ゲーム評論家の桐谷シンジです。 今回も多く寄せられてる質問にお答えしていきます。
この記事を読んでいる方は、2025年10月30日に発売が決定した「テイルズ オブ エクシリア リマスター」が、なぜNintendo Switch 2(以下、スイッチ2)で発売されないのか、その理由が気になっていると思います。 待望のリマスター発表に喜びつつも、対応ハードに最新機種の名前がないことに、疑問や一抹の不安を感じている方も少なくないでしょう。

この記事を読み終える頃には、エクシリアリマスターがスイッチ2で発売されない理由だけでなく、オリジナル版が抱えていた問題点、そしてテイルズシリーズが今置かれている現状について、あなたの疑問が解決しているはずです。
- エクシリアリマスターがスイッチ2で発売されない理由の多角的な考察
- オリジナル版が「低品質」と批判されながらも愛される理由の深掘り
- リマスター版で期待できる改善点と変わらない魅力の再確認
- テイルズシリーズ30周年の現状とファンが抱える期待と不安の正体
それでは解説していきます。

テイルズ オブ エクシリア リマスターがスイッチ2で発売されない4つの理由
多くのファンが待ち望んだ「テイルズ オブ エクシリア リマスター」の発表。 しかし、その対応ハードにPS5やXboxと並んでスイッチ2の名前がなかったことに、多くのゲーマーが首を傾げました。 次世代機での展開が明言されているにも関わらず、なぜ任天堂の次世代ハードは対象外なのでしょうか。 ここでは、その理由として考えられる4つの側面と、関連する情報を深く掘り下げていきます。

理由①:スイッチとの後方互換性を考慮した販売戦略
最もシンプルかつ有力な理由として挙げられるのが、スイッチ2が持つとされる「後方互換性」を前提とした販売戦略です。 スイッチ2は、現行のNintendo Switch(以下、スイッチ)ソフトをそのままプレイできる機能を持つと広く噂されています。
もしこれが事実であれば、バンダイナムコとしては「スイッチ版」をリリースしておけば、スイッチ2ユーザーも問題なくプレイできることになります。 あえてスイッチ2に最適化されたバージョンを別途開発する必要はない、と判断した可能性は非常に高いでしょう。
スイッチ2専用タイトルを開発するコストとメリットの天秤
ゲーム開発、特にリマスター作品において、対応ハードを増やすことはそのまま開発コストと期間の増大に繋がります。 スイッチ2のアーキテクチャが現行スイッチと大きく異なる場合、単なる移植では済まず、グラフィックの最適化やパフォーマンス調整に多大なリソースを割く必要があります。
開発アプローチ | 想定されるコスト・期間 | メリット | デメリット |
---|---|---|---|
スイッチ版のみ開発 | 低・短 | 開発リソースを集中できる スイッチ2でもプレイ可能(互換性前提) | スイッチ2の性能を活かせない |
スイッチ2版も開発 | 高・長 | スイッチ2の性能を最大限に活かせる ユーザー体験が向上する | 開発コストと期間が増大する 販売価格に転嫁される可能性 |
リマスター作品は、完全新作に比べて開発予算が限られているのが一般的です。 限られたリソースの中で最大限の利益を追求するならば、普及台数が圧倒的に多い現行スイッチ版を開発し、スイッチ2ユーザーには互換機能で対応してもらう、という選択は非常に合理的と言えます。
理由②:開発リソースと発売スケジュールの最適化
2025年10月30日という発売日は、ファンにとっては嬉しいサプライズである一方、開発側にとっては非常にタイトなスケジュールです。 特に、スイッチ2の正式なローンチ時期や詳細なスペックが、開発期間中にバンダイナムコを含むサードパーティへどこまで共有されていたかは不透明です。
不確定要素の多い新ハードへの対応は、開発スケジュールに遅延をもたらす大きなリスクとなります。 確実な発売日を守るためには、開発環境が成熟しているPS5、Xbox、Steam、そしてスイッチにリソースを集中させるのが賢明な判断だったと考えられます。
「テイルズ オブ アライズ」の教訓
前作「テイルズ オブ アライズ」は、開発の長期化を経て発売され、そのクオリティで高い評価を得ました。 しかし、その裏では当初予定されていたであろう発売時期から延期を重ねています。 この経験から、開発チームはスケジュール管理の重要性を再認識したはずです。 記念すべき30周年に関連するタイトルで、安易な延期はブランドイメージを損ないかねません。 確実なリリースを優先した結果、スイッチ2への対応が見送られた可能性も十分に考えられるでしょう。
理由③:スイッチ2の性能を活かしきれないという技術的判断
「テイルズ オブ エクシリア」は、元々2011年にPlayStation 3(PS3)で発売されたゲームです。 リマスターにあたりグラフィックは大幅に向上しますが、ゲームの根幹となる設計やエンジンはPS3時代のものです。

スイッチ2がPS5に匹敵、あるいはそれを超えるような性能を持っていたとしても、リマスター版エクシリアがその性能をフルに活用できるかというと、疑問が残ります。 例えば、PS5版とスイッチ2版で、ユーザーが体感できるほどの明確な差(解像度やフレームレート以外での)を生み出すのは難しいかもしれません。
もし、スイッチ2版を出すことで得られるグラフィック向上のメリットが、開発コストに見合わないと判断された場合、対応を見送るという結論に至ることも不思議ではありません。 中途半端な最適化で「スイッチ2版なのに大して変わらない」と批判されるよりは、最初から対応しない方が得策だと考えたのかもしれません。
理由④:後発での「完全版」リリースも視野に?
これは少し穿った見方かもしれませんが、将来的な展開を考慮した戦略の可能性もゼロではありません。 まず現行機向けにリマスター版をリリースし、市場の反応を見ます。 そして、スイッチ2がある程度普及した1~2年後に、何らかの追加要素を加えた「テイルズ オブ エクシリア リマスター 完全版」や「インターナショナル版」といった形で、スイッチ2専用タイトルとしてリリースする、というシナリオです。
この手法は、他のゲームタイトルでも見られる販売戦略です。 一度購入したファンから批判の声が上がるリスクはありますが、話題性を再燃させ、二度の販売機会を創出することができます。 もちろん、現時点では憶測の域を出ませんが、バンダイナムコのIP活用戦略の一つとして、こうした可能性も頭の片隅に置いておく必要はあるでしょう。
なぜ批判が殺到?オリジナル版エクシリアが抱えた問題点
今回のリマスター発表に対して、ファンの間では喜びの声だけでなく、厳しい意見や不安の声も多く見られます。 その根源は、2011年に発売されたオリジナル版「テイルズ オブ エクシリア」が抱えていた、決して無視できない問題点にあります。 なぜ当時、エクシリアは「未完成」「低品質」とまで言われ、一部のファンから厳しい批判を浴びたのでしょうか。 その背景を深く掘り下げていきます。

発売当時に「低品質」と批判された重い背景
テイルズ オブ シリーズ15周年記念作品として、大きな期待を背負って発売されたエクシリア。 しかし、蓋を開けてみると、その期待を裏切るような要素が散見され、ファンの間で賛否両論が巻き起こりました。 特に指摘されたのが、以下の点です。
- ストーリー後半の駆け足展開
- ボリューム不足とフィールドマップの使い回し
- 敵キャラクターや術技の種類の少なさ
これらの問題は、単なる「好みの違い」では済まされない、ゲームの根幹に関わる欠陥として多くのプレイヤーに認識されました。
開発の遅れが招いた悲劇か
なぜこのような事態に陥ったのか。 当時、公式な発表はありませんでしたが、ファンの間では「開発が発売日に間に合わなかったのではないか」という噂が絶えませんでした。 特に、発売年の2011年3月に発生した東日本大震災の影響で、開発スケジュールに大幅な遅延が生じたのではないか、という説は根強く囁かれています。
発売日を延期するという選択肢もあったはずですが、15周年記念という看板を背負っていたが故に、それが許されなかったのかもしれません。 結果として、多くの要素が未完成、あるいは削減されたまま世に出ることになった、というのが多くのファンの見解です。
ストーリー後半の急展開とキャラクター描写の不足
エクシリアの物語は、序盤から中盤にかけては非常に魅力的です。 ジュードとミラのW主人公システムも斬新で、それぞれの視点から物語を追うことで、世界の謎が徐々に明らかになっていく展開はプレイヤーを引き込みます。

しかし、物語が終盤に差し掛かると、突如として展開がスピードアップします。 伏線が十分に回収されないまま、次々と新しい事実が明かされ、プレイヤーが感情移入する間もなくエンディングへと突き進んでしまうのです。
仲間キャラクターの掘り下げ不足
特に批判の的となったのが、仲間になるキャラクターたちの掘り下げ不足です。 パーティーメンバーそれぞれが重い過去や葛藤を抱えているにも関わらず、メインストーリーの都合でその多くが解決されないまま終わってしまいます。 サブイベントも少なく、キャラクターの魅力を深く知る機会が乏しかったため、「キャラクターは魅力的なのに、物語がそれを活かしきれていない」という感想を抱いたプレイヤーは少なくありませんでした。 リマスター版で、このあたりの補完がテキストや追加イベントでなされない限り、同じ不満点が再燃する可能性は高いでしょう。
フィールドマップの使い回しと圧倒的なボリューム不足
エクシリアを語る上で、最も象徴的な問題点が「フィールドマップ」です。 広大な世界を冒険するRPGの醍醐味とは裏腹に、エクシリアのフィールドは非常に単調で、同じような地形やダンジョンが何度も使い回されています。
- 街道: 街と街を繋ぐ道は、ほとんどが一本道。景色に代わり映えがなく、探索の楽しみがありません。
- ダンジョン: 洞窟や遺跡などのダンジョンも、構造が似通っており、仕掛けも単純なものがほとんど。攻略の歯ごたえを感じにくいです。
- 街: 訪れる街の数は歴代シリーズと比べても少なく、世界の広がりを感じることができませんでした。
この「使い回し」と「ボリューム不足」は、ゲームのプレイ時間を水増ししているかのような印象を与え、多くのプレイヤーを失望させました。
それでも評価されるエクシ-リアの揺るぎない魅力
ここまで厳しい点を挙げてきましたが、エクシリアは決して駄作ではありません。 むしろ、多くの欠点を抱えながらも、今なお根強いファンを持つ魅力的な作品です。 その魅力の核となっているのが、革新的な戦闘システムと、個性豊かなキャラクターたちです。
歴代最高峰とも称される戦闘システム「DR-LMB」
エクシリアの戦闘システム「ダブルレイド・リニアモーションバトルシステム(DR-LMB)」は、シリーズファンから歴代最高峰との呼び声も高い、非常に完成度の高いシステムです。
- リンク: 2人のキャラクターを「リンク」させることで、特殊な能力を発動したり、強力な「共鳴術技(リンクアーツ)」を繰り出すことができます。戦況に応じてリンク相手を切り替える戦略性が、戦闘に深い奥行きを与えています。
- AC(アサルトカウンタ): 通常攻撃や術技は、TP(テクニカルポイント)ではなくACを消費します。ACは時間で回復するため、従来のシリーズよりも遥かにスピーディーで爽快なコンボを叩き込むことが可能です。
この戦闘の面白さがあったからこそ、単調なフィールドや駆け足のストーリーといった欠点に目をつぶれた、というプレイヤーは非常に多いのです。 リマスター版でも、この戦闘の面白さは健在であるはずです。 むしろ、高フレームレートで安定して動作することで、オリジナル版以上の快適なバトルが楽しめることは間違いありません。
W主人公「ジュード」と「ミラ」の存在
医学生の少年ジュード・マティスと、精霊の主を名乗る謎の女性ミラ=マクスウェル。 この2人の主人公の視点から物語を体験できるW主人公システムは、エクシリアの大きな特徴です。 同じ出来事でも、ジュードの視点とミラの視点では見える景色が全く異なります。 1周目はジュード、2周目はミラでプレイすることで、物語の全貌が明らかになるという構成は、周回プレイを促す見事な仕掛けでした。 彼らを取り巻くアルヴィン、レイア、エリーゼ、ローエンといった仲間たちも非常に個性的で、彼らの織りなすドラマは、多くのファンの心を掴みました。
テイルズシリーズ30周年の現状とファンの根深い不満
エクシリアリマスターの発表は、テイルズ オブ シリーズが2025年に迎える30周年という大きな節目の中で行われました。 しかし、ファンの反応は手放しの歓迎とは言い難い状況です。 そこには、リマスター作品の連発と、待望の完全新作に関する情報が全く出てこないことへの、長年にわたるファンの不満が渦巻いています。

なぜ新作ではなくリマスター連発なのか?
「テイルズ オブ アライズ」が世界的な大ヒットを記録して以降、ファンは当然のように次なる完全新作を心待ちにしていました。 しかし、現実に発表されるのは「シンフォニア」「ヴェスペリア」といった過去作のリマスターばかり。 そして今回の「エクシリア」です。
作品 | 種別 | 発売/発表時期 |
---|---|---|
テイルズ オブ ヴェスペリア REMASTER | リマスター | 2019年1月 |
テイルズ オブ アライズ | 完全新作 | 2021年9月 |
テイルズ オブ シンフォニア REMASTERED | リマスター | 2023年2月 |
テイルズ オブ エクシリア リマスター | リマスター | 2025年10月(予定) |
もちろん、過去の名作が最新ハードで蘇ることは喜ばしいことです。 しかし、30周年という特別な年に、ファンが最も期待していたのは、シリーズの未来を示す「完全新作」の発表でした。 リマスター作品は、あくまで過去の遺産を現代に繋ぐものであり、シリーズを前進させる原動力にはなりません。 この「未来が見えない」状況が、ファンの不安と不満を増幅させているのです。
開発長期化とIP維持のジレンマ
現代のゲーム開発は、グラフィックの向上やコンテンツ量の増大により、開発期間が長期化する傾向にあります。 「テイルズ オブ アライズ」も開発に5年以上を要しました。 完全新作を一本開発するには、膨大な時間とコストがかかります。
その間、シリーズの熱を冷まさないために、比較的短期間・低コストで開発可能なリマスター作品をリリースし、IP(知的財産)を維持し続ける。 これが、バンダイナムコの戦略なのでしょう。 ビジネス的な視点では合理的ですが、ファン心理としては「新作までの繋ぎ」として消費されているようで、複雑な感情を抱いてしまいます。
リーク情報通りでサプライズがなかったことへの失望
今回のエクシリアリマスター発表は、残念ながら多くのファンにとって「既知の情報」でした。 発表の数ヶ月前から、海外のリーカーによって情報がリークされており、その内容がほぼ全て的中してしまったのです。
サプライズを期待して発表を待っていたファンにとって、この「答え合わせ」のような展開は、興奮や感動を大きく削ぐものでした。 特に、30周年という記念すべきタイミングでの発表だっただけに、リーク情報にはなかった「何か」、例えば完全新作のティザー映像のようなサプライズを期待していたファンは少なくありませんでした。 しかし、結果はリーク情報の範囲内に収まり、多くのファンに失望感を与えることになってしまいました。
ユーザーが本当に望んでいるものとは?
ファンがテイルズ オブ シリーズに求めているものは何でしょうか。 それは、美しいグラフィックや快適なシステムだけではありません。 ファンが最も求めているのは、心に残る「物語」と、魅力的な「キャラクター」、そして仲間との「冒険」です。
リマスター作品は、過去の感動を再体験させてくれます。 しかし、それはあくまで思い出の追体験であり、新たな感動を生み出すものではありません。 「テイルズ オブ アライズ」が示したように、シリーズはまだまだ進化できる可能性を秘めています。 ファンは、その新たな可能性、新たな物語、新たな冒険を渇望しているのです。 30周年という節目は、その渇望を満たす絶好の機会だったはずです。 しかし、現状ではその期待に応えられているとは言えない状況が、ファンの不満の根底にあるのではないでしょうか。
まとめ
今回は、「テイルズ オブ エクシリア リマスター」がスイッチ2で発売されない理由と、オリジナル版が抱えた問題、そしてシリーズの現状について深く掘り下げてきました。
スイッチ2で発売されない背景には、後方互換性を利用した販売戦略や、開発リソース、スケジュールといった、極めて現実的なビジネス判断が存在すると推測されます。 決して、任天堂プラットフォームを軽視しているわけではないでしょう。
そして、今回のリマスター発表に寄せられるファンの厳しい声は、単なる作品への批判ではありません。 それは、オリジナル版が抱えていた「未完成」という過去の傷と、30周年を迎えてもなおシリーズの「未来」が見えないことへの不安とが入り混じった、複雑な愛情表現なのです。
エクシリアは、多くの欠点を抱えながらも、それを補って余りあるほどの魅力、特に戦闘システムの輝きを持つ作品です。 リマスター版が、グラフィックやシステムの改善によって、その魅力をさらに引き出し、かつてのプレイヤーも新規のプレイヤーも満足させてくれることを、一人のゲームファンとして心から願っています。
そして、バンダイナムコには、このリマスターを30周年のゴールではなく、次なる完全新作への確かな一歩としてくれることを、強く期待したいと思います。