ゲーム評論家の桐谷シンジです。 今回も多く寄せられてる質問にお答えしていきます。
この記事を読んでいる方は、シリーズ初のオープンワールドとして注目を集めている「ユミアのアトリエ 追憶の錬金術師と幻想の地」の実際の評判が気になっていると思います。 特に、期待が大きい一方で「イマイチだった」という声も聞こえてくるため、購入に踏み切れない方も多いのではないでしょうか。

この記事を読み終える頃には、「ユミアのアトリエ」が自分にとって「買い」なのかどうかの疑問が解決しているはずです。
- イマイチと言われる具体的な理由5つ
- それでも評価されている3つの魅力
- シリーズ初のオープンワールドの功罪
- 最終的に購入すべきかどうかの判断基準
それでは解説していきます。

ユミアのアトリエの悪い評判|イマイチと言われる5つの理由
まずは、多くの方が最も気にしているであろう「イマイチ」と言われる理由から深掘りしていきます。 本作は挑戦的な意欲作であると同時に、いくつかの大きな課題を抱えているのも事実です。 実際に70時間以上プレイした私が感じた、具体的な問題点を5つに分けて解説します。

探索が単調で作業感が強い
本作最大の目玉であるオープンワールドですが、その広大なフィールドを持て余している感が否めません。
広大だが中身が伴わない世界
マップの広さやロケーションの多様性は素晴らしく、 처음訪れた場所の美しい風景には息を呑むものがあります。 緑豊かな草原、古代遺跡、近未来的な都市など、そのビジュアルはプレイヤーの冒険心をくすぐるでしょう。
しかし、問題はその中で「何ができるか」です。 結論から言うと、できることのバリエーションが非常に少なく、序盤から終盤までやることがほとんど変わりません。 基本的には素材を集め、時々発生する同じようなパズル形式のミニゲームを解き、お使いクエストをこなす、この繰り返しになります。
他のオープンワールドの名作、例えば「ゼルダの伝説 ティアーズ オブ ザ キングダム」のように新しい能力で行動範囲が劇的に広がったり、「エルデンリング」のように未知の強敵やダンジョンが次々と現れたりといった、探索がゲームプレイの深化に繋がる体験は希薄です。
宝箱を見つけても中身は素材であることが多く、探索のご褒美として魅力に欠ける点も作業感を助長させています。 マップ踏破率を100%にすること自体が好きなプレイヤーは楽しめますが、「世界を冒険している」というよりは「広大なマップで素材集めをしている」という感覚に陥りがちでした。
移動の自由度と冒険の幅がリンクしていない
主人公ユミアのアクションは非常に軽快で、壁ジャンプやバイクを駆使してフィールドを縦横無尽に駆け巡ることができます。 一見行けそうにない崖を登れた時の達成感は確かにあります。
しかし、その高い移動性能が新たな発見や体験に結びつきにくいのが残念な点です。 例えば、滑空できるマントや、特定の壁を登れるようになるアイテムなどを調合で作り出せれば、「あの場所に行けるようになった!」という成長と冒険の喜びが感じられたはずです。 現状では、最初からほとんどの場所に行けてしまうため、ゲーム進行による冒険の質の変化が感じられませんでした。
今後のDLCでマップが追加される予定ですが、そこではもっと「遊べる」コンテンツの充実に期待したいところです。
ストーリーの描写不足で感情移入しにくい
アトリエシリーズの魅力といえば、心温まるストーリーと魅力的なキャラクターたちです。 本作では、これまでのほのぼのとした雰囲気から一転し、シリアスな物語が展開されます。 この路線変更自体は、新たなファン層を獲得する可能性を秘めた良い試みだと感じました。
しかし、物語の描き方に大きな課題があり、結果としてキャラクターや世界観に深く没入することが難しくなっています。
「禁忌の錬金術」という設定の形骸化
本作のテーマは「禁忌とされた錬金術」です。 過去の悲劇によって錬金術が世界から疎まれている、という非常に興味深い設定なのですが、その「禁忌感」がプレイヤーに全く伝わってきません。
なぜ錬金術が嫌われているのか、その原因となった事件は回想シーンで断片的に語られるのみ。 錬金術によって人々が苦しんでいる具体的な描写もほとんどありません。 それどころか、主人公のユミアが錬金術で次々と問題を解決していくため、「本当に禁忌なの?」と疑問を感じてしまうほどです。
主人公が錬金術との向き合い方に悩むシーンもありますが、プレイヤー側がその前提となる世界の状況を理解できていないため、共感するのが難しいのです。 物語の根幹をなす設定の掘り下げが浅いため、全体的に説得力のないストーリーになってしまった印象です。
回想シーンの多用とキャラクターイベントの減少
物語の描写不足を補うためか、本作はとにかく回想シーンが多いです。 キャラクターの過去や重要な出来事が、プレイヤーが体験するのではなく、過去の映像として「説明」されてしまうため、物語が他人事のように感じられます。
また、シリーズのファンが楽しみにしているキャラクター同士の交流イベントも、過去作に比べてボリュームが少なく、内容もあっさりしています。 仲間になる経緯やキャラクターの掘り下げが不十分なため、仲間たちへの愛着も湧きにくい構造でした。
魅力的なキャラクターデザインや設定が揃っているだけに、非常にもったいないと感じました。
大味なゲームバランスでやり込み甲斐がない
やり込み要素の豊富さもアトリエシリーズの醍醐味の一つです。 しかし、本作はそのやり込みを活かす場面がほとんどなく、「自己満足」で終わってしまいがちです。
お手軽すぎる調合システム
本作の調合は、シリーズ初心者でも分かりやすいようにかなり簡略化されています。 奥深さは残っており、理論上最強の装備を目指すことは可能です。
しかし、問題は「そこまで突き詰める必要が全くない」ことです。 正直なところ、適当に手に入った素材で調合するだけでも、ストーリークリアには十分すぎるほど強力なアイテムが完成してしまいます。 過去作にあったような、「苦労して作ったアイテムが冒険を劇的に楽にしてくれる」といったカタルシスもありません。 調合の必要性自体が薄まっているのは、シリーズの根幹を揺るがす問題だと感じます。
低すぎる戦闘難易度
調合の問題と直結するのが、戦闘の難易度の低さです。 せっかく時間をかけて最強の武器や防具を作っても、その力を試す相手がいません。
私は初見プレイを難易度ハードで開始しましたが、途中からベリーハードに変更しても全く苦戦しませんでした。 調合で作成した装備を身につけていれば、ボスの攻撃すらほとんどダメージを受けず、一方的に倒せてしまいます。 おそらく、調合をほとんど行わず、道中で拾った武器だけでもノーマルやハードならクリアできてしまうでしょう。
難易度 | 調合の必要性 | 筆者の体感 |
---|---|---|
NORMAL | ほぼ不要。拾った装備でクリア可能 | 退屈に感じるレベル |
HARD | 軽く行う程度で十分 | 物足りなさを感じる |
VERY HARD | 少しこだわれば楽勝 | やり込んでいると敵が弱すぎて張り合いがない |
それ以上の難易度 | 最強装備の前では無力。アイテムだけでボスが倒せる | ゲームバランスが崩壊している |
クリア後に最強装備を作成し、最高難易度に挑みましたが、もはや戦闘アクションを行う必要すらなく、調合アイテムを投げるだけで敵が溶けていきました。 これでは、せっかくの奥深い戦闘システムも、苦労して行う調合も、全てが無意味になってしまいます。 これは明らかな調整ミスと言わざるを得ません。
全体的にテンポが悪く快適性に欠ける
ゲームプレイの細かい部分で、ストレスを感じる場面が散見されました。
スキップ不可の冗長な演出
最も多くのプレイヤーが指摘しているのが、調合時の演出です。 調合を開始するたびに、スキップも早送りもできない約5秒の演出が毎回挿入されます。 アトリエシリーズにおいて調合は何度も繰り返す作業であるため、この待機時間は地味ながら大きなストレスになります。
同様に、戦闘終了後にもキャラクターが決めポーズをとる長めの演出が入り、これもテンポを削いでいます。 これらの演出は今後のアップデートで改善が予定されているとのことですが、発売当初から対応していてほしかった点です。
細かいUI/UXの不便さ
- バイクに乗っている間はメニュー画面が開けない(一度降りる必要がある)
- アイテムを納品する際、一度ストレージボックスに保管するという一手間が必要
- カメラの上下移動範囲が不自然に狭く、高低差のあるマップで見上げることができず不便
こうした「なぜこんな仕様にしたのか」と首を傾げたくなるような細かい不便さが積み重なり、快適なプレイを阻害していました。
細かい部分の作り込みが甘い
全体的なクオリティに関しても、気になる点がいくつかありました。
キャラクターのモーションが少し硬く、イベントシーンでの動きがチープに見えてしまうことがあります。 また、戦闘中にキャラクターが透明になる、地形にハマって動けなくなるといった細かな不具合にも何度か遭遇しました。
一つ一つは些細なことかもしれませんが、ゲーム全体の完成度という点では、少し雑な印象を受けてしまいました。
ユミアのアトリエの良い評判|評価されている3つの魅力
ここまで厳しい意見を述べてきましたが、もちろん本作に魅力がないわけではありません。 むしろ、光る部分はたくさんあり、だからこそ欠点が惜しいと感じるのです。 ここからは、私が「これは素晴らしい」と感じた、本作ならではの魅力を3つご紹介します。

広大なオープンワールドを冒険する楽しさ
探索の中身は単調だと指摘しましたが、フィールドを「冒険する」こと自体の楽しさは本物です。
素材収集の根源的な面白さ
アトリエシリーズの根幹である「素材を集めてアイテムを作る」というサイクルは、オープンワールドとの相性が非常に良いです。 広大なフィールドを駆け巡り、新しいロケーションで未知の素材を発見した時の喜びは格別です。
「あのアイテムを作るために、あの崖の上にあるキラキラした鉱石が欲しい」 「この森の奥には、珍しいキノコが生えているかもしれない」
このように、目的を持ってフィールドを探索するのは非常に楽しく、時間を忘れて素材集めに没頭してしまいました。 手に入る素材にはランクや特性があり、より良いものを求めて同じ場所を再訪する、といった中毒性の高い遊びも健在です。
立体的なマップと自由度の高いアクション
本作のフィールドは、横の広がりだけでなく、縦の構造も非常に凝っています。 断崖絶壁や巨大な樹木、複雑に入り組んだ遺跡など、高低差を活かしたマップデザインは探索意欲を掻き立てます。
主人公ユミアの高い身体能力を活かし、壁を蹴り、空中を舞い、バイクで疾走して、これらの立体的なマップを踏破していくプロセスは、純粋なアクションゲームとしても楽しめる面白さがありました。 パルクールのように障害物を乗り越えていく感覚は、これまでのシリーズにはなかった新しい体験です。
爽快感と戦略性を両立した戦闘システム
ゲームバランスの問題はありますが、戦闘システムそのものは非常によく出来ています。

コマンドとアクションの絶妙な融合
本作の戦闘は、コマンドバトルとリアルタイムアクションが融合した、スピーディーで戦略的なものになっています。 スキルを連続で叩き込んでコンボを繋げる爽快感と、敵の攻撃をジャストガードやジャスト回避でいなすアクション性が高いレベルで両立されています。
技の演出も派手で、見ているだけでも楽しいです。 操作キャラクターごとにアクションが全く異なり、杖と射撃を操るユミア、槍で舞うように戦うアイラなど、それぞれにユニークな魅力があります。 調合で作ったアイテムを武器として使えば、さらに多様なアクションが繰り出せるのも面白い点です。
前衛・後衛システムが生み出す奥深い戦略
個人的に最も評価したいのが、前衛と後衛を切り替えるシステムです。 キャラクターの立ち位置によって繰り出す技や効果が変化するため、状況に応じてポジションを変えながら戦う必要があります。
「後衛からデバフ(弱体化効果)を付与し、前衛に出て一気にコンボを叩き込む」 「敵の大技が来たら後衛に下がり、ヘイト(敵対心)を下げるアイテムで味方を守る」
など、プレイヤーの采配が戦局を大きく左右します。 アクションが苦手な人でも、この戦略性によって十分に楽しめる懐の深さがあります。 敵の弱点を突いてブレイクさせたり、必殺技を放ったりと、やればやるほど味の出る奥深いシステムだと感じました。
沼にハマるやり込み要素(調合とハウジング)
ゲームバランスによってやり込み甲斐が薄れているとは言え、やり込み要素の「システム」としての面白さは健在です。
シリーズの真骨頂「調合」の奥深さ
お手軽になったとはいえ、調合システムの奥深さは失われていません。 どの素材を、どの順番で投入するか。 どの特性を引き継げば、理想の性能になるか。
最高の装備品を作るためには、まずその素材となる中間アイテムから最高の品質を追求する必要があります。 素材を求めてフィールドを駆け巡り、試行錯誤を繰り返して一つのアイテムを完成させた時の達成感は、何物にも代えがたいものがあります。 この「錬金術の沼」こそが、アトリエシリーズが長年愛され続ける理由でしょう。
自由度が格段に上がった「ハウジング」
本作で新たに追加されたハウジング要素も、素晴らしい出来栄えです。 フィールドの好きな場所に自分だけのアトリエ(拠点)を建築できるのですが、その自由度が非常に高いです。
壁や床、屋根といったパーツから家を組み上げ、内装に家具や調度品を配置していくことができます。 便利な施設を並べた実用的な拠点を作るもよし、見た目にこだわった豪華な邸宅を建てるもよし。 プレイヤーの個性を存分に発揮できる、非常に楽しいやり込み要素です。
前作「ライザのアトリエ3」にも拠点のカスタマイズはありましたが、本作はその比ではありません。 このハウジングは、今後のシリーズにもぜひ受け継いでほしい魅力的なシステムだと感じました。
【結論】ユミアのアトリエは購入すべきか?
これまでの良い点、悪い点を踏まえて、本作がどのような人におすすめで、どのような人には合わないのかをまとめます。

購入をおすすめしない人の特徴
- 完成度の高いオープンワールドを期待する人 探索の中身やできることのバリエーションを重視する場合、本作のオープンワールドには肩透かしを食らう可能性が高いです。
- 重厚で没入感のあるストーリーを求める人 物語の描写不足や駆け足気味の展開が気になる方には、本作のストーリーは物足りなく感じるでしょう。
- 歯ごたえのあるゲームバランスや育成を楽しみたい人 じっくりと育成したキャラクターや、作り込んだ装備で強敵に挑む、といった達成感を求めるプレイヤーには、簡単すぎる難易度が合いません。
購入をおすすめする人の特徴
- アトリエシリーズの新たな挑戦を見届けたいファン 多くの課題はありますが、シリーズの未来に向けた意欲作であることは間違いありません。これまでの作品とは全く違うアトリエを体験してみたい方にはおすすめです。
- 広大なフィールドを目的なく散策するのが好きな人 ストーリーやクエストに縛られず、美しい景色を眺めながら気ままに素材を集めたり、マップを埋めたりするのが好きな方には、本作の探索は心地よい時間を提供してくれます。
- キャラクターデザインや世界の雰囲気が好きな人 ストーリーの評価は分かれますが、キャラクター自体の魅力や、幻想的な世界のビジュアルは非常に評価が高いです。これらに惹かれるのであれば、プレイする価値は十分にあります。
まずは体験版をプレイしてみよう
最終的な判断を下す前に、まずは配信されている体験版をプレイしてみることを強くお勧めします。 体験版では、本作のキモであるオープンワールドの探索や戦闘システムに触れることができます。 そこで「楽しい」と感じるか、「何か違う」と感じるかで、あなたにとって本作が合うかどうかが分かるはずです。
まとめ
「ユミアのアトリエ 追憶の錬金術師と幻想の地」は、**「多くの可能性を秘めた、荒削りな意欲作」**というのが私の総評です。
シリーズ初のオープンワールド化、シリアスなストーリーへの挑戦など、 commendableな試みが随所に見られます。 特に、アクションと戦略性が融合した戦闘システムや、自由度の高いハウジングは、今後のシリーズの新たな柱となり得る素晴らしいポテンシャルを秘めています。
しかし、その挑戦が既存のアトリエシリーズの良さと上手く噛み合っておらず、描写不足のストーリーや大味なゲームバランス、全体的な作り込みの甘さといった多くの課題が浮き彫りになってしまっているのも事実です。
なんだかんだ70時間以上プレイできたのは、根底に確かな面白さがあったからに他なりません。 今後のアップデートやDLC、そして何より続編で、本作が抱える課題が克服され、その魅力が完全に開花することに期待しています。
このレビューが、あなたの購入の判断材料となれば幸いです。