ゲームジャーナリストの桐谷シンジです。 今回も多く寄せられてる質問にお答えしていきます。
この記事を読んでいる方は、2024年9月4日に発売された「みんなのゴルフワールド(みんゴルワールド)」の購入を検討しているものの、ネット上の賛否両論の声を見て、実際のところどうなのか気になっているのではないでしょうか。

この記事を読み終える頃には、なぜ評価が分かれているのか、そしてあなたがこのゲームを買うべきかどうかの疑問が解決しているはずです。
- 賛否が分かれる最大の理由
- プレイヤーが挙げる肯定的な意見
- プレイヤーが挙げる否定的な意見
- 最終的な購入判断のポイント
それでは解説していきます。

みんなのゴルフワールドが賛否両論となっている背景
まずは、なぜ本作がこれほどまでに大きな話題となり、賛否両論を巻き起こしているのか、その背景から詳しく見ていきましょう。

国民的ゴルフゲームの待望の新作
「みんなのGOLF」シリーズは、1997年の初代PlayStationでの発売以来、誰でも簡単に爽快なショットが楽しめる「国民的ゴルフゲーム」として、多くのファンに愛されてきました。 シンプルな操作性と奥深いゲーム性、魅力的なキャラクターたちが特徴で、シリーズ累計の世界実売本数は1,400万本を超える大ヒットシリーズです。
前作「New みんなのGOLF」から約7年ぶりの完全新作となる「みんなのゴルフワールド」は、ファン待望の一作でした。 グラフィックの向上や新モードの追加はもちろんのこと、これまでPlayStationハードがメインだったシリーズが、初めてNintendo SwitchやPC(Steam)でも発売されるマルチプラットフォーム展開となったことも、大きな注目を集めました。
発売直後から噴出した不満の声と公式の対応
大きな期待と共に発売日を迎えましたが、SNSやレビューサイトでは、ゲームをプレイしたユーザーから不具合や仕様に対する不満の声が続出しました。 「遅延がひどくてゲームにならない」「フリーズした」といった声が相次ぎ、大きな混乱を招いたのです。
この事態を受け、開発・販売元のバンダイナムコエンターテインメントは異例の対応を取りました。 なんと発売日当日に公式X(旧Twitter)アカウントで声明を発表。 ユーザーからの意見を真摯に受け止め、操作精度の向上を含む、ハードごとに確認されている現象の原因究明に努めると発表したのです。 この迅速な対応は、問題の根深さを示すと同時に、今後の改善に期待を持たせるものでもありました。
シリーズファンが指摘する「開発会社の変更」という大きな要因
なぜこれまでのシリーズには見られなかったような問題が多く発生しているのでしょうか。 多くのシリーズファンが指摘しているのが、「開発会社の変更」です。
これまでの「みんゴル」シリーズは、株式会社クラップハンズが一貫して開発を手掛けてきました。 長年の開発で培われたノウハウと実績があり、ファンからの信頼も厚い会社です。 しかし、今作「みんなのゴルフワールド」は、株式会社ハイドが開発を担当しています。
もちろん、開発会社が変わればゲームのテイストや仕様が変わることは珍しくありません。 しかし、シリーズの根幹とも言える操作性やゲームバランスに関わる部分で多くの問題点が指摘されていることから、「開発会社の変更が品質に影響したのではないか」という声が大きくなっているのが現状です。
シリーズ初のマルチプラットフォーム展開が招いた問題点
前述の通り、本作はシリーズで初めてPlayStation 5、Nintendo Switch、PC(Steam)という複数のプラットフォームで発売されました。 より多くのユーザーが遊べるようになった点は大きなメリットですが、これが最適化不足を招いた一因ではないかとも言われています。
特に、性能が異なるハードで同じゲーム体験を提供することは、技術的に非常に難しい課題です。 性能が比較的低いNintendo Switchに基準を合わせた結果、他のハードでもパフォーマンスが十分に発揮されなかったり、逆に各ハードへの最適化が不十分なまま発売されてしまった可能性が指摘されています。 実際に、ハードごとに問題の発生度合いが異なることが報告されており、マルチプラットフォーム展開の難しさが浮き彫りになっています。
みんなのゴルフワールドの肯定的な意見・評価できるポイント
多くの問題点が指摘される一方で、「普通に楽しめる」「面白い」といった肯定的な意見も少なくありません。 ここでは、プレイヤーから評価されているポイントを詳しく解説します。

「みんゴル」ならではのパーティーゲームとしての楽しさは健在
難しい理屈は抜きにして、誰でも簡単に爽快なショットが打てるのが「みんゴル」の最大の魅力です。 その根幹部分の楽しさは、今作でもしっかりと受け継がれています。 家族や友人と集まって、一つのコントローラーを回しながらワイワイ遊ぶ楽しさは格別です。 オフラインで最大4人までの交代プレイに対応しており、気軽にゴルフの楽しさを共有できます。
キャラクターやコースのボリュームは十分な満足感
登場するキャラクターや収録コースの数は、新作として十分なボリュームです。 世界各地をテーマにした個性豊かな10のコース(各18ホール)は、高原、海辺、都市、雪山など、景観の変化に富んでいてプレイヤーを飽きさせません。 キャラクターも歴代シリーズの人気キャラから新キャラまで登場し、それぞれに用意されたエピソードも見どころの一つです。 着せ替え要素も豊富で、自分好みのキャラクターでプレイできるのも嬉しいポイントです。
自分好みに育てる「キャラクター育成要素」の追加
今作では、フードアイテムを使うことでキャラクターの能力を成長させられる育成要素が追加されました。 これにより、デザインは好きだけど性能が低くて使いにくかったキャラクターも、育成次第でエースとして活躍させることが可能になります。 「好きなキャラを使えない」というジレンマが解消され、よりキャラクターへの愛着が湧きやすくなった点は、多くのプレイヤーから好意的に受け止められています。 ただし、この育成要素については後述するバランスの問題点も指摘されています。
PS5版での比較的快適なプレイフィール
後ほど詳しく解説しますが、本作で最も批判されているのが「入力遅延」です。 しかし、これは主にNintendo Switch版で顕著な問題であり、PlayStation 5版では遅延が大幅に軽減されています。 もちろんPS5版でも遅延がゼロというわけではありませんが、多くのプレイヤーが「問題なくプレイできる」と感じるレベルに収まっています。 そのため、PS5でプレイしているユーザーからは、比較的好意的なレビューが多く見られます。
ワールドツアーで描かれるキャラクター同士の新たな絡み
一人用モードの「ワールドツアー」では、前作のキャラクターや人気キャラクター同士の意外な絡みが見られます。 歴代シリーズを複数プレイしているファンにとっては、キャラクターたちの新たな一面を発見できる嬉しい要素となっており、ストーリー面でも楽しめると評価されています。
新モード「バラエティ」がもたらす新鮮な面白さ
みんなで集まって遊ぶ面白さを追求した新モード「バラエティ」も好評です。 マスに止まることでトルネードが発生したり、特殊な仕掛けが現れたりするハチャメチャなルールや、二人で協力して打つ「スクランブル」、爆弾ボールを使う「ドッカンゴルフ」など、これまでのゴルフゲームにはなかった新しい遊び方が提供されています。 スコアを競うだけでなく、パーティーゲームとしての楽しさが大きく拡張されています。
みんなのゴルフワールドの否定的な意見・問題点
ここからは、本作の評価を大きく下げている否定的な意見、そして深刻な問題点について、一つひとつ深く掘り下げていきます。

【最重要】致命的な「入力遅延」問題
本作で最も多く、そして最も深刻な問題として指摘されているのが、ショット時の「入力遅延」です。 ボタンを押してから、実際にゲーム内のゲージが止まるまでにタイムラグがあり、プレイヤーが意図した通りのショットを打つのが非常に困難になっています。
Switch版とPS5版のフレーム差を徹底検証
この入力遅延は、プレイするハードによって大きく差があることが検証によって明らかになっています。 あるユーザーが動画編集ソフトを使って検証した結果、以下のような違いが確認されました。
ハードウェア | 入力遅延(フレーム数) |
---|---|
Nintendo Switch | 約6~8フレーム |
PlayStation 5 | 約3~4フレーム |
※1秒は60フレーム(60fpsのゲームの場合)
この表が示す通り、Switch版はPS5版の約2倍もの入力遅延が発生していることになります。 格闘ゲームなどでは1フレーム(約0.016秒)の差が勝敗を分けることもあるため、6~8フレームという遅延がいかに大きいかが分かります。 タイミングが全てのゴルフゲームにおいて、この遅延は致命的と言わざるを得ません。
なぜ「滑る」と感じるのか?フレームレートとの関係
さらに、Switch版ではショットゲージの動きが30fps(1秒間に30回更新)になっていることも判明しています。 PS5版のゲージが60fpsで滑らかに動くのに対し、Switch版はカクカクとした動きに見えます。 これにより、ゲージの動きが大味になり、入力遅延と相まって「ボタンを押してもゲージが滑っていく」という感覚を強く引き起こしているのです。 プレイヤーからは「遅延を見越して早めにボタンを押す」といった特殊な対応が強いられており、ゲーム本来の楽しさが損なわれています。
仕様かバグか?「サイドスピン」の不可解な挙動
入力遅延と並んで、ゲームプレイの根幹を揺るがす問題として挙げられているのが「サイドスピン」の挙動です。
ジャストインパクト以外で逆に曲がる現象
本作では、サイドスピンをかけてショットを打つ際に、インパクトのタイミングがジャストインパクト(赤いゾーンの中心)でない場合、かけたつもりとは逆の方向にボールが飛んでいくという現象が多発します。 例えば、左に曲げるスピンをかけたのに、インパクトが少し早いと、ボールは右に飛び出していくのです。 これは歴代シリーズにはなかった挙動で、多くのプレイヤーを混乱させています。
これまでのシリーズとの違いと攻略への影響
これまでのシリーズでは、多少インパクトがずれても、かけたスピンの方向にある程度はボールが曲がってくれました。 しかし今作では、ジャストインパクトを成功させなければ、意図したコース攻略が非常に難しくなっています。 特に、障害物を避けるために意図的にボールを曲げたい場面でこの現象が起こると、OBなどの大きなミスに繋がってしまいます。 これが仕様なのか、それともバグなのか公式からの言及はありませんが、現状ではコース戦略の幅を著しく狭める要因となっています。
没入感を削ぐ数々の要素(キャディ、CPU、演出)
ゲームプレイを直接的に妨害するわけではありませんが、プレイヤーの集中力や没入感を削ぐ要素が多いことも、不満点として頻繁に指摘されています。
嘘をつく?頼りにならないキャディのアドバイス
プレイヤーをサポートしてくれるはずのキャディが、時に全く逆のアドバイスをすることがあります。 特にグリーン上で、ボールが右に曲がる「スライスライン」であるにもかかわらず、左に曲がる「フックラインです」と教えてくるなど、プレイヤーを混乱させる場面が報告されています。 これが意図的な仕様(親密度が低いと嘘をつくなど)なのか、単なるバグなのかは不明ですが、ゲーム体験としては大きなマイナスです。
プレイヤーを急かすCPUやキャディからの「煽り」
ショット前にコースをじっくり確認したり、風を読んだりしていると、対戦相手のCPUやキャディから「まだか?」「早く打て」といったセリフで急かされます。 約15秒に1回というかなりの頻度で声をかけられるため、自分のペースで落ち着いてプレイしたいプレイヤーにとっては、非常に大きなストレスとなります。 この「煽り」はボイス設定をオフにすることで回避できますが、ゲームの雰囲気を楽しみたい人にとっては悩ましい問題です。
集中力を削ぐショット前のキャラクターの動きとテンポの悪い演出
ショットゲージを動かし始めても、プレイヤーキャラクターがアドレス(構え)に入らず、身振り手振りを続けるため、視界に入って集中を妨げるといった指摘もあります。 また、ナイスショット時のカメラワークなど、各種演出が長めで、ゲーム全体のテンポを悪くしていると感じるプレイヤーも多いようです。
プレイの快適性を損なう操作性とカメラワーク
細かい部分ですが、操作性、特にカメラワークの使いにくさも不満点として挙げられています。
自由に見渡せないコースカメラ
コース全体を俯瞰して戦略を立てたいときに、カメラを自由に動かせず、見たい場所をスムーズに確認できないという声があります。 これにより、最適なルートを探すのに余計な時間がかかってしまいます。
ラインが読みにくいパター時のカメラ
パッティングの際に、これまでのシリーズのようにカメラを地面スレスレまで下げて芝目をじっくり読む、といったことができなくなりました。 真上からの視点とカップ後方からの視点がメインとなり、特にロングパットでは微妙な傾斜を読み切るのが困難になっています。
報告が相次ぐ進行不能などの致命的なバグ
これまでに挙げた仕様や挙動の問題に加え、ゲームの進行そのものに影響を与える深刻なバグも多数報告されています。
- ラウンド終了後のリザルト画面でフリーズし、進行不能になる
- グリーン上で打とうとすると、突然アンプレヤブル(プレイ続行不能)扱いになる
- カップインしたはずのボールがカップから弾き出され、OBになる
- ロングパットを決めたと思ったら、ボールが奈落の底に消えていく
これらのバグは全てのプレイヤーに発生するわけではありませんが、遭遇してしまった場合、それまでのプレイが全て無駄になる可能性もある深刻なものです。
前作からの進化を感じさせないグラフィック
グラフィックに関しても、厳しい意見が見られます。 「PS5のゲームとは思えない」「前作の方が綺麗だった」という声もあり、最新作としての進化が感じられないという評価です。 特に背景や景色の描写は前作の方が美しいと感じるプレイヤーもいるようです。 一方で、キャラクターモデルの精細さは今作の方が上であり、この点については評価が分かれています。
キャラクター育成におけるバランス問題
肯定的な意見としても挙げたキャラクター育成要素ですが、バランスについては問題点が指摘されています。 育成を進めると、キャラクターの飛距離が1.5倍近くまで伸びてしまい、どんなコースでもパワーでごり押しできてしまう「パワーインフレ」状態になります。 これにより、繊細なコースマネジメントの面白さが失われ、ゲーム性が大味になってしまうという懸念の声が上がっています。
結局「みんなのゴルフワールド」は買うべきか?
ここまで肯定的な意見と否定的な意見を詳しく見てきました。 これらを踏まえ、最終的にあなたが「みんなのゴルフワールド」を買うべきかどうか、タイプ別に解説します。

こんな人にはおすすめ!購入を検討しても良いケース
- PlayStation 5でプレイする予定の人 最も深刻な入力遅延の問題が比較的軽微なため、ストレスなく遊べる可能性が高いです。
- シリーズ未経験者、または久しぶりにプレイする人 過去作との比較による不満を感じにくいため、純粋なゴルフゲームとして楽しめるでしょう。
- 家族や友人とワイワイ遊ぶパーティーゲームを求めている人 細かい仕様の不満点も、みんなで遊べば笑い話になるかもしれません。 パーティーモードの楽しさは健在です。
- 今後のアップデートに期待できる人 公式が改善を約束しているため、将来的に問題点が修正され、「神ゲー」になる可能性もゼロではありません。 その過程も含めて楽しみたいという人には良いかもしれません。
こんな人は注意!購入を見送るべきケース
- Nintendo Switchでのプレイをメインに考えている人 入力遅延の問題が改善されるまでは、購入は慎重に検討すべきです。 快適なプレイは難しいと言わざるを得ません。
- 長年のシリーズファンで、これまでの操作性を求めている人 サイドスピンの挙動やカメラワークなど、過去作との違いに強いストレスを感じる可能性が高いです。
- オンライン対戦などでシビアなスコアを追求したい人 入力遅延や不可解な挙動は、真剣勝負において致命的なハンデとなります。 競技性の高いプレイを望む人には向きません。
- 完成されたゲームをすぐに楽しみたい人 現状は多くのバグや不満点を抱えた「未完成品」に近い状態です。 アップデートを待てない人は、購入を見送るのが賢明です。
今後のアップデートへの期待と現状の評価
公式が発売日当日に改善を約束したことから、開発チームも問題を認識しており、修正への意欲はあると考えられます。 特に、入力遅延や進行不能バグといった致命的な問題は、優先的に対応される可能性が高いでしょう。 アップデートによってこれらの問題が解決されれば、本作の評価は大きく変わるポテンシャルを秘めています。
しかし、現時点(発売直後)では、「多くの課題を抱えた、人を選ぶゲーム」というのが正直な評価です。 特にSwitch版の購入を検討している方は、少なくとも操作性に関する改善のアップデートが配信されるまでは、様子を見ることを強く推奨します。
まとめ
今回は、大きな期待の中で発売されながらも、賛否両論の嵐に見舞われている「みんなのゴルフワールド」について、その理由を深く掘り下げてきました。
肯定的な側面としては、
- 誰でも楽しめるパーティーゲームとしての魅力は健在
- キャラクターやコースのボリュームは十分
- 好きなキャラを育成できる新要素
といった点が挙げられます。
一方で、否定的な側面として、
- 特にSwitch版で顕著な、致命的な「入力遅延」
- 従来のシリーズとは異なる「サイドスピン」の挙動
- 没入感を削ぐ「煽り」や頼りにならない「キャディ」
- 多数報告されている進行不能などの「バグ」
- シリーズの根幹を揺るがす「開発会社の変更」
といった深刻な問題を数多く抱えているのが現状です。
結論として、「みんなのゴルフワールド」は、プレイするハードや、あなたがゲームに何を求めるかによって、評価が180度変わる可能性のある作品です。 PS5を持っていて、細かいことは気にせず友人や家族と気軽に楽しみたいのであれば、「買い」の選択肢もあり得ます。 しかし、Switchで最高のゴルフ体験を求めている方や、完成度の高いゲームを遊びたい方にとっては、今は「待ち」が正解と言えるでしょう。
今後のアップデートで、本作が「みんなの」名にふさわしいゴルフゲームへと進化することを、一人のゲームファンとして心から願っています。