ゲーム評論家の桐谷シンジです。 今回も多く寄せられてる質問にお答えしていきます。
この記事を読んでいる方は、2025年10月30日に発売されたばかりの『HD-2D版 ドラゴンクエストI&II』について、ネット上で「1日で飽きた」「売却した」という声がなぜこれほど続出しているのか、その理由が気になっていると思います。
 
国民的RPGの原点が最新のビジュアルで蘇るという、非常に期待値の高かった本作。 しかし、発売直後から厳しい意見が目立っているのも事実です。 私自身も発売日から徹底的にやり込んでいますが、確かに看過できない問題点がいくつか浮き彫りになっています。
この記事を読み終える頃には、HD-2D版ドラクエ1&2で起きているプレイヤー離れの背景にある具体的な理由と、リメイク作品特有の難しさについての疑問が解決しているはずです。
- 発売直後から続出するネガティブ評価
- プレイヤー離れを生む5つの致命的な理由
- 裏目に出た追加要素と崩壊したゲームバランス
- リメイク作品の難しさと「ドラクエ3」への懸念
それでは解説していきます。

HD-2D版ドラクエ1&2 発売直後の評価と現状
まずは、本作がどのような期待の中で発売され、現在どのような評価に直面しているのか、その概要から整理していきましょう。
発売前の期待値と現実のギャップ
本作の発売前、ゲームファンの期待値は最高潮に達していました。
その最大の理由は、なんと言っても『オクトパストラベラー』や『ライブアライブ』リメイクで高い評価を確立した「HD-2D」というビジュアルスタイルです。 ドット絵の温かみと3DCGの美麗なエフェクトを融合させたこの表現は、「ドット絵こそ至高」と考える古参ファンと、最新のグラフィックに慣れた新規プレイヤーの双方に訴求する、まさに「リメイクの最適解」の一つとして受け止められていました。
 
加えて、先行して発表されていた『HD-2D版 ドラゴンクエストIII そして伝説へ…』への期待感が、その前日譚である『I』と『II』にも波及していました。 2025年10月30日という発売日、Nintendo Switch 2、Nintendo Switch、PlayStation 5、Xbox Series X|S、Steamというほぼ全ての現行プラットフォームでの展開、さらには『ロト三部作セット』の同時発売など、スクウェア・エニックス側の力の入れようも伝わってきました。
UIの刷新、追加シナリオ、新しいダンジョン、BGMのリアレンジなど、現代化への意気込みも感じられ、「あの頃の感動を、さらに美しく快適に味わえる」と誰もが信じて疑わなかったのです。
しかし、現実は厳しいものでした。 発売日を迎えると、SNSやゲームレビューサイト、YouTubeの配信コメント欄には、期待とは裏腹のネガティブな声が溢れ始めたのです。
SNS・レビューサイトで続出する「飽きた」「売却」の声
発売からわずか1日、いや、数時間プレイした段階で、すでに「飽きた」「単調すぎる」「作業感が強い」「もう売った」といった声が目立つようになりました。
具体的には、以下のような意見が非常に多く見受けられます。
- 「グラフィックは綺麗だけど、それだけ。中身が古すぎる」
- 「移動が遅すぎてストレスが限界。1時間でやめた」
- 「戦闘が単調。ビーストモード?とかいうのでワンパン。緊張感ゼロ」
- 「追加要素がただのお使いで、テンポを悪化させているだけ」
- 「BGMがSFC版よりチープになってないか?ガッカリした」
- 「ドラクエ1はクリアしたけど、2をやる気力がない。売却します」
もちろん、HD-2Dのビジュアルを称賛する声や、懐かしさを楽しむ声も存在します。 しかし、それ以上に「期待外れだった」という手厳しい評価が、ポジティブな評価を覆い隠してしまうほど多く発生しているのが現状です。 中古ゲームショップの買取価格が発売早々に下落傾向にあることも、この「早期売却」の動きを裏付けています。
評論家視点で見る「1日で飽きる」現象の本質
この「1日で飽きる」という現象は、単に「ゲームがつまらなかった」という一言で片付けられるものではありません。 これは、現代のプレイヤーがゲームに求める「快適性(QoL)」の水準と、数十年前にデザインされた「原作のゲーム性」との間に生じた、深刻な断絶が原因だと私は分析しています。
リメイク作品は常に、「原作の良さをどこまで残し、どこを現代風に変えるか」という難題を抱えています。 本作の開発チームは、「ビジュアルの刷新」と「コンテンツの追加」というアプローチを選びました。 しかし、ゲーム体験の根幹である「手触り」や「テンポ」、「ゲームバランス」といった部分の現代化が不十分、あるいは見当違いな方向性だったために、プレイヤーは強烈なストレスを感じることになりました。
美麗なグラフィックという「ガワ」と、古く、しかも快適性まで損なわれた「中身」とのアンバランスさ。 これこそが、プレイヤーの期待を失望に変え、「1日で飽きる」という最速の決断をさせてしまった本質的な理由でしょう。
【徹底解説】ドラクエ1&2リメイク プレイヤー離れが起きている5つの理由
では、なぜ多くのプレイヤーがこれほど早く本作に見切りをつけてしまったのでしょうか。 私自身がプレイし、そして多くのユーザーレビューを分析した結果、そこには大きく分けて5つの致命的な理由が存在すると結論付けました。
 
理由1:致命的な「移動速度」と「テンポ感」の悪さ
これが最大の理由であり、最も多くのプレイヤーがストレスを感じた点です。
現代RPGの「当たり前」との比較
現代のRPGにおいて、「快適な移動」はもはや当たり前の要素です。 移動速度が速いダッシュ機能、一度行った場所へ瞬時に飛べるファストトラベル。 これらは、広大なマップを探索する上でのストレスを軽減し、プレイヤーを「冒険そのもの」に集中させるために不可欠な機能となっています。
しかし、本作の移動速度は、残念ながら「遅い」と言わざるを得ません。 原作のマップスケールをHD-2Dで忠実に再現しているがゆえに、フィールドの移動はもっさりとした印象を受けます。 ダッシュ機能も搭載されていません(※アップデートで改善される可能性はありますが、発売時点での話です)。
ファストトラベルに相当する「ルーラ」も、ドラクエ1では習得が遅く、行先もラダトーム城のみ。 ドラクエ2では行先が増えるものの、気軽にあちこち飛べるものではありません。 この「移動の不便さ」は、原作(ファミコン版)当時は当たり前でしたが、数十年の時を経て、プレイヤーが最も耐え難いストレス源となってしまいました。
UI/UXの古さが招くストレス
テンポの悪さは移動だけにとどまりません。
- 戦闘のテンポ: メッセージ速度を「はやい」に設定してもまだ遅く感じる。敵の出現エフェクト、攻撃エフェクト、倒した際のエフェクトが一つ一つ丁寧に描かれる分、戦闘の「待ち時間」が長くなっています。
- 画面切り替え: 美麗なHD-2Dだからこそ、戦闘への突入時、建物への出入り時、マップ切り替え時に一瞬のロード(暗転)が入ります。これが頻繁に発生するため、テンポの悪さに拍車をかけます。
- UIの反応: メニュー画面の操作感やウィンドウが開く速度なども、現代のゲームに慣れていると、わずかに「重い」と感じる部分があります。
これらの小さなストレスが積み重なり、「このゲーム、なんだかダルいな」という感覚をプレイヤーに植え付け、継続するモチベーションを奪っていきます。 数時間で「もういいや」となってしまうのも無理はありません。
理由2:蛇足となった「追加シナリオ」と「サイドクエスト」の冗長さ
リメイク版の目玉として「追加要素」が盛り込まれましたが、これが第二の問題点となりました。 これらの追加要素が、ゲームのテンポをさらに悪化させる「蛇足」として機能してしまっているのです。
ドラクエ1の「シンプルさ」という魅力の喪失
原作の『ドラゴンクエストI』がなぜ伝説的なのか。 それは、「竜王を倒し、姫を救う」という一点に集約された、究極の「シンプルさ」にありました。 寄り道も少なく、プレイヤーはただひたすらにレベルを上げ、装備を整え、竜王を目指す。 そのストイックなゲームプレイが、濃密な冒険感を生み出していました。
しかし、リメイク版では、原作になかったサイドクエストや追加シナリオが大量に導入されました。 例えば、「〇〇のモンスターを倒してきてほしい」「〇〇というアイテムを届けてほしい」といった、いわゆる「お使いクエスト」です。
これらのクエストは、残念ながらストーリーに深みを与えるものではなく、単なる「作業」としてプレイヤーの前に立ちはだかります。 報酬も経験値やゴールド、ありふれたアイテム程度であり、クリアする喜びも薄い。 結果として、ドラクエ1の魅力であった「一直線に進むテンポの良さ」が失われ、無駄に水増しされた冗長なゲーム体験になってしまいました。
なぜ追加要素は「作業」と感じられたのか
追加要素がすべて悪というわけではありません。 しかし、本作の追加要素は「ゲーム体験の質」ではなく「プレイ時間の量」を稼ぐためだけに追加された、と感じられるものが大半でした。
例えば、情報ソース①にもあった『ローラ姫の戦闘参加』。 これはファンにとっては驚きの要素ですが、実際に仲間に加わるプロセスに深いドラマがあるわけではなく、戦闘に参加する能力も限定的です。 「ただ仲間になる」という事実だけが追加され、それがゲーム体験を豊かにするまでには至っていません。
プレイヤーがリメイクに求めていたのは、このような「お使い」の追加ではなく、原作の核となる部分(例えば、竜王の城の探索の深掘りや、アレフガルドの歴史に触れるイベントなど)の質の向上だったはずです。 良かれと思って追加された要素が、ことごとくゲームのテンポを阻害し、「作業感」を増幅させる結果となってしまいました。
理由3:崩壊した「バトルバランス」と「成長システム」
RPGの面白さの根幹は「戦闘」と「成長」です。 苦戦していた敵を、レベルアップや新しい装備、新しい呪文によって倒せるようになるカタルシス。 これこそがRPGの醍醐味です。
しかし、本作のバトルバランスは、この醍醐味を味わう前に「崩壊」してしまっています。
原作の緊張感はどこへ行ったのか
ファミコン版のドラクエ1は、非常にシビアなゲームバランスでした。 レベルが1つ違うだけで生死が分かれ、ラダトームの城から一歩外に出たスライムすら、レベル1では脅威でした。 常に死と隣り合わせの緊張感が、あの世界の冒険を特別なものにしていました。 ドラクエ2に至っては、「ロンダルキアへの洞窟」を筆頭に、理不尽とも思える高難易度が伝説となっています。
一方、リメイク版の難易度は、全体的に「かなり低め」に調整されています。 敵から受けるダメージは少なく、こちらの与えるダメージは大きい。 レベルもサクサク上がります。 これは、現代のプレイヤーに合わせた調整としては理解できます。
新システム(ビーストモード等)がバランスを破壊
問題は、この「低めの難易度調整」に加えて、バランスを完全に破壊する新システムが導入されたことです。
それが、情報ソース①にもあった『ビーストモード(獣)』と呼ばれるシステムです。 これは、戦闘中に特定の条件を満たすと発動でき、一時的に攻撃力や守備力が爆発的に上昇するというもの。 このビーストモードが強力すぎます。
発動すれば、格上のボスですら一方的に殴り倒せてしまうほどの威力を持っています。 結果、プレイヤーは戦闘で戦略を練る必要がなくなりました。 「ビーストモードが溜まるまで耐え、溜まったら発動して殴る」 この繰り返しです。 ドラクエ2では仲間が増えますが、基本的な戦術はこの「ビーストモード頼り」から脱却できません。
さらに、追加された新装備やアイテムが強力であったり、序盤から手に入りやすかったりするため、ステータスのインフレも起きています。 「成長を実感する」前に、最初から強すぎる状態になってしまっているのです。 これでは戦闘が「作業」になるのも当然で、RPGとしての根幹の楽しみが失われています。
理由4:既プレイ組を襲う「既視感」と「新鮮味」の欠如
これはリメイク作品の宿命とも言えますが、本作は特にその問題が顕著に出ています。
HD-2Dのビジュアルは、確かに美しい。 初めてラダトームの城を見た時、ガライの町を訪れた時、その美麗なグラフィックに感動するのは間違いありません。 しかし、その感動は数十分もすれば「慣れ」てしまいます。
ビジュアルに慣れてしまった後、プレイヤーが体験するのは、「数十年前と全く同じストーリー展開」と「全く同じマップ構造」です。 前述の通り、追加されたシナリオは本筋に絡むものではなく、ゲームバランスも崩壊しているため、プレイフィールは「知っている物語を、緊張感なく、ただなぞる作業」になってしまいます。
原作ファンであればあるほど、ストーリーも謎解きもすべて知っています。 どこに何があるか、次に何をすべきか、全て覚えています。 その記憶をなぞるだけのプレイに、フルプライス(あるいはそれに近い価格)の価値を見出すのは難しいでしょう。 「驚き」や「新しい発見」がビジュアル以外に用意されていなかったことが、特に原作ファンを早期に飽きさせてしまった原因です。
理由5:期待外れの「BGM」と「演出面」
最後の理由は、ゲーム体験の没入感を大きく左右する「音」の問題です。
ドラゴンクエストの音楽は、故すぎやまこういち氏が手掛けた、シリーズの「魂」とも言える要素です。 ファンは当然、HD-2Dの美麗なグラフィックに見合う、重厚なオーケストラサウンドを期待していました。
しかし、蓋を開けてみると、本作のBGMは多くのプレイヤーを失望させるクオリティでした。 「チープだ」「重厚感に欠ける」「SFC版(スーパーファミコン版)の方が良かった」という厳しい意見がSNSで溢れました。
具体的には、オーケストラ音源ではなく、シンセサイザー(電子音)に近い音源が使用されているように聞こえる点が指摘されています。 これが、せっかくのHD-2Dビジュアルと全く釣り合っておらず、安っぽい印象を与えてしまっています。 ファミコン時代のチップチューンは、それはそれで「味」がありましたが、本作の音源は「リメイク」としては中途半端なクオリティに感じられます。
また、攻撃時のSE(効果音)が軽い、呪文のエフェクトは派手だが音がしょぼい、といった演出面での不満も重なり、視聴覚全体での体験が期待値を大きく下回る結果となりました。
原作ファンと新規プレイヤー 双方に響かなかったリメイクの難しさ
これら5つの理由が複合的に絡み合い、「1日で飽きる」という現象を引き起こしました。 では、なぜ開発チームはこのような「失敗」を犯してしまったのでしょうか。 そこには、リメイク作品特有の難しさ、特に「ドラクエ」という巨大IPならではの難しさが見え隠れします。
 
開発の意図「伝統と革新」はなぜ失敗したか
開発インタビューなどによれば、本作の狙いは「伝統と革新の両立」であり、「ロト三部作を現代に広める」という歴史的意義もあったとされています。 その意図は非常に崇高なものです。
しかし、結果として、そのバランスは完全に崩れていました。
- 伝統(原作のゲーム性): 移動の不便さや古いUI/UXという「ストレスになる伝統」は残してしまいました。
- 革新(追加要素): HD-2Dビジュアル、追加シナリオ、ビーストモードという「革新」を導入しましたが、それらが原作の良さ(シンプルさ、緊張感)を破壊してしまいました。
つまり、「残すべき伝統」と「変えるべき革新」の取捨選択を誤ったのです。 その結果、
- ベテランファンから見れば: 「移動はダルいし、戦闘は簡単すぎる。余計なお使いも増えた。こんなのドラクエじゃない」
- 新規プレイヤーから見れば: 「グラフィックは綺麗だけど、システムが古臭くて不便。移動が遅いし、戦闘も単調。今更こんなゲームは楽しめない」
という、新旧どちらのファン層にも響かない、「中途半端」な作品となってしまったのです。 ターゲットを広げようとした結果、ターゲットが曖昧になり、誰の心にも刺さらないリメイクになってしまった典型的な例と言えます。
徹底比較:HD-2D版と原作(FC/SFC版)は何が違うのか
ここで、HD-2D版と、多くのファンが「理想のリメイク」として挙げるSFC(スーパーファミコン)版を含む原作との違いを比較してみましょう。
| 比較項目 | HD-2D版 (2025年) | 原作 (FC版/SFC版) | 
|---|---|---|
| グラフィック | HD-2D(美麗だが重い) | 2Dドット(シンプル、想像力を刺激) | 
| ゲームバランス | 低難易度(インフレ気味) | 高難易度(特にFC版はシビア) | 
| ゲームテンポ | 悪い(移動遅、追加要素で冗長) | 良い(直線的、シンプル) | 
| 追加要素 | 多い(お使いクエスト、新システム) | 少ない(SFC版でUI改善等) | 
| BGM | 新規アレンジ(賛否両論、チープとの声多) | チップチューン/SFC音源(印象的) | 
| プレイフィール | 親切だが作業的で退屈 | 不親切だが手探りの緊張感と楽しさ | 
この表から明らかなように、本作はSFC版が実現した「原作の良さを活かしつつ、快適性を向上させる」というリメイクの王道から外れ、「ビジュアルを豪華にし、コンテンツを足す」という方向性に進みました。 しかし、その豪華なビジュアルや追加コンテンツを支えるべき「ゲームプレイの土台(テンポとバランス)」が劣悪だったため、全体が崩壊してしまったのです。
HD-2D「ドラクエ3」への懸念と本作が残した課題
この『I&II』リメイクの評価は、多くのファンが本命として待っている『HD-2D版 ドラゴンクエストIII』に暗い影を落としています。
『ドラクエ3』は、『I&II』とは比較にならないほどのボリュームと、職業システムや広大な世界探索といった奥深いゲーム性を持っています。 もし『I&II』で露呈した問題点、
- 移動や戦闘の根本的なテンポの悪さ
- 本筋のテンポを阻害する「お使い」的な追加要素
- 大味な新システムによるバトルバランスの崩壊
- 期待外れのBGMクオリティ
これらが『ドラクエ3』リメイクでも改善されなかった場合、その評価は『I&II』以上に悲惨なものになる可能性があります。 元々ボリュームがある作品が、さらに冗長な追加要素と劣悪なテンポで水増しされたら、クリアまでたどり着けるプレイヤーはごくわずかでしょう。
本作『I&II』は、図らずも『ドラクエ3』リメイクのための「最終テスト」のようになってしまいました。 スクウェア・エニックスには、本作で寄せられた膨大なフィードバックを真摯に受け止め、『ドラクエ3』で同じ過ちを繰り返さないことを切に願うばかりです。
プレイヤーからの具体的な要望と今後のアップデートへの期待
現状、厳しい評価にさらされている本作ですが、まだ「失敗作」と断定するのは早いかもしれません。 公式側も、発売後のフィードバックを受け、アップデートによる改善を示唆しています。
では、プレイヤーは具体的にどのような改善を望んでいるのでしょうか。
最優先課題:「移動速度」と「戦闘テンポ」の抜本的改善
これは最も多く、そして最も切実に求められている要望です。 このゲーム体験の根幹に関わる部分が改善されなければ、他の何を修正しても評価が覆ることはないでしょう。
- ダッシュ機能(移動速度アップ)の追加: ボタン一つで通常の1.5倍~2倍の速度で移動できるようにする。
- 戦闘の倍速モード導入: 戦闘中のエフェクトやメッセージを2倍速、4倍速などに変更できる機能。
- メッセージスキップ機能の強化: 一度見たイベントシーンや会話を完全にスキップできる機能。
これらは現代のゲームでは標準的な機能であり、技術的にも実装は難しくないはずです。 早急な対応が求められます。
音源の差し替え・オーケストラ音源DLCの可能性
BGMへの不満も根強いため、音源のクオリティアップも強く望まれています。 理想を言えば、東京都交響楽団による重厚なオーケストラ音源への差し替えです。
もしコスト的に難しいのであれば、有料のダウンロードコンテンツ(DLC)としてでも、「オーケストラ音源パック」を販売してほしい、という声も少なくありません。 プレイヤーに「選ぶ権利」を与えるだけでも、満足度は大きく変わるはずです。
クリア後の「エンドコンテンツ」の不足
現状、本作はストーリーをクリアしてしまうと、ほとんどやることがありません。 原作がそうだったとはいえ、フルプライス近い価格のリメイク作品としては、やり込み要素が薄すぎます。
- 高難易度の追加ダンジョン
- 裏ボスの追加
- 周回プレイ時の引継ぎ要素
こうした、クリア後も長く遊べる「エンドコンテンツ」の充実が望まれます。 「1日で飽きる」という状況を改善するためにも、長く遊べる動機付けは不可欠です。
まとめ
今回のレビューでは、『HD-2D版 ドラゴンクエストI&II』がなぜ発売直後から「1日で飽きた」「売却続出」と言われる事態になっているのか、その理由を徹底的に分析しました。
結論として、本作のプレイヤー離れは、
- 致命的な移動・戦闘のテンポの悪さ
- 蛇足となった冗長な追加シナリオ
- ビーストモード等によるバトルバランスの崩壊
- ビジュアル以外に新鮮味がない既視感
- 期待外れのチープなBGMと演出 という5つの大きな問題点が複合的に作用した結果です。
「HD-2D」という最高のビジュアル表現を得ながらも、ゲーム体験の土台となる「快適性」と「ゲームバランス」の現代化を怠った、あるいは見誤ったことで、新旧どちらのファンにも響かない中途半端なリメイクとなってしまいました。
これは、リメイク作品がいかに難しい挑戦であるかを改めて浮き彫りにした事例と言えます。 しかし、まだアップデートによる改善の道は残されています。 開発チームがプレイヤーの声に真摯に耳を傾け、特に「テンポ」の問題を抜本的に改善することで、この作品の評価が少しでも回復することを、一人のゲームファンとして、そして評論家として願っています。 そして何より、この教訓が『HD-2D版 ドラクエ3』に活かされることを強く期待します。
 
											






 
							
							
							
															 
							
							
							
															 
							
							
							
															 
							
							
							
															 
							
							
							
															 
							
							
							
															 
										
					 
									 
										
										
										
																	 
										
										
										
																	 
										
										
										
																	 
										
										
										
																	 
										
										
										
																	 
										
										
										
																	