ゲーム評論家の桐谷シンジです。 今回も多く寄せられてる質問にお答えしていきます。
この記事を読んでいる方は、いよいよ発売が迫る『DEATH STRANDING 2: ON THE BEACH』を前に、前作の壮大な物語の繋がりや、忘れてしまったストーリーの詳細について気になっているのではないでしょうか。 小島秀夫監督が創り出す物語は、非常に緻密で奥深いからこそ、続編を最大限に楽しむためには前作の理解が鍵となります。

この記事を読み終える頃には、前作『DEATH STRANDING』の物語の要点から、『2』へと続く伏線、そして続編をプレイする上での注目ポイントまで、全ての疑問が解決しているはずです。
- 前作デスストの壮大な物語を完全解説
- 主要キャラクターたちの結末とその後の動向
- デススト2へと繋がる重要な伏線と謎
- ネタバレなしで楽しむための2の新要素紹介
それでは解説していきます。

全てはここから始まった!前作『DEASH STRANDING』の物語を振り返る
『DEATH STRANDING 2: ON THE BEACH』の物語を理解するためには、まず前作で何が起こったのかを正確に把握しておくことが不可欠です。 ここでは、複雑で難解とも言われる前作のストーリーを、重要なポイントに絞って分かりやすく解説していきます。

物語の前提:世界を分断した大災害「デス・ストランディング」とは
物語の舞台は、謎の大災害「デス・ストランディング」によって、人々の暮らしや文明が崩壊した近未来のアメリカです。 この現象により、「あの世」と「この世」の境界が曖昧になりました。 その結果、死者の魂である「BT(Beached Things)」が座礁物として現世に出現するようになります。
BTは肉眼では捉えにくく、特殊な能力を持つ者しかその存在を感知できません。 そして、BTが人間を取り込むと「対消滅(ヴォイド・アウト)」と呼ばれる巨大な爆発が発生し、大規模なクレーターを残して周囲の全てを消し去ってしまいます。 さらに、空から降る「時雨(タイムフォール)」は、触れたものの時間を急激に進ませ、人間や物質を劣化・崩壊させる恐ろしい現象です。
これらの脅威によって、人々はシェルターや地下都市(ノットシティ)に引きこもり、物理的にも精神的にも完全に分断されてしまいました。 国家は崩壊し、人々は孤立して生きることを余儀なくされたのです。
主人公サム・ポーター・ブリッジズの孤独な旅路
本作の主人公は、ノーマン・リーダスが演じるサム・ポーター・ブリッジズです。 彼は伝説の配達人(ポーター)として知られていますが、過去のトラウマから他人との接触を極度に嫌い、孤独に生きていました。

サムは「帰還者(リパトリエイト)」と呼ばれる特異体質を持っています。 これは、たとえ死んでも「結び目」と呼ばれる死後の世界を経由して、肉体を伴って現世に帰還できる能力です。 また、彼は「DOOMS」と呼ばれる能力者でもあり、BTの存在を感知することができます。 この能力と帰還者としての特性が、危険な世界で配達人として生き抜くための重要な鍵となっていました。
彼は、分断された世界で唯一、都市と都市を繋ぐライフラインである配達人として活動していましたが、それはあくまで生きるための手段であり、特定の組織に属することなく、誰とも深い関わりを持とうとはしませんでした。
アメリカ再建の鍵「カイラル通信」とUCAの設立
物語は、サムがアメリカ合衆国最後の(そして次期)大統領であるブリジット・ストランドから、ある依頼を受けるところから始まります。 それは、アメリカ東海岸から西海岸までを「カイラル通信」で繋ぎ、分断された人々を再び結びつけ、アメリカ都市連合「UCA(United Cities of America)」を再建するという壮大な計画でした。
カイラル通信は、この世界の根幹をなす「ビーチ」と呼ばれる異次元空間を利用した超高速通信網です。 これをアメリカ全土に張り巡らせることで、情報の共有だけでなく、膨大な物資のデータ転送(カイラルプリンターによる3Dプリント)も可能になります。
サムは当初、この途方もない計画への協力を拒否します。 しかし、テロリストに囚われた育ての親であるブリジットの娘、アメリを救出するという個人的な動機と、ダイハードマンをはじめとするブリッジズのメンバーからの説得により、渋々ながらもアメリカ大陸を横断する旅に出ることを決意するのです。
サムの前に立ちはだかる脅威:BTとテロリト「ミュール」「デメンス」
サムの旅は決して平坦なものではありませんでした。 最大の脅威は、やはり神出鬼没のBTです。 サムはBB(ブリッジ・ベイビー)と呼ばれる特殊な胎児をポッドに入れて携行することで、BTの位置をより正確に把握し、危険を回避しながら進みます。
さらに、人間たちの脅威も存在しました。 「ミュール」は、荷物を運ぶことそのものに依存し、他の配達人から荷物を奪うことに執着する集団です。 彼らは殺意こそありませんが、サムの配達を執拗に妨害します。
より危険なのが、トロイ・ベイカー演じるヒッグス・モナハンが率いるテロリスト集団「デメンス」です。 彼らはカイラル通信網の拡大を阻止し、UCAの設立を妨害するために、BTを意図的に操り、都市を破壊し、人々を殺害することも厭わない過激な思想を持っています。 ヒッグス自身も強力なDOOMS能力者であり、物語を通して何度もサムの前に立ちはだかった最大のライバルでした。
物語の核心に迫る:ビーチと絶滅体の謎
旅を続ける中で、サムは「ビーチ」と呼ばれる謎の空間に度々転送されます。 ビーチは生と死の狭間に存在する空間であり、個人の精神世界と繋がっています。 カイラル通信もこのビーチを経由して行われていました。
そして、物語の核心として「絶滅体(Extinction Entity, EE)」の存在が明らかになります。 絶滅体とは、地球規模の大量絶滅を引き起こす力を持つ高次元の存在です。 サムの任務の依頼主であり、救出対象でもあったアメリこそが、この時代における絶滅体そのものでした。 彼女は、人類を次のステージへ進化させる(あるいは滅ぼす)ための「ラスト・ストランディング」を引き起こす運命を背負っていたのです。
アメリは自身のビーチに閉じ込められており、現実世界にいる彼女の姿は、魂だけの投影(ハ)でした。 彼女がサムにアメリカ再建を依頼した真の目的は、カイラル通信網を完成させることで全てのビーチを繋ぎ、ラスト・ストランディングを発動させることにあったのです。
運命の親子:サムとクリフォード・アンガーの悲劇
物語のもう一つの重要な軸が、マッツ・ミケルセン演じる謎の男、クリフォード・アンガーとの関係です。 サムは旅の途中で、赤ん坊(BB)を奪い返そうとするクリフが作り出す、第一次世界大戦やベトナム戦争の戦場の悪夢に何度も引きずり込まれます。
当初、クリフはサムが携行するBBを自分の子供だと信じ、サムを敵視していました。 しかし、物語の終盤で衝撃の事実が明かされます。 クリフこそがサムの実の父親であり、サムがかつてBBだったのです。
かつて、クリフはブリッジズの研究施設で、まだ赤ん坊だった息子サムを実験台(最初のBB)にされていました。 息子を救うために施設から脱出しようとしたクリフは、ブリジットに撃たれて命を落とします。 その際、流れ弾に当たって死亡した赤ん坊のサムを、絶滅体であるアメリが彼女の「ビーチ」で蘇生させました。 これが、サムが「帰還者」となった起源であり、彼とアメリの間に特別な「繋がり」が生まれた瞬間でした。 クリフの魂は、息子への強い想いからビーチに留まり、サムの前に現れ続けていたのです。 全ての真実を理解したクリフは、サムに「お前はサム・ポーター・ブリッジズだ」と告げ、安らかに成仏していきました。
人類を救うための決断:ラスト・ストランディング
全てのカイラル通信を繋ぎ、アメリのビーチにたどり着いたサムは、彼女から世界の真実を告げられます。 ラスト・ストランディングはもはや避けられない運命であると。 サムは究極の選択を迫られます。 アメリの手を取り、ラスト・ストランディングを見届けるか。 それとも、彼女との繋がりを断ち、人類にわずかな希望を残すか。
サムは後者を選びます。 彼はアメリをビーチに一人残し、繋がりを断ち切ることで、ラスト・ストランディングの即時発動を阻止しました。 それは、愛するアメリを永遠の孤独に追いやるという、非常に辛い決断でした。 しかし、これにより人類は滅亡を免れ、猶予期間を得ることができたのです。
エンディングのその先へ:サムとルーの新たな絆
アメリカ大陸を繋ぎ、英雄となったサムでしたが、彼は再び孤独を選びます。 彼はUCAには所属せず、一人の配達人として生きる道を選びました。
物語の最後、サムが旅を通して絆を育んできたBB-28、通称「ルー」が機能停止(死)の危機に瀕します。 BBはあくまで「装備品」であり、機能停止した場合は焼却処分するのが規則でした。 しかし、サムは規則を破り、ルーをポッドから解放することを決意します。 それは、ルーを「道具」ではなく、一人の人間として、自分の子供として受け入れるという決意の表れでした。
奇跡的にルーは息を吹き返し、サムは彼女を「ルイーズ」と名付けます。 降りしきる時雨を避けるように、サムはルイーズを抱きしめ、二人で新たな人生を歩み始めるところで、前作の物語は幕を閉じます。 この結末こそが、『DEATH STRANDING 2』へと直接繋がる、最も重要な出発点となるのです。
『DEATH STRANDING 2』へ!物語の繋がりと考察
前作の壮大な物語を経て、サムとルーは新たな一歩を踏み出しました。 では、その後の世界はどうなったのか?そして、『DEATH STRANDING 2』はどこから始まるのでしょうか。 公開されているトレーラーや情報を基に、物語の繋がりと注目すべきポイントを深く考察していきます。

前作エンディングから『2』の冒頭へ:物語はどこから始まるのか
前作のエンディングで、サムはルー(ルイーズ)と共に平穏な生活を求めて姿を消しました。 『2』の物語は、その後の二人を描くところから始まると考えられます。 しかし、その平穏は長くは続きません。
レア・セドゥが演じるフラジャイルが、彼らの下に現れることで、サムは再び世界を繋ぐための旅に巻き込まれていきます。 公開された映像では、フラジャイルが運営する民間配達組織「DHV(Drawbridge)」の巨大な移動拠点「マゼラン」が登場しており、サムはこの船を拠点に新たな冒険へ旅立つようです。
続投キャラクターたちの現状と新たな役割
フラジャイル
前作でヒッグスに肉体を蝕まれながらもサムを助けた彼女は、『2』では驚くべき変化を遂げています。 トレーラーでは、顔の時雨による老化がなくなり、若々しい姿を見せています。 さらに、サイボーグのような腕を持ち、DHVのリーダーとして活動しているようです。 彼女がどのようにして回復したのか、そしてなぜDHVを率いているのかは、物語の大きな謎の一つです。
ヒッグス・モナハン
前作でサムに敗れ、ビーチに囚われたはずのヒッグスが、サイボーグのような姿で復活を遂げます。 彼はエレキギター型の武器を操り、再びサムの前に立ちはだかるようです。 彼がどのようにしてビーチから帰還したのか、そしてその新たな目的は何なのか。 前作以上の脅威となることは間違いありません。
ダイハードマン
前作のラストでUCAの新大統領に就任したダイハードマン。 彼が率いるUCAと、フラジャイルのDHVがどのような関係にあるのかは不明です。 協力関係にあるのか、あるいは対立するのか、彼の動向も物語の鍵を握るでしょう。
新たな仲間と組織:民間配達組織「DHV」とは何か
『2』では、UCAに代わる新たな組織として「DHV(Drawbridge)」が登場します。 直訳すると「跳ね橋」を意味するこの組織は、フラジャイルによって設立された民間企業です。 彼らの目的は、カイラル通信網をUCAの支配から解放し、アメリカの外、メキシコやさらにその先の地域へと拡大することにあるようです。
UCAが国家主導の組織だったのに対し、DHVはより自由で柔軟な活動を行う組織として描かれる可能性があります。 なぜフラジャileはUCAから独立した組織を作る必要があったのか、その背景には、UCAの理念や方針との対立があったのかもしれません。
新たな舞台で描かれる「繋がり」:メキシコ、そしてその先へ
『2』の主な舞台は、アメリカの外へと広がります。 トレーラーでは、乾燥した荒野や巨大な建造物が見られることから、メキシコが主要な舞台の一つであることが示唆されています。 アメリカ大陸を繋いだサムが、今度は国境を越えて世界を繋ぐという、よりスケールの大きな物語が展開されるでしょう。

移動拠点「マゼラン」の存在は、海を越えてさらに遠くの地へ向かう可能性も示しています。 もしかしたら、オーストラリア大陸や、他の大陸へと旅が続くのかもしれません。 新たな土地には、未知の環境、未知のBT、そして新たな文化を持つ人々との出会いが待っているはずです。
考察:『2』で描かれるであろうテーマ「Should We Have Connected?(我々は繋がるべきだったのか?)」
前作のテーマが「繋がり(ストランド)」そのものの重要性を描いていたのに対し、『2』ではその「繋がり」に対して、より深く、そして批判的な問いを投げかけています。 トレーラーで何度も繰り返される「Should We Have Connected?(我々は繋がるべきだったのか?)」という言葉が、それを象徴しています。
カイラル通信によって人々は繋がりましたが、それは同時に偽情報や悪意が拡散するリスクも生み出しました。 また、UCAによる中央集権的な支配は、新たな火種を生む可能性もあります。 小島監督は、「繋がり」が必ずしも善ではないこと、時には「孤立」を選ぶ自由も必要であることを描こうとしているのかもしれません。 これは、SNSが普及した現代社会に対する強烈なメタファーとも言えるでしょう。
前作で残された謎は解明されるのか?
前作では、多くの謎が残されました。
- アメリ以外の絶滅体(EE)は存在するのか?
- 「ビーチ」とは具体的に何なのか、その全体像は?
- DOOMS能力の根源は何か?
- サムが時折見る、5人の浮遊する人影の正体は?
これらの謎が、『2』でどこまで解明されるのかも大きな注目点です。 特に、アメリに代わる新たな絶滅体の存在が示唆されれば、物語はさらに複雑で予測不可能な展開を迎えることになるでしょう。
『2』を120%楽しむために:知っておきたいゲームシステムの変化
物語だけでなく、ゲームシステムも正統進化を遂げています。 『2』をこれからプレイする方が知っておくと、より楽しめるであろう変化点をいくつかご紹介します。
項目 | 前作からの進化・変更点 |
---|---|
配達要素 | ・より多様な地形(砂漠、密林、火山地帯など)が登場<br>・モノレールなどの新たなインフラ建設が可能に<br>・天候や時間帯の概念が追加され、環境が動的に変化 |
戦闘システム | ・ステルスだけでなく、本格的な銃撃戦も楽しめるように<br>・格闘アクションや新たな武器が多数追加<br>・敵の種類も増加し、ゴーストメックと呼ばれる謎の勢力が登場 |
育成要素 | ・プレイヤーの行動に応じてサムの能力が細かく成長<br>・スキルツリー形式の成長システム「Aパスエンハンスメント」が追加<br>・武器の熟練度など、やり込み要素が大幅に増加 |
これらの進化により、前作の核となる「配達」の面白さはそのままに、よりダイナミックで自由度の高いゲームプレイが期待できます。 特に戦闘面での進化は大きく、前作では戦闘を避けるプレイスタイルが主だったプレイヤーも、今作では積極的に戦いを楽しむことができるでしょう。
まとめ
今回は、『DEATH STRANDING 2: ON THE BEACH』をプレイする前に、絶対に押さえておきたい前作のストーリーと、続編への繋がりについて徹底的に解説しました。

前作『DEATH STRANDING』は、大災害によって分断されたアメリカを、主人公サムがカイラル通信で再び繋ぎ直し、UCAを設立するまでの壮大な物語でした。 その過程で、サム自身の過去、世界の謎、そしてBB(ルー)との絆が描かれ、ラスト・ストランディングという人類滅亡の危機を一時的に回避することに成功しました。 そしてエンディングで、サムはルーと共に生きることを選び、新たな一歩を踏み出します。
『DEATH STRANDING 2』は、その直後の物語から始まります。 舞台はアメリカを越えてメキシコへ、そしてさらにその先へと広がります。 フラジャイル率いる新たな組織「DHV」と共に、サムは再び世界を繋ぐための旅に出ますが、そこでは前作のテーマであった「繋がり」そのものが問い直されることになります。 復活を遂げたヒッグスをはじめとする新たな脅威、そして進化したゲームシステムが、我々プレイヤーを待ち受けています。
前作の物語と登場人物たちの背景を深く理解しておくことで、『DEATH STRANDING 2』で描かれる新たなドラマや謎、そして感動を何倍にも深く味わうことができるはずです。 この記事が、あなたの新たな旅への最高のガイドとなることを願っています。 さあ、再び繋がりを取り戻す(あるいは、断ち切る)ための準備を始めましょう。