ゲーム評論家の桐谷シンジです。 今回も多く寄せられてる質問にお答えしていきます。
この記事を読んでいる方は、2025年に発売が予定されているHD-2Dリメイク版「ドラゴンクエストI」の物語の結末、特にラスボス戦の展開や感動のエンディング、そして「クリア後にまだ物語が続くのか」といった点が気になっていると思います。 『ドラゴンクエスト』は、まさに日本のRPGの原点であり、その物語は多くのプレイヤーの心に刻まれています。 特にHD-2Dという美麗なグラフィックで蘇るとなれば、あのクライマックスがどう描かれるのか、期待せずにはいられません。
この記事を読み終える頃には、ドラクエ1の物語のクライマックスと、その先の展開についての疑問が解決しているはずです。 初代ファミコン版との違いや、リメイク版で追加された重要な伏線についても、私がやりこんだ経験を元に徹底的に解説していきます。
- ラスボス竜王の「世界の半分」という究極の選択
- リメイク版で追加された精霊ルビスの重要な役割
- 感動のエンディングとドラクエ2へ繋がる伏線
- クリア後に示唆される「更なる闇」の正体考察
それでは解説していきます。
ドラクエ1の集大成!ラスボス「竜王」との最終決戦
『ドラゴンクエストI』の物語は、竜王に奪われた「光の玉」を取り戻し、連れ去られたローラ姫を救い出す、非常に王道かつシンプルなものです。 しかし、シンプルだからこそ、クライマックスの最終決戦はプレイヤーの記憶に強く残ります。 HD-2Dリメイク版で、あの竜王の城の不気味さと、竜王の威厳がどう表現されるのか、今から楽しみでなりません。
竜王の城への道のり
竜王の城は、物語のスタート地点であるラダトームの城から海を隔てた魔の島にあります。 この城にたどり着くまでには、まず「にじのしずく」を使って虹の橋を架けなければなりません。 城の内部は広大かつ複雑なダンジョンとなっており、シリーズでお馴染みの「暗闇」フロアも健在です。 ファミコン版では「たいまつ」が必須アイテムでしたが、リメイク版(SFC版やスマホ版)では暗闇が緩和され、探索しやすくなっているのが特徴です。
HD-2D版でも、おそらくこの探索のしやすさは踏襲されるでしょう。 しかし、あの暗闇の中、手探りで進む緊張感もドラクエ1の醍醐味でした。 HD-2Dの美しい光と影の表現で、たいまつの炎が照らす範囲だけが浮かび上がるような、新たな「暗闇」の演出にも期待したいところです。
このダンジョンでは、ドラクエ1における最強の武器「ロトのつるぎ」を発見できます。 竜王に挑むためには、ロトのつるぎ、ロトのよろい、ロトのたてといった「ロトの装備」を揃えることが不可欠です。 特にロトのよろいは、歩くたびにHPが回復し、毒の沼地やバリア床のダメージを無効化するという破格の性能を誇ります。 竜王の城の地下深くに眠るロトのつるぎを見つけ出した時の高揚感は、HD-2D版でも健在であってほしいものです。
竜王との謁見と「世界の半分」という究極の選択
長いダンジョンを抜け、玉座にたどり着くと、そこには人型の魔物が鎮座しています。 彼こそが、アレフガルドを闇に閉ざした張本人、「竜王」です。
BGMが止まり、静寂の中で竜王は語りかけてきます。 リメイク版でのセリフを見てみましょう。
「よく来た。わしが王の中の王、竜王である」 「そなたら人間は忘れただけだ。本来、我ら竜こそがこの世界の真の支配者」 「もしわしの味方になれば、世界の半分をお前にやろう。どうじゃ、わしの味方になるか?」
これこそが、ゲーム史に残るあまりにも有名な「究極の選択」です。 プレイヤーはこの問いに「はい」か「いいえ」で答えなくてはなりません。
この問いかけは、単なる戦闘前の演出ではありません。 当時のRPGにおいて、ラスボスが主人公に「取引」を持ちかけるという展開は極めて斬新でした。 多くのプレイヤーが、好奇心から、あるいはうっかり「はい」を選んでしまった経験があるのではないでしょうか。
HD-2D版では、この竜王の玉座の荘厳さ、竜王の圧倒的なカリスマ性がどのように描かれるのか。 美しいドット絵と3DCGの融合が、この緊張感あふれる対峙をどう演出するのか、最大の注目ポイントの一つです。
選択肢①:「はい」(世界の半分を受け入れた場合のバッドエンド)
もし、ここで誘惑に負けて「はい」と答えてしまったらどうなるか。 ドラクエ1は、この選択にもしっかりと結末を用意しています。
竜王は「よろしい」と答え、友情の証として主人公の武器(ロトのつるぎ)を受け取ろうとします。 そして、衝撃的な言葉を続けます。
「ではわしからの贈り物を受け取るがよい。お前に世界の半分、闇の世界を与えよう」
次の瞬間、画面は暗転し、不気味なメッセージが流れます。 「そして ゆうしゃは めのまえが まっくらになった!」
ファミコン版では、ここで「おきのどくですが ぼうけんのしょは きえてしまいました」という、プレイヤーを絶望の淵に叩き込むメッセージが表示され、セーブデータが強制的に削除されました(正確には復活の呪文が機能しなくなる)。 これは当時の子供たちにとって、まさにトラウマものの演出でした。
リメイク版(SFC版以降)では、セーブデータ削除こそありませんが、「主人公が闇の世界で目覚めるが悪夢だった」という形で城(または宿屋)に戻されます。 しかし、レベルは1に戻り、所持金も半減するという厳しいペナルティが課せられます(※作品によってペナルティの仕様は異なります)。
情報ソースにあるテキストでは、闇の世界を与えられた瞬間に「あ」という主人公の断末魔のようなボイス(?)が入り、その後「貰わなかった場合」のセリフに続いています。 これは、HD-2D版で「世界の半分」を選んだ場合の演出が、より直接的で恐ろしいものになる可能性を示唆しています。 単にゲームオーバーになるのではなく、一度「闇の世界」を体験させられるのかもしれません。
選択肢②:「いいえ」(真の勇者としての戦いの始まり)
もちろん、真の勇者であるプレイヤーが選ぶべき道は「いいえ」です。 竜王は「では、どうしてもこのわしを倒すというのだな。愚か者め!」と怒りを露わにし、ついに最終決戦の火蓋が切られます。
ここからの展開は、リメイク版(SFC版以降)とファミコン版で大きく異なります。 ファミコン版では、この人型の竜王を倒せば、そのままエンディングでした。 しかし、リメイク版ではここからが本番です。
激闘!竜王(人型)とのバトル
まずは人型の竜王との戦闘です。 彼は「王の中の王」を名乗るだけあり、強力な呪文を操ります。 特に「ベギラマ」は全体に大ダメージを与えてくるため、HP管理が重要になります。
とはいえ、推奨レベル(20以上)に達し、ロトの装備を固めていれば、苦戦する相手ではありません。 むしろ、この後の戦いに備えてMPを温存しつつ、的確にダメージを与えていく必要があります。
情報ソースのテキストでは、戦闘中に「ギガデインだな」というセリフが入っています。 これは、ファミコン版の竜王はギガデインを使ってこなかった(そもそも主人公も使えない)ため、リメイク版独自の演出、あるいはHD-2D版での新技の可能性を示しています。 あるいは、主人公が使う「ベギラマ」や「ライデイン」(もし習得するならば)に対して、上位呪文である「ギガデイン」で応酬してくる、といった演出かもしれません。
「人ごときがよくぞ」と余裕を見せる竜王(人型)ですが、勇者の攻撃を受け続ければ、やがて膝をつきます。
衝撃の変身!竜王(真の姿)との死闘
人型の竜王を倒すと、彼は「これが勇者の光の力か…ならば、我が誠の姿、見せてくれよう!」と叫び、真の姿を現します。 お馴染みの、巨大なドラゴンの姿です。
ここからBGMは緊迫感あふれるものに変わり、ドラクエ1における真の最終決戦が始まります。
ファミコン版のプレイヤーにとって、この展開は衝撃的でした。 「え、まだ続くの!?」と。 そして、この真の竜王が絶望的なまでに強かったのです。
ファミコン版の竜王(真の姿)は、呪文が一切効きません。 攻撃手段は「ロトのつるぎ」による物理攻撃のみ。 そして、竜王は「はげしいほのお」で大ダメージを与えてきます。 主人公は回復呪文「ベホイミ」を覚えず、「ホイミ」しか持っていないため、回復が全く追いつきません。 勝つためには、レベルを極限まで上げ、「やくそう」を大量に持ち込み、運良く「はげしいほのお」が来ないことを祈りながら殴り続けるしかありませんでした。
しかし、リメイク版(SFC版以降)では、このバランスが大きく見直されました。 まず、主人公が「ベホイミ」を習得します。 これにより、HP管理が格段に楽になりました。 さらに、竜王(真の姿)にも呪文(ベギラマなど)が効くようになり、戦術の幅が広がっています。
情報ソースのテキストを見ると、竜王(真の姿)も「ベホイミ」を使っています。 これは、リメイク版(SFC版やスマホ版)の仕様を踏襲していることを示しています。 「これでどうだ?」「まだだ!」「立ち切る!」といった戦闘中のボイス(?)は、HD-2D版での臨場感あふれるバトルを期待させます。 一進一退の攻防が、ボイス付きで展開されるのかもしれません。
竜王の最期と光の玉の奪還
死闘の末、ついに竜王は倒れます。 「なぜだ…なぜ闇をわしの力に…うぐぅ…どうして光を…」 断末魔の叫びと共に竜王は消え去り、その奥には「光の玉」が出現します。
この「闇をわしの力に」というセリフは非常に興味深いものです。 彼は光の玉(竜の力の一部)を取り戻そうとしただけでなく、アレフガルドを覆う「闇」そのものを取り込もうとしていたのでしょうか。 このセリフも、リメイク版で追加された「さらなる闇」への伏線となっている可能性があります。
光の玉を取り戻した瞬間、竜王の呪いが解け、アレフガルドに光が戻ります。 そして、情報ソースにあるように、謎の声が語りかけます。 「よくぞ、約束を守ってくれました。ありがとう、勇敢なる光の子らよ」 「そして残る闇を頼みます。未来の光の子らよ」
この声の主は、ファミコン版では明かされませんでした。 しかし、リメイク版(SFC版以降)では、この声の主が誰であるかが、エンディングで明確にされます。 この「残る闇」こそが、ドラクエ2、そしてドラクエ3へと繋がる壮大な物語の序章となるのです。
光が世界を取り戻す!ドラクエ1 感動のエンディング
竜王を倒し、光の玉を取り戻した勇者。 凱旋した勇者を待つのは、感動のエンディングです。 HD-2Dで描かれるアレフガルドの美しい風景と、すぎやまこういち氏の名曲「フィナーレ」が、どのように融合するのか。 私が最も期待しているシーンの一つです。
ラダトーム城への凱旋と王の祝福
ラダトームの城に戻ると、王様や城の人々が勇者を盛大に出迎えてくれます。 「おお!竜王を倒し、光の玉を取り戻すとは!誠に見事であったぞ!」 「魔物におびえる必要はないのだ!」 城下町の人々も歓喜に沸き、世界に平和が戻ったことを実感させられます。
ファミコン版では、この凱旋シーンでBGMが「ラダトーム城」に戻るのですが、すぐに「フィナーレ」に切り替わるあの演出が大好きでした。 HD-2D版でも、あの感動的な凱旋は健在でしょう。
ローラ姫との再会と約束の証
もちろん、救出したローラ姫も勇者を待っています。 「お帰りなさいませ、勇者様。約束を守ってくださって、ローラは嬉しいございます」 「あなたこそ、伝説の勇者ロトの血と意思と勇気を受け継いだ、本当の勇者ですわ」
ローラ姫のセリフは、主人公が単なる「勇者」ではなく、「ロトの称号を受け継ぐ者」であることを明確にします。 ドラクエ1の時点では、「ロト」という存在は伝説上の人物でしかありませんでしたが、このエンディングがドラクエ3への壮大な伏線となっているのです。
精霊ルビスの登場(リメイク版で追加された重要なシーン)
ファミコン版のエンディングは、王様とローラ姫の祝福で終わっていました。 しかし、リメイク版(SFC版以降)では、非常に重要なシーンが追加されています。 それが、精霊ルビスの登場です。
情報ソースのテキストにあるように、宴の最中、ローラ姫が「誰かに呼ばれたような気がして」城を抜け出すと、そこに天からの声が響きます。
「勇者よ。そしてラダトームの王女、ローラよ。世界を守ってくれたこと、心から感謝します」 「この声は…精霊ルビス様」
ここで、竜王戦の最後に聞こえた声の主が、アレフガルドの創造主である精霊ルビスであったことが判明します。 この追加シーンこそが、ドラクエ1の物語を「ロト三部作」として完璧に位置づけた、最大のリメイク要素だと私は考えています。
ルビスが語る「残る闇」と未来への懸念
ルビスは感謝を述べると同時に、衝撃の事実を告げます。 「これで全て終わったのですね」と問うローラ姫に対し、ルビスは「いいえ」と答えます。
「なぜ世界の守護者である竜王が闇に染まってしまったのか…正体は分かりませんが、不気味な気配が深き(ningi?)に潜んでいるのを感じます」 「その闇は、いつの日か再び世界を飲み込もうとするでしょう」
竜王ですら、何者かの「闇」に染まってしまったに過ぎない。 竜王を操っていた「真の黒幕」が存在することを示唆する、恐るべきセリフです。 この「残る闇」こそが、100年後のアレフガルドを舞台にした『ドラゴンクエストII』の敵、大神官ハーゴンと破壊神シドーを指していることは、シリーズファンなら誰もが知るところです。
ローラ姫の誓いと「5つの紋章」
ルビスは続けます。 「強大な闇から世界を守るには、勇敢で優しい人間の力、勇者が必要なのです」 「一体どうしたら、闇が迫った時に、未来の人々が私に力を貸してくれるでしょうか?」
このルビスの不安に対し、ローラ姫が毅然と答えます。 「ルビス様、お約束します。強く優しい勇者様の心と意思を未来に伝え、受け継いでいきます。私たち人間を信じてください」
この誓いを受け、ルビスもまた誓います。 「ありがとう。私も誓います。もう二度と、勇者も、そして闇に立ち向かう人々も孤独にはしないと」
そして、ルビスは勇者が冒険の中で集めた(とされる)「5つの紋章」を預かります。 「いつか闇が迫った時、その紋章は、勇者と私を繋ぐ鍵となるでしょう」
この「紋章」は、言うまでもなく『ドラゴンクエストII』でロトの子孫たちが集めることになる「5つの紋章」です。 ファミコン版のドラクエ1には紋章は登場しませんでしたが、リメイク版でこの設定が追加されたことにより、ドラクエ1と2の物語がシームレスに繋がりました。 HD-2D版でも、このルビスとローラ姫の誓いのシーンは、ロト三部作の絆を象徴する重要な場面として、美しく描かれるに違いありません。
勇者の決断「自分の国は自分で探す」
ルビスとの対話が終わると、勇者は王様の元へ戻ります。 王様は「そなたこそは勇者ロトの血と意思を受け継ぐ者。このわしに代わって、この国を治めてくれるな?」と、王位の継承を提案します。 ファミコン版では、ここで「はい」と答えるのが正規のエンディングでした。
しかし、リメイク版の勇者は、この申し出を断ります。 「いえ。もし私の治める国があるなら、それは私自身で探したいのです」
竜王の「世界の半分」という誘惑も断り、今またラダトームという「世界の半分」の統治も断る。 勇者が求めていたのは、支配や権力ではなく、自分自身の足で歩む「冒険」そのものだったのです。 この主体的な決断は、リメイク版でキャラクター性が深まった勇者の姿を象徴しています。
ローラ姫との旅立ち(ドラクエ2への布石)
王様は勇者の決断を受け入れ、「光の玉」を託します。 そこへ、ローラ姫が駆け寄ります。 「待ってくださいませ!そのあなたの旅に、ローラもお供しとうございます!このローラも連れてってくださいますね?」
ファミコン版では、この問いに「はい」と答えると、ローラ姫を「お姫様だっこ」して旅立つという、非常に印象的なエンディングでした。
情報ソースのテキストでは、この問いかけが3回繰り返されています。 これは、HD-2D版で、プレイヤーに「はい」と答えることを促す、コミカルながらもロマンチックな演出が加えられている可能性を示唆しています。 もちろん、勇者は「はい」と答えます。
「嬉しいございます、勇者様!共に広い世界を旅して、強い力と心を育み、ルビス様との約束を果たす、その時のために」
二人は手を取り合い(あるいは、お姫様だっこで)、新たな世界へと旅立っていきます。 この「新たな世界」こそが、アレフガルドの外、のちに「ローレシア」「サマルトリア」「ムーンブルク」と呼ばれる国々が築かれる大地です。
『ドラゴンクエストII』の主人公であるローレシアの王子、サマルトリアの王子、ムーンブルクの王女は、このドラクエ1の勇者とローラ姫の子孫たちなのです。 ドラクエ1のエンディングは、単なるハッピーエンドではなく、100年後の子孫たちへと続く「ロトの伝説」の始まりを告げる、壮大な序章となっています。
物語はまだ終わらない?ドラクエ1 クリア後のストーリー徹底考察
通常、RPGはエンディングを迎えれば物語は完結です。 しかし、リメイク版のドラクエ1(SFC版やスマホ版)には、エンディングのスタッフロールが流れた後、プレイヤーを驚かせる「クリア後の追加シーン」が存在します。 HD-2D版でも、このシーンは間違いなく収録されるでしょう。 そして、それはドラクエ2への強烈な「引き」となります。
クリア後のセーブデータ(リメイク版ではどうなる?)
エンディングが終わると、セーブするかどうかを問われます。 ここでセーブしたデータは「クリア済み」の証(星マークなど)が付き、ロードすると竜王を倒す直前の状態から再開できます。 ドラクエ1には、いわゆる「クリア後の世界」や「裏ダンジョン」は存在しません。 竜王を倒す前の世界を自由に探索できるだけです。
しかし、HD-2D版「ドラゴンクエストⅠ&Ⅱ」は、1と2がセットになった作品です。 もしかすると、ドラクエ1のクリアデータをドラクエ2に引き継ぐことで、何らかの特典が得られる可能性は十分に考えられます。 あるいは、ドラクエ1のクリアが、ドラクE2の解放条件になるかもしれません。 このあたりは、続報に期待したいところです。
衝撃のクリア後シーン「おいたわしや女王様」の謎
問題のシーンは、エンディングのスタッフロールが完全に終わり、THE ENDの文字が表示された「後」に挿入されます。 画面は暗転し、どこか不気味な場所で、謎の人物が語り始めます。
「ああ…おいたわしや、女王様。あなたのおは(望みは?)失敗しました」 「ですが、ご安心ください。あなたがいない、間違ったこの世を正す方法は、まだあるのですから」
情報ソースのテキストそのままの、非常に不穏なセリフです。 このセリフを最後に、ドラクエ1の物語は完全に幕を閉じます。 平和が訪れたはずのアレフガルドの裏で、何者かが暗躍していることを強く示唆するエンディングです。
この「女王」は誰なのか?
この謎のシーンについては、ファンの間で長年考察が交わされています。 最も有力な説は、このセリフを語っているのが「大神官ハーゴン」(ドラクエ2のラスボス)、そして「女王様」とは「ムーンブルクの女王」を指しているというものです。
ドラクエ2の物語は、大神官ハーゴン率いる軍勢がムーンブルク城を襲撃し、城が陥落するところから始まります。 ムーンブルクの王女は呪いで犬の姿に変えられてしまいますが、「女王」がどうなったかは明確に描かれていません。
もし、このクリア後のシーンがドラクエ2の直前を描いているとしたら。 「女王様(ムーンブルク女王)の望み(=ハーゴンを倒すこと?)」は失敗し、女王は殺されてしまった。 そして、ハーゴンの部下(あるいはハーゴン自身)が、女王の亡骸か、あるいは別の「何か」に向かって、「間違ったこの世を正す(=破壊神シドーを復活させる)」と語っている… そう解釈することができます。
しかし、情報ソースのテキストでは「あなたのおは失敗しました」と、肝心な部分が聞き取れない(読めない)ようになっています。 これが「お望み」なのか、あるいは別の言葉なのか。 HD-2D版で、このセリフがより鮮明になることを期待します。
HD-2D版「ドラゴンクエストⅠ&Ⅱ」におけるこのシーンの意味
このクリア後シーンは、SFC版で初めて追加されました。 当時は、ドラクエ1と2の間に何があったのかを想像させ、プレイヤーをワクワクさせる最高の「引き」でした。
今回発売されるのは「ドラゴンクエストⅠ&Ⅱ」です。 つまり、プレイヤーはドラクエ1をクリアした後、そのままドラクエ2をプレイすることになります。 このクリア後シーンは、1と2を繋ぐ「ブリッジ」として、SFC版以上に重要な役割を担うことになるでしょう。
ドラクエ1でロトの勇者が光を取り戻した。 しかし、その裏では「残る闇」が蠢き始めていた。 そして、その闇は100年の時を経て、ロトの子孫たちの前に立ちはだかる…
HD-2D版では、このシーンが単なるテキストではなく、ビジュアル付きで描かれる可能性も高いです。 ハーゴンらしき神官の姿や、荒廃したムーンブルク城が描かれるかもしれません。 ドラクエ1の感動的なエンディングの直後に、この絶望的なシーンを見せられることで、プレイヤーは「早くドラクエ2をプレイして、この闇を打ち払わねば」という強い使命感を抱くことになるはずです。
ドラクエ1とドラクエ2を繋ぐミッシングリンク
ドラクエ1とドラクエ2の間には、100年という歳月が流れています。 この100年の間に、勇者とローラ姫はアレフガルドの外に渡り、3つの国を建国しました。 彼らの血は受け継がれ、ローレシア、サマルトリア、ムーンブルクの王家となります。
一方で、アレフガルドは竜王がいなくなった後、魔物たちの統制が取れなくなり、人間が住める場所ではなくなっていった、という説もあります(ドラクエ2ではアレフガルドが荒廃しているため)。
HD-2D版「ドラゴンクエストⅠ&Ⅱ」では、この100年間の「ミッシングリンク」を埋めるような、新たな追加要素があるかもしれません。 例えば、ドラクE2のゲーム内で、ドラクエ1の勇者とローラ姫のその後の足跡を辿るようなサブクエストが追加される可能性もあります。 あるいは、ドラクエ1のクリア後シーンが、この「おいたわしや」だけでなく、勇者とローラ姫の旅立ちの「その後」を少しだけ描くような、希望に満ちたシーンも追加されるかもしれません。
リメイクとは、単にグラフィックを綺麗にするだけではありません。 過去作を尊重しつつ、新たな解釈や繋がりを加え、物語をより深く豊かにすることに真価があります。 SFC版が「ルビスの登場」と「クリア後シーン」でそれを成し遂げたように、HD-2D版にも新たな驚きと感動が用意されていることを、一人のゲーム評論家として、そして一人のドラクエファンとして、心から期待しています。
まとめ
今回は、『ドラゴンクエストI』のクライマックス、すなわちラスボス竜王戦からエンディング、そして衝撃のクリア後シーンまでを、リメイク版で追加された要素を中心に徹底的に解説しました。
竜王の「世界の半分」という誘惑を断ち切り、真の姿を現した竜王との死闘を制した勇者。 彼を待っていたのは、ラダトームの人々の祝福だけではありませんでした。 精霊ルビスの登場により、「残る闇」の存在が示唆され、ローラ姫と共に新たな世界へ旅立つという、次作『ドラゴンクエストII』へと直結する壮大なエンディングが用意されています。
そして、全てが終わった後に挿入される「おいたわしや女王様」という謎のシーン。 これがドラクエ2のプロローグとして機能し、プレイヤーを次なる冒険へと誘います。
2025年発売予定のHD-2D版「ドラゴンクエストⅠ&Ⅱ」は、この「ロト三部作」の原点と、その続編をまとめて体験できる、まさに決定版とも言える作品です。 HD-2Dの美麗なグラフィックで、あの感動のフィナーレと、忍び寄る闇の序章がどのように描かれるのか。 発売の日が待ち遠しくてたまりません。






