ゲーム評論家の桐谷シンジです。 今回も多く寄せられている質問にお答えしていきます。
この記事を読んでいる方は、2025年10月16日に発売された「Pokémon LEGENDS Z-A(ポケモンレジェンズZ-A)」のメタスコアが81点という評価を受け、その理由や背景が気になっているのではないでしょうか。 過去作と比較してこのスコアは高いのか、どのような点が評価されたのか、詳しく知りたいと思っているはずです。

この記事を読み終える頃には、レジェンズZ-Aがなぜ高い評価を得たのか、その魅力とゲーム史における立ち位置についての疑問が解決しているはずです。
- メタスコア81点はポケモンシリーズにおいて紛れもない高評価
- 『アルセウス』の正当進化とバトルシステムへの集中が評価の核
- 待望の「メガシンカ」復活と作り込まれた世界観がファンを魅了
- パフォーマンスの安定化とターゲット層の明確化がスコアを底上げ
それでは解説していきます。

ポケモンレジェンズZ-Aのメタスコアを徹底分析
多くのゲーマーが新作の評価指標として注目する「メタスコア」。 レジェンズZ-Aが叩き出した「81点」という数字は、一見すると他の超大作ゲームに比べて控えめに感じるかもしれません。 しかし、ポケモンというシリーズの歴史と特性を考慮すると、この数字が持つ意味は大きく変わってきます。 まずは、このスコアが本当に「高評価」なのか、歴代シリーズと比較しながら深掘りしていきましょう。
結論:メタスコア81点はポケモンシリーズでは「高評価」
いきなり結論から申し上げますが、レジェンズZ-Aのメタスコア81点は、ポケモンシリーズの中では間違いなく「高評価」に分類されます。 例えば、全世界で大きな話題となった前作『ポケットモンスター スカーレット・バイオレット』は、最終的に72点というスコアに落ち着きました。 発売当初はパフォーマンスの問題などで苦しみ、一時は70点を下回るのではないかとまで言われていたことを考えると、81点がいかに優れたスタートを切ったかがわかります。

ポケモンシリーズは、その絶大な人気とは裏腹に、メタスコアが90点を超えるようなことは稀です。 これは、シリーズが持つ「安定した面白さ」と引き換えに、ゲームシステムに大きな革新が起こりにくいことや、全年齢対象であるがゆえのシンプルな作りが、海外のレビューサイトでは「深みがない」と評価されがちな傾向にあるためです。 そうした背景の中で、80点を超えるということは、従来のポケモンの枠組みを超えた「何か」が評価された証拠と言えるでしょう。
「メタスコア」とは?ゲーム評価における信頼性
ここで改めて「メタスコア」について簡単におさらいしておきましょう。 メタスコアとは、世界中のゲームレビューサイトや雑誌の評価(スコア)を集計し、独自の計算方法で平均化した点数のことです。 個人の感想だけでなく、多数のメディアの評価を総合しているため、ゲームの客観的な評価を知る上での重要な指標とされています。
ただし、メタスコアが全てではありません。 レビュアーの好みや文化的な背景によって評価は変動しますし、特にポケモンのようの国民的な人気を誇る作品では、「いつも通りで安心する」というファン目線の評価と、「変化に乏しい」というメディア目線の評価で乖離が生まれることもあります。 そのため、メタスコアはあくまで一つの参考指標として捉え、その内訳やレビューの内容を読み解くことが重要になります。
歴代ポケモンシリーズのメタスコア比較表
レジェンズZ-Aの81点というスコアの立ち位置をより明確にするために、近年の主なポケモンシリーズのメタスコアを比較してみましょう。
タイトル | 発売年 | プラットフォーム | メタスコア |
---|---|---|---|
Pokémon LEGENDS Z-A | 2025 | Nintendo Switch | 81 |
Pokémon LEGENDS アルセウス | 2022 | Nintendo Switch | 83 |
ポケットモンスター ブリリアントダイヤモンド・シャイニングパール | 2021 | Nintendo Switch | 73 |
ポケットモンスター ソード・シールド | 2019 | Nintendo Switch | 80 |
ポケットモンスター Let’s Go! ピカチュウ・イーブイ | 2018 | Nintendo Switch | 80 |
ポケットモンスター ウルトラサン・ウルトラムーン | 2017 | ニンテンドー3DS | 84 |
ポケットモンスター サン・ムーン | 2016 | ニンテンドー3DS | 87 |
ポケットモンスター オメガルビー・アルファサファイア | 2014 | ニンテンドー3DS | 83 |
ポケットモンスター X・Y | 2013 | ニンテンドー3DS | 87 |
この表を見ると、レジェンズZ-Aの81点というスコアが、リメイク作品や前作『スカーレット・バイオレット』(72点)を大きく上回り、『ソード・シールド』と同等、そして革新的と評された『アルセウス』に迫る高水準であることがわかります。 特に、ニンテンドー3DS時代のハイスコア連発期を除けば、Switch世代のポケモンとしてはトップクラスの評価と言えるでしょう。
なぜポケモンはメタスコアが伸び悩むのか?
前述の通り、ポケモンシリーズは他のAAA級タイトルと比較してメタスコアが低めに出る傾向があります。 例えば、『ゼルダの伝説』シリーズや『モンスターハンター』シリーズがコンスタントに90点以上を記録するのと比べると、その差は明らかです。
この主な要因は「グラフィック」と「革新性の欠如」に対する厳しい評価です。 ポケモンは、良くも悪くも伝統的なゲームシステムを長年維持してきました。 これにより、誰でも安心して遊べるという強みがありますが、同時にマンネリ化という批判も受けやすいのです。 また、キャラクターデザインは世界的に評価されている一方で、フィールドのグラフィックやテクスチャの質感が、同世代の他のゲームと比較して見劣りすると指摘されることが多く、これがスコアの足を引っ張る一因となっています。 レジェンズZ-Aもレビュー内で「時代遅れのビジュアル」と指摘されており、この課題は未だ根深いようです。
なぜ高評価?レジェンズZ-Aがメタスコア81点を獲得した7つの理由
では、なぜレジェンズZ-Aは、ポケモンシリーズが抱える課題を乗り越え、81点という高評価を獲得できたのでしょうか。 海外メディアのレビューや、私自身のプレイフィールから、その理由を7つのポイントに分けて徹底的に解説していきます。
理由①:『アルセウス』の正当進化と革新的なゲームシステム
最も大きな評価ポイントは、間違いなく『Pokémon LEGENDS アルセウス』で提示されたゲーム体験を、さらに進化させた点にあります。
アクションとコマンドの融合:シームレスな体験の深化
『アルセウス』で最も評価されたのは、フィールドの探索、ポケモンの捕獲、バトルへの移行がシームレスに行われるアクション性の高いゲームプレイでした。 レジェンズZ-Aは、このシステムを継承・発展させています。 特に、街中でのリアルタイムバトルシステムの導入は、これまでのポケモンにはなかった緊張感とスピード感を生み出しました。 従来のように画面が切り替わってバトルが始まるのではなく、ミアレシティの美しい街並みの中で、そのままバトルが展開されるのです。 これにより、プレイヤーはより深くゲームの世界に没入することができます。 「バランスの取れたゲームプレイの流れ」「シームレスな捕獲と戦闘」といったレビューは、まさにこの点を高く評価していると言えるでしょう。

「ランクアップ戦」中心のゲーム進行がもたらす没入感
レジェンズZ-Aは、『アルセウス』のような広大な自然を冒険するのではなく、「ミアレシティの再開発」という一つの大きな目的のもと、ストーリーが進行します。 その中心となるのが「ランクアップ戦」です。 プレイヤーはバトルを通じて自身のランクを上げていき、ランクが上がることでストーリーが解放され、探索できるエリアも広がっていきます。 このシステムは、プレイヤーに明確な目標を与え続けるため、中だるみしにくいという利点があります。 「冒険」という要素が薄れたことを惜しむ声もありますが、ゲームの目的を「バトルと育成」に絞ったことで、より洗練されたゲーム体験が実現したと評価されています。
理由②:待望の「メガシンカ」復活と戦略性の向上
『ポケットモンスター X・Y』で登場し、絶大な人気を誇りながらも後のシリーズで姿を消していた「メガシンカ」が、遂に復活しました。 これが高評価に繋がったことは言うまでもありません。

なぜ今メガシンカなのか?XYの舞台設定との関連性
メガシンカは、カロス地方(『X・Y』の舞台)で発見された現象です。 そのカロス地方の中心都市であるミアレシティを舞台にした本作でメガシンカが復活するのは、ストーリー的にも極めて自然な流れであり、ファンが長年待ち望んでいた展開でした。 単なる過去要素の復活ではなく、物語の根幹に関わる重要なシステムとして再構築されており、これがレビュアーにも好意的に受け入れられました。 新たなメガシンカポケモンの追加はもちろん、既存のメガシンカポケモンも新しい技や特性を得ており、バトル環境に大きな変化をもたらしています。
暴走メガシンカ?新たなボスバトルへの期待
本作では、制御不能に陥った「暴走メガシンカポケモン」がボスとして登場します。 これは『アルセウス』における「キング・クイーン」や「親分」の立ち位置に近い存在で、通常のバトルとは一味違う、歯ごたえのある戦闘が楽しめます。 プレイヤーはアクションを駆使してボスの体勢を崩し、集中攻撃を叩き込むといった、レジェンズシリーズならではのダイナミックなバトルを体験できます。 この刺激的なボス戦の存在が、ゲーム全体の満足度を大きく引き上げています。
理由③:作り込まれた世界観とストーリーへの評価
広大なフィールドがない代わりに、本作は「ミアレシティ」という一つの都市を徹底的に作り込むことで、他に類を見ない濃厚な世界観を構築しています。

「ミアレシティ」という単一都市で描かれる濃厚な物語 本作の舞台はミアレシティのみ。 しかし、がっかりする必要はありません。 再開発が進むこの都市は、時間やストーリーの進行によってその姿を刻々と変えていきます。 新しい施設が建設されたり、これまで行けなかった路地裏に入れるようになったりと、探索の楽しみは尽きません。 一つの都市に限定したことで、NPC一人ひとりの会話やサブクエストがより緻密に作り込まれており、「現実の都市のような感覚」をプレイヤーに与えてくれます。 この箱庭的な世界の密度が、海外メディアから高く評価されているのです。
X・Yの未回収伏線がついに?ファンを唸らせる考察要素
『ポケットモンスター X・Y』は、AZの物語や最終兵器など、多くの謎を残したまま終わりました。 レジェンズZ-Aは、その時代から後のミアレシティを描いており、これらの未回収伏線が回収されるのではないかと大きな期待が寄せられていました。 そして、その期待に違わぬ形で、物語の随所に『X・Y』との繋がりを感じさせる要素が散りばめられています。 長年のファンであればあるほど、ニヤリとできる仕掛けが多く、ストーリーへのこだわりが高く評価される一因となっています。
理由④:ターゲット層の明確化による「刺さる」ゲームデザイン
レジェンズZ-Aは、これまでのポケモンのように「全てのプレイヤー」をターゲットにしているわけではない、という点も特徴的です。
バトル好きに捧ぐ!冒険から戦闘へのフォーカスシフト
本作は、明らかに「ポケモンバトルが好き」「育成や戦略を楽しみたい」というプレイヤーにフォーカスを当てて設計されています。 ストーリー進行の中心がランクアップ戦であること、メガシンカというバトルを彩る要素が復活したことからも、その意図は明らかです。 広大な世界を自由に冒険したい、という従来のライトユーザー層にとっては少し物足りなく感じるかもしれませんが、その分、バトルシステムの奥深さややり込み要素はシリーズ随一です。 この「選択と集中」が、特定の層から熱狂的な支持を受け、結果として高いスコアに繋がったと考えられます。
ライト層は楽しめない?Z-Aの楽しみ方と魅力
では、バトルにそれほど興味がないプレイヤーは楽しめないのでしょうか。 そんなことはありません。 本作には、都市開発に協力するという側面もあります。 ポケモンと協力して街の施設を建てたり、住民の依頼をこなしたりすることで、ミアレシティが発展していく様子を間近で見ることができます。 また、シリーズ恒例のポケモン収集や、着せ替えなどのファッション要素も充実しており、バトル以外の楽しみ方も十分に用意されています。 序盤の展開が遅いという指摘もありますが、それはこの緻密に作られたミアレシティの世界観にプレイヤーをじっくりと浸らせるための配慮とも言えるでしょう。
理由⑤:「時代遅れ」と評されつつも改善されたパフォーマンス
グラフィックについては厳しい意見も出ていますが、一方でゲームの動作、つまりパフォーマンスについては評価する声が多く見られます。
グラフィック論争の本質とは
「時代遅れのビジュアル」という評価は、もはやポケモンシリーズの宿命とも言えるかもしれません。 しかし、レジェンズZ-Aの名誉のために言っておくと、キャラクターやポケモンのモデリング、技のエフェクトなどは過去作から着実に進化しています。 特にミアレシティの街並みは、光の表現や細部の作り込みに目を見張るものがあります。 批判の多くは、フィールド全体のテクスチャ解像度や、遠景の描写に向けられたものです。 これは、Nintendo Switchというハードの性能限界と、膨大な数のポケモンを同時に描画するという技術的な制約の中で、開発チームがどこにリソースを割くかという判断の結果でしょう。
最適化によるスムーズなプレイ体験の実現
グラフィックで妥協した部分がある一方で、レジェンズZ-Aはパフォーマンスの最適化に成功しています。 『スカーレット・バイオレット』で問題となった処理落ちやフリーズがほとんど見られず、常にスムーズなフレームレートでゲームをプレイすることができます。 特にアクション性の高いバトルにおいては、この安定したパフォーマンスが快適な操作感に直結し、「ゲームフリークが過去10年間にリリースした最高のゲーム」とまで言わしめる評価に繋がりました。 見た目の美しさも重要ですが、ゲームとして「快適に遊べる」という fundamental な部分がしっかりしていることが、スコアを大きく下支えしているのです。
理由⑥:キャラクターへの深いこだわりと魅力的な人物像
ポケモンシリーズの魅力は、ポケモンたちだけではありません。 物語を彩る個性豊かなキャラクターたちも、多くのファンに愛されています。 レジェンズZ-Aでは、単一都市が舞台である分、登場人物一人ひとりとの関係性がより深く描かれています。 再開発プロジェクトを率いるリーダー、昔ながらの街並みを愛する老人、新しい技術に目を輝かせる若者など、様々な立場の人々がミアレシティで暮らしており、彼らとの交流を通じて物語に深みが増していきます。 「キャラクターへのこだわりは高く評価できる」というレビューは、こうした人間ドラマの質の高さを指摘しているのです。 プレイヤーは、彼らとの対話や共闘を通じて、単なるポケモントレーナーとしてだけでなく、ミアレシティの一員として物語に関わっていくことになります。
理由⑦:挑戦を続けるゲームフリークの姿勢への評価
最後に、メタスコア81点という評価には、開発会社であるゲームフリークが常に新しいポケモンの形を模索し、挑戦を続けている姿勢そのものへの評価も含まれていると私は考えています。 『アルセウス』でオープンワールド風のアクションRPGに挑戦し、本作では都市開発とバトルに特化した箱庭RPGという、また新たなジャンルを切り開きました。 「いつもと同じ」という安定感を捨ててでも、ファンを驚かせ、新しい体験を提供しようとするその野心的な姿勢が、多くのレビュアーの心を動かしたのではないでしょうか。 もちろん、その挑戦が全て成功しているわけではありません。 「アルセウスの多様なバイオームが恋しい」という意見があるように、失われたものも確かにあります。 しかし、「完璧なゲームではないが、それでも非常に楽しい作品である」というレビューが象徴するように、多少の欠点には目をつぶれるほどの大きな魅力と熱量が、このゲームには込められているのです。
まとめ
今回は、「Pokémon LEGENDS Z-A」がメタスコア81点という高評価を獲得した理由について、多角的に分析してきました。
この記事のポイントを改めて整理しましょう。
- メタスコア81点はポケモンシリーズにおいて高水準であり、特にSwitch世代ではトップクラスの評価。
- 『アルセウス』のシームレスなゲーム体験を継承し、「ランクアップ戦」という明確な目標設定でバトルへの没入感を高めた。
- ファン待望の「メガシンカ」を物語の核として復活させ、戦略性の高いバトルを実現した。
- 舞台を「ミアレシティ」に絞ることで、緻密な世界観と濃厚なストーリー、魅力的なキャラクター描写に成功した。
- グラフィックには課題を残しつつも、パフォーマンスの最適化によって快適なプレイ環境を提供した。
- ターゲット層を「バトル好き」に絞るという大胆な選択と集中が、熱心なファン層から高く評価された。
- マンネリを打破し、常に新しい挑戦を続ける開発の姿勢そのものが、ゲームの魅力として評価されている。
結論として、レジェンズZ-Aは、これまでのポケモンの「お約束」を打ち破り、「バトル」と「都市開発」という新たな軸でポケモンの面白さを再定義した意欲作です。 その挑戦的な姿勢と、それを支える堅実なゲームデザインが、メタスコア81点という形で世界中のメディアから評価されたと言えるでしょう。
広大な世界を冒険する従来のポケモンを期待すると少し戸惑うかもしれませんが、ポケモンとの連携を深め、戦略を練り、最強のトレーナーを目指すという、ポケモン本来の魅力が凝縮された一本であることは間違いありません。 このレビューが、あなたの購入の参考になれば幸いです。