ゲーム評論家の桐谷シンジです。 今回も多く寄せられてる質問にお答えしていきます。
この記事を読んでいる方は、2025年9月10日にリリースされたばかりの新作「ドラゴンボール ゲキシンスクアドラ」(以下、ゲキスク)が、すぐにサービス終了(サ終)してしまうのではないかと気になっていると思います。

近年、鳴り物入りで登場したスマートフォン向けゲームがあっという間にサービスを終了する事例が後を絶ちません。 特に、大手メーカーのタイトルでさえ例外ではなく、プレイヤーとしては「このゲームに時間やお金をかけても大丈夫だろうか」と不安になるのは当然のことでしょう。
この記事を読み終える頃には、ゲキスクが抱える懸念点と、それでもなお期待できる将来性についての疑問が解決しているはずです。
- ゲキスクに囁かれるサ終懸念の具体的な理由
- ドラゴンボールという最強IPが持つ底力
- 他のドラゴンボールゲームから見るゲキスクの立ち位置
- ゲキスクが長期的に成功するための条件
それでは解説していきます。

ゲキスクが「サ終しそう」と言われてしまう理由
期待の新作であるはずのゲキスクですが、なぜリリース直後から「すぐにサ終するのでは?」という声が上がっているのでしょうか。 それには、近年のゲーム業界全体の傾向から、ゲキスク特有の問題まで、いくつかの複合的な要因が絡み合っています。 ここでは、ユーザーが不安を感じる具体的な理由を一つずつ掘り下げていきましょう。

スマホゲーム業界全体の短命化トレンド
まず、大前提として現在のスマホゲーム市場が極めて過酷な競争環境にあることが挙げられます。 一昔前なら、一度リリースすれば数年間は運営を続けるのが当たり前でした。 しかし、近年は開発費が高騰し、1タイトルあたり数十億円規模の投資も珍しくありません。
その結果、メーカー側は投資を早期に回収しようと、リリース後の短期間で収益が見込めないと判断すれば、早々に損切り、つまりサービス終了を決定する傾向が強まっています。 先日も、スクウェア・エニックスが2つのスマホゲームのサービス終了を告知したことは、多くのゲームファンの記憶に新しいでしょう。 このような「儲からなければ即終了」という風潮が、プレイヤーに「新しいゲームに手を出しにくい」という不信感を植え付けているのです。 ゲキスクもまた、この厳しい市場に投入された以上、例外ではないと見なされ、先行きの不透明さが懸念されています。
運営会社バンダイナムコの過去事例
ゲキスクの運営は、バンダイナムコエンターテインメントです。 同社は「ドッカンバトル」や「レジェンズ」といったドラゴンボールのスマホゲームを長期的に成功させている実績があります。 一方で、IP(知的財産)を活用したゲームを数多くリリースする中で、残念ながら短期間でサービスを終了したタイトルも少なくありません。

ユーザーは過去の事例をよく見ています。 「あのゲームもバンナムだったけど、1年で終わったよな」「IP頼みでゲーム内容が伴っていなかった」といった過去の記憶が、新作であるゲキスクへの不安に直結しているのです。 もちろん、一つ一つのタイトルには個別の事情がありますが、一度ついてしまった「サ終しやすいメーカー」というイメージを払拭するのは容易ではありません。
ゲームジャンル「MOBA」の日本での立ち位置
ゲキスクは「MOBA(マルチプレイヤーオンラインバトルアリーナ)」というジャンルのゲームです。 これは、PCゲームの『League of Legends』や、スマホゲームの『ポケモンユナイト』などが代表例として挙げられます。 世界的に見ればeスポーツの主要ジャンルであり、非常に大きな市場を形成しています。

しかし、日本ではMOBAというジャンル自体の知名度が、RPGやアクションゲームと比較して高いとは言えません。 一部の熱心なファンはいますが、大多数のライトユーザーにとっては「ルールが複雑そう」「味方に迷惑をかけそうで怖い」といった敷居の高さを感じさせがちです。
『ポケモンユナイト』は、ポケモンのIP力とシンプルなゲームデザインでこの壁を乗り越えましたが、ゲキスクが同じように成功できるかは未知数です。 ドラゴンボールファンがMOBAというジャンルを受け入れられるか、そしてMOBAファンがゲキスクのゲーム性に満足できるか、その両方を満たさなければユーザー層の拡大は難しく、結果としてアクティブユーザーの減少、そしてサ終へと繋がるのではないかと危惧されています。
リリース初期の評価とユーザーの不満点
どんなゲームでもリリース初期には不具合やバランスの問題がつきものですが、ゲキスクも例外ではありませんでした。 ネットワークテストを経て改善された点も多いものの、正式リリース後にはユーザーから様々な不満点が噴出しています。

テンポの悪さと不要な演出
特に指摘が多いのが、試合のテンポの悪さです。 キャラクター選択後の登場演出が長く、キルを取るたびにカットインが入るなど、原作再現を意識したであろう演出が、MOBAというスピーディーな展開が求められるゲーム性と噛み合っていません。 「1試合10分というが、体感はもっと長く感じる」「爽快感を削いでいる」といった意見は、ゲームの根幹に関わる問題と言えるでしょう。
世界観と乖離したゲームシステム
また、「前王システム」や「破壊神ゾーン」といった独自のシステムが、ドラゴンボールの世界観とマッチしていないという批判も見られます。 前王がタワーを殴り、破壊神がフィールドのオブジェクトとして登場する展開に、「なぜこうなった」「原作へのリスペクトが感じられない」と戸惑う原作ファンは少なくありません。 ゲームのルールとして理解はできても、感情的に受け入れられないユーザーがいることは、長期的なファンを繋ぎ止める上で大きな障害となり得ます。
操作性とバランスへの懸念
MOBAはキャラクターごとのバランスが非常に重要ですが、ゲキスクに関しても「特定のキャラが強すぎる」「このキャラは弱くて使い物にならない」といった声が上がっています。
もちろん、これは今後のアップデートで調整されていく部分ではありますが、初期のバランスの悪さがユーザー離れを引き起こす一因になることは十分に考えられます。 操作性に関しても、スマホでのプレイを前提としたUI(ユーザーインターフェース)に改善の余地があるという指摘もあります。
課金圧やマネタイズ方法への不安
ゲキスクは、キャラクターを解放するために「スターコレクション」を進める必要があります。 これ自体はやり込み要素として機能しますが、効率的に進めるには、多くのキャラクターを使い、勝利を重ねる必要があります。 これは無課金・微課金ユーザーにとってはかなりの時間と労力を要する可能性があり、「結局は課金しないとまともに遊べないのでは?」という不安に繋がっています。
リリース初期は緩やかでも、運営が収益を上げるために、今後キャラクターの入手難易度を上げたり、強力なスキン(見た目を変えるアイテム)に性能を付与したりといった、いわゆる「Pay to Win(金で勝つ)」の要素を強めてくるのではないか、という警戒感が存在します。
「ドラゴンボールIP頼り」という厳しい目
ドラゴンボールは、世界的に見てもトップクラスの超強力IPです。 その人気ゆえに、「ゲーム内容が多少悪くても、ドラゴンボールというだけで売れるだろう」という安易な考えで開発されたのではないか、という厳しい目が向けられることがあります。
前述した世界観との乖離やゲームテンポの問題などが、この「IP頼り」という批判を補強してしまっている側面は否めません。 熱心なファンほど、作品への愛情が深い分、ゲームとしての完成度が低いと感じた時の失望も大きくなります。 この失望が「このゲームは長くないだろう」という諦めに変わり、サ終の噂を加速させているのです。
ゲキスクはサ終しない!期待できるこれだけの理由
ここまで、ゲキスクが抱える懸念点について詳しく見てきました。 確かに不安材料は少なくありません。 しかし、ゲーム評論家としての私の目から見れば、それを補って余りあるほどのポジティブな要素、つまり「サ終しない」と考えられる強力な理由も数多く存在します。 ここからは、ゲキスクの持つポテンシャルと将来性について解説していきましょう。

「ドラゴンボール」という最強無比のIP力
まず何よりも、ゲキスクが「ドラゴンボール」のゲームであるという事実が、最大の強みです。 ドラゴンボールは単なる人気漫画・アニメではありません。 世代と国境を超えて愛され続ける、世界的な文化アイコンです。 国内はもちろん、北米、ヨーロッパ、南米、アジアと、世界中に熱狂的なファンが存在します。
このIP力は、ゲームのスタートダッシュにおいて絶大な効果を発揮します。 広告宣伝に多額の費用をかけなくとも、「ドラゴンボールの新作ゲーム」というだけで多くの人の目に留まり、プレイのきっかけとなるのです。 実際に、リリース直後のダウンロード数やセールスランキングでは、他の新作タイトルを大きく引き離す好調な滑り出しを見せています(2025年9月時点)。
この強力なファンベースは、ゲームが多少の課題を抱えていても、すぐには離れません。 むしろ、「もっとこうしてほしい」「あのキャラクターを実装してほしい」といった積極的なフィードバックを送り、ゲームをより良くしようと働きかけてくれます。 このファンの熱量が、運営にとっては何物にも代えがたい資産であり、長期運営を支える土台となるのです。
ゲームタイトル | リリース時期 | 運営状況 | 特徴 |
---|---|---|---|
ドラゴンボールZ ドッカンバトル | 2015年 | 10年以上の長期運営 | パズルRPG |
ドラゴンボール レジェンズ | 2018年 | 7年以上の長期運営 | 3D対戦アクション |
ゲキスク | 2025年 | 運営開始 | MOBA |
上の表を見てもわかる通り、他のドラゴンボールゲームはそれぞれ異なるジャンルで成功を収め、長期運営を実現しています。 ゲキスクは「MOBA」という新たなジャンルを開拓しており、既存のゲームとユーザーを食い合うのではなく、新たなファン層を獲得できる可能性を秘めています。
ゲームの戦略性とやり込み要素の深さ
リリース初期には様々な批判がある一方で、ゲームをやり込んだプレイヤーからは「システムを理解すると面白い」「キャラごとの役割分担が重要で奥が深い」といったポジティブな評価も数多く見られます。

特に、キャラクターの性能やスキルの組み合わせによる戦略性は、MOBAならではの魅力です。 ここでは、現環境(2025年9月時点)で特に評価の高いキャラクターを例に挙げ、ゲキスクの持つゲーム性の深さを見ていきましょう。
現環境最強キャラランク(暫定)
【ダメージロール】
- 孫悟空: 主人公らしいオールラウンダー。追撃性能の高い「メテオハンマー」と、攻めにも逃げにも使える「界王拳」を併せ持ち、一度捉えた敵を逃さない確殺能力が魅力。必殺技の「元気玉」は、オブジェクトの奪い合いや集団戦で絶大な効果を発揮します。シンプルながら強力で、初心者から上級者まで幅広く活躍できるポテンシャルを持っています。
- ケール: 暴走状態での圧倒的な瞬間火力が持ち味。味方が近くにいることでダメージがアップするパッシブスキルを持つため、タンクやテクニカルキャラと連携し、後方から高火力を叩き込む立ち回りが非常に強力です。ただし、逃げ性能が低いため、単独行動は禁物。チームとの連携が勝利の鍵を握る、上級者向けのキャラクターです。
【タンクロール】
- クーラ: 現環境最強タンクとの呼び声も高いキャラクター。特筆すべきは、スキル発動中の「無敵」効果です。敵の攻撃を受け流し、さらに報復状態になることで自身の火力を上げることも可能。追い性能、逃げ性能も高く、耐久力と攻撃力を兼ね備えた万能キャラクターと言えるでしょう。クーラがいるだけでチームの安定感は格段に増します。
- カリフラ: 挑発によって敵の攻撃を引きつけ、被ダメージを抑える能力に長けたタンク。追い性能の高いスキルや、自身の移動速度を上げるスキルも持っており、敵を捕まえて味方が攻撃する起点を作るのが得意です。スーパーサイヤ人2への変身による自己強化も強力で、戦況を有利に進めることができます。
【テクニカルロール】
- 孫悟飯(青年期): サポート性能の高さが光る、テクニカルロールの筆頭。味方が近くにいると、味方の攻撃力を上げ、自身の防御力を上げるパッシブスキルが非常に優秀。さらに、味方のもとへワープしてバリアを張るスキルや、敵を行動不能にするスキルなど、戦況をコントロールする能力に長けています。単独での戦闘力は低いですが、味方と共に行動することで真価を発揮し、チームを勝利に導く司令塔となります。
- 人造人間17号: バリアを張って味方を守る能力が特徴。追加HPを付与するバリアは集団戦で非常に強力で、味方の生存率を大きく高めます。さらに、移動速度アップのバフも付与できるため、戦線への復帰や奇襲のサポートもお手の物。火力は控えめですが、味方を活かす立ち回りに徹することで、チームに不可欠な存在となります。
このように、各キャラクターには明確な役割と強みがあり、それらを理解し、チームとして連携することがゲキスクの醍醐味です。 最初は戸惑うかもしれませんが、やり込むほどにその奥深さに気づき、長く楽しめるポテンシャルを秘めていると言えるでしょう。
MOBAジャンルのeスポーツとしての将来性
先ほど、日本におけるMOBAの立ち位置について懸念を述べましたが、それは裏を返せば「伸びしろがある」ということでもあります。 世界的に見れば、MOBAはeスポーツの代名詞であり、高額な賞金がかけられた世界大会が毎年開催され、多くのプロ選手が活躍しています。

バンダイナムコが、このeスポーツ市場に「ドラゴンボール」というキラーコンテンツを投入し、新たな柱に育てようと考えている可能性は十分にあります。 もし、ゲキスクの公式大会が開催され、プロリーグが発足するようなことになれば、ゲームの知名度と人気は飛躍的に高まるでしょう。 そうなれば、短期的な収益に一喜一憂することなく、eスポーツシーンを盛り上げるための長期的な運営へとシフトしていくはずです。 これは、プレイヤーにとってもゲームが長く続くという安心材料になります。
運営の改善意欲と今後のアップデート計画
リリース初期の不満点が多いことは事実ですが、運営チームがそれらの問題を放置しているわけではありません。 ネットワークテストから正式リリースにかけて、ユーザーのフィードバックを元にした改善が行われてきました。 例えば、マッチングの仕組みや、ゲームテンポに関する調整など、少しずつですがゲームは良い方向へと進化しています。
重要なのは、運営がユーザーの声に耳を傾け、継続的にアップデートを行っていく姿勢があるかどうかです。 バンダイナムコは「ドッカンバトル」や「レジェンズ」で、長年にわたるアップデートとイベント開催の実績を積み重ねてきました。 そのノウハウがゲキスクにも活かされるのであれば、現在の問題点もいずれは解消され、より快適で面白いゲームへと進化していくことが期待できます。 今後のアップデートで新キャラクターの追加や、バランス調整、新モードの実装などが予定されており、ゲームが常に新鮮な環境であり続ける限り、ユーザーが離れていくことはないでしょう。
まとめ
さて、ここまで「ゲキスク」がサービス終了しそうと言われる理由と、それでもなお期待できる理由の両面から深く掘り下げてきました。
結論として、ゲーム評論家である私の見解は**「現時点において、ゲキスクが短期的にサービス終了する可能性は極めて低い」**というものです。
確かに、ゲームテンポの悪さや世界観の表現、MOBAというジャンルの敷居の高さなど、無視できない課題を抱えていることは事実です。 これらの課題が、一部のユーザーに「このゲームは長くないかもしれない」という不安を抱かせているのでしょう。
しかし、それを覆すだけの強力な要素がゲキスクには備わっています。 世界中のファンを惹きつける「ドラゴンボール」という圧倒的なIP力。 やり込むほどに面白さがわかる、奥深い戦略性を持ったゲームシステム。 そして、eスポーツとしての発展可能性という大きな未来図。 これらは、多少の逆風では揺るがない、長期運営を可能にする強固な土台です。
重要なのは、運営がユーザーの声に真摯に耳を傾け、現在ある課題を一つひとつ粘り強く改善していくことです。 「ドッカンバトル」や「レジェンズ」がそうであったように、リリース直後が完成形ではなく、ユーザーと共に成長していくのがライブサービスゲームの本来あるべき姿です。
もしあなたがゲキスクをプレイしていて、「サ終しないか不安だ」と感じているのであれば、そのエネルギーをぜひゲームを楽しむこと、そして「もっとこうなったら面白い」というポジティブな意見を公式に送ることに使ってみてください。 プレイヤー一人ひとりの声と熱意が、ゲームの未来を創り、長く愛されるタイトルへと育てていくのです。
私自身も一人のプレイヤーとして、ゲキスクがドラゴンボールゲームの新たな歴史を刻む一作となることを期待し、これからもその動向を注意深く見守っていきたいと思います。