ゲーム評論家の桐谷シンジです。 今回も多く寄せられてる質問にお答えしていきます。
待望の『ファイナルファンタジータクティクス イヴァリース クロニクルズ』が発売され、早速プレイされている方も多いのではないでしょうか。 その中で、「本作の舞台イヴァリースは、FF12と同じ世界らしいけど、物語に直接的な関係はあるの?」という疑問が気になっていることと思います。

ご安心ください。 この記事を読み終える頃には、FFTとFF12、二つの壮大な物語を繋ぐ歴史の謎がスッキリと解決し、イヴァリースの世界を何倍も深く楽しめるようになっているはずです。
- FFTとFF12を繋ぐ共通世界イヴァリース
- 物語の核心に迫る聖アジョラと伝承の真実
- 時系列で解き明かす二つの物語の位置付け
- 両作品をプレイすることで深まる歴史の面白さ
それでは解説していきます。

FFTとFF12、二つの物語が織りなす「イヴァリース」の世界観
まずは基本情報として、FFT(ファイナルファンタジータクティクス)とFF12(ファイナルファンタジーXII)が共有する世界「イヴァリース」について、そしてそれぞれの物語がどのような時代背景を持っているのかを整理していきましょう。 この二つの物語は、単に同じ名前の世界を舞台にしているだけではありません。 そこには、開発者の明確な意図に基づいた、深く壮大な歴史の繋がりが存在するのです。

舞台となる共通の世界「イヴァリース」とは?
「イヴァリース」とは、FFTとFF12、そして『ファイナルファンタジータクティクス アドバンス』シリーズなどの舞台となる世界の名称です。 中世ヨーロッパを彷彿とさせる剣と魔法の世界でありながら、飛空艇などの古代文明の遺産(オーパーツ)も存在する、独特の雰囲気を持っています。

この世界の特徴は、非常に緻密に作り込まれた歴史と文化です。 国家間の対立、王家の継承問題、宗教と思想の対立、そして貧富の差や身分制度といった社会問題までが、物語の根幹に深く関わってきます。 FFTでは王位継承戦争である「獅子戦争」を背景に、歴史の裏でうごめく陰謀が描かれます。
一方、FF12では強大な帝国に蹂躙された小国の解放戦争を軸に、神に近い存在が人類の歴史に干渉してきた事実が明かされます。 それぞれ独立した物語でありながら、同じ歴史書に記された、異なる時代のページを読んでいるかのような感覚。 それがイヴァリースという世界の最大の魅力と言えるでしょう。
「イヴァリースアライアンス」構想の概要
FFTとFF12の世界観の繋がりを語る上で欠かせないのが、「イヴァリースアライアンス」という構想です。 これは、2006年にスクウェア・エニックスが発表したプロジェクトで、FFTやFF12をはじめとする「イヴァリース」を舞台とした作品群を、一つの大きな歴史物語として再定義し、展開していくというものでした。

この構想の中心人物であるゲームクリエイターの松野泰己氏は、FFTとFF12の両作品でシナリオや世界設定を担当しており、彼の頭の中には壮大なイヴァリースの通史が存在していました。 イヴァリースアライアンスは、その壮大な歴史の一部を、異なる時代の異なる主人公の視点から切り取ってゲーム化していく試みだったのです。 つまり、FFTとFF12は、もともと一つの歴史物語として繋がるように作られている、公式の設定なのです。 今回のリメイク『イヴァリースクロニクルズ』も、この構想の流れを汲んだ作品と言えるでしょう。
FFT(獅子戦争)の時代背景と物語の概要
それでは、まずFFTの時代背景から見ていきましょう。 物語の主な舞台は、隣国との「五十年戦争」が終結した直後のイヴァリース王国です。 長きにわたる戦争で国土は疲弊し、民衆は貧困にあえぎ、王家に仕えた騎士たちも正当な恩賞を受けられず、不満を募らせていました。

そんな中、国王オムドリア三世が病で崩御し、まだ幼い王子と王女、どちらを後継者とするかで国内の貴族が二つの派閥に分かれて対立します。 白獅子を紋章とするラーグ公爵と、黒獅子を紋章とするゴルターナ公爵。 この二大貴族による王位継承権争いが、イヴァリース全土を巻き込む内乱「獅子戦争」へと発展していくのです。
主人公ラムザ・ベオルブは、名門貴族の末弟としてこの動乱の時代に生を受けます。 彼は親友ディリータと共に、初めは名誉ある騎士として戦争に参加しますが、やがて戦争の裏で暗躍する巨大な陰謀と、歴史の裏に隠された「真実」に直面することになります。 FFTは、この「獅子戦争」という公式の歴史(表の歴史)の裏で、歴史の闇に葬られた一人の若者の戦いを描く物語なのです。
FF12の時代背景と物語の概要
一方、FF12の物語は、FFTの時代から遥か昔、数百年以上前のイヴァリースが舞台となります。 この時代、イヴァリースは強大な二つの帝国、西のアルケイディア帝国と東のロザリア帝国が覇権を争っていました。

物語は、その二大帝国に挟まれた小国ダルマスカの王女アーシェと、空賊を夢見る青年ヴァンの出会いから始まります。 ダルマスカはアルケイディア帝国の侵攻によって滅ぼされ、アーシェは祖国解放を目指すレジスタンスのリーダーとして、ヴァンはひょんなことから彼女の旅に巻き込まれる形で、共に帝国へ立ち向かうことになります。
彼らの冒険は、単なる解放戦争にとどまりません。 道中で彼らは、イヴァリースの天候や魔法の源である「ミスト」の存在や、歴史の裏で人類を操ってきた神に等しい存在「オキューリア」の思惑、そして伝説の「破魔石」の力を知ることになります。 FF12は、人間が神々の干渉から脱却し、自らの手で歴史を動かし始めるまでを描く、壮大な解放と革命の物語です。
時系列で見るイヴァリースの歴史 – FFTとFF12はいつの時代の話?
ここで、二つの物語がイヴァリースの歴史においてどの時点に位置するのか、年表で整理してみましょう。 これにより、両者の関係性がより明確になります。
年代区分 | 主な出来事 | 関連作品 |
---|---|---|
神話の時代 | 全能者(神々)が世界を創造 | – |
オキューリアの時代 | 神に等しい存在「オキューリア」が人類の歴史に干渉 | FF12(背景) |
約1200年前 | “異端者”アジョラがオキューリアに反旗を翻し、処刑される | FF12(歴史上の出来事) |
王国暦元年 | 覇王レイスウォールがイヴァリースを統一。ガレアン共和国(後のアルケイディア帝国)が建国 | FF12(歴史上の出来事) |
王国暦704年 | アルケイディア帝国がダルマスカ王国に侵攻 | FF12(物語の序盤) |
王国暦706年 | アーシェとヴァンたちの冒険が始まる(FF12本編) | ファイナルファンタジーXII |
(これより約数百年後) | イヴァリース王国とオルダリーア国の間で「五十年戦争」が勃発 | FFT(背景) |
(五十年戦争終結直後) | 国王崩御。ラーグ公とゴルターナ公による「獅子戦争」が勃発 | ファイナルファンタジータクティクス |
この年表から分かる通り、FF12の物語はFFTよりも遥か昔、古代の出来事として位置づけられています。 FFTの時代の人々にとって、FF12の時代の出来事はもはや歴史、あるいは神話や伝説の領域なのです。 この時間的な隔たりこそが、二つの物語の繋がりを読み解く上で最も重要な鍵となります。
開発者が語った「同じ歴史書を読む」というコンセプト
前述の通り、開発者である松野泰己氏は、イヴァリースという世界を「一つの歴史」として構想しています。 FF12は歴史書の「古代史」の章を、FFTは「中世史」の章を読んでいるようなもの、と考えると分かりやすいでしょう。
古代史に記された英雄や事件、文化、宗教が、長い年月を経て中世の人々にどのように伝わり、解釈され、時には歪められて伝承となっていったのか。 この「歴史の変遷」そのものをプレイヤーに体験させることが、イヴァリースアライアンスの根底にあるテーマなのです。 FF12で語られる「事実」が、FFTの時代ではどのように「神話」として語られているのか。 その対比に注目することで、物語の奥深さは格段に増していきます。
なぜ同じ世界観を共有することになったのか?
FFTが1997年に、FF12が2006年に発売されたことを考えると、当初から完全に繋がった物語として計画されていたわけではありません。 しかし、FFTで作り込まれた重厚な世界設定、特に「獅子戦争」の裏に隠された宗教的な陰謀や、伝説の「ゾディアックブレイブストーリー」は、さらなる物語を生み出すポテンシャルを秘めていました。

松野氏を中心とする開発チームは、FFTで提示された謎や伝説の「起源」となる物語を描くことで、より壮大で深みのある世界を構築できると考えたのでしょう。 FFTの物語を補強し、その背景をより豊かにするために、過去の時代を描くFF12が作られた。 そして、その二つを繋ぐことで「イヴァリース」という唯一無二の世界観が完成したのです。 これは、ゲームシリーズとしては非常に野心的で、文学的なアプローチと言えるでしょう。
FFTとFF12の具体的な繋がりを徹底解説
さて、ここからは本題であるFFTとFF12の具体的な繋がりについて、より深く掘り下げていきましょう。 「聖アジョラ」という人物の正体から、共通する種族、魔法、地名まで、両作品をプレイすることで見えてくる驚きの共通点を一つずつ解説していきます。 これらの繋がりを知ることで、『イヴァリースクロニクルズ』の物語が、単なる一地方の内乱ではなく、イヴァリースの歴史全体に関わる大きな事件であることが理解できるはずです。
最も重要な繋がり「聖アジョラ」と「グレバドス教」の真実
FFTとFF12を繋ぐ最も重要で、かつ根幹をなす要素が「聖アジョラ」という人物と、彼が創始したとされる「グレバドス教」です。
FFTにおける聖アジョラとグレバドス教
FFTの世界において、グレバドス教はイヴァリース最大の国教です。 その教えの中心にいるのが、約1200年前に現れたとされる救世主「聖アジョラ」。 彼は神の子として生まれ、数々の奇跡を起こし、人々に神の教えを説きましたが、やがて時の権力者に捕らえられ、処刑されてしまいます。 しかし、彼の死後、大地震が起きて処刑した国は海に沈み、それが神の怒りであると信じた弟子たちによって教えが広められ、現在のグレバドス教が成立した、とされています。 FFTの物語では、このグレバドス教会が獅子戦争の裏で暗躍し、聖アジョラの奇跡の源とされる「聖石」を利用して、強大な力を得ようと画策します。
FF12で明かされる「アジョラ」のもう一つの顔
ところが、FF12の時代に遡ると、この「聖アジョラ」の評価は180度変わります。 FF12の世界に散在する書物や伝承を読み解くと、「アジョラ」という人物は、神聖な救世主ではなく、**神(オキューリア)に反逆した「異端者」**として記録されているのです。 FF12の時代の歴史では、アジョラは、人類を陰から操るオキューリアの存在に気づき、その支配から人間を解放しようと試みた革命家でした。 彼はオキューリアの力を宿した「聖石」(FF12では「破魔石」と呼ばれる)の力を利用しましたが、力及ばず、オキューリアの意を受けた者たちによって処刑されてしまった、というのが歴史上の「事実」に近いようです。
つまり、FF12の時代の「反逆者アジョラ」が、1200年という長い年月を経て、FFTの時代には「救世主聖アジョラ」として神格化され、全く別の人物像として語り継がれているのです。 この歴史の解釈の変遷こそが、二つの物語を繋ぐ最大のミステリーであり、醍醐味と言えるでしょう。
共通して登場する種族たち
イヴァリースの世界には、「ヒュム」と呼ばれる人間族の他に、個性豊かな様々な亜人種が暮らしています。 これらの種族はFFTとFF12の両方に登場し、世界観の共有を強く感じさせてくれます。
- ヴィエラ族: ウサギのような長い耳と、美しい容姿を持つ森の民。非常に長寿で、戒律を重んじます。FF12では主要キャラクターの一人「フラン」が登場し、その生態が詳しく描かれました。FFTでは、ゲームクリア後に行ける隠しダンジョンで敵として登場したり、汎用ユニットとして雇うことができます。
- モーグリ族: 小さな体にポンポンがついた愛らしい種族。手先が器用で、機械いじりを得意とします。FF12では、主人公ヴァンの仲間「モンブラン」をはじめ、多くのモーグリが街で暮らしており、機械工として活躍しています。FFTではジョブの一つ「機工士」として登場し、銃を扱います。
- バンガ族: トカゲのような姿をした屈強な戦闘種族。誇り高く、好戦的です。FF12では主要キャラクター「バッシュ」を慕う「バッガモナン」など、多くのバンガが登場します。FFTでも敵ユニットや汎用ユニットとして登場し、その高い戦闘能力を見せつけます。
- ン・モゥ族: 犬やカバのような垂れた耳と、温厚な性格を持つ種族。魔法の扱いに長けています。FF12では街の住人として登場し、学者や魔道士として暮らしています。FFTでも魔道士系のジョブを得意とするユニットとして登場します。
これらの種族が、古代(FF12)から中世(FFT)に至るまで、イヴァリースの社会に存在し続けていることが、歴史の連続性を感じさせてくれます。
魔法や召喚獣に見る共通点
魔法や召喚獣といったシステムの根幹にも、二つの作品を繋ぐ重要な要素が隠されています。 その代表が「ゾディアックブレイブストーリー」です。
ゾディアックブレイブストーリーと12宮の召喚獣
FFTの世界には、「ゾディアックブレイブストーリー」という伝説が伝わっています。 これは、かつてイヴァリースを滅ぼしかけた12体の悪魔「ルカヴィ」を、12人の英雄たちが聖石の力で打ち破り、封印したという英雄譚です。 物語の中で、ラムザたちはこの聖石を巡る戦いに巻き込まれていきます。
一方、FF12に登場する召喚獣は、黄道12宮(ゾディアック)の名を冠しています。 例えば、白羊宮の「ベリアス」、金牛宮の「カオス」、双子宮の「ザルエラ」などです。 そして、これらの召喚獣の伝承を読んでいくと、驚くべき事実が判明します。 彼らはもともと、神(オキューリア)によって創られながらも、やがて神に反逆したために異形の姿に変えられ、封印された存在なのです。
もうお分かりですね。 FFTで語られる悪魔「ルカヴィ」の正体は、FF12の時代に神に反逆した召喚獣たちなのです。 FF12の時代に封印された神の被造物が、数百年後にFFTの時代で「悪魔」として蘇り、再びイヴァリースに混乱をもたらそうとする。 ここにもまた、歴史の変遷と伝承の変化が見て取れます。 FFTの聖石が持つ危険な力の根源が、FF12の物語によって見事に説明されているのです。
地名や国家に見る繋がり
イヴァリースの地理にも、多くの共通点が見られます。 FF12で登場した都市や国家の名前が、FFTの時代にも地名として残っているケースが多々あります。
- ダルマスカ: FF12では物語の中心となる王国でしたが、FFTの時代にはその名は地図上から消えています。しかし、作中の会話やアイテムの説明文などで、かつて存在した古代王国としてその名が語られることがあります。
- アルケイディア: FF12ではイヴァリース全土を支配しようとした巨大な軍事帝国でした。FFTの時代には帝国は滅び、その名は一地方の名称として残っているに過ぎません。
- ラバナスタ: FF12ではダルマスカ王国の首都として栄えた大都市です。FFTの時代でも、交易都市としてその名前が登場します。
- ゴルモア大森林: FF12でヴィエラ族が暮らしていた神秘的な森。FFTの時代でも、深い森が広がる地域としてその名が知られています。
FF12のプレイヤーであれば、FFTのマップを旅しているだけで、かつての冒険の舞台が時代の流れと共にどう変わっていったのかを感じることができ、感慨深いものがあるでしょう。 『イヴァリースクロニクルズ』では、グラフィックの向上により、これらの地名の繋がりがより視覚的に楽しめるかもしれません。
キャラクターの繋がりは? – ラムザとアーシェに関係は?
では、キャラクターに直接的な血縁関係などの繋がりはあるのでしょうか。 結論から言うと、FFTの主人公ラムザと、FF12の主人公アーシェやヴァンに直接的な血縁関係はありません。
これは、二つの物語の間に数百年の歳月が流れていることを考えれば当然のことです。 しかし、繋がりが全くないわけではありません。 例えば、FFTに登場する雷神シド(シドルファス・オルランドゥ)という最強のキャラクターがいます。 彼の「オルランドゥ」というファミリーネームは、FF12で登場したダルマスカ王国の元将軍「オルランドゥ伯」を彷彿とさせます。 直接の子孫ではないかもしれませんが、ダルマスカに縁のある家系が、時代を超えてイヴァリース王国で有力貴族となっている可能性は十分に考えられます。
また、FFTの主人公ラムザは、歴史の真実を知り、神に近い存在(ルカヴィ)と戦う運命を背負います。 これは、FF12で神(オキューリア)の干渉を断ち切り、人間の手に歴史を取り戻そうとしたアーシェの戦いと、テーマ的に通じるものがあります。 彼らは血の繋がりはなくとも、イヴァリースの歴史を大きく動かした「英雄」として、魂のレベルで繋がっているのかもしれません。
さらに深掘り!イヴァリース世界を楽しむための豆知識
FFTとFF12の繋がりを理解した上で、さらにイヴァリースの世界を楽しむためのいくつかのポイントをご紹介します。 リメイク版の追加要素への期待や、関連作品との関係、そして物語をより深く味わうための考察ポイントなど、知っておくとプレイが何倍も面白くなる情報です。
FFTリメイク『イヴァリースクロニクルズ』で追加された要素は?
今回のリメイク『ファイナルファンタジータクティクス イヴァリースクロニクルズ』は、オリジナル版やPSP版『獅子戦争』をベースに、様々な新要素が期待されています。 公式発表ではありませんが、ファンとして期待したいのは、やはりFF12との繋がりをより補強するような要素です。
例えば、作中に登場する書物やアーカイブ機能で、FF12の時代の歴史がより詳しく読めるようになったり、隠しイベントで古代文明の遺跡(FF12に登場したダンジョンなど)を探索できるといった展開があれば、ファンとしては嬉しい限りです。 また、新たな隠しキャラクターとして、FF12に登場した種族の末裔が登場する、なんていうサプライズもあるかもしれません。 リメイク版をプレイする際は、オリジナル版との違いを探しながら、イヴァリースの歴史の断片がどこかに隠されていないか、注意深く探索してみることをお勧めします。
FF12ザ ゾディアック エイジを今からプレイする価値はある?
もしあなたが『イヴァリースクロニクルズ』で初めてイヴァリースの世界に触れ、その歴史に興味を持ったのであれば、ぜひ『ファイナルファンタジーXII ザ ゾディアック エイジ』(FF12のHDリマスター版)をプレイしてみてください。 結論から言って、その価値は十二分にあります。
HDリマスターによってグラフィックは現代水準に美しくなり、ゲームシステムも大幅に改良されて非常に遊びやすくなっています。 何より、FFTの物語の「原点」を知ることで、獅子戦争の裏で暗躍するグレバドス教会の真の目的や、聖石の正体、そして「聖アジョラ」という人物がなぜ神格化されるに至ったのか、その背景を深く理解することができます。 FFTの物語を「結果」とするならば、FF12はその「原因」を描いた物語です。 両方をプレイすることで、点と点だった知識が線となり、イヴァリースという壮大な歴史絵巻の全貌が見えてくるはずです。
イヴァリースアライアンスの他作品との関係は?
イヴァリースアライアンスには、FFTとFF12以外にも、『ファイナルファンタジータクティクス アドバンス』(FFTA)やその続編『A2』といった作品も含まれます。 これらの作品は、FFTやFF12の後の時代の、とある地方の物語という設定ですが、現実世界の少年が魔法の本を通じてイヴァリースの世界に迷い込むという、少し特殊な導入になっています。
そのため、FFTやFF12と直接的な物語の繋がりは薄いですが、共通の種族やジョブシステム、世界観の雰囲気はしっかりと受け継がれています。 特に、FFTA2ではFF12の主人公ヴァンとパンネロがゲストキャラクターとして登場するなど、ファンサービス的な繋がりも見られます。 もし、イヴァリースの世界がすっかり気に入ってしまったら、これらの外伝的作品に手を出してみるのも面白いでしょう。
物語の考察ポイント – 歴史の「真実」と「伝承」の違い
イヴァリースの物語を最も楽しむための鍵は、「何が真実で、何が伝承なのか」を常に意識することです。 FFTの作中で語られる歴史は、あくまで「勝者によって記録された歴史」や「民衆に信じられている伝承」に過ぎません。 ゲームを進めていくと、その歴史の裏には、為政者や教会によって隠蔽・改竄された「不都合な真実」が隠されていることが分かってきます。
そして、その「真実」のさらに根源を探っていくと、FF12で描かれた古代の出来事にたどり着くのです。 FF12で人間ドラマとして描かれた出来事が、長い年月を経てどのように神格化され、あるいは悪魔化され、FFTの時代に伝わっているのか。 この「歴史のフィルター」を通して物語を見ることで、キャラクターたちの行動原理や、世界の構造をより深く理解することができます。 これは、他のRPGではなかなか味わえない、非常に知的で面白い体験です。
おすすめのプレイ順は?FFTとFF12、どちらを先にやるべきか
ここまで読んで、「じゃあ、どっちから先にプレイするのがおすすめなの?」と疑問に思った方もいるでしょう。 これには二つの楽しみ方があります。
- 発売順(FFT → FF12)でプレイする: こちらが最もスタンダードな楽しみ方です。 まずFFTをプレイし、獅子戦争の物語と、その裏に隠された聖アジョラやゾディアックブレイブの謎を体験します。 そして、その謎の答え合わせをするようにFF12をプレイすることで、「あの伝説の正体はこれだったのか!」という驚きと感動を味わうことができます。 ミステリー小説を読み進めるような感覚で楽しめるでしょう。
- 時系列順(FF12 → FFT)でプレイする: FFTの物語の背景を完全に理解した上で臨みたい、という方にはこちらの順番がおすすめです。 まずFF12でイヴァリースの古代史と「事実」を知ります。 その上でFFTをプレイすることで、古代の出来事が後の時代にいかに歪んで伝わってしまったのか、その歴史の皮肉やダイナミズムをリアルタイムで感じることができます。 歴史ドキュメンタリーを年代順に追っていくような楽しみ方ができるでしょう。
どちらの順番にも違った面白さがありますので、ご自身の好みに合わせて選んでみてください。 個人的には、初めてイヴァリースの世界に触れるのであれば、発売順であるFFTからプレイすることをおすすめします。 その方が、謎が解き明かされていくカタルシスをより強く感じられるはずです。
まとめ
今回は、『ファイナルファンタジータクティクス イヴァリースクロニクルズ』と『ファイナルファンタジーXII』の物語の関係性について、徹底的に解説してきました。
二つの作品は、単なるスピンオフや外伝という関係ではなく、「イヴァリース」という一つの世界で繰り広げられた、異なる時代の物語です。 FF12で描かれた古代の「事実」が、長い年月を経て、FFTの時代には「神話」や「伝説」として語り継がれており、その解釈の違いこそが二つの物語を繋ぐ最大の鍵となっています。
- FF12は、FFTの遥か古代を描いた物語
- FFTの「聖アジョラ」は、FF12の時代の「異端者」が神格化された存在
- FFTの悪魔「ルカヴィ」の正体は、FF12の「召喚獣」
- 種族、地名、文化など、世界の至る所に歴史の繋がりが隠されている
『イヴァリースクロニクルズ』をプレイする上で、今回解説したようなFF12との繋がりを意識してみてください。 そうすれば、目の前で繰り広げられる獅子戦争が、単なる権力争いではなく、イヴァリースの創生から続く壮大な歴史の流れの中にある、一つの重要な転換点であることが見えてくるはずです。 歴史の真実を追い求めるラムザの旅路は、きっとより一層、あなたの心に深く刻まれることでしょう。