ゲーム評論家の桐谷シンジです。 今回も多く寄せられてる質問にお答えしていきます。
この記事を読んでいる方は、リトルナイトメアの主人公シックスがなぜあのような運命を辿ったのか、その理由が気になっていると思います。 特に、相棒であったモノを見捨てるシーンや、時折現れる「黒いシックス」の存在は、多くのプレイヤーの心に大きな謎を残しました。 なぜ彼女は闇に堕ちてしまったのか。 その行動の裏には何が隠されているのか。

この記事を読み終える頃には、シックスの闇堕ちと黒いシックスに関する多くの疑問が解決しているはずです。
- シックスが闇に堕ちていく衝撃の経緯
- 物語の核心となる闇堕ちの引き金の考察
- 謎の存在「黒いシックス」の正体に関する複数説
- シックスの異常な食欲と特殊能力の関係性
それでは解説していきます。

リトルナイトメアの主人公シックスとは?その人物像と物語での役割
リトルナイトメアシリーズを語る上で、主人公シックスの存在は欠かせません。 彼女はか弱き子供でありながら、絶望的な世界を生き抜く強かさを持っています。 しかし、その行動は時に残酷で、プレイヤーに多くの問いを投げかけます。 まずは、シックスというキャラクターの基本情報と、物語の中での彼女の変遷を振り返っていきましょう。
シックスの基本情報:黄色いレインコートの謎
シックスの最も象徴的な特徴は、その小さな体を覆う黄色いレインコートです。 このレインコートは、暗く陰鬱な世界で彼女の存在を際立たせるだけでなく、物語の重要なキーアイテムでもあります。

公式にはシックスの年齢は9歳とされていますが、その出自や過去についてはほとんど語られません。 プレイヤーが知ることができるのは、彼女が「ノーウェア」と呼ばれる悪夢の世界に囚われた子供の一人であるということだけです。
この黄色いレインコートは、モバイル向けにリリースされた前日譚『ベリーリトルナイトメア』で、別の少女が着ていたものであることが示唆されています。 その少女が命を落とした後、レインコートはペイルシティに流れ着き、シックスの手に渡ったと考えられています。 つまり、このレインコートは、シックス以前にもいた犠牲者の象徴であり、ノーウェアの残酷な連鎖を物語っているのです。 シックスがこのレインコートを身につけることは、彼女がこの世界の理不尽さと戦う運命を受け継いだことを意味するのかもしれません。
『リトルナイトメア』でのシックスの行動と変化
初代『リトルナイトメア』の舞台は、巨大な胃袋と呼ばれる船舶「モウ」です。 シックスはここで、強烈な空腹に苛まれながら脱出を目指します。 物語の序盤、彼女は他の子供にパンを分けてもらうなど、か弱い少女として描かれています。
しかし、物語が進むにつれて、彼女の空腹は常軌を逸していきます。 最初はパン、次にネズミ、そしてついには友好的な「ノーム」さえも捕食してしまうのです。 このノームは、DLC『Secrets of The Maw』で、元々は子供であったことが明かされています。 それを知ると、シックスの行動の残酷さがより一層際立ちます。
異常な空腹の正体
シックスを襲う空腹は、単なる生理現象ではありません。 それは彼女の内に秘められた「何か」が目覚めようとしている兆候なのです。 彼女が食事をするたびに、その力は増していくように見えます。 そして最終的に、モウの支配者である「レディ」と対峙したシックスは、彼女を打ち負かし、その力を吸収してしまいます。 レディの力を手に入れたシックスは、モウに巣食うゲストたちの生命力を次々と吸い取りながら、船の出口へと向かうのでした。 この一連の流れは、シックスがモウの新たな支配者になったこと、そして彼女が完全に人ならざるものへと変貌したことを示しています。
『リトルナイトメア2』でのシックス:モノとの出会いと別れ
物語の時系列的には初代の前日譚にあたる『リトルナイトメア2』では、シックスはもう一人の主人公「モノ」と出会い、共に行動します。 当初、シックスはハンターに捕らえられており、モノによって救出されます。 二人は協力して、テレビの電波によって歪められた世界「ペイルシティ」を冒険します。
この作品でのシックスは、モノと手を繋ぎ、助け合いながら進む姿が多く見られ、初代で見せたような残酷さは影を潜めています。 プレイヤーは二人の間に芽生える絆を感じ、この過酷な世界における希望の光を見るでしょう。 しかし、その希望は、物語の最後に無慈悲に打ち砕かれます。
信頼から裏切りへ
物語の終盤、シックスは電波塔の怪物「シグナルマン(後のシンマン)」に連れ去られ、醜い姿に変えられてしまいます。 モノは命がけで彼女を救い出しますが、崩壊する電波塔から脱出する寸前、シックスは崖から落ちそうになるモノの手を掴みながら、意図的にその手を離してしまうのです。 この衝撃的な裏切りによって、モノは奈落の底へと落ち、永い年月を経て次なるシンマンとなってしまいます。 そしてシックスは、一人でテレビの画面から脱出し、初代『リトルナイトメア』の物語へと繋がっていくのです。 この瞬間こそ、シックスの「闇堕ち」が決定づけられた瞬間と言えるでしょう。
シックスが闇堕ちしてしまった理由を徹底考察
シックスの闇堕ちは、リトルナイトメアシリーズ最大の謎の一つです。 なぜ彼女はあのような行動をとったのか。 ここでは、彼女が闇に堕ちてしまった理由について、ゲーム内の描写を基に深く考察していきます。

闇堕ちの兆候:空腹と最初の食事
シックスの変貌の最初の兆候は、初代『リトルナイトメア』で描かれる異常な「空腹」です。 この空腹は、物語が進むごとに彼女の理性を蝕んでいきます。
捕食対象 | 状況 | シックスの変化 |
---|---|---|
パン | 他の子供からの施し | 生存のための食事 |
生肉 | 罠にかかった肉 | ためらいを見せるも、空腹に負ける |
ネズミ | 捕まえたネズミ | 生きたまま捕食し、動物的な側面が表れる |
ノーム | 差し出されたソーセージごと捕食 | 完全に理性を失い、友好的な存在さえも犠牲にする |
レディ | モウの支配者 | 敵の力を吸収し、人ならざる者へ変貌 |
この表からもわかるように、彼女の食事は単なる栄養補給から、生存本能、そして最終的には力の吸収へと目的が変化しています。 特に、元は子供であったノームを食べてしまったことは、彼女が人間としての倫理観を完全に捨て去ったことを象徴しています。 この抗えない空腹こそが、彼女を闇の道へと引きずり込んだ最初の要因であることは間違いないでしょう。
決定的な転機:モノへの裏切り
シックスの闇堕ちを決定づけたのは、紛れもなく『リトルナイトメア2』のラストシーンにおけるモノへの裏切りです。 それまで協力し、絆を深めてきたはずの相棒を、彼女は自らの手で見捨てました。 この行動の理由は、ファンの間で様々な議論を呼んでいます。
なぜシックスはモノを裏切ったのか?複数の説を検証
あの時、シックスの心には何が去来していたのでしょうか。 考えられる複数の説を検証してみましょう。

空腹による理性の喪失説
『リトルナイトメア2』のラストで一人テレビから脱出した後、シックスの腹の虫が鳴る描写があります。 そして、彼女の目の前に「黒いシックス」が現れ、モウのチラシを指し示します。 これは、彼女の行動原理が再び「空腹」に支配され始めたことを示唆しています。 もしかすると、モノを助けることよりも、自身の生存本能(空腹を満たすこと)を優先した結果、あの裏切りに繋がったのかもしれません。 極限状態において、他者を犠牲にしてでも生き延びようとするのは、この世界の残酷な法則に適応した結果と言えるかもしれません。
モノへの不信感・恐怖心説
この説は、シックスがモノの「正体」に気づいてしまったのではないか、という考察です。 モノは物語の終盤、自分を追い詰めるシンマンの帽子を取った時、その素顔が成長した自分自身であることに気づきます。 このループ構造はプレイヤーに衝撃を与えましたが、シックスもまた、何らかの形でモノの未来の姿、つまり自分たちを苦しめた敵の正体を知ってしまった可能性があります。
例えば、モノがテレビに触れて能力を使う際、シックスは彼から距離を取るような素振りを見せます。 また、シンマンに怪物に変えられたシックスは、モノが必死に呼びかけても、元の姿に戻ったのは彼がシンマンの帽子を取った(=正体に気づいた)後でした。 彼女は、目の前にいる少年が、いずれ自分や世界を脅かす存在になることを悟り、その連鎖を断ち切るために、あえて彼を見捨てたのではないでしょうか。 それは彼女なりの、未来への絶望的な抵抗だったのかもしれません。
「悪夢の連鎖」を断ち切るための行動説
これは前述の説と関連しますが、より広い視点からの考察です。 リトルナイトメアの世界は、終わりのない悪夢のループに囚われている可能性があります。 モノがシンマンになり、次の子供(モノ)を誘い込む。 シックスがモウの支配者になり、次の犠牲者を待つ。 シックスは、この絶望的な連鎖に気づき、モノを突き落とすことでループに変化をもたらそうとしたのかもしれません。 もちろん、その結果モノがシンマンになる運命は変わりませんでしたが、彼女の行動がなければ、二人とも電波塔で共倒れになっていた可能性もあります。 彼女の裏切りは、この悪夢から抜け出すための、歪んだ形での唯一の選択だったとも考えられます。
シックス自身の邪悪な本性説
最もシンプルで、そして最も恐ろしい説です。 シックスは元々、自己中心的で残忍な本性を内に秘めていたのではないか、という考え方です。 『2』でモノと協力していたのは、あくまで自分が生き延びるための手段に過ぎず、彼が不要になった、あるいは自分にとって脅威になると感じた瞬間に、ためらいなく切り捨てた。 彼女が時折見せる無邪気さや臆病さは、その本性を隠すための仮面だったのかもしれません。 この説に立つと、彼女の闇堕ちは「堕ちた」のではなく、単に「本性が現れた」だけということになります。
最後の晩餐:レディの力を喰らい、完成する闇
モノとの別れを経てモウにたどり着いたシックスは、もはや後戻りできない状態にありました。 そして、モウの支配者であるレディとの戦いが、彼女の闇堕ちを完成させます。 レディは鏡を嫌うという弱点を突かれ、シックスに敗北します。 シックスは倒れたレディに近づき、その首筋に噛みつき、彼女の持っていたであろう闇の力をすべて吸収します。
この瞬間、シックスの目は暗く光り、彼女の周囲には黒いオーラが立ち上ります。 彼女は新たな力を手に入れ、モウのゲストたちの生命力を吸い取りながら、悠然と出口へと歩いていくのです。 これは、彼女がただ生き延びただけでなく、この歪んだ世界の新たな頂点に立ったことを意味します。 か弱かった少女は、悪夢の世界そのものを体現する存在へと変貌を遂げたのです。
謎に包まれた「黒いシックス」の正体とは?
シックスの闇堕ちと並行して描かれる大きな謎が、「黒いシックス(シャドウシックス)」の存在です。 彼女はゲーム中に度々現れ、シックスを導くような、あるいは見つめているような不可解な行動をとります。 この黒いシックスの正体についても、様々な考察がなされています。
黒いシックス(シャドウシックス)とは何か?出現シーンの解説
黒いシックスは、シックス本人と瓜二つの真っ黒な影のような存在です。 物理的な干渉はしてきませんが、特定の場所で出現し、シックスの進むべき道を示唆したり、意味深な行動をとったりします。
- 初代『リトルナイトメア』での出現: 主にシックスが空腹に襲われる場面で出現します。食べ物を指し示したり、シックスが食事を終えるのを見届けたりします。これは、彼女の食欲や闇の側面が具現化したものであることを強く示唆しています。
- 『リトルナイトメア2』での出現: ラストシーン、モノと別れたシックスの前に現れます。そして、床に落ちていたモウのチラシを指し示し、彼女を次なる舞台へと導きます。
これらの出現シーンから、黒いシックスがシックスの「本能」や「運命」を象徴する存在であることがわかります。
黒いシックスの正体に関する有力な考察
黒いシックスの正体は、公式には明かされていません。 しかし、その役割からいくつかの説が考えられます。
シックスの失われた魂・良心説
これは、シックスがノーウェアの残酷な世界で生き延びるために、人間らしい感情や良心を切り離し、それが黒いシックスとして具現化したのではないか、という説です。 彼女がノームを食べたり、モノを裏切ったりといった非情な決断を下すたびに、本体のシックスから魂が抜け出ていき、影のような存在になったと考えられます。 もしそうだとすれば、黒いシックスはシックスが失ったものの象徴であり、彼女の罪を静かに見つめる存在ということになります。
シックスの飢えの化身・悪意の象徴説
こちらが最も有力視されている説です。 黒いシックスは、シックスの内に渦巻く抗いがたい「飢え」や「闇の力」そのものが形になった存在であるという考え方です。 彼女が出現するのは、決まってシックスが極度の空腹に襲われるタイミングです。 黒いシックスは、シックスに食事を促し、より強い力を得るように囁きかけているのかもしれません。 『2』のラストでモウを指し示したのも、そこに行けば更なる飢えを満たす「ご馳走(レディの力)」があることを教えるためだったのでしょう。 この説では、黒いシックスはシックスと一体であり、彼女の邪悪な側面そのものということになります。
レディの力の残滓・呪い説
シックスは最終的にレディの力を吸収しますが、もしかするとレディの力、あるいはその血縁関係が、以前からシックスに影響を与えていたのかもしれません。 ファンの間では、シックスとレディが親子、あるいは何らかの血縁関係にあるのではないかという説が根強くあります。 黒いシックスは、シックスの中に眠るレディと同じ力の覚醒を促す存在、あるいはレディがかけた呪いのようなものだった可能性も考えられます。
未来のシックスの姿・警告説
少し変わった説ですが、黒いシックスは、闇堕ちが完成した「未来のシックス」の姿であり、過去の自分に干渉しているのではないか、という考察です。 『2』のモノとシンマンの関係のように、時間軸が歪んでいるこの世界では十分にあり得る話です。 未来の自分が今の自分を導き、同じ運命を辿らせようとしている。 そう考えると、この世界のループ性や逃れられない運命の残酷さがより際立ちます。
黒いシックスがシックスを導く理由
どの説を取るにしても、黒いシックスがシックスを特定の方向へ導こうとしているのは明らかです。 その目的は、シックスをこの世界の捕食者、すなわち頂点に君臨する存在へと成長させることでしょう。 ノーウェアは、「食うか食われるか」の法則が支配する世界です。 黒いシックスは、シックスが「食われる側」ではなく「食う側」になるための道筋を示しているのです。 それはシックスを守るための導きなのか、それとも彼女を利用するための誘導なのか、解釈が分かれるところです。
リトルナイトメアの世界観とシックスの闇堕ちの関連性
シックスの闇堕ちを理解するためには、彼女が置かれている「ノーウェア」という世界そのものを理解する必要があります。 彼女の変貌は、この世界の異常性と深く結びついています。
ノーウェアという世界の異常性
ノーウェアは、現実世界の子供たちが悪夢を通じて迷い込むとされる異世界です。 ここには、歪んだ欲望を持つ大人たちが巨大な姿で存在し、子供たちは彼らの食料や労働力、あるいは娯楽の対象として扱われます。 物理法則も常識も通用しないこの世界では、生き延びること自体が奇跡に近いのです。
「食」がテーマの歪んだ世界
リトルナイトメアシリーズ、特に初代の舞台であるモウでは、「食」が極めて重要なテーマとして描かれています。 ゲストたちは貪るように食事をし、厨房では正体不明の肉が調理されています。 この世界において、「食べる」という行為は、単なる生命維持活動ではなく、他者から力を奪い、支配するための手段です。 シックスが最終的にレディを「食べる」ことでその力を得たように、この世界の頂点に立つためには、捕食者とならなければならないのです。
子供たちが犠牲になる世界の残酷さ
提供された情報ソースにもあるように、この世界に迷い込んだ子供たちのほとんどは悲惨な末路を辿ります。 ノームに変えられたり、人肉料理の材料にされたり、実験体にされたりと、その運命は様々です。 このような環境で、純粋なままで生き抜くことは不可能です。 シックスの残酷さは、彼女が特別邪悪だったからではなく、この世界で生き抜くために必要だったスキルなのかもしれません。 優しさや同情は、ここでは死に直結する弱点なのです。
シックスは世界の理に適応しただけなのか?
こうして見ていくと、シックスの闇堕ちは、彼女個人の問題というよりも、ノーウェアという世界の理不尽さが引き起こした悲劇と言えるかもしれません。 彼女は、この世界のルールに適応し、捕食者になることを選んだ。 いや、選ばざるを得なかったのです。 モノを裏切ったのも、ノームを食べたのも、すべてはこの狂った世界で次の朝日を迎えるための、彼女なりの生存戦略だったのではないでしょうか。 もちろん、その行動を肯定することはできません。 しかし、彼女が下した決断の背景にある絶望を思うと、一概に彼女を断罪することもできない。 そのやるせない後味こそが、リトルナイトメアという作品が持つ最大の魅力なのかもしれません。
まとめ
今回は、リトルナイトメアの主人公シックスがなぜ闇堕ちしたのか、そして黒いシックスの謎について深く考察してきました。
- シックスの闇堕ちは、異常な「空腹」から始まった。
- モノへの裏切りは、恐怖、不信感、生存本能など複数の要因が絡み合った結果だと考えられる。
- 黒いシックスは、シックスの「飢え」や「闇の力」が具現化した存在であるという説が有力。
- 彼女の変貌は、ノーウェアという世界の残酷な法則に適応した結果とも言える。
シックスの物語は、純粋な子供が悪夢のような世界で生き抜くために、いかにして怪物へと変わっていくかを描いた、痛ましくも美しい悲劇です。 彼女の行動の真意は、プレイヤー一人ひとりの解釈に委ねられています。 今後リリースが予定されている『リトルナイトメア3』では、新たな主人公が登場しますが、シックスが残した謎の答えが、どこかで語られることを期待せずにはいられません。
このレビューが、あなたのリトルナイトメアの世界への理解を深める一助となれば幸いです。