りたい人には少々ちぐはぐに映る可能性があります。
2. 主人公が無個性になりがち
プレイヤーアバターである以上仕方ない部分ですが、強烈な個性を持つ仲間たち(総勢30名以上!)に囲まれると、主人公の影が薄くなりがちです。タウンビルドで存在感を出してはいますが、物語の中心にいながらも「観測者」のような立ち位置になる瞬間があります。
3. グラフィックの新鮮味は薄い
HD-2Dは依然として美しいですが、既に多くの作品で使用されているため、シリーズ1作目や『ライブアライブ』リメイクのような感動や衝撃はありません。安定して綺麗、という評価に留まります。
前作(オクトラ2)との比較
多くの人が気になっているであろう、前作『オクトパストラベラー2』との違いを表にまとめました。
| 比較項目 | オクトパストラベラー2 | オクトパストラベラー0 (本作) |
|---|---|---|
| 主人公 | 固定8人から選択 | プレイヤー作成 (アバター) |
| パーティ人数 | 4人 (控えあり) | 8人 (前衛4+後衛4) |
| 物語の構造 | 8人の群像劇クロスオーバー | 1人の主人公+仲間の軍勢 |
| 拠点要素 | 特になし | タウンビルド (復興) |
| フィールドコマンド | キャラごとに固有 (昼夜変化) | 主人公が全て実行可能 |
| プレイ感 | 王道かつ要素多め | ストラテジー要素と育成重視 |
| ボリューム | 約60〜80時間 | 約100時間以上 |
まとめ:RPG好きなら遊ばないと損をする傑作
結論として、『オクトパストラベラー0』は**「シリーズ未経験者でも、既存ファンでも、RPG好きなら間違いなく買い」**の作品です。
「元がソシャゲだから」という理由で敬遠するのはあまりにも勿体無いです。むしろ、運営型のゲームが持っていた膨大なコンテンツ量を、コンシューマーゲームの文法で再構築したことで、とてつもない怪物が生まれたと言っていいでしょう。
特に以下のような人には強くおすすめします。
- コツコツと拠点を育てていくゲームが好き(幻想水滸伝など)
- パーティ編成やスキル構成を考えるのが好き
- 1つのゲームを長くじっくり遊びたい
- 『オクトラ2』が少し複雑すぎて合わなかった
私自身、まだ全体の5分の1程度しか消化できていない感覚ですが、この先どのような展開が待っているのか、そして私のウィッシュベールがどのような街に育っていくのか、楽しみで仕方ありません。
もし購入を迷っているなら、ぜひその一歩を踏み出してみてください。気づけば時間を忘れ、オルステラ大陸の冒険に没頭しているはずです。
最後まで読んでいただき、ありがとうございました。






